駅についてからバスを降り、私たち三人+一人は駅前のデパートへと入店してデュノアさんがご自分のバックから雑誌かなにかを取り出して案内図と見比べることでフロアの確認をした後に、改めてショッピングを始めようとする私たち。
ーーところで・・・・・・
「けっきょく、貴女もついてこられる気なのですか? オルコットさん」
「萌えある所どこにでも、セシリア・オルコットは必ず付いて参りますわ!」
「なんだか、新手の妖怪みたいですね・・・・・・」
ポーズを決めて、ヒーローショーでの正義の味方登場シーンみたいなのを演出しようとしているらしいオルコットさん。
でも、残念。百合同人作家は勧善懲悪ものとの相性は必ずしも良くはないのですよ。
ーー斯くして予定外の人員を迎え入れた私たち四人パーティーは、デパート攻略を開始。七階フロアまで上ってから、その下の六階と五階のレディースフロアにまで足を伸ばしてみるつもりでおります。
「そう言えば今日は、どう言った用向きで駅前にあるデパートまで参られましたの?
察するに、休日を学園指定の制服で過ごされているボーデヴィッヒさんが軍人生活長すぎたことで戦争ボケを煩っており、服とかの日用品すら所持していなかったせいで私服が全裸状態なのは不味すぎると普段着を買いにきた・・・そんなフルメタルでパニくっちゃう系の展開と言う解釈で合っておりますかしら?」
「うん、まぁ・・・だいたい合ってる・・・かな?」
「・・・・・・・・・」
大方の図星を突かれたデュノアさんが意味ありげな目線を私に向けてきたので、プイっとそっぽを向いて私は返答を拒否させてもらいます。“大方で当たっていない部分”に関しての原因は私にあるため反論しづらいし反応も返しづらい厄介なポジションで何かイヤです。
「??? ・・・ああ、なるほど。セレニアさんの場合はタンスの引き出しの中に全く同じ柄と形状をしたパンツがズラリと並べられており、個性も好みもまるで感じられなかったから普通の女の子としての楽しみ方を教えて上げるため、消極的な彼女を無理矢理に外へと連れ出したと」
「・・・綾波レイじゃないんですけどね、私って・・・」
無表情で無感情の女の子キャラと言えば綾波レイと言いたくなる気持ちは解らなくもないですけど、できれば私を該当して考えるのは止めていただけないかなーとも思ったりします。
なぜなら先方は「こう言うとき、どうすればいいのか分からない」「笑えばいいと思うよ」
私の方では「笑えばいいと思うよ」「笑えませんし、そもそも表情筋が差程には動かせないのです」ーーね? 天と地の差があったでしょう?
綾波さんに失礼だと思いますので、お控えいただきたいですよね全くもう。
「違うんですの? では、いったい何故?」
「・・・セレニア曰く、「服は人に見せるために着る物であり、その人に“こういう風だ”と思われたい自分の理想像という物が設定されているのが普通です。
ならば服選びの基準は“見る相手の好み”と“こう見られたい自分の願望”との折り合いが重要なのであって、見られたい自分の意志を押しつけるだけでは目的が果たせません。自分の好みで着る服を選ぶということは、集めて楽しいコレクションを買いにくるのと大差ないのです」ーーだって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ちなみにだけど、「嫌いな服を着せられるのは、セレニアだってイヤだと思うでしょ?」って言う僕の質問には「いえ、別に。着ている自分自身には、今の自分がなに着てるかなんて鏡でも見ない限りわかりませんのでね」ーーって返されちゃったよ・・・」
「セレニアさん、貴女くる場所間違えてますわよ。病院行きましょう、病院。きっと頭使いすぎて疲れてるだけですから、入院すればきっと良くなりますわ」
「ヒドい言われようだな~」
事実ですけどね。これに関しては私も否定できません。完全にこっちの落ち度ですから。
とは言え言い訳ならば無いこともないです。
理由はシンプル。私が元男のTS転生者だから。
たかだかその程度のことでと言ってくる人もいるのでしょうけど、私の場合はやや切実です。
それというのも今の身体が前世のそれと違いすぎる上に、私自身の内面とも似付かわしくない矛盾した外側と中側を有してしまっていることの二つが主たる原因となっているんですよねー。
多くの人たちが見るところ、私の外見に対する評価は総じて『大人しそうなお嬢様』と言う、中身からは想像も付かないアベコベな代物。
見た目にあわせて演じれば、素を出したときに騙していたと罵られるでしょう。
中身にあわせて普段から自分を隠さずに生きていたならば、素が今の状態になってくれているから楽です。
なので人に見せる際には相手にも見えている外側を、求められている物に合うよう微力を尽くすのみ。男としての記憶を残している私がどう思い、どう感じるかなど、気にするゆとりは一寸足りとも存在しません。
なので彼女たちの言い分と主張は全面的に正しくて、非の打ち所がない。だからこそ黙り込んだままの私を彼女たちは、少しだけ気味悪そうにしながら歩んでおられました。
そんなこんなで服売場『サード・サーフィス』までやってきました。
・・・ぱさり・・・
「ブロンドにプラチナ・・・・・・?」
「それも二人ずつ・・・・・・」
「お人形さんみたい・・・・・・」
・・・はぁ~~~・・・・・・。
昔から母と妹と私の三人で買い物のため遠出したりすると希に発生してきた定番イベントに今更驚く趣味のない私としましては、早いところ復帰して頂いてコーディネートをお願いすることで全部丸投げする気満々なのですけどね。
店内にいたお客さんたちを含む大勢の方々の時がとまった中で、真っ先にフリーズを溶いた店長さんがフラフラした歩調で歩み寄ってくるとーー
「ど、ど、どんな服をお探しでーー」
「わたくしが全て選んで決めさせていただきますので、ご遠慮ください」
「え。いえ、あの、ここ私のお店ーー」
「わたくしが決めさせていただきますので」
「・・・・・・はい・・・」
スゴスゴと帰って行かれました。
イギリス人の裏表ない正直パワーが、凄まじくスゲーです。
「ーーさぁ! そう言うわけで始まりましたわ、セシリア・オルコットによるファッションショー&撮影大会In合法ロリ! 司会及びコーディネート及び審査員はすべてわたくしが勤めさせていただきますわね!
評価選考基準はただ一つ! わたくしから見て好みか否か。ただそれだけですわ!」
・・・そして裏表のない欲望に正直すぎるパワーも凄まじいです。さすがは元七つの海を支配した日の没せざる大英帝国貴族の末裔。世界を支配した人口比率数パーセントの特権階級にいた人たちは言うことも思想も価値観も違いすぎますね。ノブレス・オブリージュ、ヴィクトリア時代の偽善的道徳です。
「さ、それではまずセレニアさんから♪
シスターなプリンセスさんたちの衣装、全種類です! 張り切ってー、どうぞっ!」
・・・・・・少なくとも今日の買い物の趣旨は果たせそうにないことが確定した瞬間でした。
「ふぅーーーー堪能しましたわね」
「セシリアだけがね」
お昼近くまで居座ってファッションショー(なのか何だったのか)を繰り広げた後、写真撮影代にと使用した衣服は全てオルコットさんが支払いを持ってくださいました。カードではなくてキャッシュ一括での購入です。
「・・・そんな大金持ち歩いて危なくないの・・・?」
「わたくしカードはブラックしか持っておりませんので、この程度の額の払いには使えないんですのよ。ですので一定額は常に現金で持ち歩くようにしておりますの」
「・・・・・・」
オルコットさん・・・。家が不況でスパイ活動やらされかけてた友人に、何というカミングアウトを・・・。
「それに何より、いざという時に物を言うのは現金か現物のどちらかのみです。カードなんてインフラが機能しなくなった瞬間にテレホンカードよりも価値のなくなるガラクタに過ぎません。ハイテクに頼りすぎるのは危険なことです」
・・・続いて放たれる金持ちなのに現実主義なリアリストさん。
お金持ちほどハイテクには依存しすぎない世の中です・・・・・・。
「まぁ、それは置いておくとしましても、この後はどういたしましょうか?
買った分は額が額でしたのでお店の方に郵送を依頼して快くお引き受けいただきましたし、手ぶらのスタート地点に戻ってきてしまいました。
なにか他に、狙っていたレアアイテムとかって御座います?」
「セシリア・・・なんでもゲームにたとえるのは止めようよぅ・・・」
今日一日にすら届いていない半日の間にすっかりやつれてしまったデュノアさんは・・・ひとまず置いておくとしまして。
私にとっての優先順位はこのメンツだとボーデヴィッヒさんに偏らざるを得ません。
友達よりも夫よりも可愛い娘のほうが大事なのです。仮とは言え、彼女のお母さんポジションなので。
「ボーデヴィッヒさんは、何か欲しい物ってありますか?」
「ラウラ、プリキ○アシリーズのブルーレイBOXが欲しいです!」
わー♪ 子供の幼さ故の無茶振りだー♪ 即金払いで買えそうな人が目の前にいるから性質悪ーい♪ ・・・金持ちが二つ返事で買い与える前に話題を逸らさなければいけませんね。
「子供の頃から高い物を買い与えているとー・・・」等という、子供に金銭感覚教える手間暇惜しむ親特有の思想は持ち合わせていない私ですけど、それでも額が額です。高額商品をプレゼントする際には値段と両親の所得を勘案した上で送ってあげてください。
あげたい時だけ側にいる人と、四六時中一緒にいる肉親とでは隔たりが存在しますので、後の家族関係に響きかねません。ご注意のほどを。
「で、デュノアさん。ほら、あそこ。あそこの席に座ってらっしゃる女性が今さっき「どうすればいいのよ、まったく・・・」って、つぶやいてらっしゃいましたよ。
何か悩み事がおありのようですし、聞いてきて差し上げたら如何でしょう? 好きですよね、あなた方はそう言うの?」
なんと言っても主人公に惚れるヒロインの一人ですからね! ハーレムラブコメの!
困っている人を見かけたら何はなくとも介入していく、平和的ソレスタル・ビーイング! でも最終的には毎回フリーダム&デストロイ!
それがハーレム系ラノベにおける主人公とヒロインたちと言うものなのさっ!
「ん~・・・、どうしようかなぁ・・・。聞いてあげたいのは山々なんだけどなー・・・」
あ、あれ~? 何故かハーレムラノベのヒロインらしくない反応が・・・。コーラのコップに入った氷、ストローでかき回しちゃってますし、ジャンル違くありませんか? そう言うのは社会派の純愛系でやっていただきたい仕草なのですけれども・・・。
「あら、珍しいですわねシャルロットさんがお節介に消極的になるだなんて。バッドステータスでテンション下がりすぎまして?」
「だからゲームの話は・・・まぁいいや。ーーほら、僕って元スパイで国家に買われた飼い犬身分じゃない? あんまり治外法権のIS学園以外で余計なことしでかすと、身分どころか命すら危うくなる立場になるとなかなかねぇ~。
下手したら、助けるつもりが破滅の巻き添えにしちゃうだけかもしれないって考えちゃうと、以前みたいに好き放題、助け放題とはいかなくなるんだよねぇ」
『・・・・・・・・・・・・』
重たい話リターンズです・・・・・・・・・ラブコメ、カームバーック!
「ふむ。では、わたくしが聞いて参りましょう。この中では一番おこした事件が少ない、模範的な問題児ですので」
模範的な問題児・・・斬新な造語もあったものですね。正しいですけども。
「いいの? セシリア・・・君だって何か起きた際には、地位とか身分とか家族とかに影響しかねない立場にあるんだよ・・・?」
「大丈夫ですわ、シャルロットさん。見たところ先方は事業経営者。昔からお店を営む経営者が思い煩う一番の悩みなんて経営不振か人材不足のどちからと相場が決まっていますもの。
ーーそんな悩みを抱きながら飲食店でグダを巻くことしか出来ない無能に、このわたくしセシリア・オルコットが後れをとるとでもお思いですか? もし仮に何かあったとしても、お金の力で万事解決してご覧に入れます」
「セレニア、君が代わりに行ってきて。夫命令だよ」
「Yes.mam。今すぐにでも」
ちょうど私も行きたくて仕方なくなった瞬間でしたのでスゲーちょうど良かったです。デュノアさんに多謝! 出していい限界速度で彼女の元へダッシュッ!
「と言うわけでね、いきなり二人辞めちゃったのよ。辞めたって言うか、駆け落ちしたんだけどね。はは・・・・・・」
「はぁ」
「ふむ」
「でもね! 今日は超重要な日なのよ! 本社から視察の人間も来るし、だからお願い! あなたたち四人に今日だけアルバイトをしてほしいの!」
上記のやり取りは、困っていた女性ーーメイド喫茶の店長さんーーの話を聞いたデュノアさんとボーデヴィッヒさんが反応を示しているシーンを表現したものです。
お金の話にうるさく言わない、純粋でピュアな心の持ち主なお二方だからこその心温まる反応でしたね。
ーーそして、ここから先は私とオルコットさん。お金の話になるとうるさく言い出す、純粋もピュアも同じ物だろな、ひねくれコンビによる感想です。
「確か非正規雇用の準社員って、辞める二週間前にはその旨を伝えておかないと法的に問題あるんじゃなかったでしたっけ? それこそ相手の住所や電話番号は雇うときの履歴書に書いてあるわけですから損害賠償なりなんなりしてしまった方がよろしいのではないでしょうかね?」
「そもそも、従業員に無断で逃げられている時点で責任者として失態を犯しているわけですから、その場凌ぎでごまかすことなく罪を認めて謝罪をし、責任者として果たすべき責任を果たすべきなのでは?
信頼と信用を大事にしない飲食店経営なんて上手くいく道理が御座いませんので」
「・・・・・・・・・」
なんか、すみませんね@クルーズ(店名です)の店長さん。お顔を引き攣せちゃって。私たちはこういう人間なので、付き合う際にはご注意を。
「・・・それで? あなたたち二人だけでも働いてもらえるってことで大丈夫なのよね?
特にあなたなんか、そこいらの男なんかより、ずっとキレイで格好いいもの!」
希望にキラキラ輝いた瞳をデュノアさんへと向ける店長さんでしたが、肝心の彼女は後ろめたい表情で横を向き「あー・・・」と意味のない言葉をつぶやきながら人差し指で頬をかくと。
「・・・ごめんなさい。僕、ちょっとした理由で働けないと言いますか、働いちゃうのは不味いと言いますか、とにかく雇用されるのはダメなんです、ごめんなさい」
「そんなっ!? いったい、なんでどうして!?」
「何でと言われましても・・・とにかくダメなんです、本当にごめんなさい。お詫びに裏方として厨房のお手伝いだけでも無償でさせてもらいますからご勘弁を・・・」
元フランスから日本に派遣されてきていたスパイの少女は律儀です。
それでも店長さんが諦めきれないのは、事情を知らない以上しかたのない事ではあります。デュノアさん、見栄えいいですからねー。
「か、代わりとして僕とは違うタイプの金髪の子と、銀髪の二人が前にでて接客をこなしてくれますから大丈夫ですよたぶん! 売り上げ的にはそれほど大差でないと思いますからたぶん!」
『たぶん』が多い未来予測だなぁ~。決めつけどころか適当なこと言ってる様にしか聞こえないんですけども。おまけに合ってますし。
「・・・確かに見た目的には大差ないと思うけど・・・ねぇ、あなた。こちらの銀髪の子はともかくとしても、もう一人の金髪の子は本当に大丈夫なの?
助っ人をお願いしておいて何なんだけど、さっきからちょっと視線が怖いというか何というか・・・」
「あはは、大丈夫ですよたぶん。ね? セシリア? 任せちゃっても大丈夫だよね?」
「OH! ジャパニーズ・メイド喫茶! なんちゃってメイドさんthe Beautitui!
本場イギリスの其れとは似ても似つかない余計な装飾過剰で動き難さを重視した安っぽくも見栄えにこだわり抜いた職人芸・・・日本が誇るジャパニメーション文化にわたくしが! このわたくしが参加させてもらえるのですわね! なんたる光栄! こんなに嬉しいことは御座いません! わたくしはここにアヴァロンを見た!」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
本当に大丈夫なのかなー・・・。
・・・大丈夫なわけないと知りながら、それでも人は平穏無事な一日の終わりに憧れるのです・・・。
ーーが、しかし。
「オルコットさん、四番テーブルに紅茶とコーヒーをお願い」
「畏まりました、メイド長様。直ぐにもお運びいたします」
カウンターから飲み物を受け取って、カウンターの中にいる店長さんを萎縮させてしまいながらも威厳ある接客で仕事をこなしていくオルコットさん。
なんか、メイドさんて言うよりも完全にメイド長様になっちゃってる状態ですけど、一応メイド長様はカウンターで腰が引けてる店長さんと言うことになってます。
部下の方が上司より有能なラノベの定番的展開が、一日限りのバイト先で行われている不思議・・・プライスです。
「人間、第一印象だけで判断するのは良くなかったのね・・・私も今後は心を入れ替えよっと」
そして知らぬ間に人を改心させてる世直しメイドさんです。プライスです。
「それは良いのですが、店長さん。ひとつだけお聞きしたいことがあるのですが、今よろしいでしょうか?
「ん? なになに何でも聞いて、私店長だから」
その場凌ぎで雇っただけの日雇い店員に追い抜かれそうで焦ってますね、店長さん・・・。
まぁ、それは一先ずおいといて。問題は私の着ているメイド服についてです。
「・・・なんで私のだけ他のと形が違っているのでしょうか・・・? 同じ背丈でもボーデヴィッヒさんのは同じにしてもらえているのに、なんでだか私のだけその、あの、えっと・・・。
ーー胸がやたらと強調されてて、ミニスカートの丈が膝上と言うより股下何センチといった程度しかなく、腕も肩も背中までもが開いてるこの服装は、間違ってもメイドさんに着せていい代物ではないと思うんですけども・・・」
よく言っても、キャバ嬢です。もしくは未成年者の前では口に出してはいけないお店の店員さんが着ている服です。つか、今考えてみたら私のおかれてる現状ってポルノ法に引っかかるんじゃね?
「え? 他にサイズが合ってるのがなかったからだけど?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・ぐぅの音もでねぇぜ・・・(ファリーテイル初期ED風に)
「背丈が中学生ぐらいで、胸だけハイレベルな高校生級で、お尻もウエストもバランス良いボンッ、キュッ、ボンなエッチさの塊みたいな身体してる子を雇える状況想定しているメイド喫茶なんてあるわけないでしょう?」
「そりゃまぁ、そうなんですけども~・・・・・・」
「その服だってお店にあった物じゃないのよ? 私が個人的に作って持ち歩いてただけの代物なんだから、今日に限って家に置いてこなかっただけでも幸運だと思っておいて頂戴な」
「・・・・・・いや、それはそれで大問題な気がするのは、私の気のせいなんでしょうかね・・・?」
いろいろ謎なお店だなぁ、@クルーズって。
「ねぇ、君可愛いね。名前教えてよ」
「ラウラです! 今日はお母様と一緒にお店のお仕事をお手伝いしてるですっ!」
「そ、そうなんだ・・・。お店の終わる時間にでも一緒に遊びに行ったりとかは・・・」
「お遊び? 公園でシーソーするです? ラウラはお母様に押されてブランコするのが好きです!」
「・・・・・・ごめん。俺たち、汚れちゃっててマジごめん・・・。君みたいな子に俺たちが話しかけること自体、間違いでしかなかったんだ・・・!!!」
「??? よく分かんないですけど、ごゆっくりどうぞです!」
「ああ・・・ああ・・・・・・ありがとう、ありがとう。本当に、本当に・・・俺たちの為なんかにありがとう・・・!!!」
・・・・・・なんだ、あそこで生まれ始めてる変な宗教団体っぽいのは。マジきもいんですけども。
「あ、あのっ、追加注文いいですか!? できればさっきの金髪の完璧超人メイドさんで!」
「コーヒー下さい! 銀髪のお子さまメイドさんで!」
「こっちにも美少女メイドさんを一つ!」
「銀髪のエロいメイドさん『のようなもの』をお持ち帰りで!」
「かしこまりましたー、今すぐに。・・・・・・ただし最後の人は除いてです」
「はふんっ♪」
・・・・・・気持ち悪い・・・・・・。
そんな混雑が二時間ばかり続いた頃に事件は起こります。
お店のドアを破らんばかりの勢いで雪崩込んできた男性が三人、怒号を上げるとともに手に持つ銃で威嚇射撃に斜め上方を撃って見せたのでした。
「全員、動くんじゃねぇ!」
「騒ぐんじゃねぇ! 静かにしろ!」
彼らの格好はジャンパーにジーンズ、顔には覆面、手には銃。背中のバックからは何枚かの紙幣が飛び出しておられました。
・・・これは、もしかしなくても一目瞭然なレベルでーーー
「ファンタスティック! まさに日本の伝統芸能『やられ役の銀行強盗』ですわね!
今どき銀行の金庫の中に現金なんて大した額は入っていないにも関わらず、どう言うわけだか警官以上の装備で身を固めたショボい理由の犯罪者さんたち!
強盗した理由よりも装備品をそろえる方がお金かかりそうなのに、わざわざ逃げ道のない建物内で人質取って立てこもろうとするド素人の皆様方! 捕まるために犯罪を犯し、捕まるぐらいなら自爆すると叫んでおきながら起爆装置を失った途端に意固地を失い命乞いに走る臆病者を「兄貴」と呼んで慕ってくれる手下のヤスさん!
わたくしは今ここに神話の再現を見た!」
『バカにしてんのか!?』
・・・・・・たぶん、その通りなんだと思いますよ? バカにする言葉が心からの賞賛につながってる変な心境・・・。
「あー、犯人一味に告ぐ。君たちはすでに包囲されている。大人しく投降しなさい。繰り返すーー」
「マーベラス! 古式ゆかしい日本のお家芸『役に立たない税金泥棒の警察出動』ですわね! 包囲したと言いながら鉄砲一発撃たれただけで四散する、何しに来たんだこいつらは感満載の無能公務員集団のお約束的登場シーン!
わたくしは今、歴史再現の現場を見た!」
『バカにされてんのか俺たちは!?』
・・・・・・たぶん、それも合ってるんじゃないかと思います・・・。
「ど、どうしましょう兄貴! このままじゃ、俺たち全員ーー」
「うろたえるんじゃねぇっ! 焦ることはねぇ。こっちには人質がいるんだ。強引な真似はできねぇさ」
「へ、へへ、そうですよね。俺たちには高い金払って手に入れたコイツがあるし」
ジャキッ! と金属音を響かせてショットガンのポンプアクションを行う銀行強盗の一人さん。次の瞬間には再び威嚇射撃を天井に。
「きゃああっ!」
「大人しくしてな! 俺たちの言うことを聞けば殺しはしねぇよ。わかったか?」
私の隣にいた女性が顔面蒼白になりながら何度も頷いているようでしたが、私は目の前で撃たれていた銃に見入っていたため意識の外にあり判然としませんでした。
これはまた・・・スゴいのを見つけだしてきましたね・・・。
「ーーウィンチェスター社が作った最高傑作銃のひとつ、『ウィンチェスターM1873カービン』ですか・・・。
たしか、装弾数は14発で作動方式はレバーアクション。全長は125・2センチで、銃身長は76・5センチ。重量は4・3キロ。設計年は1873年で、製造期間は同年から1919年の間まで。配備先はガンマンやカウボーイで、スピンコックが出来れば見栄えが良くなります。別名は『西部を征服した銃』・・・・・・」
『なに!? この子怖い!!』
「え? ・・・あ。い、いや違うんですよ誤解なんですよ、私は別にガンマニアとかの人たちではなくてですね? ただ単に劇場版『あぶない刑事』でバイク乗りながらスピンコックしてショットガン撃ってるのを子供の時に見て憧れてしまい、ちょっとだけ詳しく調べてみた事があるだけですからね?
こういう生き方が出来たら気持ちいいだろうなぁーと・・・」
『子供の時って、おまえ今いくつだよ!? どう見ても女子高生だろうが!? 子供の年齢にまで戻しても数年前だよ! 十二分にあぶない趣味のガンマニアだよ! 町中で出会ったら通報しといた方がいい人種の方々だよ!』
「あ~・・・・・・うん。これは・・・どうしようもないですよね、本当に・・・」
前世も合わせて合算すれば30過ぎなので、あなた方と同年齢です・・・なんて言ったら誤解解いてもらえますかね? ーー別の誤解が増やされるだけですね。やめときましょう。どのみち一期一会の犯罪者さんたちなのですから、どんな誤解されても構いませんよね?
「こ、こうなったら自爆してやる! 捕まってムショ暮らしになるくらいなら、いっそ全部吹き飛ばしてやらぁっ!」
ーー早っ!? まだ戦闘して負けたわけでもないのに、何だって今の時点で刑務所にはいること確定させちゃってんですかこの人たちは!?
しかも着ていた革ジャンを左右に広げてプラスチック爆弾付きの腹巻きを見せていただけたのですが・・・。
「・・・なんで自爆しようとしているときに爆弾の在処見せつけちゃってんるんですか・・・隠しときなさいよ、爆発し終えて自分諸共キレイさっぱり消えてなくなり見せる必要も見せる相手も消え去るその瞬間まで。
あるいは何も言わずに起爆スイッチを押しなさいよ、本気で全部まとめて吹き飛ばす覚悟があるのであれば。
爆破予告ならまだしも、自爆予告して自爆する自爆魔なんて聞いたことないですしドコの誰に需要あるんですか・・・」
「エクセレント! 失敗すること前提で行う死ぬつもりのない自分の命を盾にした自爆脅迫ですわね!? まさに日本の伝統! ジャパニメーーーーショーーッン!!!
わたくしは今この場において、黄金の国ジャパングを見ましたわ! この感動を是非にも次回作に役立てたいので、自爆しようと見せかけて脅迫している今の気分を一言だけでも是非! このわたくしに教えて下さいませな!」
『・・・何なんだよお前らはさっきから!? どうして戻ってくるんだよ! 俺たちの常識が支配している世界にさぁ!
せっかく目を逸らしているんだから、俺たちの世界観に帰ってこないでくれよぉ!!』
「あ、あー・・・そう言う理由だったんですか・・・。えっと、これは、そのあの・・・ごめんなさいでした・・・・・・」
「そこを押して何とか! もう一声だけでも! 作家にとってネタになるなら、たとえ火の中水の中、犯罪者如きが何するものぞ! 是非ともわたくしの次回作の質的向上にご協力くださーい!」
『助けて、お巡りさーーーーーっん!!
変態どもに気が狂わされるーーーーーっ!!(>o<)』
「・・・帰りたい・・・もう、今日は早く帰って寝たいよ僕は・・・・・・」
「ラウラも早くオネムしたいです! 買ってもらった猫さんパジャマ着て、お母様と一緒のお布団でネムネムしたいです!(-^〇^-)」