今回はsidestoryをお送りします。面白ければsidestoryではなくメモ帳みたいにシリーズ化したいと思ってます。
あの地獄の様な戦争が終戦した‥‥
生き残ってしまった俺はまだ兵士をやっていた。
俺はあの時は陸軍の上等兵だった。
戦場は南方で与えられた任務は艦娘が海戦を始めたのと同時に敵の港湾基地を陸から攻撃しろとの事だった。詳しい戦術目標なんて知らされていない。おおかた、艦娘達の援護の為に敵を撹乱させようとしたのだろう。
だが、敵にはこちらの武器が通じない。
軍艦の大砲はおろか爆撃機の爆撃も効果が薄い。
そんな化け物相手に敵にばれないように島に上陸していて大した火器を持ち込めてない俺達の攻撃なんて虫が刺す様なもの、つまり犬死しろってことだと思った。
どちらにせよ既に島にいて戦闘が始まった。
ならもう後に引けない。
どうせ死ぬならと俺達は文字通り死に物狂いで大暴れしてやった。
突然の事で敵の大将、港湾棲姫とか言う奴は驚きを隠していなかった。
港湾棲姫に反撃され俺の仲間は次々と蜂の巣になる。
俺はタダでは殺られまいと日本刀で特攻してやった。
まさかやれるとは思っていなかった。
ところが当たりが良かったのか、俺は奴の頭に生える角をへし折る事に成功した。
そのあとは覚えていない。
気付いたら脱出用の船に乗っていたし、あの戦闘も敵が島を放棄して勝利で終わったらしい。
「あの姫‥‥どうなったんだろうな‥‥」
俺は必死に暴れていただけだ。後の事は覚えてないし艦娘達が奴を仕留めたと言う話も聞いてはいない。
結局あの地獄みたいな戦闘の事は何も思い出せず、かと言って誰かに聞いたり調べたりする様なこともせず小さな疑問のままにしていたらいつの間にか戦争そのものが終わっていた。
「お前、これからどうする?」
「どうするって何がだよ?」
俺はクソッタレの戦争でいつも一緒に死地を潜った相棒と一服しながらたわいもない馬鹿話をしているとアイツは突然切り出してきた。
「いやよう。もう戦争も終わって平和になるならまた普通の世の中になって平凡に暮らせるじゃないかと思ってな。なら、こんな軍なんてさっさとおさらばして転職でもどうかなってよ。」
「ふーん、そう言えばお前って元々自衛隊員から国防軍人になったんだな。」
「そう言うテメーは徴収された三等兵じゃえねかよ。」
「自衛隊に入ったのは免許とかか?」
「そう、自衛隊に入れば色々な資格とか免許とかタダで取れて給料付き。取るだけ取って任期が来たら即辞めるつもりが戦争勃発だもんな。」
国防軍になる前の自衛隊員だった奴はみんな上等兵に昇格。それ以下の奴はその後に入った奴かもしくは戦争によって入らざるを得なくなった者。つまり俺とかだ。
元々無職だった者、戦争が原因で会社が潰れたとかで職を失った者など理由が様々だが、行き場がなく食い積めた奴等は人手不足で常にウェルカムの軍に入る他なかった。
そしてしぶとく生き残り上等兵にまでなって、コイツとさんざん馬鹿やって上官にどやされて深海棲艦に特攻させられて今にいたる。
「ようやく辞められるぜまったく。」
「そりゃよかったな。」
「おう、だからお前はどうなんだ?お前は食い繋ぐ為に入っただけで別に本意じゃないだろ?」
「そうだ。」
確かにそうだ。
俺は別にはじめから軍に入りたかった訳でもなく、仕方なくだった。戦争も終わって自由になれる。
だが、止めてどうするんだ?
「‥‥俺は。やりたいことが見つからない。」
軍を辞める。ではその後は?
やりたい事なんてないし、生き残ると思ってなかったからその後の生活なんてこれぽっちも考えてなかった。
「そうかい‥‥まぁ気長に考えようや。」
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「除隊後の人生か‥‥」
俺はアイツとの話を一人引きずっていた。
家までの家路の間もずっとそればっかりを考えていた。
「何かやりたい事か‥‥」
あの後アイツに聞いたが、アイツは辞めた後の就職先のメドが立ってるらしい。更に驚いた事にアイツには婚約者がいて彼女の為にも軍の兵士よりも高収入の職に就きたいそうだ。
アイツには既に次のビジョンがあるようだ。
目的もなくただ必死だった俺とは違う。
「俺にも何かないのか‥‥」
考えてもやりたい事なんか何も思い付かない。アイツのように守りたい人や家庭がいるわけでもない。
気付くともう家に着いていた。
家賃の安いアパートだ。
「ん?」
俺は異変に気付いた。ドアノブが壊れている。
まるですごい腕力で握りつぶしたかのようだ。
俺は侵入者がいると悟る。
俺は中に突入した。泥棒の類いならすぐに捻り潰せる。
しかし、部屋の奥にいたのは泥棒なんてなま優しいものではなかった。
「なっ?!」
「‥‥‥‥。」
なんと!いたのは深海棲艦!?
しかもコイツは角のない港湾棲姫だ!
「お、お前!ま、まさかあの時の!?」
「エエ‥‥」
そうか。なるほど、コイツならドアノブのことも頷けるよ。
「はは、これは参ったぜ‥‥」
俺は座り込み。驚き過ぎて腰を抜かしのもあるがほぼ諦めたのだ。
コイツからは逃げられないと察したのだ。
「ははは、お前、まさか生きてたのか。」
「‥‥。」
「ここにどうやって来たのかは知らんが‥‥理由は俺を殺しにか?」
まさか角をやった俺を覚えていたのか。
「‥‥。」
しかし、港湾棲姫は無反応だ。
「はっ。これから死ぬ俺に掛ける言葉はないってか?そうかい、ならさっさと殺れよ。じらしプレイは好きじゃないんだ。」
「‥‥がう」
「なんだ?」
「違う‥‥」
港湾棲姫がボソッ話した。
「何がだよ?」
「声が出ないのはその‥‥恥ずかしいと言いいますか‥‥」
「‥‥はぁ?」
何もじもじしてやがる。
「それに私は殺しになんて来てない。」
「じゃあなんだよ?」
「単刀直入に言います。私を貰ってください。」
「‥‥‥‥‥‥はい?」
この言葉を理解するのにかなり苦労した。
「だから、私をあなたのお嫁にしてください。」
「はぁ?!何を一体!」
「あなたはとても勇敢だった。これまであんなに私を震えさせた人間はいなかったわ。」
「‥‥え」
「それに私はあなたに角を折られて傷物にされたし、人間なんかに傷を負わされたってことで肩身が狭くなっちゃったの。」
「誤解を招く言い方はやめい!」
「とにかく!私はあなたの勇敢さに惚れたし、居場所もなくなったから責任を取ってね♪」
「ひゃー!!?」
んなことがあり、その日から俺の所に港湾棲姫が居座る事になった。
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突然押し掛けて来たと思ったら嫁にしろとか言って来て意味がわからなかった。
はじめは俺はあの女のことが恐かったし、正直鬱陶しかった。
ところが‥‥
「おはようございます旦那様。朝食できてますよ。」
「行ってらっしゃいませ旦那様、あら、忘れ物は確認しましたか?」
「お帰りなさい。お勤めご苦労様です。夕飯の準備はできてますよ?それともお風呂にしますか?もしお望みなら‥‥」
とまぁこんな風に献身的に俺に尽くしてくれた。
はじめは下手だった料理や家事も努力したのか徐々に上手くなっていくし、俺も慣れてきたのか行くときに行ってらっしゃい、帰ればお帰りと言ってもらえる事に安心を覚えてはじめていた。
「行ってらっしゃいませ旦那様。」
「ああ‥‥」
俺はいつも通り行こうとして振り返った。
「今日は早く帰るからな。」
「はい、なら早く待ってますね。」
いつもなかった返事に港湾棲姫は微笑む。
俺はそんな彼女を見れなくてさっさと基地へと向かう。
「早く帰るか‥‥」
まさか俺の口から出るとはな。
いままでは帰りたくないとさら思ってたのに早く帰りたいと思うまでになるとはなぁ。
「これが大切な人ができましたってやつかな‥‥」
「えっ?お前結局まだ軍に残るのか?」
「ああ、やっぱりなんの取り柄のない俺に他の職はちょっとな。」
「そうか、まぁ頑張れよ。けどまさか残留を希望するとはな。」
「はは、今無職になる訳にいかんからな。アイツの為にも。」
「ん?お前いま何て言った?!」
「な~んも?」
「惚けるな!俺は聞いたぞ!お前いつ彼女とかできた?!」
「お前が言うな!」
やりたい事もないのならもうしばらくは軍にいようかな。もう1人じゃあないわけだし‥‥
「ただいま。」
「お帰りなさい旦那様。本当に早かったですね。あ、ご飯とお風呂どちらにしますか?私と言う選択も‥‥」
「ならお前で。」
「わかりました、ご飯ですね‥‥って!え?本当に?」
「ごめん、冗談だ。」
「えー」
少し膨れる港湾棲姫
コイツとのこんな生活を続けたいから手に職は持ち続けたいしな。なら、出世でも狙おうかな。
「ならご飯の後に‥‥」
「風呂だな。」
「だったらその次に‥‥」
「もうそこまで来たら寝ようぜ?」
「むむむ‥‥」ぷくー
かつての面影のなくなった深海棲艦の姫、そしてそんな彼女に一方的に嫁入りされた兵士。
二人の生活はここからです。
この作品は戦争を生き残った人と深海棲艦の話だから、この小説のコンセプトに合ってます。