生き残った軍人と潜水艦   作:菜音

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戦争勃発 16日目

 

 

 

 

雪村達が進路を定めた少し前の時間

 

 

 

彼女達が巻き込まれる事になる争いの最初の戦闘が幕を開けていた。

 

 

「司令!後衛の7番艦が炎上!速力を維持できません!」

「やむを得ない。我々はこのまま全速力で第3防衛海域まで後退する!」

 

 

艦隊司令の男は険しい表情だった。

 

インド海軍が防衛する海域に突如として侵攻してきた深海の艦隊。これはどう考えても先日彼らの艦隊を撃破したことに対する報復だった。

 

そう。彼らの仕返しがあることをわかった上で自分と艦隊は配備されていた。まるで捨て石のように。

 

 

「上層部はいや、総司令は何を考えてる!」

 

「司令!」

 

「今度は何だ!」

 

「前方より何かが複数接近しております!」

 

「何!?深海棲艦か?」

 

囲まれたか?

 

「い、いえ、あれは恐らく例の‥‥」

 

「例の新兵器か‥‥」

 

追われて第3防衛海域に入った守備部隊の前から人型の兵器、いや少女達が現れ後ろの深海棲艦達を襲う。

 

 

「ふん。餌に釣られてまんまと来たか。しかも勢い任せで隊列もくそもない。戦術通りに各個撃破だ!あの化け物どもに思い知らせてやれ!」

 

「「はっ!!」」

 

 

指揮官と思わしき少女が指示を出すと艦隊は15人一組の部隊に分かれ、さらにそこから四人一組の小隊に分かれていった。

 

 

そのうちの最も先行した小隊が敗走艦隊の最後尾に逃げる艦を襲う敵駆逐艦ロ級を狙う。

 

「グガガガッ!」

 

「かかれ!」

 

1隻の敵に対し四人がかりで攻め立てる。これにロ級も反撃をするが大した抵抗をすることなく轟沈させられた。

 

また別の小隊はヘ級を取り囲んでいた。

ヘ級の反撃が小隊の一人に命中する。

 

「アガッ!?」

 

艦娘の駆逐艦なら耐えられる攻撃だった。しかし、少女はそれが致命傷となり轟沈した。

 

「くおのぉ!!」

 

残りの3人はヘ級に魚雷を発射、撃破された。

 

 

このように味方を失いながらも確実に深海棲艦を沈めていった。

 

 

 

「何だ!アイツらは!」

 

その異様な光景を逃げ遅れた軍艦を仕留めていたこの部隊の指揮官、タ級は激怒していた。

 

艦娘のようでまったく異なるあれはなんだ!!

 

我らを倒せるのは艦娘だけ。しかしだとしたらそれはおかしい。現在西方海域に艦娘ないし日本軍は撤退している。ましてや奴らが我々のような味方が沈められる前提の戦術を使うなんて!

 

しかし、これが人間だとしたら何なのか。この訳のわからないことに対する不安と人間に部下をやられた屈辱にタ級は怒っていた。

 

そのタ級を敵が複数で取り囲む。

 

 

「このぉ!!」

 

タ級は力任せに砲身を動かし敵をなぎ倒す。その時だった。

 

「なっ!?」

 

タ級の右腕が切り落とされた。それも切られた本人が気付かないほどの速さで

 

 

「失敗‥‥」

 

「誰だ貴様は!?」

 

どこから現れたんだ。コイツの持っているのは日本刀か?なぜインドの奴等が?

 

コイツも艦娘ではない。しかし、このへなちょこどもともまた別格だ。そう思い警戒する。

 

「ああっ!1人だけズルい!絶対ソイツ強いヤツ!」

 

「何!?新手か!」

 

「そりゃあ~!」

 

今度は魚雷!?それも多い、さばけない!

 

 

「ぐあああっ!!」

 

タ級は大破してしまった。1人だけではなかった。もう1人いや二人。明らかに他の奴等とは違う何かがいた。

 

タ級は三人に囲まれた。

 

「さようなら‥‥」

 

「ぐっ‥申し訳ありません‥‥姫様‥」

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「ナニッ!?タ級が!タ級がやられたの!?」

 

駆逐棲姫の下に前衛艦隊壊滅の知らせが入ったのは彼女らが第1防衛海域に着いた頃だった。

 

 

「は、はい‥‥敵の新部隊からの待ち伏せを受け艦隊は壊滅、タ級様も‥‥」

 

「オノレェェ!!ニンゲンドモガァ!!」

 

彼女の傍らに控えていたヲ級はいけないと思いすぐに止めにかかった。

 

「姫様、ダメです。」

 

「ヲ級!?どうして止めるの?部下の弔合戦なのよ!」

 

「私達は敵を侮りました。その結果前衛艦隊が壊滅しました。しかし、これではっきりしました。通商破壊部隊の撃破はまぐれではありません。」

 

 

敵は我々と戦える手段を確実に手にしている。しかも油断があったとは言え泊地で指折りの実力者のタ級がやられたのだ。

 

そして、今の姫様は冷静ではない。

 

 

「ここはひとまず引き返しましょう。」

 

「うう‥‥でも‥でも!」

 

「姫様、何卒。」

 

「‥‥‥。うん、わかったわ。」

 

駆逐棲姫は渋々と言った表情で艦隊に引き上げを命じた。

 

ヲ級はやれやれとため息をつく。そこに別の側近が声をかけてきた。

 

 

「すまないなヲ級、ああなった姫様が素直に言うことを聞くのはオマエくらいなんだ。」

 

「気にしないでよ。」

 

「それにしても、オマエはタ級と仲がいいと思ってたのに、ヤツの轟沈を聞いても顔一つ変えないのだな。」

 

 

確かに、タ級が死んだと聞いて驚きはしたがそれ以上の感情は湧かなかった。はは、私って薄情なやつだな。

 

「まぁ、オマエが冷静なお陰で最悪の事態は免れたけど。」

 

「そう‥‥じゃあ、後よろしく。」

 

「ええ任せてって!よろしくってオマエどこ行く気?」

 

「少し報復に。じゃないと姫の気が晴れないから。」

 

そこまで言うとヲ級は自分の部隊のみを連れて少し東に進んでいった。

 

 

 

「タ級の轟沈に敵の新戦力に戦争か。何かいやだ。」

 

 

 

 

 

 

 

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