とある魔術の禁書目録―幻想虚空庭園―   作:巣猫

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幻想殺しの少年と炎殺王

 気が付くと、上条は見覚えのない街に立っていた。

 

 学園都市で見慣れた高層ビルが並び立ち、コンクリートで整地された道が太陽の直射日光によって熱を帯びている。

 

 今はお昼頃なのか、スーツを身に纏った大人達が外を出歩いている。

 

 ここまでは記憶を失い、学生の街で暮らしてきた上条でもまだ理解の出来る範疇だった。

 

 本題はここからである。

 

 路上を歩いているのはスーツを着た大人達だけではない。どういう心境で着ているのか定かではないド派手なアメコミ風衣装を身に纏った大人達が街中を平然と歩いているのだ。

 

 しかも、その衣装を身にしている人達を見つけると、他の人々は嬉しそうに手を振っていたり、握手やサインを求めていたりもするのが不思議である。

 

「(また、厄介な事件に巻き込まれたのか?・・・・・俺?)」

 

 落ち着け、上条当麻。

 ここはクールだクール。

 まさかとは思うが、目が覚めたら知りもしない別の場所にいましたなんて、そんなベタな展開が現実のどこにあるというんだね、ハハハハハハハ‼

 

 そう、これは夢。上条が日々の不幸に疲れて見ている夢なのだ。

 その証拠に上条にいつもなんだかんだ言ってくっついてくるインデックスやオティヌスがいないではないか。

 夢の割には感覚の受け取り方がリアルに近かったり、店から街中に漂う強烈に食をそそる匂いが香ってきたりするが、これも夢である。

 過去に土御門によって、イギリスに向かわせるため催眠ガスで眠らされ気が付いたら空港にいたことや、男子禁制の学舎の園に移送されてたことがあったが、決して今回は魔術だとか超能力だとかそんな物騒な事件には巻き込まれてはいない夢なのだ・・・・・・・・・・・・・・多分。

 

 

 

「そんなわけあるかッッッッ‼ 絶対これ現実だよぉ‼ なんなんだよぉ‼ 私が何したって言うんだよぉ‼」

 

 

 

 街中でいきなり叫んだせいか、周りの見る目が少々痛いが今はそんなことを気にしている場合ではない。

 夢ではないと分かった上条は、今度は状況を冷静に分析していく。

 

 まず、ここはどこだ?

 

 辺りを見回すと、やはり先程と似たような光景が延々とあるばかりだ。

 

「きゃあああああああああああ‼」

 

 上条がどうしたものかと頭を悩ませている時だった。

 女性の悲鳴が唐突に上がり、何事かと思い悲鳴のした方へ顔を向けた。

 

「俺様はヒーロー殺しステインの意思を受け継ぐ者の一人、炎殺王スルトだ‼ 覚えておけヒーロー共‼」

 

 そいつは随分と図体のでかい男だった。

 先程のアメコミ風ヒーローの衣装も中々斬新だったが、このスルトと名乗った男の服装も大概で、首には擦り切れすぎてる上に薄汚れた赤いマフラーを巻き付け、黒のライダースーツの袖を根元から切り落としたような恰好に、靴は前面に陸上競技用のトレーニングシュ―ズのグリップのようなものをつけて真っ黒に染めたものを着用している。

 

 しかし、その派手で周りから馬鹿にされそうな恰好をしたスルトを笑う者は誰もいない。

 その理由は彼の足元にあった。

 

 彼の足元には血の海が広がっており、その中心点はアメコミ風ヒーローの衣装を身に纏った男が伏していたのだ。

 

「ひ、ヒーローがやられたぞ‼ だ、誰か他のヒーローを呼んでくれ‼」

 

 誰かがそう叫んだように聞こえた。

 しかし、その時点で上条は前に駆け出していた。

 

 ここがどこだか知らないなければ、あそこで倒れている人が何者なのかも知らない。

 

 ここから先へ進めばスルトが妨害をしてくるだろうし、もしかしたら殺しにかかってくるかもしれない。

 

 しかし、そんなことどうだっていい‼

 

 いま、目の前で死にそうなあの人を助ける‼

 

 いまはそれだけ頭に入れればいい‼

 

「そこをどけ‼」

 

 上条は短くスルトに告げる。

 

「ガキは引っ込んでろ。さもなくばお前も制裁対象に入るぞ?」

 

「ごちゃごちゃとうるせぇんだよ‼そこをどけ‼」

 

 短い掛け合いながらも互いに譲らないことを確認した両者は、各々の信念に準じて行動を開始する。

 

 スルトは素早く右手を天高くまで掲げ、一刀するかの如く振り降ろす。

 

 その動作を見た上条は何かあるとみて、右手を振り下ろす瞬間、軌道を変えられないギリギリのタイミングで真横に跳んだ。

 上条が真横に跳ぶと、上条がいた直線軌道上に莫大な炎が生まれる。

 炎は刹那的に燃え上がるが、燃やす対象がいないために直ぐに消える。

 

「ほう?やるなガキ」

 

 スルトは上条を見ると、獲物を見つけた上位捕食者の如くニヤリとニヒルな笑みを浮かべる。

 

(今のは、魔術・・・・・・なのか?それとも天然物の超能力?)

 

 対して上条はスルトを見据えながら困惑していた。

 

 上条の知る中で異能力は科学サイドの超能力と魔術サイドの魔術の二つしかない。

 

 だから、異能力を使えばそのどちらか法則を用いていることになるのだが、目の前に立つスルトは学園都市の超能力にも魔術師の使う魔術にも傾倒していないようにみえる。

 

(いや、今はとにかくあの人を助けないとマズイ‼)

 

 幾度となく戦闘をこなしてきた上条にはわかる。

 

 いま目の前で倒れてる人の出血量は本当に危ない。

 

 今すぐにでも病院で治療しないと死ぬ‼

 

 上条は再び駆け出す。

 

 よくわからないが、スルトが出している炎がもし仮に異能の力だったならば、上条の持つ右手が有効かもしれない。

 

 可能性にかけて上条は、今度こそ躱されないようにと真横に右手を一線するスルトに合わせて、異能の力ならば全て無力化できる右手を前に構える。

 

 ゴォォォォォォォォォォ‼と炎が出現し、上条当麻を覆う。




上条さんの幻想殺しは個性に通じるのか?
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