あの一件から、廉は来なくなってしまった。
Aquorsのメンバーも心配そうにしており何処か彼女達も練習に身が入らないようだ。
「ねぇ善子ちゃん」
「ヨハネよ!」
「そういうのは良いずら」
「え・・・」
休憩中にやり取りをする花丸とヨハネ。
「廉君と何か連絡あった?」
「ないわね」
「本当に?」
「本当よ」
「ふ〜ん」
「な、何よその目は〜」
ジーッとジト目で見つめる花丸に顔を引きつりながら答えるヨハネ。
何かを知ってると踏んだヨハネはさらに問い詰める。
「マルに内緒事はダメずら」
「べ、別に内緒事なんて・・・」
「目が泳いでるずら」
「うぐぐ・・・」
分かり易い位に目が泳ぎ何かを隠しているのがバレバレのヨハネに花丸は分かっていた。
おそらく廉と何かしらの連絡を取っているのだろう。
そう感じていたのだ。
「で、どうなんずら?」
「あぁ〜・・・。まぁ正直な所、連絡は取り合ってるけど。前の事は聞いてないんだよね」
「えぇ〜?」
「な、なによ?」
「善子ちゃん・・・使えないずら」
「な、なんでそうなるのよ〜!」
ため息を吐きながら言う花丸に怒るヨハネ。
花丸はクスクスと笑いながらヨハネを見る。
「冗談ずら♩」
「冗談そうには見えなかったけど・・・・」
「でも、心配ずら」
「う、まぁ・・・うん」
黙ってしまう二人。
彼女達もこれ以上の事は無闇に頭を突っ込んではいけないのでは?と言う思いが出てきておりなんとも言えない感情が漂う。
「善子ちゃん、心配ずら?」
「べ、別にそんな」
「心配ずら?」
「・・・うん。そうよ?悪い?」
「悪くないよ?むしろ安心ずら。善子ちゃんが心配してくれて」
「どう言う意味よ?」
「秘密ずら♩」
花丸の言葉に首を傾げるヨハネ。
続けて花丸が話を始める。
「今度、会ってみてくれるずら?」
「え?誰と?」
「廉君と」
「誰が?」
「善子ちゃん」
その言葉にヨハネの顔が赤くなる。
二人きりで会うのかと聞き返すと花丸は深く頷く。
ヨハネは困惑しながらもスマフォを取り出しメッセージを打つと、返事は意外とすぐに返ってきた。
「どうだった?」
「・・・OKだって」
「善子ちゃん。グッジョブずら!」
「いやいや・・・ズラ丸も来るでしょ?」
「勿論、行かないずら」
「なんでよぉ?!」
「これは、善子ちゃんだけで行くずら♩」
笑顔で話す花丸にガックシと項垂れるヨハネ。
「てか、何着てけば良いのよ〜」
「普段の格好で・・・オシャレしていくずら」
「なんで今間が空いたのよ〜!?」
「気にしないずら♩」
「も〜!!」
時は流れ数日後の休日。
自宅のあるマンションの下でヨハネが待っていた。
服装はスカートに白いTシャツ、そして上は黒のジャケットを着ており、どこか気恥ずかしそうに時間を気にしながら待つ。
「てか遅い・・・何やってるのよ〜!」
プンプンと怒りながら待つヨハネ。
するとヨハネの後ろから廉の声が聞こえる。
「ゴメンお待たせ」
「あ・・・うん、大丈夫・・・って普通の格好かい!」
廉の声を聞いて先ほどの怒りが消え辿々しい返事をしながら振り返るヨハネだが、廉の着て着たTシャツにズボンの格好に怒る。
「少しはオシャレしなさいよ〜!」
「えぇ、だって俺わかんないし」
「もう、私がバカみたいじゃない!」
「えぇ〜・・・」
再び怒り出すヨハネを宥める廉。
冷静になったのか二人は歩き始めた。
「・・・」
「・・・」
沈黙が続く二人。
廉にしてもヨハネにしても、どう話しかけていいのか分からないようだ。
そんな沈黙の時間が続きながらも仲見世通りへとやって来る。
「えっと・・・何処か行きたいとことかある?」
「え、えぇっと・・・適当に」
「適当に・・・」
「そ、そうよ悪い?!」
「いや、別に」
顔を真っ赤にしながら答えるヨハネに廉はビックリしながら言う。
それから二人は仲見世の目についたお店を見て回る。
雑貨屋に行ったり服屋に入ったりとしているうちに二人の緊張感が無くなったのか、少しずつ笑顔になって来る。
「あったぁ〜」
「それぇ・・・凄いね」
寄った仲見世にある大きな書店に寄ると、ヨハネは探していたのか『堕天使大辞典』と書かれた厚い本を手に取り目を輝かせる。
レジに並ぶヨハネを横目に廉は、とある分厚い本を手に取るとペラペラと捲りながら中を確認する。
「レンち〜どうしたの?」
「あぁ、これさゲームのルールブック?みたいなんだけど、なんか分厚くて高い・・・」
「あぁそれねぇ。結構人気あるわよ?」
「へぇ、そうなんだ。買ってみようかな」
そんな話をしながら廉がフイっとヨハネの方を見ると二人の目が合った。
ジッと長く目が合う二人は、互いに顔を赤らめ目を反らすと廉は先ほど手に取った本を持ちながら
「お、俺はこの本買って来るよ!」
「う、うん!いいんじゃない!?」
急ぎ足でレジへと向かう廉。
ヨハネは心臓がバクバクと打ちながら惚けていた。
(また見ちゃったじゃない!)
(目すごい見ちゃった・・・よっちゃんって、あんな綺麗な目してたんだ)
互いにドキドキしながら書店から出る二人。
落ち着かせる為か、二人はそのまま書店の少し北に行った所にある喫茶店へと入る。
「はぁ〜、コーヒー美味しい」
「フッフッフッ、この堕天使ヨハネの供物である。このチョコレートパフェを今食さん!」
「あはは、相変わらずだね」
「う、ウルサイわね!」
喫茶店で笑いながらゆっくりとする二人。
しばらく何気無い話をしているが、ヨハネは頃合いと見たのか話を始める。
「あのさ、前の事なんだけど」
「え?あ、あぁ・・・」
先日の事を話し出すヨハネ。
廉は明らかに表情が強張り出す。
「えっと、私ね、レンち〜が野球してたの知らなかったの。それで、まさか甲子園だっけ?そんな凄い所に出てるなんて思わなかった」
「うん、ありがと」
「でも・・・その、肘」
「あぁ・・・バカみたいでしょ?」
「え?」
「一生懸命やって来たのにさ。こんなバカな結果になってさ。本当、何やってんだろ・・・こんな無駄な事を」
「無駄じゃないわよ!」
「よ、よっちゃん?」
大きな声が響く。
驚く廉と他のお客さんだが、ヨハネは構わず続ける。
「無駄なんて言わないでよ!私だって、こんな堕天使とか・・・無駄で辞めたいと思ってた、でも・・・皆んなが、そんな私で良いって言ってくれたの。無駄な事なんてないわよ!」
「よっちゃん・・・でも、俺はもう肘が」
「肘が何よ!!いつまでもグジグジ!それでも貴方、私のリトルデーモン?!」
「リ、リトルデーモン・・・」
「堕天使ヨハネのリトルデーモンなら!シャンとしなさいよ!!」
そう語気を強めるヨハネの目には涙が浮かんでいた。
彼女の涙は、廉に対しての涙である事はすぐに分かった。
廉に対して涙を浮かべてくれる彼女を、彼はその瞬間から友達や幼馴染とは別の、違う感情がフツフツと湧き上がっていた。
また同時にヨハネも廉に対しての感情が違くなっていた。
(あぁ・・・俺、よっちゃんが・・・)
(私、レンち〜の事が・・・)
《好きなのかも》
次回へ続く。