FAIRY TAIL【十代目レイヴマスター】 作:神爪 勇人
X770年
バーバラの『デビルマ全書』盗難事件から約1年。
7歳になった俺は今、一つの試練を受けていた。
「分かってるな、シルバ?」
いつもの修行場、森の奥深く。
そこで俺は、ずんぐりむっくりとしたチビ竜——————ボム・センテンスと対峙していた。
「今日で総仕上げだってんだろ?」
「そうだ。今日の摸擬戦で、お前もエレナもプロ魔導士に成る資格があるかどうかが決まる」
「決まらなかったら?」
「また一年は修行してもらう事になるな」
「汗水塗れの一年がまた始まる訳か」
流石にそろそろ卒業したいものだ。
毎日毎日修行修行、別に修行が嫌いなわけじゃねぇけど、いつも森の中というのは退屈だ。
娯楽と言えば釣りに組手、後は偶にマグ婆さんが行商人から買ってくる本くらい。
俺も街に行ってみたりしたいが、修行を終えてある程度モノになるまではダメとの事。
今日こそは合格の判定を勝ち取ってやるのだ。
因みにどうでもいい事なのだが、俺の試験相手がボムである以上、エレナの相手は必然的にマグ婆さんとなる。
同情なんてしない、だってエレナだし。
「んじゃ、いくぜっ‼」
「来いッ‼」
そして、オレとボムの戦いが始まった。
◆◆◆
【滅竜魔法】。
それが俺の魔法だ。
【滅竜魔法】とは、竜迎撃用の
簡単に言ってしまえば自分の身体を竜のモノへと変えて、竜の力を振るう魔法。
俺がボムから教わった【滅竜魔法】は、かつて存在した
聞けば【滅竜魔法】の様なスレイヤー系の魔法は属性を吸収する力が付随するそうだ。
例えば【火の滅竜魔法】なら火を、【雷の滅竜魔法】なら雷を吸収する。
だが、俺の【滅竜魔法】にはそういった吸収は出来ないそうだ。
その代わりなのかは知らないが、火や雷と言った大体の属性に対して高い抵抗力を持つのだとか。
故に、ボムの吐く
魔法の効果で身体能力が高く上昇しており、高い耐性を頼りに近接戦を主体に戦うのが俺のスタイル。
ボムの放つ魔法の風、氷、炎、雷を強引に突っ切り、その面に拳を叩きこむ。
「【
◆◆◆
「――――――・・・・・・まぁ、とりあえず認めてやろうじゃないか」
ボロボロになった状態で地面に転がる俺とエレナに、マグ婆が判決を下した。
あれから半日続いた試験もどうにか乗り切ることが出来、俺達は認めてもらうことが出来たようだ。
「じゃ、じゃあ、あたし達・・・・・・」
「一人前のプロ魔導士に・・・・・・?」
「うむ」
頷くマグ婆。
顔を見合わせる俺とエレナ。
一人前と認められたという事は、これからは本格的に魔導士として活動出来るという事。
もうこんな森の奥底で生活する必要はない。
俺とエレナは喜びの勝鬨を上げようと――――――
「次で卒業試験としようじゃないか」
「「これで終わりじゃないの(かよ)!?」」
――――――出来なかった。
俺とエレナの悲痛の叫びが森に木霊する。
「ちょっと待ってよ! さっきのが卒業試験じゃなかったの!?」
「おいボム‼」
「いや、総仕上げって言っただけで別に卒業試験とは言ってねぇよ」
「詐欺だッ‼」
ギャーギャー叫ぶ俺とエレナ。
マグ婆はそんな俺達を一睨みし、持っている杖をコツンと地に突いた。
「文句あっかい?」
「「文句しかねぇよッ‼‼」」
「まぁ、そう言うな。次が本当に卒業試験だ」
煙草を吹かすボムに歯噛みする。
マジに次で最後だと思いたいところだ。
マグ婆は「コホン」と咳払いして空気を整え、試験内容を話し始めた。
「卒業試験は2人別々に行ってもらう。まずエレナ」
「む」
「お前への卒業試験は・・・・・・『タルナ全書』の探索じゃ」
「『タルナ全書』?」
「読破するだけで風の究極魔法【花翠風月】を修得出来る魔術書じゃ。【花翠風月】というのは古代禁呪と呼ばれておる魔法の一つで、竜巻を自在に操れるなんじゃ」
「ふーん・・・・・・その『タルナ全書』を見つけたら読んでもいいの?」
「ああ、構わぬ」
「で、どこにあるの?」
「それを見つけ出すのがお前への卒業試験じゃ」
「ドケチッ!」
「・・・・・・お前、試験の意味分かってんのか?」
マグ婆に憤慨するエレナに、ボムは呆れるようにツッコんだ。
無駄だぜボム、コイツにまともな知能なんて求めるのは。
「そしてシルバ」
「おう」
「お前への卒業試験は・・・・・・『
「テン・・・・・・なんて?」
「『
「勇者の剣ねぇ」
何となく胡散臭い感じだが。
「まぁ、いいや。それを見つけたら俺も使っていいのか?」
「構わぬ」
魔導士目指しといて、手に入れようとするのが勇者の剣か。
何か色々とオカシイ気がしないでもないが、まぁこれも一人前になる為だ。
「勇者の剣か・・・・・・ま、頑張って見つけてみっかね」
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