転生したらクレイジーな道化師だった件について 作:バルボロスの髭
時系列はアルトリアが王になった後です。
※転生の意味なくね?という感想でのご指摘により一部修正しました。
数多の魔物がブリテンの地を支配せんと歩を進めていた。
それらを率いるのはマーリンに殺された筈のドルマゲス。
「この私の力をとくと思い知るといい。ヒャーッヒャヒャヒャヒャh」
「うるせぇ!」
調子に乗って高笑いを決め込むドルマゲスにキレる幹部魔物の一人。まぁ、実際あの高笑いを間近でやられると鬱陶しいからしょうがない。
「あ、ハイ」
そこにはクレイジーな道化師の姿はなく、部下にキレられてへこむ情けないおっさんの姿だった。
~ここまでの経緯に至る数時間前~
「あのクズめ……よくもこの私を殺してくれたな」
(それは貴様がこれいけるんじゃね?とかフラグを建てるからだ。)
あれからドルマゲスはマーリンに殺された後、ラプソーンに蘇生したもらった。
生き返って早々マーリンに対してクズと宣っているが、自分もクズだということは触れないでおこう。
おまいうとかブーメラン乙とか言ってはいけない。
「だが、今のままでは勝てないのも事実…」
そう、これまでたくさんの魔法を使用したことにより、ドルマゲスの魔力は枯渇寸前に陥っていた。
それに加えて、ラプソーン自身も魔力が不足していた。
何せここまで、ラプソーンはドルマゲスに特訓を施した際に、100回以上死亡した彼の蘇生、魔物の召喚を行い、戦闘でも多大な貢献をしてきた。
当然その分だけ魔力は消費され、ラプソーン自身も、メラゾーマ3発分しか撃てない程には魔力が枯渇していた。
「何にせよまずは力を蓄えねば……」
これに対して2人はどこか安全な場所を見つけてそこに引きこもり、そこで魔力を回復するという手段を取った。
そこから暫く時は経ち、結果的には魔力は回復したものの、完全には回復しなかった。
しかも、かなりの時間彼らは引きこもっていたため、身体が鈍っていた。
彼がまず取った行動は瀕死の人間と数多の死体を収集することだった。
瀕死の人間を、自分の手中に納めるためにドルマゲスは数多の戦場の跡地を巡り、重傷を負っている人間の傷を治した。
中には死体も沢山あり、ドルマゲスは適当にそれらも回収し、蘇生した。
彼らに恩を感じさせて、自分の手駒にするために。
そして、彼らはドルマゲスによって魔物に変えられた。
そこにもはや人間としての自我はなく、あるのは魔物の性だけだった。
あるものはゾンビ系の魔物に、あるものは魔獣系の魔物に変えられた。
~回想終了~
手駒が十分に揃ったドルマゲスはマーリンに復讐するために数多の魔物を引き連れてブリテンに侵攻した。
「フフフ…早く彼の断末魔を聞きたいですねぇ…」
~sideoutドルマゲス~
「では、今日の会議はここまでとしましょう。」
「では、今日の議題は粗方片付きましたが、各自何か発言はありませんか?」
そう言うのは荘厳な鎧で身を包み、聖剣エクスカリバーを帯刀している金髪の女性、アルトリア・ペンドラゴンである。
彼女はウーサー王の次のブリテンの王として即位していた。
そんな彼女は円卓の騎士と呼ばれるメンバーと会議をしており、発言の有無を確認するために辺りを見回した。
そこにいるのは厳格な雰囲気を漂わせる強面なおっさんであるアグラヴェイン、糸目でハープを奏でるよくわかんない人であるトリスタン、人妻厨のランスr「誰が人妻厨だ!」等の円卓のメンバーが揃っている。
「ランスロット卿?どうしましたか?」
「申し訳ありません、王よ。取り乱してしまいました」
そんなギャグパートも束の間、部屋に部下の一人が駆け込んでくる。
「報告します!ブリテンに向けて数万の魔物が攻め込んできています!」
「何だと!?」
思わずそう溢したランスロット。
「具体的な状況は?」
冷静に状況を聞くアルトリア。それに対して部下が答える。
「空と陸から多数の魔物が襲来しており、中にはドラゴンのようなものもいます。」
当然この報告を聞いた円卓のメンバーは騒然とした。
ただださえ多数の空と陸からの魔物の対処をしなければならないのにその上ドラゴンともなると更に人員を割かなければならない。陸はどうにか防げるが、空から来る敵は対抗手段が限られてくる。
思わずため息を吐きそうになる現状を打破するためにアルトリアは思考の渦に入ろうとした時、
「空から来る奴らは僕が対処するよ。」
その声の主はマーリンである。意外な人物の登場に円卓の騎士らは懐疑的な視線を向ける。
「珍しく協力的だなマーリン。いつもなら高みの見物を決め込んでいるお前がどういう風の吹き回しだ?」
アグラヴェインがそう感じるのも無理はない。いつもなら大体見物を決め込む奴が協力すると言ってるのだから。
「協力もするさ。このまま行けばブリテンが滅亡させられるからね。」
マーリンから出た爆弾発言に騒然とする一同。
「どういうことですかマーリン。貴方は何を知ってるのです?」
「千里眼で未来を見たらブリテンが滅ぼされてる未来が見えたからね。それだけではなく、今回の事態を引き起こした黒幕は放っておけば世界を滅ぼす。今回の黒幕はドルマゲス。魔法を使う道化師さ。」
今回の黒幕は魔法を使う。この言葉に驚愕の表情を浮かべる円卓の騎士。
「あり得ない!今の時代に魔法だと?!」
そう言うのは円卓のメンバーの一人であるガウェイン。
「たかだか魔法を使うからって何だよ。んなもん隙を見て術者を斬れば終わりじゃねーか。お前ら何を―」
モードレッドの発言を遮り、マーリンが再び状況を説明する。
「残念ながらそうはいかないんだよね。」
自身の発言が遮られたことによりマーリンに対して強い視線を向けるも本人はそれを流しつつ、説明をする。
「彼に斬擊は効かない。いや、近接攻撃は効かないと言ったほうが正しいかな。それに彼は重力や爆発、炎熱系の魔法を使用する。それに恐らく蘇生魔法も持っている。」
マーリンの説明に会議室に重い空気が漂う。今の話が真実なら剣を主体とする円卓の騎士では不利なのは明らかだからだ。
「黒幕の能力は分かりました。ですが、マーリン何故貴方はそのことを知っているのですか?」
それは当然の疑問だった。返答次第では容赦しないと言わんばかりの殺気を匂わせるアルトリア。
それに対して特に気にすることはなく淡々と答える。
「それは僕が彼と一度戦ったからね。」
「どういうことです?」
「暇潰しに千里眼で辺りを見ていたら魔法を所構わず放つ彼の姿が見えたんだ。僕は彼の対処に向かってそこで戦闘になった。結果から言えば僕が勝ったけれど取り逃がしてしまってね。
当時は心臓をエクスカリバーで貫いたから大丈夫だと思ったんだけれど彼はどうやら何らかの方法で生き延びたようだ。これが僕が彼のことを知ってる理由だ。」
「貴方がドルマゲスのことを知ってる理由は分かりました。でs」
「何だよ?つまりお前のミスで今回のことが起きたんじゃねぇか。」
そう発言するのはモードレッド。
「お前がきっちりあの場で殺しときゃこんなことにはならなかったってことだろ?」
モードレッドはお前のせいだろと言わんばかりにマーリンを睨み付ける。
「辞めなさいモードレッド。彼を責めても事態は変わらない。今はどう対処すべきかを考える時です。文句は後でも言えるでしょう。」
モードレッドを何とか諌めるトリスタン。モードレッド自身もそれがわかっているのか舌打ちしつつも渋々引き下がる。
「分かりました。取り敢えず今は迫り来る数多の魔物を対処する方針で行きます。それでよろしいですね?」
「私とランスロット、ガウェイン、モードレッドは陸から来る敵を、アグラヴェイン、マーリン、トリスタンは空から来る敵を対処してください。ガレス、ケイ、べディヴェールは城の守りをお願いします。」
「「「「「「「「はっ!(了解)」」」」」」」」
「では、各自作戦通りにお願いします。」
今ここにブリテンの存亡をかけた戦いが始まろうとしていた。