翌日、廉はAquorsのメンバーが練習している所へやってきた。
久しぶりの再会に喜ぶメンバー達。
だが、廉から語られた言葉に表情が曇る。
「え?!野球を辞める?」
「はい」
「そうなんだ・・・」
廉からの言葉に驚くも果南は言葉短かに納得したように言う。
「レンち〜、それでいいの!?」
千歌がズイッと詰め寄りながら廉に言う。
「諦めるの!?それで本当にいいの!?」
「千歌ちゃん・・・」
千歌の言葉に隣で呟く曜。
以前、千歌に諦めるかを聞いた時、諦めないと答えた彼女の事を知っていた曜。
千歌の気持ちは曜によく分かっていた。
だからこそ、千歌は廉に対して諦めないでほしいと言う思いが出たのである。
「ごめんチカっち・・・俺は投手しか出来ないんだ・・・」
「レンち〜・・・ダメだよそんなんじゃあ!!」
廉の肩を揺らしながら必死に言う千歌。
その様子を見て梨子と曜が止めに入る。
「チカちゃん。やめなよ」
「やめないよ!だって悲しいじゃん!」
「しょうがないよ。廉君は肘の故障で」
そんなやり取りをする千歌達の後ろで悲しそうな顔をするヨハネ。
ヨハネの事に気付いた花丸とルビィは両側に寄り添うように並ぶ。
「ゴメン、私じゃあ無理だったみたい」
「善子ちゃん・・・」
「そんな事ないずら。廉君を此処に連れてきただけでも十分ずら」
「ズラ丸」
「それに、後は・・・男同士の問題ずら」
「え?」
ニッと笑みを浮かべて話す花丸に首を傾げるヨハネ。
「そうだぜ廉!!」
「あ・・・洸毅」
その場に現れたのは洸毅。
洸毅は廉の元へとやってくると胸ぐらを掴む。
「野球を辞めるだと?」
「あぁ、俺には投手しか出来ない。それ以外は・・・」
「馬鹿野郎!!」
廉が言い切る前に洸毅の拳が廉の頰を殴り飛ばした。
勢いよく飛ばされ転げる廉。
「れ、廉君!!」
殴られた廉に近くにいた果南が慌てて起き上がらせる。
「だ、大丈夫?」
「ちょっと工藤さん!?殴ることはないのでは!?」
洸毅に対し怒るダイヤ。
「いいんです。此奴はこの位やらなきゃ!」
「イッテェ〜・・・テメェ!!」
頰を摩りながら起き上がると廉はすぐさま応戦し、洸毅を左手で殴りかかる。
殴り合いの喧嘩に発展してしまった廉と洸毅。
彼女達はどうにも出来ず慌てふためく。
「ちょ、ちょっと止めなよ!」
止めようとする曜。
他のメンバーもどうにか止めに入り二人を引き剥がす。
「もう俺に構うなよ!!俺はもう野球できないんだよ!もう良いんだよ!!」
「アホか・・・野球できない奴が!!利き手とは逆の手でしか殴らないのかよ!!」
「!!」
「何が野球はどうでも良いだ!じゃあなんで利き手を気にするんだよ!最初の一発目から左で殴ってたよな・・・」
「それは・・・」
「やっぱりさ・・・未練あるよなぁ。お前、本当に野球好きだもんな。」
「あぁ・・・俺は野球が好きだよ!それに改めて気付いたのは前の日曜日・・・」
そう言いながらチラリとヨハネを見る廉。
「でも・・・俺もうピッチャーは・・・この肘じゃあ・・・」
右肘を押さえながら言う廉。
すると洸毅はハァッと大きくため息を吐く。
「ホンット!お前面倒くせぇ程うじうじしてんな!!ほらよ!!」
そう言いながら洸毅は持ってきていたバッグから何かを取り出すと廉に向けて放り投げる。
「わっわっ!」
放り投げられた物を地面に落ちる前に受け取る廉。
手に取った物を見ると、それはユニフォームだった。
英語で【SEISHU】と書かれたユニフォームを見る廉、そして裏返すとそこには6の文字が書かれた背番号が縫い付けられていた。
「これ・・・」
「1番ショート!!」
「え?」
「1番ショート橘廉!これからはお前はこのポジションだよ」
洸毅からの言葉にポカンとする廉。
勿論、他のメンバーもこの展開にポカンとする。
「え?でも俺は野球・・・」
「アホ!野球は投手だけじゃねぇだろ!前にお前の診察受けてた先生に聞いた。お前は肘をやってから投手としての選手生命は絶望だと言われたが、野手をやったりするのは問題ないそうじゃねぇか。だからチームの皆と話し合って決めたんだ。この背番号6を付けて、グラウンドに戻ってこい廉!」
「洸毅・・・」
「帰ってこいよ・・・廉」
そう言いながら手を差し伸べる洸毅。
その洸毅の手に、廉は目に浮かべた涙をグイッと拭うとガッチリと手を掴む。
「ホント何やってたんだろうな俺・・・」
「ホントだよ。馬鹿レンめ」
「はぁ・・・ただいま」
「はいよ、おかえり」
そう言い固く握手を交わす二人。
その二人に、周りにいたAquorsのメンバーは感動し涙を流しながら拍手をしていた。
「良かったねぇ〜よがったねぇ〜」
「これが男の子なんだね・・・」
涙を流しながら感動する千歌と曜。
ダイヤもうっすらと涙を浮かべながら
「ホント、男の子って面倒ですわね」
「まぁこのくらいが可愛いよ」
「oh〜♩友情ってやつね♩」
涙を流しながら感動する彼女達に恥ずかしそうにする廉と洸毅。
洸毅は帰っていき、廉はと言うと最初に殴られた時に口の中を切っていた為、千歌の家で治療をすることになった。
「はい、染みるよ〜」
「いっつ!!」
曜が傷口に消毒をし痛がる廉。
すると花丸が廉に話をする。
「でも良かったずら。廉君がもう一度野球を始めるずら」
「あはは・・・慣れてないポジションだけどね」
「ルビィ応援するから」
「私も〜♩」
「勿論私たちもね♩」
花丸、ルビィに続き千歌と曜も言う。
廉は恥ずかしそうに照れていると、ヨハネの方を見るとヨハネはビクッとする。
「あれれ〜?善子ちゃんはどうずら〜?」
「愛しの廉君が頑張るんだよ〜」
花丸と曜がヨハネの両隣に行き挟む。
ヨハネは顔を真っ赤にしながらも廉を見ながら言う。
「わ、私も・・・その、応援・・・してる、から」
「聞こえないずら〜」
「応援してるわよ〜!」
大きな声で言うヨハネに廉はニコッと笑顔を見せる
「ありがと♩よっちゃん♩」
「う、うん・・・ってヨハネよ!!」
笑い合う廉たち。
殴られ痛い思いをしたが、廉はやっと自分の場所へと戻ることが出来たのであった。
次回へ続く。