生き残った軍人と潜水艦   作:菜音

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大戦のはじまり 13日目

 

 

 

西方海域はかつて鎮守府と深海棲艦が熾烈を極める戦いを繰り広げた激戦海域の一つである。

 

鎮守府にとっては西からの敵を防ぐ為に、また膨大な戦力を持つ深海棲艦と戦う為には西方の豊富な資源を手にする必要があった。

 

一方で深海棲艦もその戦略的価値を知りつつ最終的に制海権を奪還されたのにはその地理的要因が大きい。

 

西方海域は大西洋の勢力と太平洋の勢力の間にありその管轄は非常に曖昧だった。なので部分的に異なる群体が支配する形になり独立系もかなり多かった。

 

その為にうまく連携が取れなかった深海棲艦は各個撃破されついには大西洋群体の最大拠点のダスカマスが落とされたことにより大西洋群体は海域から撤退、ここでの戦闘は終わったのだった。

 

 

 

そして現在は、太平洋、大西洋の群体がほぼ西方海域には存在しておらず残りはどちらでもない独立系のみとなった。

 

 

独立群体はそれをまとめる姫の命令が絶対である。彼らは中枢の命令を無視ないし聞いていない事にして好きに暴れ続けている‥‥

 

 

 

「とまぁ、これが西方で我が同族が小競り合いをしている理由だ。」

 

「なるほど‥‥」

 

西方海域に突入し、次の群体への接触を求める雪村達。しかし、その前に役に立つかもとルリと雪村はお互いに知っている事を共有しようとしていた。

 

 

「お前ら人間はどうなんだ?わざわざ勝てないとわかっているくせして挑んで来るのはなぜなんだ?」

 

「うーん、他所の国の詳しい事情までは知らないけど‥‥多分今あの地域で戦おうとしているのはインドとその同盟国じゃないかな?」

 

「じゃあなぜその人間どもは戦おうとしてるのだ。」

 

「それは‥‥」

 

「う~ん‥‥」

 

「ルリさんちょっと待ってね。」

 

「ハイハイ~」

 

丁度彼女の膝の上で寝ていたカナ寝返りをうった。それを起こさないように支えてあげ優しく頭を撫で上げる。

 

それをもう見慣れたよと言うような表情でルリはスルーしている。

 

 

「仲が良すぎやしないか?」

 

「なぁ~に?ルリさんもやって欲しいの?」

 

「‥‥‥‥」

 

「あっ!ストップストップ!無言で主砲を向けるのはやめて!」

 

「‥‥ふん、話を続けろ。」

 

「あ、はい‥‥」

 

 

私がと言うより軍が分析している理由は主に2つあると考えられている。

 

 

1つは資源

 

 

インドのような人口の多い国は必然的に資源はたくさん必要となる。ここ近年インドが自国でその資源を賄えるようになったのは例の海底開発のおかげのようだ。

 

そこへ深海棲艦が海を支配したことで開発基地は破壊され資源採掘ができなくなり外から輸入しようにも海は深海棲艦に支配されてるから思うようにならない。

 

 

そうなるとインドはたちまち資源難に陥り経済が破綻してしまった。そこに食糧難も追加されインドは完全に追い詰められたのだ。周辺の最貧国はその比ではなくすでに政府が機能を失っている。

 

 

「資源採掘に漁業‥‥とにかく海に出るしかもう生き残る術がないって考えているの。」

 

「内陸の人間どもに助けを求めないのか?」

 

「あの辺りの国の惨状は酷いらしいの。とてもどの国も他所に構ってる余裕なんてない。」

 

東欧やアジアの内陸ではすでに内戦や他国への侵略なんて起きている。

 

 

「無様だな。我らと対峙しておきながら同族同士で殺し合いか。」

 

「それについてはぐうの音もでないね。」

 

「資源確保が目的の1つ目なら後1つはなんだ?」

 

「それは‥‥」

 

バタン!

 

雪村が言おうとした時、ヨウが乱暴に扉を開けて入ってきた。その音でそれまで寝ていたカナも起きてしまった。

 

「カナ先輩、ルリさん!それと大佐!」

 

「ん~zz何?ヨウちゃん‥‥」

 

「カナ先輩!なんてところで寝てって今それどころじゃ‥‥とにかく甲板に出て!」

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

時は同じくして‥‥

 

雪村達が丁度噂していたインドでは雪村達のその後の動きに大きく影響を与える出来事が起きていた。

 

 

 

インド軍府 最高司令室

 

 

「閣下正気ですか!?」

 

「私は至って真面目だが?」

 

インド軍の最高司令官を前に二人の将軍が詰めかけていた。

 

 

「確かに海の奪還は我々が生き残る為には必須、しかし今回の作戦はあまりにも」

 

「あまりにも、なんだ?」

 

最高司令に睨まれたじろぐ将軍、それを見かねて隣にいた別の将軍が続けた。

 

「‥‥いくら諸国と同盟を結んだとはいえ私達に深海棲艦を撃滅できるとは思えません。」

 

「お前達‥‥いや、確かにお前達の不安も最もだ。だが我らには新兵器がある。現に敵の憎い通商破壊部隊を撃滅せしめただろ?」

 

「確かに‥‥そうですが‥‥」

 

「ほらこの話は仕舞いだ。仮にもお前達は将軍だろ。お前達がそんなのでは勝てる戦も勝てないぞ。」

 

「はい‥‥」

 

最高司令は二人にもう下がるように指示を出す。二人が敬礼をして退出するとそれを見計らったかのように別の男が入ってきた。

 

 

「いや~流石は大臣‥‥いえ、今はインド最高司令官兼新インド洋連合軍主席と呼びましょうか?」

 

「君か‥‥」

 

「部隊の準備は整いました。と報告に来ました。」

 

「そうか。」

 

 

その男は彼にとっては諸刃の剣のような存在だった。

 

 

行き場のない彼や彼の部下を匿い面倒を見ているのは彼だが国防大臣だった彼がクーデターを成功させて今の地位にいるのは彼のおかげでもある。

 

そして、彼も弱みも握られていてその気になれば彼もこの男の餌食になりかねないのだ。

 

(一思いに始末できれば良いのだが‥‥この者には今亡くなられては困る‥‥)

 

 

「そんな警戒しないで下さい。私はこれでもアナタには感謝しています。恩を仇で返すような真似はしませんとも。」

 

「そ、そうか。なら正直に答えてくれ。」

 

「何をですか?」

 

「あの新兵器‥‥特装兵と言うのだな。アレで本当に勝てるんだな?」

 

「何を今さら‥‥」

 

「確かにあれは素晴らしい出来だ。しかし‥‥」

 

「部下を説得している内に自分が不安になられたのですね。そうですね、わかりました。今さらですがあの兵器について説明してあげましょう。そうすれば少しは気が晴れるかと。」

 

「頼む。」

 

 

 

特装兵とは技術の力で擬似的に作り出した艦娘の事である。完成させ建造にこぎ着けたのは日本のモダニズム組織「同盟」である。が、実際に研究開発を進めてたのはイギリスであり、そのためその艤装はイギリスの軍艦のデータが使われている。

 

 

「適性のある少女に装備させ最低限の訓練さえさせればあの化け物と同等に戦えます。ただ‥‥」

 

「ただ?」

 

「何せ今のこの国の戦局です。あまり悠長に準備をしている場合ではなく至急数を揃える必要があったので我が国で量産したモノよりさらに簡易量産化したモノになりました。」

 

「そんなもので大丈夫なのか」

 

「ええ、性能がダウンしたとは言え戦闘は可能です。その分対策も考えています。これです。」

 

最高司令は渡された資料を見る。

 

 

「敵一隻に対して必ず複数艦で戦う戦術か。」

 

「はい。敵群体の推定される規模に対して数倍の駆逐特装兵を準備しております。」

 

「それでどうにかなるのはどうにかなるのは駆逐艦や巡洋艦クラスだろ。戦艦や姫はどう対象するつもりだ。」

 

「その為に、あの三人を用意したのでは?」

 

そう言われて彼は前にここに連れて来させた三人の少女達を思い出した。

 

「‥‥本当に恐ろしいよ。まだ年端もいかない少女達を兵器にしただけで飽きたらずあんな恐ろしい事をさせるなんてな‥‥」

 

「これも元の現在を生きる我らの世界を取り戻す為です。」

 

「私達はモダニズム主義者ではない!!」

 

「わかっていますよ。全てはアナタの言う民意の為でしょう。」

 

「‥‥ふん。」

 

最高司令はもう説明は要らないと言いたげに手で合図をする。するとこれ以上は野暮だと感じた男は静かに部屋から出ていく。

 

いや、出ていこうとしたまさにその時、備え付けの通信機から緊急用の通信が入る。

 

 

『閣下!大変です!』

 

「何があった!」

 

『深海棲艦の艦隊が第1次防衛海域に侵入!守りについていた部隊は全滅しました!』

 

「くっ!もう来たか。各防衛部隊は全て第3次まで後退!直ちに全軍出撃、防衛部隊と合流する!」

 

『ハッ!』ばちん

 

 

「おそらく敵の前衛ですね。通商破壊部隊をやった報復でしょう。」

 

「これもお前の計算の内か?」

 

「ええ、こんなこともあろうかとすでに1部隊をあの付近に配置してます。」

 

「貴様!なら部下は捨て石か!?」

 

「まあまあ。でも好都合では?泊地を落とす前に予行演習ですよ。」

 

「ムググググ‥‥この件は後だ。事は一刻を争う。私も出る、貴様にも来てもらうぞ。」

 

「ええ、喜んで。」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後‥‥

 

 

駆逐棲姫艦隊のタ級率いる前衛が防衛部隊の撤退を援護しようと出てきた特装兵部隊と衝突。

 

 

 

ここにインド洋の覇権をかけた大戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

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