堕天使の祝福   作:シュン@ヨハネ

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第5話:希望の星

「思い出した!!」

 

そう叫んだのは果南。

廉は果南の言葉に固まってしまう。

 

「思い出した?」

 

「そうだよダイヤ。廉君の事!夏テレビでお父さんやお客さんの見てたの思い出したんだよ!橘廉君、君は聖秀学園高等学校の野球部に所属していたんだね」

 

そう言いながら廉を見る果南に固まっていた廉は彼女に目を合わせずにコクリと頷いた。

 

「聖秀学園…どこかで聞いたような…」

 

「そう言えば千歌ちゃんの旅館にあったスポーツ新聞で…」

 

顎に指をあてながら思い出そうとする曜と同じように思い出そうとしながら話す梨子。

すると、花丸がポンと手を叩きながら話す。

 

「あ。お父さんが新聞見ながら言ってたずら。甲子園?に出たって」

 

その花丸の言葉にビクッとする廉。

 

「そう。橘廉君はね、今年の夏に高校野球の選手、しかも一年生エースとして甲子園に出た子なんだよ」

 

『え~!!??』

 

「えっと…甲子園って何?」

 

と驚いた皆の中で一人だけ千歌は?マークを頭の上に出しながら傾げると周りはズッコケる。

 

「ち、千歌ちゃん?」

 

「知らないの?甲子園」

 

と千歌に話す梨子と曜。

千歌は本当に知らないらしく簡単に甲子園について話を二人はする。

 

「それって凄い事じゃん!!」

 

「だから最初から言ってるんだけど…」

 

「あはは、千歌ちゃんらしいや」

 

と1人遅れて驚く千歌に苦笑いを見せる梨子と曜。

だが、廉はあまり良い表情をしていない。

 

「レンち~、凄いんだね!」

 

「あ、いや、まぁ…」

 

と切れの悪い返事をする廉に千歌は首を傾げる。

普通なら自慢してもいい事だ。

一年生で、しかもエースとして甲子園の土を踏むとなったら大変光栄な事である。

だが廉の表情からは苦痛というより虚しささえ見える。

 

「レンちー?」

 

彼の表情を見て不安そうに感じるヨハネ。

千歌も彼の異変に感じたのか、彼に聞いてみる。

 

「レン君、何かあったの?」

 

「いや、なんでもないよ…」

 

と立ち上がる廉はそのまま去ろうとすると、先ほどの少年が呼び止める。

 

「おい廉!!逃げるな!」

 

強い口調で呼び止める少年。

廉は背を向けたまま止まる。

 

「戻ってこいよ、皆待ってるぞ」

 

「俺は…」

 

少年の呼びかけに廉は言葉を詰まらせる。

そして彼は振り向くと、その顔はとても悲しく、寂しそうにしていた。

 

「もう野球はやらない。そう決めたんだ。だから…もう関わらないでくれ」

 

そう言い残し去ってしまう廉。

少年は頭を掻きながら表情を歪ませる。

 

「クソッ…」

 

「あの…」

 

「え?あぁゴメンいきなり…って、Aquors?!」

 

とその少年は廉の時とは違い彼女たちを見て驚く。

 

 

「あ、君は知ってるんだ」

 

「知ってるも何も沼津の有名人だよ?!アイツ、知り合いだったのかよ。あ、凄いファンです!!」

 

と話す少年に彼女たちは照れる。

有名人という言葉に対しく感じない者はいない。

そこで彼女たちは気になった。

 

「ねぇ、レンちーの事なんだけど」

 

「あぁ、アイツ何も言ってないのか」

 

「そうだねぇ、そう言えば聞いた事無いかな?」

 

「というより、あまり自分の事話して無かったしねぇ」

 

と口々に話す彼女たち。

 

「そう言えば、君の名前は?」

 

「あ、あぁ。俺は工藤洸毅(くどう こうき)」

 

その少年の名は工藤洸毅。

聞けば廉と同じ一年生で彼もまた一年生ながらレギュラーを取った選手である事が分かった。

 

「それで、洸毅さん。廉さんは、どうしてああいうことを?」

 

とダイヤが聴くと洸毅は少し黙るが、頭を掻きながら口を開く。

 

「アイツ、廉は一年生で聖秀の一年生エースになった。俺もショートとしてレギュラーも貰えたけど、でもアイツは一年どころか部内で誰よりも秀でていたよ。」

 

と話し出す洸毅。

廉は一年生エースとして夏の予選を1人投げ切った。

高校は決して強いチームではなく予選ベスト16が最高だったチームをこの夏、見事甲子園へと導いたのである。

また甲子園では勢い止まらずベスト16まで勝ち上がるなど、彼の名前は一時新聞の一面を飾る出来事となった。

 

また地元沼津市も彼の活躍を称賛し、沼津としても久しぶりの甲子園出場。

そして初のベスト16と、彼の事をこう呼んだ。

 

 

“希望の星”と…

 

 

「でも、この活躍の裏にアイツは爆弾を抱えてました」

 

「バ、爆弾?」

 

と洸毅の言葉にギョッとしながら聞き返すヨハネ。

洸毅は笑いながら自分の腕を上げ見せながら話す。

 

「肘だよ。アイツはこの夏の連投による投球過多で肘をやっちまったんだ。医者の診断結果は…もう投手は出来ない」

 

その洸毅の言葉を聞いた彼女たちは、一瞬で表情が固まった。

スポーツ選手にとって怪我はついて回るものだが、野球選手、特に投手にとって肘の故障は最悪選手生命にも関わる事だ。

それを彼は高校一年生にして“投手失格”の烙印を押されてしまったのである。

 

「やりたいのに出来ない…一番キツい事だよね」

 

と呟くのは果南。

理由は違えどスクールアイドルを一度は諦めた彼女から出た言葉は他の皆の心に突き刺さる。

 

「それで、洸毅さんは廉さんを何故連れ戻しに?」

 

と聞くのはダイヤ。

洸毅はダイヤの顔を見ながら話す。

 

「アイツには、戻って貰わなきゃいけないんです。口ではあんな事言ってるけど、多分心の何処かで…」

 

と話しながらギュッと拳を握る洸毅。

するとダイヤが口を開く。

 

「でも、連れ戻すのが本当によろしい事なんでしょうか?」

 

「え?」

 

「私は、廉さんの気持ち分かりますわ。今まで楽しくてしょうがなかった事が、突然手放されてしまった。そんな状況で戻れと言われて戻れますでしょうか?」

 

ダイヤの言葉に洸毅は言葉を詰まらせた。

何も言えないかった。

 

「でも、俺は諦めないです…」

 

そう言いながら去る洸毅。

彼の背中を見ながらダイヤはハァッとため息を吐きながら言う。

 

「ホント、男の子って面倒ですわね…さぁ、私たちも帰りましょう」

 

と言い彼女たちも帰ろうとする中、ヨハネは1人何かを考えているようだった。

 

 

次回へ続く。

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