Aquorsのメンバー達と別れてから廉は毎日とは言えないが、ちょいちょい顔を出していた。
特に何をする訳でもなく、メンバーのダンス練習を見たり、一緒に階段を上るトレーニングをしたりする。
また打ち解けてきたのか廉の口調も変わり上級生に対してもくだけた話し方になった。
特に、歳が同じ一年生組とは仲が良くなっておりよく4人で話をしているのが目立つ。
「よっちゃん」
「…む~…」
「何?」
「ヨハネ」
「え?」
「ヨハネって言ってるでしょ?!最初の方はヨハネって言ってたのに何で変わってるのよ!?」
「え~、だって皆が善子ちゃんとか、よっちゃんって言うから」
「私はヨ~ハ~ネ~!!」
「善子ちゃんは善子ちゃんずら」
「む~」
とむくれるヨハネに笑う廉達。
そんな和気あいあいとしている中、果南は難しい顔をしながら廉を見ており、ダイヤが気づくと果南に話しかける。
「どうしましたの?そんな難しい顔をして」
「分かった!果南ちゃんヤキモチ妬いてるんだ!」
「違うよ千歌~」
と千歌の頬を摘みながら話す果南。
どうやら先日の事が気になっていた様で、廉の顔を見ながらどうにか思い出そうとしていても思い出せないでいたのだ。
「あーもう!直接聞く!」
と言いながら廉の元へと向かう果南。
廉の前に立つ果南に廉はギョッとする。
「えっと…何か?」
「廉君さ…私どこかで見た気がするんだよね…」
とジト目で話す果南に廉はドキリとする。
少しであるが表情に変化が出た。
「えぇっと…よくいる顔だと思うけど?」
「ん~…違うんだよなぁ~」
とマジマジと見る果南に廉は冷や汗を流しながら後ずさりをする。
「ほら果南さん。廉さんが後ろに下がってるではありませんか。お止めになっては?」
「ん~、でも気になるんだよね~」
とダイヤに止められ、ようやく廉から離れるがどこか納得いってない様子だ。
廉は苦笑いを見せていると、ヨハネがスマフォの画面を見ながら言う。
「あ!もう終バス!」
「え?!ホントに?!」
とヨハネの言葉に驚く曜。
また廉も帰る方角が同じなので一緒に大急ぎで帰りの支度をする。
「じゃあ皆またね!今度行けたら行くから!!」
とヨハネ、曜の後に続き走り出す廉。
他のメンバーに別れを告げて3人は大急ぎで船に乗り対岸へと渡り最寄りのバス停へと到着した。
「間に合った…」
と肩で息をしながらバス停へと着く3人。
ベンチに座りながら待っている中、曜は廉に対して話しかける。
「そう言えばレン君って、何か運動やってるの?」
「え?」
「だってさ、初めて会った時も此処まで走ってきたって言ってたでしょ?そんな事出来る位だから何かスポーツやってるのかなって?」
と話す曜に廉は黙ってしまう。
首を傾げる曜は「どうしたの?」「何かあるの?」と聞いてくるも廉は黙ったままである。
すると、ヨハネが話に割り込んでくる。
「それ以上は良いんじゃない?言いたくないみたいだし」
「善子ちゃん…」
「人間、言いたくない事の1つや2つあるわよ」
と話すヨハネに曜はそれ以上の追及は止める。
そして途中のバス停で曜が降り二人と別れを告げる。
「じゃあね!」
「またね~」
と手を振りながら曜を見送る廉とヨハネの二人。
バスが動き出し揺られていると、廉が話し出す。
「ありがとね」
「え?」
「さっき止めてくれて。お陰で助かったよ」
「え、えぇ…別に…良いけど」
と突然お礼を言われて顔を赤らめながら照れるヨハネ。
彼女はふと隣にいる廉を見ると、そのままジッと見つめてしまった。
初めて会った時から蘇ってくる当時の思い出と今の廉。
(昔は私より背が小さかった筈なのに、男の子って大きくなるんだな…まぁ今も私より少し高い位だけどね。でもこうして見ると…)
とジッと見てしまいヨハネに廉は視線を感じたのかヨハネの方を向く。
「どうしたの?何か付いてた?」
「え?!ううん!!?」
と慌てて首を横に振るヨハネ。
見てしまっていたことに気づかれた恥ずかしさと見てしまっていた事への恥ずかしさに顔を赤らめるヨハネ。
二人が降りるバス停へと着き、降りると廉はヨハネの家とは逆の方を指さしながら言う。
「じゃあ俺はこっちだから」
「あ、うん」
「?どうしたの?」
「べ、別に何でも無いわよ?じゃあね!」
と言い走り出すヨハネに首を傾げる廉。
走りながらマンションへと入っていくヨハネはエレベーターに乗ると、扉の窓に映る自分を見ながら呟く。
「どうしたんだろう、堕天使ヨハネとあろう者が…今まで気にもしてなかったのに…今日あんなに見ちゃって…あぁもう!」
とゴンと扉に頭を当てるヨハネ。
「明日には忘れなさい!これは違うんだから!ヨハネしっかりしなさいよね!」
と自分に言い聞かせるように呟くヨハネ。
降りる階に着き扉が開くとヨハネはそのまま自分の家へと入っていく。
ボフンと自分のベッドに倒れこむと、枕に顔を埋めながら先ほどの廉の表情が脳裏に写り、搔き消すという行動を繰り返すのであった。
それから数日が経ち廉はコンビニでヨハネ達と共にいた。
外の駐車場で飲み物を飲みながら話している廉と千歌達。
「それでね~」
と楽しそうに千歌が話をしているのを遠くでジト目で見つめるヨハネ。
「善子ちゃんどうしたの?」
と話しかけるルビィに花丸はニヤニヤしながら言う。
「ルビィちゃん。これはヤキモチずら♪」
「ち、違うわよ!?」
「あ~・・・」
と花丸の話に納得するルビィと慌てて否定するヨハネ。
そしてルビィはヨハネの肩にポンと手を置きながら笑顔で言う。
「善子ちゃん。頑張ルビィだよ!」
「だから違うわ…」
と否定をしようとした時、離れた所から大きな男の声が聞こえた。
「やっと見つけたぞ廉!!」
「え?!誰?また男キャラ?」
と声の方向を向きながら話すヨハネ。
声のした方向には、白い野球用のユニフォームを着た男性が立っており廉の名前を叫んでいた。
「聞いた通りだった…おい廉!」
と言いながら寄る男性に廉は顔を引きつりながら睨みつける。
そしてその光景を見ていた果南が大きな声を出す。
「あぁ!!」
「ど、どうしましたの?果南さん?」
「oh!?忘れ物デスか?」
と隣にいたダイヤと鞠莉が驚くも、果南は気にせずに言う。
「思い出した!!廉君の事!!」
その言葉に、その場にいた全員が注目する。
そして廉は果南の言葉に固まる。
次回へ続く