とある魔術の禁書目録―幻想虚空庭園―   作:巣猫

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ヒーローとは

 バキンとガラスが砕けるような音がした。

 炎殺王スルトの生み出した炎に上条の幻想殺しが反応したのだ。

 

「なッ!?」

 

 炎を消されたことに驚いたスルトは、驚きのあまりしばらく目を見開いて硬直していた。

 その間に上条は一気に敵との距離を詰め、自滅を恐れて炎を出せないであろう懐まで潜り込む。

 そして、幻想殺しの宿る右の拳を握り締めてスルトの顔面に思いきり殴りかかる。

 

「ッ‼‼⁉」

 

 しかし、上条の拳に反応して硬直から立ち直ったスルトは、華麗にそれを回避しおまけとばかりにガードが空いている腹部にカウンターを食らわす。

 ゴフゥ!?という空気を吐き出す音と共に一歩後退する上条。スルトは笑みを消し、容赦なく追撃を繰り出す。

 

(コイツ!! 能力はそれほどじゃねぇ!! けど、それ以外の戦闘能力が高い!!)

 

 炎を使った異能力主体の戦闘よりも、物理的な戦闘能力が高いことに焦りを覚えながら、上条はスルトの猛攻をもろに受ける。

 上条が拳を突き出せばそれを往なして手首を掴み、引き寄せて顔面に一発入れ、一歩後退したところに内蔵をグリップの付いた靴で容赦なく蹴り上げ、下に意識が向いたら今度は首に強烈なチョップを繰り出す。

 急所に攻撃を当てることを容赦しないスルトに上条は苦戦を強いられていた。

 

「聞いたことがある。確かヒーローの中に個性を発動させないヒーローがいるらしいとな。よくわからんが、貴様の個性もそれに似たものなのだろう?」

 

 スルトがつまらなそうに話している間も、猛攻は止まらない。

 前兆の感知によって幾らか攻撃をガード出来つつあるものの、ガードを越えて衝撃が上条に徐々にダメージを与える。

 

「弱いくせによくも俺の前に出られたものだ。お前もステインのことは知っているだろう?

 力のないただの正義感で俺の前に出れば殺されることくらい分かっていただろうに。お前はバカか?」

 

「・・・・・・・知らねぇよ‼」

 

「なに?」

 

「知らねぇって言ってんだろうが‼ テメェの言うすてなんちゃらが何をしたのか知らねぇ‼ 俺はこの場所がどこで何があったのかなんて知らねぇ‼

 けどな、スルト‼ 何も知らねぇが、テメェの言い分を聞く限りじゃ弱い奴は助けちゃいけないみたいじゃねぇか‼」

 

「何を言う? 当たり前だろう、そんなことは」

 

 平然とそう答えるスルト。

 それに上条は食ってかかる。

 

「人を助けるってことはな、それだけで勇気がいるんだよ‼

 自分のこと、家族のこと、友達のこと、近所の人のこと、そういう身近で大切な日常を投げ打って非日常に身を投じるんだ‼ 自分が弱いとか、力があるないとかで動くんじゃない‼ どうしても助けたいから動くんだよ‼」

 

「ならば、なおのこと弱い奴は動かぬべきだ。自らが弱ければ助けたい者も助けられない」

 

「それがふざけんなって言ってんだよ‼ わかんねぇのか‼

 自分が動かなかったら誰かが助けてくれんのかよ‼

 さっき言ってたヒーローとかいうのを待ってたら、それで全部丸く収まるのかよ‼

 違うだろ‼ 少なくとも今のこの状況でそれはねぇだろ‼

 あそこで倒れてる人は今すぐにでも治療しなきゃ危ない‼

 周りにヒーローとやらもいなければ、それを待ってる暇もない‼

 なら、動くしかねぇだろ‼ 動いて少しでも助けられる可能性を高めるんだよ‼」

 

「だが、貴様は弱い。その特殊な個性を使っても俺に歯も立たなければ救い出すことすら出来てはいない」

 

「本当にそうか?」

 

 体中をボロボロにしながら上条はスルトを見据える。

 その目は純粋な怒りに包まれていた。他者を想い、助けたいという純粋な想いとそれを馬鹿にするスルトを決して許しはしないという英雄の素質を持った怒りだった。

 スルトはその言葉が気にかかり、視線を上条から外し粛清したヒーローを見やる。

 

「いない・・・・・・だと⁉」

 

 驚いたように目を見開くスルト。

 

「どういうことだ⁉ 奴は動けない筈だ‼ なぜいない‼」

 

「どうもこうもねぇよ。俺以外の誰かがあの人をこっそりどこかに運んだんだろ?」

 

 さも当たり前のように上条は言う。

 

「理解出来んな。力のない正義で立ち向かえばどうなるかくらい分かっている筈だが・・・・・・」

 

「お前そればっかりだな。確か誰かの意思を継いだって言ってたか?テメェ、もしかしてそいつの主張にただ乗っかってるだけで自分でもよく理解しないまま行動に移してんじゃねぇのか?」

 

 スルトの眉がピクリと動く。

 

「力があるヒーローってのは理想かもしれねぇ。けどな、救い方は多種多様なんだよ。

 圧倒的な力で敵を屈服させたり、対話によって敵すらも救い出したり、徒党を組んで救出したり、色々あんだろ?」

 

「確かにな。だが、ヒーローとは本来、圧倒的自己犠牲の上に成り立つものだ。

 それをあろうことか職業にし、地位と名誉を手に入れる始末。

 それならば警察や軍隊で事足りる。おかしいだろう、そんなのは?」

 

「つまり、お前はこう言いたいわけだな? ヒーローは本来職業にするべきものじゃねぇからそれを撤廃しろと。

 そして弱い奴はヒーローじゃねぇから今すぐ辞めるか粛清されろってことかよ」

 

「そうだ」

 

 上条は更に怒りを強くする。

 この男は自分の理想と現実が合わないからといって、身を粉にして救う人達を切り捨てる最低な野郎だ。

 救うことが当たり前で力が無ければヒーローではない。思想としては理解出来なくはないが、実際に多くの人達を助けている者にそれを口にするなど傲慢でしかない。

 

「お前は一体何様のつもりだ⁉」

 

「俺はヒーローとしての資質を見極め、選別するステインの意思を受け継いだ者、炎殺王スルトだ」

 

「くっだらねぇ‼ テメェのその幼稚で人様に迷惑を掛けるくだらねぇ幻想を俺がぶち殺す‼」

 

 上条がそう叫ぶと、唐突にズドン‼という頭上からの物凄い衝撃がスルトを襲った。




スルトを襲った衝撃の正体は誰か?

なるべく両方の原作をリスペクトするつもりでいますが、今回のようにキャラ同士が互いの主張を否定する話なんかも書いていくので不快に思った方はすみません。

これからもよろしくお願いします‼
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