FAIRY TAIL【十代目レイヴマスター】 作:神爪 勇人
「・・・・・・ここがガラージュ島か」
無人島といっても差し支えない寂れた島に小舟でやってきたのは一人の男。
マフィア然としたノーネクタイのダークスーツに、どことなくハートを思わせる黒いヘアバンドを額に巻いた男が、船から降りて砂浜に降り立った。
「・・・・・・本当にここにあるのか? 伝説の剣ってやつが」
「あ、それ俺がもらったぞ」
「あん?」
そんな男に、俺はにこやかに手を振りながら海岸に戻ってきた。
この島に来る途中で俺のイカダが大破しちまったからな、乗っけて貰おうと思ったのだ。
「なんだぁ、何でガキがこんなところにいやがる?」
「それ言っちゃったらアンタも何でこんな寂れたところにいんだよ?」
「質問に質問で返してんじゃねぇぞ」
ごもっともで。
男は俺が背負った背中の剣に目を向けた。
「おいガキぃ、その背中の剣を寄こせ」
「は? 嫌に決まってんだろ」
「死にたくねぇなら渡せ。渡すきがねぇなら、力づくで貰っていってもいいんだぜ」
「・・・・・・渡したら渡したらマグ婆に殺されかねねーんだよなぁ・・・・・・・・・・・・」
見つけることが試験だから、一応もうクリアしたことにはなるんだろうが、これで何か怪しいやつに試験に使われた伝説の剣を上げたとか言ったら・・・・・・うん、間違いないく殺されるだろう。
何も言われてないけど確信がある!
「俺はまだ・・・死にたくねぇんだッ‼」
「・・・・・・何でこのガキこんなに必死なんだ?」
お前は知らない・・・・・・理不尽なババアの存在を!
「力づくだっけ? 返り討ちにしてやるよ!」
「フン・・・ガキがぁ・・・・・・粋がってんじゃねぇぞ。俺はあの『
「・・・・・・グリモアハート? 知らねぇ」
「まぁ、ガキには難しい話だったか」
この男は、俺を未だにただのガキだと思っている。
魔導士である可能性は頭にないようだ。
「なら先手必勝!」
「来いガキぃ‼」
一息に距離を詰め、拳を振りかぶる。
背負っているこの剣は子供の俺にはデカすぎて振り回しにくい。
使い慣れていないモノを使うより、慣れた技を使う。
「――――――天竜虎博ッ‼‼」
【滅竜魔法】。
身体を竜へと変質させて竜の力を振るう、対竜迎撃用の魔法。
その必殺の拳が男の顎に突き刺さる。
だが、
「いってえぇぇっ!?」
拳の急な痛みに、思わず距離を取る。
何だ? 以前殴ったゴーレムとは違う、なんか鉄をぶん殴ったみたいな・・・・・・。
「くくく・・・・・・驚いたか?」
見ると、男の身体が鉄色に変化し、光沢のある色合いになったいた。
「これが俺の魔法【
岩をも砕く俺の拳が、逆に砕けそうになった。
一応【滅竜魔法】で身体に竜の力を付与してるはずなんだが。
しかしどうするか・・・・・・こんだけ硬いと、仮に
「――――――って、一応これがあったか!」
俺は大きすぎるが故に、背中に横向けで背負っている大剣【
このTCMとやら、俺が子供であることを差し引いてもクッソ重い!
ボムやババアに鍛えられてなかったら持ち上げることも出来なかっただろう。
剣の重さに身体を引っ張られてたたらを踏むが、何とか持ちこたえて構える。
「伝説の剣っつっても時代遅れの骨董品だろ。そんな鈍らで鉄を斬ろうってのか?」
「・・・・・・やってみなきゃわかんねーだろ」
剣を見て嗤うスーツ野郎にカチンとくるが・・・・・・実際どうなんだろうか。
この剣はなんか大昔にあった戦争時代に作られた剣らしく、何百年も昔の武器だ。
その上、いつからなのかは分からないがこの島に吹きさらしの状態で放置されていた。
潮風に晒されているんだ。観た感じ錆び付いてはいないが、傷んでいる可能性は否定できない。
「うおおおぉぉぉぉぉらああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼‼‼」
気合を入れた掛け声と共に駆け出し、大剣を一閃。
重さに引っ張られるように繰り出された剣戟を、男はその鉄と化した腕で薙ぐ。
ガキンッ‼という重い金属音を奏で。火花を散らしながら剣が俺の身体ごと弾かれた。
「ぐっ!?」
「ははっ、やっぱ鈍らだなぁっ‼‼」
揺れる身体の体勢を整え、再び剣を構える。
何度やっても無駄と言わんばかりに、男は肩を竦めて見せた。
(仮にも伝説の剣だろ! もっとなんかこう・・・ガーッ‼とした感じになんねーの!?)
伝説の剣という誇大広告に思わず舌打ちしそうになるが、この剣に差し込んだ
「もう一度!」
「何度やっても無駄だっての‼」
駆け出す俺に、男は今度は殴ってくるつもりなのか拳を振り上げた。
だが、隙だらけだ。
繰り出された拳を身体を回し横に避けて、俺は避けた勢いをつけたまま剣を振りぬく。
そして――――――
――――――ドッッッガアァァァッ‼‼‼
爆発。
轟音と爆炎と衝撃が男を襲い、悲鳴を上げることも出来ずに男は吹っ飛ばされた。
「やっぱ爆発したな」
「ってか、剣の形変わってるし」
鉄の剣って感じの大剣から、今はやや刀身が細くなった橙色の剣に姿が変化していた。
って事は、10個も能力がある魔法剣なのか?
「あ、剣が戻った」
この最初の姿が10個の姿に含まれるのかどうかは分からないが、10もの魔法剣が一つで使えると考えれば、成程『伝説の剣』ってのも頷ける。
何でか俺が持ってる『
あんま詳しい話は知らないが、これらは繋がっていてなんか運命めいたものを感じるな。
「・・・・・・っつっても、これからどうするか」
ぶっ飛ばした男は取り合えず放置でいいとして、思った以上に早く目的を達成してしまって、これからの行動に悩む。
これで卒業試験クリアってことは、俺はプロ魔導士として認められたってことだ。
プロ魔導士何て資格がある訳じゃなく、あくまでババアが外界でも魔導士としてやっていけるだろうっていう身内の認定証みたいなもんだが――――――
「――――――なんだ、もう見つけちまったのか?」
「ん?」
不意に海の方から声が聞こえてきた。
さっきの男ではない。
この砂浜に、全く見知らぬ男が急に現れたのだ。
「マスターからの依頼だったんだが・・・・・・優秀だな。もうクエストを達成しちまうとは」
「あーと・・・・・・アンタは?」
オールバックの髪に、黒いローブ。
無精髭を生やした怪しげな中年に怪訝な目を向ける。
男は気の良さそうな笑みを浮かべて俺の問いに答えた。
「俺はギルダーツ。『