生き残った軍人と潜水艦   作:菜音

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どうもです。お久しぶりです。
このシリーズでは今年初の投稿です。最近あまりにも忙しくて書く暇が‥‥

たくさん書く時間があったあの頃が懐かしいです。


願いの理由 12日目

 

 

 

大佐達一行は深海棲艦の補給基地に寄っていた。

 

 

 

この基地は規模は小さく、鎮守府の1巡洋艦隊でも落とせるだろうと思われる。

 

位置的にも西方海域の玄関にあたり、ルリさんいわく太平洋勢力が管轄している範囲の最果てがここまでとのこと。先の戦闘でわずかながら損傷している彼女を西方入りの前に修理してもらおうと思ったのだ。

 

ルリさんは最後まで必要ないと抵抗しましたけどね。ちなみにカナやヨウも念のため検査を受けているので現在1人です。

 

 

その間私はここの基地司令に挨拶している。ここは中枢に従順な群体の基地とはいえ西への通り道、一応日本船への安全を確認しておかなければ。

 

 

 

「もちろんです。中枢からも命令を受けていますので日本船には一切手を出しません。」

 

そう約束してくれるのはここの基地司令のネ級だ。小さな補給基地だから姫はおろか空母、戦艦はいないそうだ。

 

 

「そもそも手など出せばここなんて艦娘に簡単に潰されてしまう。ここはあくまで補給点、スルーしていただくためにも静かなのが良いのです。」

 

「確かにそうですね。」

 

「それにしても、あの沖ノ島のル級殿をお招きできるとは今日はツイてます!槍でも降らなければ良いですが。」

 

「沖ノ島のル級‥‥ああ、ルリさんか。」

 

ルリさん凄い尊敬されてますね。こんな鼻息の荒いネ級見たことない‥‥

 

「アナタのことも、聞きましたよ。何でも元強硬派や独立群を相手に交渉していると。」

 

「はい、いつも命懸けですよ。ルリさんがいなければ間違いなく終わっていた場面もありました。」

 

「まぁ、確かにあのル級なら‥‥」

 

「あの‥‥先程から思ってたのですが同じ量産型なのにかなりルリさんの事を認めていますね。戦艦だからですか?」

 

「んー、ご存知ないのでよね。‥‥これはここだけの話に止めて欲しいのですが、日本近海に新たに配備されている我らが艦隊は穏健派の姫が指揮していることは知ってますよね?」

 

「勿論、何度かお会いしたことも。」

 

「日本を牽制する目的で置かれる艦隊ですから穏健派や中立の中でもかなり腕が立つ姫が選ばれています。言うなれば日本近海の艦隊は太平洋の中でもエリート中のエリート部隊と言うことになります。その中でも特に重役を担う沖ノ島の幹部ともなれば‥‥」

 

「激強な訳ですね‥‥」

 

 

このネ級の話は実は軍でも予測はされていた。なんせ事実深海棲艦にまともに反抗できるのは日本いや鎮守府のみ、なれば戦力をここに集中させてもおかしくはないだろうと。

 

そして、日本へ目を光らせている沖ノ島の群体が弱い訳がないことも。

 

当の深海棲艦からは言質も取れてしまったことだし、これはホントに頑張らないと滅ぶな。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ネ級に案内されたのは殺風景なので独房にも見える部屋です。しかし、深海棲艦のこの規模の基地ではこれでも貴賓室だそうだ。

 

「あの!よろしければどうやって港湾夏姫様を説得なされたのかとかお聞かせ願えないだろうか?」

 

「聖夏さんの話ですか‥‥」

 

いや‥‥あの人の話は‥‥

あの内容は話せないからな‥‥

 

どう回答を濁らせようと大佐は考えた。

 

『グ‥‥ギギギギ‥‥』

 

ネ級向けに通信だ。深海の言葉で何を言っているか分からない。

 

「申し訳ない、何やらトラブルのようです。」

 

「何事ですか?」

 

「さぁ?とにかく来て欲しいと。‥‥検査が終わるまでまだ時間がかかると思われるのでここでお待ち下さい。」

 

「わかりました。」

 

最後にネ級はこの部屋の飲み物などは好きにして欲しいと伝えると退室する。

 

 

「トラブルか‥‥まさか本当に槍でも降ったのかな。」

 

早速飲み物をもらうことにするがよく考えれば彼らが調達してきた飲み物はほとんどが船を沈めた時に拾った物とかだ‥‥

 

その‥‥鮮度とか大丈夫?

 

 

「ま、まぁ大丈夫だろう。さぁ~て、何にしようか‥‥これなんて読むの?」

 

適当に缶を見るがどこかのアジアの文字でなんて書いてあるかわからない。

 

「これは‥‥絵からしてコーヒーかな?そしてこっちは‥‥」

 

意外にも海外の飲み物を選ぶのが楽しくなってきた。そのせいかそちらに気をとられたあまり彼女の接近に気付けなかった。

 

 

「少しよろしいかしら?」

 

「はい?」

 

振り返るとそこには見たことのない深海棲艦がいた。姫クラスかな。あれ、ここに姫はいないって聞いてたけど。

 

(けどなんだろう‥‥これまで会ってきたどの姫とも違う‥‥得体の知れないというか、本能的にヤバいって思ってしまうような。)

 

 

どの深海棲艦よりも他を圧倒するような存在感、しかし、それとは裏腹に優しそうな目をしていた。

 

 

「クスクス、そう警戒しないでくださいな。少しお話がしたいのです。」

 

「は、はい‥‥」

 

何故かこの人の機嫌を損ねたくないと思った。

 

 

「お、おかしいな‥‥確かここには姫はいないと聞いていたのに。」

 

「ええ、私はお忍びで来ているのよ。少し占地の視察でね。ここに来たのは偶然よ。」

 

「はぁ、なるほど‥‥」

 

お忍び?視察?

この姫はかなり上位の存在のようだけれど‥‥一体‥‥

 

 

「そうしたら何と言うことでしょう!貴女方が来てらしたのでついついね。貴女とは一度お会いしたかったの。」

 

「私に?」

 

「ええ、だって人間と私達の架け橋になってくれている人だもの。上に立つ者としては興味はあるし、個人としてはお礼を申し上げたいって思っていまして。」

 

そういうと彼女は立ち上がり深く頭を下げた。

 

「ありがとう、私の望みを叶えてくれて‥‥」

 

「お、お礼だなんてそんな!」

 

「いえいえ、私としてはお礼を述べるだけではなく何か返せるものがあれば良いのにと思ってましてよ。」

 

「私、アナタにそれほど感謝されることしまたか?」

 

彼女は私の隣にそっと座る。

 

「ええ、勿論。アナタがやった事、それが私達深海棲艦に及ぼした影響は大きいわよ?港湾夏姫は知っていますね?」

 

「はい、存じ上げてます。」

 

「彼女は強硬派の生き残りで中枢からは距離を置いてたんだけれど、この間久しぶりに中枢に参じたわ。多分、貴女と関わった事が多かれ少なかれ彼女を変えたのでしょう。」

 

彼女が中枢に戻ったことはこれまで中枢に逆らっていた群体に衝撃を与えた。今では彼女に続いて多くの姫が中枢に従う意向を見せている。

 

 

「貴女のおかげで我が深海棲艦はまとまりつつある。改めてお礼を申し上げるわ。」

 

「そんなことが‥‥」

 

あの姫様‥‥本がそんなに嬉しかったのか。

 

 

「あの‥‥私も聞いてもよろしいですか?」

 

「何かしら。」

 

「深海棲艦‥‥いえ、中枢棲姫はどうして和平に応じたのですか?」

 

 

この和平交渉は本来ならあり得ないものだ。何故ならいくら鎮守府が頑張っているとはいえども圧倒的な物量を持つ深海棲艦が依然として優位なのだから。だからこれは深海棲艦が鎮守府の提案に応じたことよって初めて成り立ったのだ。

 

しかし、これは深海棲艦の意思と言うよりは深海中枢‥‥彼らが母と崇める中枢棲姫の独断に等しいとも聞いている。

 

深海棲艦にとって中枢棲姫の決定は絶対である。しかし、例えそうでも人との和平は彼らの根底を覆すものだ。簡単には従えない者も大勢いるとか。

 

 

だから気になっていた。

 

どうして中枢棲姫は和平を望んだのか‥‥

 

 

多分、この姫はかなり高い地位の、もしかすると普段中枢にいる姫かもしれない。何かしらのことを知っているかも。

 

彼女は少し困った表情を見せる。

 

「うーん、中枢棲姫の意思ですか‥‥やっぱり気になりますか?」

 

「はい。なぜ彼女は優位にも関わらず私達と手を取り合う気になったのでしょうか。」

 

「‥‥そうですね。多分ですが、彼女は終わらせたかっただけだと思います。」

 

「終わらせたい?戦争をですか?」

 

私の問に彼女は首を振る。

 

「いえ、戦争を終わらせたいならどちらかが勝つまでやればいいことです。彼女が終わらせたかったのは私達深海棲艦の宿命です。」

 

「深海棲艦の‥‥宿命?」

 

「我々深海棲艦はあらゆる負の思念、かつて貴女方の祖先が産み出した歴史の成れの果て‥‥そこから生まれる尽きる事のない人への憎悪、今あるものへの破壊衝動です。ほとんどの者は多かれ少なかれこの宿命で戦ってます。」

 

「な、なら、なおさら中枢棲姫はどうして‥‥」

 

「負の記憶から人を憎み、数々の歴史の上に立つ今を恨み、嫉妬し、同じ過ちを繰り返すことに憤りそして絶望する。だから我々は人に牙を剥き、人も当然抗い、そして希望として艦娘が生まれた。戦えば負は積もるばかりでいつまでも同じ循環を繰り返すばかり‥‥彼女はそれに気付いた。そしてそんな呪縛にいつまでも囚われたくないと願ったのよ。きっとね‥‥」

 

「アナタ達も‥‥苦しんでいるのですね。誰かを恨み続けるのはとても苦しいことだもの。」

 

「ふふふ、貴女って優しい人なのね。だから、貴女の回りにいるあの子等や貴女に関わった姫達はあんなにも丸いのね。」

 

彼女は微笑んだ。まるで母親のように。

 

「ねぇ、私も話したのだから聞かせて欲しいの。貴女とあの子は‥‥」

 

トントン♪

 

彼女は質問をしようとした時、呼び出されていたネ級が帰ってきた。

 

「失礼します。雪村さん、お三方の整備が終わりまし‥‥って!?ア、アアアあ、アナタ様は‥‥」

 

かなり狼狽するネ級、彼女の名を言おうとしたがしかし‥‥

 

「‥‥。」

 

彼女の出す絶対的オーラによって全く動けなくなってしまい彼女はヘナヘナと地についた。

 

「あらあら♪もう修理が終わったゃったの。残念だわ、もう少しお話したかったけれど。」

 

彼女は立ち上がった。

 

「それでは雪村さん、また今度お話しましょう。」

 

「はい!あの、貴重なお話をありがとうございました。」

 

「いえいえ、お役に立ててよかったわ。あ!そうそう‥‥」

 

彼女は雪村に白い塊を手渡した。

 

「これは?」

 

「これから西方に行くのでしょう?もしかしたらお役に立つかと。それじゃあ‥‥」

 

「あっ!待って!そういえば名前は?」

 

しかし、彼女は行ってしまった。それと入れ違いにカナ達がやって来た。

 

 

「ただいまマスター♪」

 

「お帰りなさいカナ、綺麗にしてもらった?」

 

「うん!ついでに魚雷も新しくなったの。なんでも飛距離が伸びるんだって。」

 

「待たせたな雪村。」

 

「ルリさん怪我は治った?」

 

「怪我と呼べるものでもなかったがな。とりあえず全装備の点検をさせたからな。そのせいで時間がかかってしまった。」

 

「マスター待った?」

 

「いや全然。さっきまで話してたし。」

 

「誰と?」

 

「さぁ~?誰だろ?」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「雪村さん達は出港しました。」

 

「そう‥‥ご苦労様。」

 

「あ、あの‥‥なぜアナタ様がここに‥‥」

 

ネ級はガクガク震えながらあの姫に尋ねた。

 

 

「そうね‥‥西がきな臭い事になりそうだから手を打ちに来たのと、あの人間に会って見たかったからかしらね。」

 

 

「さ、左様でございましたか‥‥こ、こんな辺境に来てくださり誠に光栄にございます。」

 

 

ネ級及び基地の全深海棲艦が最上級の敬意を示す。

 

 

 

 

 

「我らが大いなる母‥‥中枢棲姫様。」

 

 

 

 

 

 

 

 

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