私達が神戸に来たのには理由がある。
陸軍の司令部に向かわなければならないのだ。
国防軍が創立した際、その共通の指令部が東京を置かれていた。しかし、同じ所に陸海両方の最高司令所を置くのは危険かもしれないと言う事で、東京の指令部はそのまま残して陸海でそれぞれの本拠地を作る事にしたのだ。
海軍は神奈川の横須賀に、陸軍は京都の桂にそれぞれの司令部を設置した。
ちなみにこの司令部がごっちゃにならないようにする為に東京にあるものを指令部、陸海それぞれのを司令部と書くようになったとか、余計にわかりづらい。
陸軍が桂を拠点に選んだのには色々と理由があるとされている。
例えば、ここからなら日本海に睨みを効かせられて、大阪や神戸などの西日本の大都市にも近くいざという時に守りやすいとか、
横須賀と離すのが目的で深い意味は無いとか色々言われています。
とどのつまり、詳しい理由は末端の私は知らないです。
まずは神戸から電車に乗って京都へ向かいます。
カナは初めての電車に大盛り上がりです。
出来ればこのまま京都に着いたら観光でもしてカナを楽しませてあげたいけど、休みが終わったらすぐに出頭するように厳命されてるから無理です。
私は桂基地の近場に部屋を借りて暮らしているのでとりあえずはそこにカナを置いてから向かう事にした。
「それじゃあ行ってくる。多分今日はそんなにかからないと思うから帰ってきたらどこか外に食べに行こうか」
「う、うん。早く帰ってきてね‥‥」
カナは少し心配そうだ。
まぁ、確かにいきなり知らない場所で1人にされたら恐いよね。ましてやついこの前まで戦争していた相手の真っ只中なのだから。
「早く、帰ってね‥‥」
そう言ってカナは私の服の裾を離さない。
その仕草と顔の様子から1人になりたくないと思うカナと私の邪魔をしたくない思うカナの2つが争っている。
やっぱりいい子だなぁ。
早く終わらせて寄り道せず帰ってこよう。
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「雪村大佐、休暇の消費ご苦労様です!」
司令部に出頭して真っ先に言われたのがこの一言でした。
着いたらここに来るように言われていたので来てみるとこの後の任務について人事部から命令を受けるように言われていたがそこの担当の新兵にこんな事を言われました。
「それでは大佐の今後の職務についてですが‥‥」
やっとか‥‥
「1500に第5会議室に向かって下さい。そこで正式に辞令が出ます」
おい!いつまで続くのかこのたらい回しは!?
早く終わらせて帰りたいのだけれども?
それにしても何でまた1500なんて中途半端な時間に?
それまで時間があったので私の仕事場である課に戻りデスクワークでもしようとしたけど‥‥
「大佐!そのような雑務は我々が!」
私、大佐でそれなりに偉いから下っぱ達がほとんどやってしまってやることが無くなってしまった。そもそも私現場仕事がメインだしね‥‥
それから暇な時間を過ごして1500 15分前
私は既に会議室前にいました。
第5会議室があるこの棟は陸軍の高級武官達の部屋があるので数ある棟の中でもほとんど人が来ない所で、さらにその棟の中でも外れの位置あるのでここまで誰ともすれ違わなかった。
何でこんな辺境で辞令を出す?
誰だよこんな所に呼び出した奴は‥‥
もしあの元上官とかだったらぶん殴る!
そんな事を考えるながらも私は姿勢を正し、扉をノックする。まだ来てないと思うけど一応ね?
トン トン トン
「雪村 美琴入ります!」
「入りたまえ」
15分前だからまだ来ていないと思ってたけど既にいらっしゃるようだ。
「失礼します!」
入るなり私は固まってしまった。
待っていた人物を見るなり頭の中が真っ白になってしまったのです。
私は入室して早々にこの場所から逃げ出したくなった。
「そう固まるな‥‥掛けたまえ」
「は、はい!」
無理です。緊張するなと言われる方が無理です。
私を呼び出したのは陸軍のトップ、国防軍No.2の濱崎大将でした。
強面であまり口調が変わらない人で、怒った所を見たことがないがむしろそれがプレッシャーを放つ、分かりやすく言うととにかく恐い人です。
そんな偉くて恐い人がどうしてここに?!
「そろそろ3時か‥‥」
大将が時計を見る。確かに3時です。
すると、大将の側にいた側近がお茶を煎れ始めた。
「閣下、鎮守府からの土産ですが今日はそれでも?」
「おお、もみじ饅頭か。」
箱とお茶が大将の前に置かれ私にもお茶と饅頭が配られた。
「3時のおやつだ。食べながら話そう」
濱崎大将は美味しそうに饅頭を食べ始めた。
「おい」
側近が私に耳打ちする。
「閣下がお菓子好きなのは機密事項だぞ。いいな?後、お前も食べろ」
私は察した。3時に呼ばれた理由を‥‥
それで私もお茶と一緒にいただきながら強面に似つかわしいほどの笑顔で饅頭を食べる大将を眺めているとようやく本題に入りました。
「さて雪村君、私に呼ばれた事に驚いているね?」
「ええ、まぁ‥‥」
それを通り越しておやつタイムに驚いてます。
「では話の前に君に辞令を伝えよう」
大将は後ろに控えていた側近を促し、その側近は命令書を読み上げる。
「雪村 美琴大佐、貴官を今の部署から大将直属にする。配属後、貴官に特別な任務を与える。」
側近は読み上げるとその命令書を私に渡す
「えええ?!わ、私が閣下の直属?」
「つまりお前は私の同僚になる」
この人の同僚に?つまりお茶汲みとかするの?
「君には私の直属の部下になってもらってある案件に関する任務に就いてもらいたい」
「ここから先は話は機密事項。心して聞け」
側近が部屋のカーテンを閉め切りスクリーンを写し始めた。そこに写し出されるのは日本をはじめとする周辺の地図だ。
大将によると、深海棲艦との終戦が叶ったが同時にこれまで日本を潤していた海底開発が禁止になったためシーレーンの再構築と深海棲艦との取引が課題となってきたのだ。
シーレーンは深海棲艦によってズタズタにされてしまっていて再構築には時間がかかるらしく、更に深海棲艦と約定を交わしたとは言えまだ安心ができないらしいです。
と言うのも、深海棲艦の組織図について私達はよくは知らないけど深海棲艦は群体ごとに独立しておりそれらを姫クラスが統括しており、更にその上に中枢棲姫と呼ばれる存在が君臨しています。
そして、群体は2つの管轄に別れていて、一つは中枢棲姫の太平洋の勢力、もう一つはNo.2の欧州棲姫が総司令の大西洋の勢力です。
その内日本が和睦したのが太平洋の勢力です。
しかし、はぐれやこれらの勢力に所属していない、その深海棲艦上層の決定に不服の群体が今だに暴れているのです。
「そこでだ、それらの群体と交渉して航海の安全権を獲得する事と出来れば深海棲艦との通商を取り付けたいのだ。」
なるほど、独立系の群体との個別和平交渉ですか‥‥
確かにシーレーンを守る為にも彼らに安全を保証してもらうのは重要だ。しかも艦娘達とよく交流する身からすれば彼女達の負担が減るのは良いことだと思う。
それにシーレーンの再構築に時間がかかるならその間の資源の確保先も必要。
日本の安全保障と経済復興の為には必要不可欠だ。
そして、そんな話を私に聞かせたのは‥‥
「その交渉を君に任せたい」
「はい?!」
案の定私の任務とはその交渉をしろとの事です。
「お、御言葉ですか閣下!なぜ私なのですか?この手の案件なら外務省や財務省あたりが適任だと‥‥」
それに資源の取引等々経済に直結する事は私みたいな素人ではなくそれこそ専門家や企業なども交えた方が良いのでは?
「これが国家間であればそうした。だが相手は深海棲艦、そもそも外交ルート、つまりツテがない。それに財務や経済界の奴等だと話が拗れかねない。」
閣下いわく、
外務省では深海棲艦と交渉しようにもそもそも外交ルートが存在しないためお手上げで、経済界だと利益ばかり求めてしまい深海棲艦と話が揉めて交渉が決裂する危険があるらしい。
深海棲艦との価値観の違いを意識せずただの商談と考える経済人では通商どころか安全保障すら危ういのだ。既にそれが原因で群体の怒りを買って再び攻撃を受けている国もある。
「まぁ、そもそもアイツらは怖がって話にならんがね」
「それなら鎮守府に任せるのは?」
そもそも深海棲艦との約定を結べたのは彼らの功績であり、彼らは深海棲艦とは色々なは意味で対等な存在な為交渉しやすいはずです。
「ただでさえ彼らには負担をかけてるのだ。これ以上仕事を作る訳にはいかん。それに外務省の奴等が言ってたぞ、あの後の和平交渉はお前のおかげで話が進められってな。感謝してたぞ?」
あの時ですか‥‥
あの会談の時、外務省の官僚達みんなガッチガチで話すどころではなかったので少し賑やかしてみただけなのだけど‥‥
「それにお前は深海棲艦との共生経験もあって誰よりも奴等に精通してるし人脈もあるそうじゃあないか。お前程の適任はいないし、それほどの人材を遊ばせておく理由もない」
「じ、人脈と言われましても‥‥ただ、あの会談の時とかに少し話して仲良くなったぐらいですし‥‥」
「それが凄いと言っているのだ。」
「日本の為に是非、やりたまえ」
閣下と側近の目が本気です。これは逃げ道はなさそう。
「分かりました。その任、慎んでお受けします!」
「やってくれるか。それでは‥‥」
閣下は側近に合図すると私は彼から2つ渡されました。
通信機のような物とカードです。
「それでは任務についてだが‥‥、基本的には君に全て任せる」
「えっ?」
「君には自由に動いてもらって君の采配で各地の群体と交渉して来て欲しい。」
それはいくらなんでもアバウト過ぎるのでは?
「期間は?」
「期間は特に設けない。私が良いと言うまでだ。後、交渉する群体についても君に任せる」
丸投げじゃあないですか?!
「そ、それは‥‥ええっと‥‥」
「君の判断で交渉する群体を選び、結ぶ約定の内容も大体は君が決めても良い、ただし、安全保障だけは必ず獲得しろ。」
それって日本の命運を背負うようで恐いのですが‥‥
「その通信機は私のこの端末にだけ繋がる。逐一連絡さえくれるのであればどこでどのように行動しようと構わない。たまに指示は出すがね。」
「それだとしばらくずっと任務って事ですけど休暇は?」
「何の為に長期休暇を与えたと?」
あの休暇にはそんな意味があったとは‥‥
まさか知らず知らずの内に逃げ道が塞がれてたなんて。
「費用は‥‥」
「費用はそのカードがあれば問題ない。」
仕組みはよくわかりませんがこのカードがあれば軍で全て費用を支払ってくれるみたいです。
ん?待てよ‥‥
よくよく考えればこれはチャンスかもしれない!
任務で海外に出る事が出来て、自由行動が認められてるからどこにでも行ける。さらに費用は軍が出してくれる。
そして、これはちゃんとした任務。
これならば"あの人"の協力も得られるからこれで情報と安全の問題もクリア。
つまり‥‥
ソラとマシロを探しに行ける!!
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大将からの任務を引き受けた私はその後必要な手続きと説明を受け、さらに必要かもしれないと極秘にされている終戦の切っ掛けとなった"最終決戦"について聞かされた。
なんやかんややっていると時間はかなり過ぎて夜の8時となっていた。私は急いで帰る事にする。
「ただいま今帰ったよ。カナ?」
マンションに帰り着くがカナからの応答がない。私は心配になり急いで上がり部屋のドアを開けると、
「スン スン」
カナが私の代えの軍服の匂いを嗅いでいました。
私が帰ってきたらのにようやく気が付いたカナは私を見るとびっくりして慌て始める。
「ち、違うの!」
「何が?」
これは‥‥、今日の私に対するご褒美か何かでしょうか?
「それはそうとカナ。やったよ!二人を探しに行けるよ!」
「へぇ?」
感想、質問、アドバイス等々御待ちしております♪