あの日から、廉はAquorsの練習に顔を出さなくなった。
勿論今回はいい意味である。
再び野球の世界へと戻ることの出来た廉を、彼女たちは快く送り出した訳であるが一人の少女は少し違っていた。
「はいワンツーワンツー!」
果南がパンパンと手を叩きながらタイミングを取りながらダンスの練習をする。
しばらくして休憩をとる。
座ったり、立ったりとしながら飲み物を口に含む彼女たち。
「はぁ・・・」
そんな中、ヨハネは壁に寄りかかる様に座り小さくため息をついていた。
「善子ちゃん♩」
「だからヨハネよ!・・・何よズラ丸」
ヨハネの隣に座ってくるのは花丸。
ペットボトルの飲み物を飲むヨハネに花丸はニヤニヤしながら言う。
「廉くんの事、気になってるずら?」
「ぶっ!!??」
花丸の言葉に思わず口に含んだ飲み物を吹き出してしまうヨハネ。
「ゲホッ!ゲホッ!・・・なななななんでよ!?」
「バレバレずら。練習中もボーッとしてるし」
「べっ!別にそんな・・・事は・・・あぁ・・・」
言い訳をしようとするヨハネだが、次第に声が小さくなる。
その光景に花丸はニヤニヤする。
「妬いちゃうずら」
「何よそれぇ」
「善子ちゃんが心配してる事にずら」
「だから別に心配なんか・・・まぁ少しはしてるけど」
「素直になったね善子ちゃん」
「だからヨハネだってば!」
ヨハネの反応を見て面白そうに笑う花丸。
「もう!」と怒りながら飲み物を口に含むヨハネ。
「あれから連絡とか取り合ってないの?」
「たまにかな・・・向こうも練習で忙しいみたいだし」
廉はどうにか遅れを取り戻すためにもう練習の日々を過ごしている様で、ヨハネとも夜に少ししか連絡を取り合っていないらしい。
「まぁ頑張ってるみたいだしぃ?いいんじゃない?」
「惚気ずら♩」
「ち、違うわよ!」
「善子ちゃんが怒った〜♩」
「もう〜!ズラ丸〜!」
そんなやりとりをする二人。
その二人にルビィが近寄る。
「何話してるのぉ?」
「善子ちゃんの惚気を聞いてるずら♩」
「そうなんだぁ〜ルビィも聞きたいなぁ♩」
「だから違うってばぁ!」
3人でワチャワチャしながらじゃれ合う。
「あ〜3人で何楽しそうな事してるの〜?」
そこに千歌も加わり収集がつかなくなりつつある中、ダイヤがハァッとため息を吐き止めようとした時だった。
「あれ?誰か電話鳴ってない?」
曜の言葉に全員が静まり返る。
シンとなると確かに誰かのスマフォに着信があったのだろう、着信音が鳴っている。
「私?!」
そう言うのはヨハネ。
カバンからスマフォを取り出し相手の名前を確認すると表情が少し変わる。
「誰?」
「いや・・・レンち〜よ。」
「廉くん?」
「うん。出るわね」
相手の名前を聞く曜に対しヨハネは廉の名前を出し、電話を出る。
「もしもし・・・うん久しぶり。うん・・・うん」
電話に出たヨハネの表情が少し緩む。
久しぶりの声に嬉しいのか、ヨハネの表情に少し笑顔が見えると、他のメンバーはニヤニヤとヨハネを見る。
「うん。え?!」
驚いた顔を見せるヨハネに周りのメンバーたちも互いに顔を見合わせ何だろう?と小さい声で話す。
「わかった・・・うん。じゃあね」
少し話をして電話を切るヨハネ。
「善子ちゃんどうしたの?」
花丸がヨハネに質問をすると、ヨハネは花丸を見ながら話す。
「レンち〜がね、試合に出るんだって」
「お〜、凄いじゃん」
ヨハネの言葉に喜ぶのは果南。
だがこれには続きがある。
「それでね、今度の試合。私たちに見に来て欲しいんだって」
「・・・・」
「試合に見に来てって」
『エェェェ!?』
翌日、廉が彼女たちの所へ来た。
当然先日の事を聞くために呼び出したのもある。
「廉くんどう言う事?」
質問をする果南。
その質問に廉は頭をポリポリと掻きながら話す。
「今度の日曜日、秋季大会の県大会が行われるんです。それに皆に来てもらおうと思って」
「え?いいの?」
「いいも何も、皆がいなかったら俺は・・・多分野球してなかっただろうし。だから見てもらいたんだ。俺の姿を。」
そう力強く話す廉。
その彼の言葉に、彼女たちは拒否する理由はなかった。
「勿論だよレンち〜!」
「私たちでよければ応援するよ!」
千歌と曜が嬉しそうに話す。
そして他のメンバーからも声をかけられる廉は嬉しそうに笑顔を見せる。
「よっちゃん」
「ヨハネよ・・・何?」
最後に廉はヨハネの所へと向かう。
「応援しててね」
「あ・・・うん」
笑顔を見せながら話す廉に顔を赤くしながら頷くヨハネ。
そんなヨハネに他のメンバーは茶化す。
「うゆ?何赤くなってるの〜?」
「惚気ずらぁ〜」
「ち、違うわよ!!」
茶化すルビィと花丸を追いかけ回すヨハネに笑う廉。
「じゃあ、俺は行くね。詳しい時間とかはまた連絡する」
「あら。もう行ってしまいますの?」
「はい。まだこれからも練習なんで」
「無理はなさらないでくださいね」
「勿論です♩もうあんな思いはしませんから」
ダイヤの言葉に笑顔で答える廉。
そして去ろうとする廉に、ヨハネが呼び止める。
「レンち〜!」
「よっちゃん?」
「頑張りなさいよ?!」
「勿論♩」
互いに笑顔を見せる廉とヨハネ。
そして廉は皆に深くお辞儀をすると背を向け走り出して行った。
廉の新たな野球選手としての門出に、ヨハネ達が立ち会うことになったのであった。
次回へ続く。