生き残った軍人と潜水艦   作:菜音

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偽りの平和 9日目

 

 

 

「見て見て!ライオンさんが水を出してる!」

 

「おお、マーライオンだね。よく無事だったね。」

 

 

 

私とカナは現在、シンガポールにいます。

 

集積地棲姫からマシロの手がかりを得た私達は南方海域を進み西へ向かっていた。

 

この先の海峡を抜ければ西方海域です。

 

 

しかし、その前に食料など物資を補給するためにシンガポールを訪れたのです。

 

 

「カナ、私からはぐれないようにね。」

 

「分かってるってマスター♪」

 

カナは私の腕に抱きつく。

なるほど、そもそも離れる気がないと言うわけだ。

 

 

ちなみに今回もカナの変装もとい、コーデェは完璧である。もしここで彼女が深海棲艦であるとバレると不味い。

 

この南方は戦争の激戦地域でありここでほとんどの都市と多くの人の命が犠牲になっている。その為深海棲艦に家族を奪われた人も多いだろう。

 

当然、深海棲艦に対する憎しみと恐怖の強い。

 

 

「それにしても‥‥復興が早いな‥‥」

 

シンガポールの街はその戦争の傷跡を残しながらもかつての姿を取り戻しつつある。わずか一年でこれだけの復興を遂げるとは人間の力は捨てたものではないと思わされます。

 

しかし、すれ違う人々の表情はどこか暗い‥‥

 

 

当然と言えば当然かな。

 

 

何せこの平和は仮初めのものに過ぎないからだ。

 

 

南方諸国は深海棲艦との停戦の為に日本が仲介して協議に入っている。しかし、先ほども言った通り、彼らには強い恨みがある。

 

それがトゲとなり、交渉は上手くっていない。

 

今は話し合いの途中だから姫達が艦隊の動きを止めているが交渉決裂、あるいは何かが切っ掛けで姫を怒らせれば再び攻撃が始まる可能性がある。

 

 

現に既に姫を怒らせて海上封鎖を受ける島国も存在しているし、滅んだ国も数ある。

 

基本的に中枢に従う群体の艦隊はほんの一部の領土の割譲と環境対策などのいくつかの条件で海域を解放、停戦を受け入れる。上手く行けば今後友好関係を築いて通商も可能である。

 

しかし、独立系の群体となると勝手が違ってくる。

 

群体は姫が絶対である。

独立系群体では姫の意識が群体の意識となり、彼女らの気分一つで艦隊が動くのだ。

 

そしてその独立系が特に多いのは南方と西方である。

 

 

本当に‥‥なんて面倒なところなんでしょうか‥‥

 

 

この街の復興は戦争を隠すため、ここの人々がこうしてまた普通に過ごしているのはその事実を忘れるためかもしれない。

 

 

「マスターどうしたの?」

 

「ううん、何でもない。早く買い出し終わらせようか。ルリさんもヨウちゃんも待ってるしね。」

 

 

 

 

 

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「マスター、これで最後?」

 

「うん、大体これで終わりかな。」

 

 

買い物を終えた私達。なんと、大将閣下から貰ったあのカードで本当に買い物ができました。

 

 

「おおっと!そうだ。寄りたい所があったんだ。」

 

「そうなの?それはどこなの?」

 

「ええっと‥‥どこだろう?」

 

「え?」

 

「い~や。欲しいものがあるけどどこに行けばいいのやら。そもそもシンガポールに来るのはじめてだし。」

 

「ちょっと!ならよくここに来れたわね!」

 

「何となくです。」

 

「マスター‥‥」

 

そんな感じで困っていると‥‥

 

「何かお困りですか?」

 

「え?」

 

「どちらさまですか?」

 

声を掛けてきたのは女性だ。見たところ大学生くらいだろうか。

 

「あ、すいません。なにやらお困りようだったので。その服装は日本の軍人さんですか?」

 

「ほら!だから着替えたほうが‥‥」

 

「いや、私服で軍発行のカードなんて使ったら疑われるって腹心の人に言われたから。」

 

 

とりあえずその娘に事情を説明する。

 

 

「わかりました。カメラが欲しいのですね。」

 

「はい、そうなんです。」

 

「え?マスター、かなりいいの持ってたよね?」

 

「実はもう1つ必要に。」

 

 

あれは買い出し来る前、カナを変装させた時だった。

 

 

 

 

 

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「可愛い‥‥」口を押させる

 

「もう~マスターったらさっきからそればっかり。」

 

そうは言うが可憐すぎるのだから仕方がない。

 

 

「カナ先輩可愛いです!」

 

おっ!ここに同志がいた。

 

 

「もう!ヨウちゃんまで!」

 

「はぁはぁ、カナ先輩素敵です~、うう、なんでしょうか!この衝動は!この素晴らしさを形に残したい!」

 

「ふふ、ヨウよ!人類はその願望を叶える神器を作り上げたのだよ!」

 

「そ、それは!?」

 

「これこそ!人類の叡智と願望の産物。カメラです!」

 

カシャカシャ

 

「そ、それは?!」

 

「この通り、写真を取りまくり!」

 

「‥‥」声にならない叫び

 

「ちょっと!いつも思うけど取りすぎだって!」

 

 

「イイね~恥ずかしがりながらも確りカメラ目線なのとてもいいよ!」

 

「大佐さん!私にも先輩の写真ちょうだい!」

 

「もちろんとも同志よ!」

 

ここに同志との熱い握手が交わされた。

 

 

ヨウと同志の絆を結んだ私は同志の為にカメラを買ってあげることに決めたのだった。

 

 

 

 

「カメラならよく観光客が持ってくるの忘れるからとかで特価で売っている所がありますよ。ご案内しましょうか?」

 

「是非とも。」

 

 

 

 

 

 

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私達はその女性、フォンさんに案内してもらった。

 

 

「ところで雪村さんは日本の軍人さんですよね。」

 

「うん、そうだよ。」

 

「そんな人がなぜシンガポールに?」

 

「う、そ、それは‥‥極秘任務だよ。だから内容は言えない。」

 

「そうですか。」

 

「どうしてそんな質問を?私が軍人だと何か不味いことでも?」

 

「いえいえ!とんでもないです!むしろその逆です。」

 

「逆?」

 

「はい!日本の方は意外に知ならないそうですが、日本軍は東南アジアだと英雄ですよ。」

 

 

彼女による、

 

日本は東南アジアやオセアニアからの難民を引き受けたり、時に軍を派遣してくれた恩人で、しかも憎い深海棲艦に勝利を収めたとして英雄扱いらしい。

 

 

「だからみんな日本の事は押してますよ。」

 

「そ、そなんだ‥‥」

 

「ただ‥‥一部では不満もありますが。」

 

「それは一体‥‥」

 

「どうして日本は深海棲艦を許したのですか?勝ってたのに、そのまま攻めればよかったはずじゃあ?」

 

 

そうか‥‥これが日本、深海棲艦と諸国とのズレの正体か‥‥

 

 

外のみんなは日本が勝ったと思っているようだ。

 

 

とんでもないです。

 

そんな訳がない。いくら艦娘がこちらにいようとも、深海棲艦の戦力は圧倒的、もしあのままやり合ってたら勝算は五分五分、いえ、負けてたかもしれない。

 

 

この平和は鎮守府や多くの関係者の犠牲や努力、そして深海棲艦の中枢、中枢棲姫が和平を望んだからだ。

 

決してもぎ取ったものではない。

 

 

私達が海外の事を知らぬように諸国も何も知らないようだ。

 

 

 

「日本は確かに素晴らしいです。けど、戦って勝てる力があるのに、どうして手を止めたのですか?どうして打った敵と手を結ぶのですか?」

 

「アナタは‥‥もしかして‥‥」

 

「すいません、言い過ぎました。私も奴等の侵略で家族を失ったので。」

 

 

「っ‥‥!」

 

カナが辛そうにしている。

 

この話をこれ以上は‥‥

 

「フォンさん、その店はあれかな?」

 

「あ、そうですね。」

 

「そう、なら案内はここまでいいよ。」

 

「そうですか。では、私はこれで。」

 

「ありがとうございました。」

 

私はカナを連れて店に行こうとする。

 

「雪村さん!」

 

「なんでしょう?」

 

「先程はすいません。本心ではないんです。ただ‥‥」

 

「わかります。ただ憎いんでしょう?」

 

「はい‥‥」

 

いくら悔しくても、恨んでても自分たちでは深海棲艦を倒せない。なら、それができる者に過度な期待をするなと言うのもまた無理は話‥‥

 

「でも、今の平和、それだけはどうか否定しないで欲しいです。じゃないと亡くなった人達に申し訳が立ちません。」

 

「そう、ですね。ありがとうございます。雪村さんと話せて少しスッキリしました。」

 

「そう、ならよかった。」

 

「お引き止めしてすいません。では、今度こそ失礼します。」

 

フォンさんが去っていった。

 

 

「マスター‥‥」

 

「どうしたの?」

 

「私達って、こんなにも不幸を振り撒いてたんだね。」

 

「そうだね。けど‥‥」

 

けれど、彼女達が必ずしも絶対悪ではない。

 

 

切っ掛けを作ったのはそもそも人間の方で、そうなるように誘導した黒幕もいたのだ。

 

 

「さあ、この話はお仕舞い!カメラ買うぞ!カメラ!」

 

「う、うん。」

 

 

はぁ‥‥せっかく掴んだ平和なのに‥‥

 

 

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「はぁ‥‥私って最低だ‥‥」

 

フォンは先程の事を悔やんでいた。

いくら何でも、この行き場のないものを日本人だからと彼女にぶつけるのは間違いだ。

 

それは自分でもわかる。けれど‥‥

 

 

「やっぱり‥‥この偽りの平和は‥‥許せない。」

 

 

敵がまだいるのに。どうして‥‥

自分たちに、仇を取る力がないから?

 

 

「力があれば‥‥」

 

「力があれば、そうすれば仇を取れて日本に怒りをぶつけることもないと?」

 

「だ、誰?!」

 

「おおっと!失敬。」

 

路地裏から現れた謎の男

 

 

「深海棲艦に一矢報いようとしない社会に不満がある。そう言うことですね。」

 

「そ、そうだとしたらなんなの!」

 

「できたら、ご自分で仇を取ればよし!そうでしょう?」

 

「それは、そうですが‥‥」

 

「ならば、私が良いものを持っております。使い手を選ぶクセモノで値段も少々しますが‥‥いかがですか?」

 

「‥‥見せてください。」

 

 

 

 

 

 

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