堕天使の祝福   作:シュン@ヨハネ

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第10話:何よ、カッコいいじゃない

 愛鷹広域公園野球場

 沼津市内では一番大きな球場であり、野球のみならずサッカーやテニス等様々なスポーツが行える場所だ。

 そして、この野球場にて廉が復活する。

 

「お〜、広いね〜」

「私初めて来た」

 

 愛鷹球場のベンチ上のスタンドへと入る千歌たち。

 予想以上の広さだったのか、キョロキョロと周りを見渡しながら感動する。

 

「え?あれAquarsの?」

「ほんとだ!」

 

 スタンドに応援に来ていた女子学生らが彼女たちを見ながらザワつき出す。

 またグラウンドでも彼女たちの存在に気づいており同じようにざわついていた。

 

「おいおいアレAquarsの子達じゃね!?」

「なんでいんだよ・・・」

「あぁ、橘の友人です」

『はぁ!?』

 

 騒つく選手らに洸輝が指さしながら話すと、選手全員が廉を睨む。

 

「お前!部活来ない間に何してくれてんだ!!」

「裏山けしからん!!」

「紹介しろ!」

「俺果南ちゃん推しなんだよぉ!!」

「僕はルビィちゃん神推しだ!!」

 

 それぞれ怒りというか、思いを廉にぶつける。

 しかし廉は表情変える事なく口を開く。

 

「さぁ試合に集中しましょう〜」

『おい無視すんな!!』

 

 飄々としながら話す廉にツッコミを入れる選手たち。

 その後も廉に対し憎悪の思いをぶつけていたが、試合開始が近くなると彼らの表情は一変し円陣を組む。

 

「詳しくは試合後に聞くとして」

「え?話しませんよ?」

「ウルサイ黙れ・・・。さ、気を取り直して。いよいよ秋大会だけど、この試合は橘の復帰戦でもある。だから今日は橘のために勝つぞ!」

『おぉ!!』

「みんな・・・」

 

 声出しをした選手の思いは全員が同じだろう。

 自分が戻ることを待っていてくれた彼らに、廉は今日は精一杯頑張ろうと誓う。

 

「よし!!行くぞ!!」

『おぉ〜!!』

 

 ベンチ前で声を出しホームへ向けて駆け出し整列をする。

 審判の号令とともに互いに挨拶を交わすと守備に着く為選手らがグラウンドへと散らばり攻撃を行う選手たちはベンチへと戻る。

 

《1番・・・ショート・・・橘君》

 

 先攻は聖秀。

 場内アナウンスで廉の名前が呼ばれると、廉はゆっくりと打席へと向かう。

 

「あ!レンち〜だ!レンち〜♩」

「廉君〜♩」

 

 千歌が真っ先に廉に気づき応援の声を飛ばすと、曜が続き他の子達も声をだし応援する。

 黄色い声援を受ける廉は気恥ずかしそうに打席へと向かう。

 

「橘!!今日のお前は好きにやっていいぞ!!カッコいいとこ見せてやれ!」

「そうだぞぉ!裏山けしからん!」

「あはは・・・はぁ」

 

 ベンチからのゲキに苦笑いを見せながら打席へと入る廉。

 対戦相手のピッチャーは廉を見る。

 

(橘廉、本当に帰って来たのか。しかもショートで・・・でも本当に怪我から治ったのか?)

 

 警戒心を強める相手投手の初球は外に外れる変化球を投じ、廉はこれを見送る。

 

「ボール!」

 

 審判はボールの判定。

 廉はバットを構え直し相手投手を見る。

 

「ストライク!!」

(これは入る・・・)

 

 慎重に攻めて行く投手に対し廉も見ていく。

 そしてツーストライクツーボールとなった5球目だった。

 

カキィィン・・・

 

 投じられた5球目は外への変化球。

 このボールを廉は逆らわず合わせるように打ちに行くと打球は鋭い当たりを放ち一二塁間を抜けて行くライト前のヒットとなった。

 

「お〜・・・ヒット?」

「うんヒット」

 

 千歌が確認すると果南が頷く。

 

「打ったずらぁ」

「良く分からなかったけど・・・すごい事なのよね?」

「うゆ・・・」

 

 花丸やヨハネ、ルビィもヒットを打ったことは分かるものの具体的な事は良く分からないようで反応も様々だ。

 

「でもレンち〜の足の速さって、どこで生かされるかしら?」

「あ〜それは」

 

 ヨハネのふとした疑問に果南が答えようとした時、球場ないからワッと歓声が上がる。

 ヨハネがグラウンドの方を見ると、廉がスタートを切っており二塁へと悠々到達していたのだった。

 

「あれ。盗塁っていうの。足の速い選手の醍醐味ってやつかな?」

「あっという間に到達したずらぁ〜」

「速いぃ〜」

 

 花丸やルビィが驚く中、ヨハネは二塁にいる廉を見て惚けていた。

 そんなヨハネを見ながらニヤニヤする花丸とルビィ。

 

「な、何よ!?」

「別にぃずら」

「うゆ♩」

「も〜!!」

 

 ニヤニヤする2人に怒るヨハネだが、彼女は本気で怒ってはいなくむしろ何処か嬉しそうにも見えた。

 

「流石かなんレンくん」

「果南さんは、よくご存知なのですね?」

「まぁ家でお父さんとかと見たりするからねぇ、お父さん野球とかスポーツ中継見るの好きだし。」

 

 ダイヤの問いに笑いながら答える果南。

 だが果南は二塁上にいる廉を見ながら話を続ける。

 

「それに、凄い嬉しそうだったんだよ?“あの沼津から甲子園のヒーローが出た!”ってね。もう当時はお祭り騒ぎだよ〜。うるさいのなんのってね」

 

 苦笑いを見せながら話を続ける果南に他のメンバーは耳を傾ける。

 

「一度羽が折れて・・・今レン君は帰って来たんだよね。自分がいるべき場所に」

「いるべき場所・・・ですか」

「そ♩形がどうであれ、レン君は野球場の中にいるのが一番輝ける場所なんだよ。私たちがステージで輝いてるのと同じでね♩」

「かっこいいね」

 

 果南の言葉に千歌が思わず言葉を零す。

 おそらく彼女の本心であり自然と出て来た言葉であろう。

 

「かっこいいよね。レンち〜・・・輝いてるよね♩」

「うん。私もそう思う。」

「私もよ千歌ちゃん」

 

 千歌の言葉に曜と梨子が同調する。

 もちろん、他のメンバーも同じ気持ちである。

 

「私たちも・・・輝きたい」

「うん」

「だね♩」

 

 千歌の言葉に互いに顔を見合わせニコッと笑う曜と梨子を含めた三人。

 

「頑張れ、レンち〜」

 

 そう一言呟く千歌。

 次の瞬間には、廉が再びスタートを切っており三塁目掛けて走っていた。

 

「セーフ!!」

「ナイスラン!!」

「良いぞ色男〜!!」

 

 ベンチから弄りも混じりながら檄が飛ぶ。

 廉は気にもとめずにグッと右腕を上に挙げ檄に応える。

 二盗、三盗と決めチャンスをグッと広げる。

 

 キィィン・・・

 

「ライト!!」

 

 打者が打ち上げたのはライトへのフライ。

 定位置より若干浅い当たりだが、廉はスタートを切る準備をすると、ランナーコーチが話をする。

 

「いけるのか!?」

「いく!!」

「自信はあるんか!?」

「ある!!」

「・・・よし!」

 

 廉の言葉に腹を括ったランナーコーチ。

 ライトの選手がボールを捕球すると“ゴー!”と掛け声が響き、廉はホームめがけてスタートを切った。

 

「ふ、ざけるな!!」

 

 ライトの選手がバックホームをする。

 送球は一直線にキャッチャーのミットへと収まり、廉はキャッチャーのタッチを掻い潜るようにスライディングを決める。

 あとは審判の判定に委ねられる。

 

(セーフ!)

(いやアウトだ!)

 

 滑り込んだ廉とキャッチャーが主審を見る。

 

「・・・セーフ!セーフ!!」

 

「おっしゃあ!!」

 

 主審の腕は横に広がるように動かされ、セーフの判定をした。

 その瞬間、廉は飛び跳ねるように立ち上がり雄叫びを挙げていた。

 球場の観客からも歓声が響く。

 

「セーフにした・・・」

「え?!今の凄いんだよね!?そうだよね!?」

「凄いことだと思うよ?多分・・・」

 

 驚く果南に、訳が分からず隣の曜に確認する千歌に自信なさげに答える曜。

 だが単純に点が入った事は分かった。

 

「何よ・・・レンち〜・・・」

 

 廉のタッチアップを見ていたヨハネは1人でつぶやき出し、隣の花丸とルビィがヨハネを見る。

 

「何よ、カッコいいじゃない」

「善子ちゃん・・・」

 

 微笑みながら呟くヨハネ。

 そんな彼女を見て、花丸もニコッと微笑むのであった。

 

 

 次回へ続く。




長らくお待たせしました・・・
約一ヶ月ぶぅりデェスね〜!!

どうにか完結できるように頑張ります!
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