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暑い夏の日だった。
汗が滴る額に頰から顎へと伝いポタポタと地面へと落ちる。
夏なのだから当たり前だ。
だがこの汗はただ暑いからだけでは無かったのはよく分かっていた。
ふと見上げると雲ひとつない真っ青な空が広がるが、そんな事はどうでも良かった。
誰か人の声が何度も飛び交うと視界の中に人影が飛び込んで来た。
何か大声で呼び掛けているが聞こえない。
だが次第にその声は鮮明に耳へと入って来た。
「だ…か?!」
聞こえない
「だい…ぶ…か?!」
まだ聞こえない
「おい!大丈夫か?!」
やっと聞こえた男性の声に反応すると他にも何人も男性が覗き込むが、みんなの表情は強張っており中には絶望にも似た表情をする者もいる。
「…が…ない」
「おい!どうした!?」
「肘が…動かない!!」
―――――・・・
バッと起き上がった少年は汗だくだった。
最悪最低の夢を見ていたからだ。
「最悪だ…」
そう呟きながらベッドから起き上がる少年の顔は幼く見え、また背丈もそう高くは無い。
その少年の名は
静岡県沼津市に住む少年である。
と言っても年齢は15歳と高校1年生であり少年と言うにはもう遅い歳であろうか。
橘廉(※以降より廉)はスマフォの時間を見るとまだ6:00と出ており、しかも今日は日曜日である。
普通ならゆっくりと寝ていたい所であるが、この最悪な目覚めで二度寝は無理と判断したのだろう廉は運動できる服装へと着替えをするとスマフォだけを持ち外へと出てランニングへと向かう。
家から出て南の方へ向かおうと思いひたすら南の方角へと走る。
大きな橋を渡り大きな道を永遠と降って行く事約1時間は経ったであろうか、廉の目の前には海が広がった。
沼津港以外にもこんな海辺の見える場所があったのかと地元に住みながら普段行かない場所へ足を運んだ廉は何処か心が落ち着き走り続けていると神社の鳥居が見えてきた。
「こんな所に…しかもこの階段…」
と目の前に広がる長く連なった階段を目にすると廉は迷わず駆け上がる。
これは良いトレーニングになるなと思いながら乱れぬペースで階段を駆け登ると頂上には小さな社が建っていた。
「はぁ…はぁ…」
社を見た廉は取り敢えず手を合わせお参りする。
お参りをしたら周りをキョロキョロ見回し探索を始めた。
すると社の裏側にボロボロになったバットが落ちており廉はそれを拾い上げる。
「ボロボロ…ずっと置いてあったのかな」
とグリップ部分のテープがボロボロで所々少し凹んでいるバットを手にしながら呟くと、彼はおもむろに素振りを始めた。
ビュッ!ビュッ!と鋭い音を立てながら素振りをする廉。
(久しぶりに振ったな…もう少しやってくか)
と素振りを続けていると、先ほど廉が上がってきた階段の方から声が聞こえてきた。
「果南ちゃん待って〜」
「千歌達が遅すぎるの〜」
「果南ちゃんが速すぎるんだよ〜」
「ほらもう少しで頂上…あれ?」
そう言いながら階段から体半分ほど見えた所で紫色の髪でロングポニテの女の子が立ち止まる。
それに続いて何人かの女の子達が追い付くと立ち止まる彼女に聞く。
「どうしたの?立ち止まって?」
「ん〜、どうやら先客がいるみたい」
と指を指す彼女の先には素振りをしている廉がいた。
「わ!男の子だ!」
とオレンジ髪でシャツには大きく片仮名のチの字が入った女の子が言うと廉が声に気付き素振りを止めると声の方向へと振り返る。
「あ…」
そうポツリと呟き彼女達と目が合う廉。
この偶然の出来事が、この橘廉と彼女達の物語の始まりであった。
次回へ続く