奴隷蛮行――そのメイド、特殊につき。   作:紙谷米英

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奴隷蛮行【14】

【14】

 

 一歩、また一歩と、ライトの光芒を頼りに、ブリジットは腰を落として天井裏を進んでいた。分厚く積もった埃は、毛足の長い絨毯よろしくブーツを包み込んだ。高級絨毯と違い、足を浮かせる度に胞子めいた綿が舞った。実際に、胞子も舞っているのだろう。防塵マスクを支給してくれた師に、ブリジットは改めて感謝した。無策で進んでいたら、得体の知れない菌類の苗床にされていた。

 視界を常に埃が舞うせいで、乱反射した強い光が網膜にダメージを与えていた。ライトを消して手探り進む考えは生理的に受け入れられず、そこかしこで飛び出している釘を思えば、眼精疲労もやむなしと耐え忍んだ。破傷風にでも罹れば、それこそ主人の世話が出来なくなる。本物のダイヤモンドダストはちっとも幻想的ではなく、目と気管と心に厳しかった。

 一生分の埃を踏みしめた先に、ブリジットの捜し物が見つかった。歩測から、店舗の中央辺りにいると分かっている。いびつな形に積もった埃をブーツのつま先で払うと、足下からほのかな光が差した。売り場に繋がるハッチの発掘に、ブリジットは何度もキックしなければならなかった。

 この下にリタがいる。

 ハッチには、天井裏へ登るのに使ったのと同様の鉄梯子が備え付けられていた。先程のものより老朽化が顕著で、使用するには危険が伴うだろうと、ブリジットは判断した。その予想通り、押したり引いたりして梯子の除去を試みていると、梯子を固定していたボルトがへし折れた。結果的に梯子をハッチから外せたものの、もし使っていたらと思うと総毛立った。

 梯子を壊し……壊れたので、別の昇降手段が必要だった。持つべきものは頼れる先達で、ちゃんと後輩の面倒を見てくれていた。ブリジットは周囲の柱を見て回り、シロアリの形跡がないか注意を払った。どれも良の評価に至らなかったが、可とする一本にクライミングロープを舫《もや》った。ロープを幾度か引っ張って強度を確かめ、次の一回で柱が折れそうな予感がして、程々でやめておいた。

 ロープの端を手元に、ブリジットはハッチのそばに屈んだ。自分の中のスイッチを入れようと深呼吸を試み、すぐに考え直した。防塵マスク越しとはいえ、こんな場所で停滞している気体に、感覚が研ぎ澄まされるものか。

 精神統一は叶わず、手には首締めの時の痛みが残っている。外部からの情報支援はなく、手持ちの火力も乏しい。万全の態勢ではなかったが、そこに甘んじれば使用人の矜持に反する。クラプトンの一使用人として、それこそ家名に泥を塗る行いである。如何なる状況においても常に持てる技倆を発揮してこそ、完全無欠のメイドというものだ。

 ハッチの開閉レバーの位置を記憶すると、ブリジットはライトを消して、シグをホルスターに収めた。光が失せた途端に、腐臭にまみれた闇が舞い戻ってきた。

 ……よし。

 網膜に残る像に従ってレバーを引き、ハッチのロックを解除する。ゆっくりと、間違っても手を離したりしないよう、正方形の突入口を開いていく。暗闇に慣れ始めていた眼球を、蛍光灯の光が至近距離で焼いた。

 ハッチが垂直になったところで手を離し、腐った下界を覗き見た。女の勘か、はたまた埃が落ちてきたのか、天井の動きにリタは気付いていた。ブリジットが目配せすると、敵が上方に注意を向けないように俯いた。

 リタの他にも気取った者がいないか見回すと、他の人質は泣き疲れて眠るか、まだ泣いているか、薬物が切れて落ち着きを失っていた。

 さて、と……

 ブリジットがロープを投げ落とそうとしたその時、獰猛な叫びが店内に響き渡った。店内の注意が店の一角、トイレへと向けられる。

 まさかというブリジットの懸念に応えて、トイレのドアが跳ね開けられた。火事場に置かれた馬鹿が、本当に馬鹿力に目覚めてしまった。トイレでミイラにしてやったダウダルが、五体満足で復活を遂げてそこにいた。

 赤熱する体中から湯気が立ち上り、両腕に走る痛々しい生傷から血が滴っている。パラコードを人力で引きちぎる生体兵器に、ブリジットは一種の畏敬を抱き始めていた。それが良くなかった。

 今のダウダルには、獣の勘が備わっていた。自分に向けられた視線を探知するくらい訳はない。天井から不自然に垂れる板、その真上からこちらを見下ろしている仇敵を認めると、第二ラウンドの開始に咆えた。残念ながら、相手方に再戦の意思はなかった。

 ブリジットは売り場の什器目掛けてロープを投げ落とし、エプロンの下に左手を潜らせた。滑りの良い絹布を介してロープを掴み、階下に身を躍らせる。ロープ降下の最中、ダウダルがよだれを撒き散らして近づいてくるのが見えた。

 もう、言ったじゃないですか――

 下からの風圧にスカートがはためく。一瞬だけ見えたホルスターに、銃の影はなく、既にブリジットの右手の中で照準を定めていた。

 ――ここからはお仕置きの時間だって。

 本人の口から言ってはいないのだが、どうあれ熱いお仕置きがブリジットの右手から放たれた。撃鉄が落ちると同時に雷管から火花が散り、ヒトの知覚を超えた速度の燃焼が金属塊を超音速で飛翔させた。

 下半身に受けた衝撃を、ダウダルは構わずにいた。そうしていられたのは、きっかり一秒間だけだった。窒息した時でさえ味わわなかった未曾有の苦痛に、ダウダルはその場で前のめりに倒れ、什器に激突した。大量の商品が降り注ぐ先で、ダウダルの悲痛な叫びが木霊する。

 銅で被甲された鉛弾は銃身から飛び出した後、あやまたずダウダルの陰嚢、そして睾丸を吹き飛ばしていた。気絶しないだけ、大したタマである。もっとも、痛みで気絶さえ許されないのかもしれないが。

 什器に足が着くと同時にブリジットはロープを手放し、その場に折り敷いて一発を放った。会計カウンター奥の消化器に穴が空き、白煙が噴き出した。

 

 床を跳ねる空薬莢を見ても、リタは現実味が持てなかった。あのお淑やかなブリジットが、すごくやばいやつになってる。信じたくはなかったが、頭上からの声がリタを叩き起こした。「伏せて!」かつて他者を言い負かしてきた自分と同じ声音に、リタは従った。冷たい床に鼻を押しつけながら、親友の無事をひたに祈った。

 でも、本当にこれでいいの?

 

 会計カウンターの中では、消火剤をまともに吸ったカヴィルがむせていた。短絡的な指示を同胞にがなったが、聞き取れたものではなかった。

 ブリジットはつま先を支点に方向転換し、出入口脇の消火器も撃ち抜いた。一本目の破裂で消火器の危険性に気付いたのか、マッキニーはその場から離れていた。

 消火器二本分の白煙が、店内の南北に厚い煙幕を展開していた。煙幕が敵の利に働く前に片をつけるべく、ブリジットはもうちょっとで床に届かなかったロープを滑り降りた。方々から上がる悲鳴が、ブリジットが発する音をかき消してくれた。

 トイレの近くでは、スプリングが天井へ向けて闇雲にサブマシンガンを連射していた。弾倉の二十発を一秒あまりで撃ちきったところで、カヴィルに肩を掴まれた。

「何だよ!」

 ボスの言葉は相変わらず聞き取りづらかったが、奴隷への流れ弾を懸念しているのだと、スプリングは理解した。

「まだ言ってんのか! やっぱりおつむが湧いてるな!」

 白煙の中でオレンジの閃光がほとばしり、カヴィルの手からスプリングが離れた。白けた視界の中で、スプリングが床に寝そべって茹でたエビのように丸くなっていた。両手が押さえる股間から広がるどす黒い液体に、肉の欠片が沈んでいた。

 ぎりぎりで保っていた正気が突き崩された。手にしていたショットガンを前に放り、カヴィルは腰を抜かした。発砲炎の上がった辺りから、小さな足音が聞こえてくる。次は自分なのだと涙を流した。

 だが、そうはならなかった。足音はカヴィルから遠ざかり、また嗚咽と呻きだけの世界が戻ってきた。

 ブリジットが銃を高く構えて什器の合間を縫っていると、右手で男が口汚い罵りを連呼するのが聞こえた。什器を遮蔽に使いながら音の主を探ると、犯行グループで最も若いラスキンが壁を背にして強がっていた。撃つ用意もない拳銃を滅茶苦茶なスタンスで握り、自分の前の扇状の空間でぶんぶんやっている。

 ブリジットは近くの棚から商品を掴み、息を殺してラスキンに忍び寄った。相手は自分の声しか聞こえていないようで、まったく気付かれずに真横を取れた。

 ぬうと現れたホワイトブリムの影に気付き、ラスキンは銃口を向けようとした。遅いとばかりにブリジットの腕が狙いを逸らし、シグを握る右手を叩きつけて、ラスキンの銃をはたき落とした。床を滑る銃をよく見れば、撃鉄を起こしてさえいなかった。

 武器を失ったラスキンのでたらめなフックを最小限の動きでかわし、ブリジットは敵の懐に滑り込んだ。上から下まで、全てが人体の急所だった。敵の真下から腕を突き上げて喉を掴むなり前方へ腰の球体運動で身体を持ち上げ、そのまま床に押し倒した。

 背中を強打して肺の空気を吐いたラスキンへの追い討ちに、ブリジットは馬乗りになって動きを封じた。時と場所が違えば、素敵な光景だろう。直後にプレゼントまで控えているのだ。

 ブリジットはラスキンの左手を床に押さえつけると、手の甲にテント用のペグを突き立てた。絶叫するラスキンの右手に、もう一本細長いペグが打ち込まれる。女の力でどこまで通用するか不安だったが、床材がもろいおかげで、そこそこ深く刺さってくれた。

「失礼ですが、おいくつでしょう? かなりお若いように見受けられますが」

 「馬鹿」と「ママ」が帰ってきたので、ブリジットはラスキンが取り落としたCz75を拾い上げた。銃身を握ると、左手のペグを斜めから叩いた。今にも吐きそうな喘ぎが、ラスキンの喉を震わせた。

「十九、十九歳だ!」 

「左様ですか」

 手元も見ずに、ブリジットはシグの引き鉄を絞った。プレゼントのお返しを、ラスキンは己の生殖器でまかなった。

「お若い内に芽を摘むのが宜しいかと」

 白目を剥いて泡を吹くラスキンを捨て置き、ブリジットは次の男を見繕った。

 出入口の近くを捜索していると、前方から拳銃が床を滑ってきた。最寄りの什器に身を隠すと、銃の持ち主と思しき男が語りかけてきた。

「頼む、殺さないでくれ!」

 ブリジットは身を隠したまま、輪郭だけ見える男に照星を重ねた。「ええ、殺しませんとも。グロック以外の武器も捨てていただければ」

 男の影が小さくなり、安物の折り畳みナイフがブリジットの脇を抜けていった。「これで全部だ!」

「信じられるとでも?」

「本当だ!」

 ブリジットの勘が、嘘ではないと判断した。

「お姿をお見せになっていただけますか? ゆっくりと、両手を上に」

 ぎこちない動きで、霧の奥からマッキニーが現れた。

「もう少しお近づきに」

 マッキニーがさらに一歩を踏み出したが、ブリジットを恐れて歩幅が狭くなっていた。

「ほら、もう何も持ってない」

 ブリジットの射貫く目が、マッキニーの全身を走査した。太ってはいるが、体幹はしっかり鍛えている。遠目で見た時よりも、だいぶ頑丈そうに思えた。具体的には、穴ふたつくらいは耐えられそうだと。

「お願いだ、許してくれ」

「はい」

 許しません。

 右足の親指、左足の甲、股間の順に一発ずつ撃ち込み、マッキニーとの逢瀬は幕を下ろした。涙なしには語れぬ一節であった。

 残弾が半分ほどに減った弾倉を交換しつつ、ブリジットは再び会計カウンターへ向けて歩いていた。白煙が薄れつつあり、残る頭目のお仕置きに速足となる。

 店舗の中央に戻ると、首筋にひりつく感覚が走った。リタがいない。さっきまでリタの尻があった床を見下ろしていると、左手で衣擦れするのが聞こえ、こちらへ目掛けて丸い物体が飛んでくるのが見えた。

 標的のクレーとほぼ同じ大きさだったので、反射的に照星を重ねて撃ち抜いてしまった。水気を含んだ破裂音と一緒に、何らかの液体がブリジットに降り注いだ。

 グレープフルーツ……。

 ブリジットは、果肉が張り付いて視界を妨げるマスクを剥ぎ取り、床に捨てた。化学兵器の類でなかったのは運がいいとして、煙幕の晴れた先に不運が繰り広げられていた。首謀者カヴィルがリタを羽交い締めにしていた。手にした拳銃を、リタのこめかみに押し当てている。

 最後まで完璧とはいかないか。

 主義への拘泥で友人を危険に晒したことで、ブリジットは悔悟の念に囚われた。

「くそ奴隷が好き勝手しやがって。おい、その銃を捨てろ!」

「お断りします」

 にべもなく返されるとは夢にも思わなかったカヴィルに、とんでもないところから追撃が掛けられた。

「ほら見なさいな。小物の遠吠えが通じる相手じゃないのに」

 おや?

 久しく聞いた語調に、ブリジットの眉が上がる。

「奴隷は黙ってろ!」

「口を開けば奴隷って……本当に語彙がないんだから」

 ……へえ。

 銃を突きつけられてなお挑発的な態度を崩さぬ少女の正体を暴こうと、ブリジットは明るく呼び掛けた。

「ねえ、マーガレット」

「次にその名で呼んだら、あんたでもでもひっぱたくからね」

 期待通りの返事だ。完璧を諦めるには、まだ早いかもしれない。ブリジットはいたずらっぽく笑い、リタが不敵な笑みで応じた。

 あとはタイミングだけ。

 女ふたりの間で交わされるやりとりなどつゆ知らず、カヴィルが喚いた。

「おい、この場を取り仕切ってるのは誰だ」

 ブリジットは質問を無視して、銃口をカヴィルに向けたまま首をかしげた。

「ひょっとして、お漏らしなさいました?」

 ジーンズから滴る黄色い液体を、無欠のメイドは見逃さなかった。

「半分不正解よ、ブリジット。ババもこいてるから」

 カヴィルの頭が給湯器めいて血に沸き立ち、銃を握る手にいっそうの力がこもった。そしてカヴィルにとって本当の不運が訪れた。

 上方からの衝撃に店舗全体が揺れ、バランスを崩したカヴィルの銃口が逸れた。

 やって!

 リタは両脚を前方に投げ出すと、両手でカヴィルの腕を押さえ込み、全体重を掛けて噛みついた。

 カヴィルが腕の痛みに悲鳴を上げていられたのは、一秒にも満たなかった。

 同じ場所に向けて、ブリジットが三発を放った。正確には、陰茎と左右の睾丸の破壊に、乙女の愛と勇気と怒りをぶちかました。

 ブリジットはリタに駆け寄り、リタは大事なもの全てを失いくずおれるカヴィルの顎に正拳を放ってから、ブリジットと抱き合った。闘いの後に強まる友情である。

 抱擁もそこそこに、ブリジットはリタから身を離した。

「名残惜しいけど、もう行かないと」

「もう会えないの?」

 裏口を塞ぐバリケードを次々に取り除く背中が、涙声に肩越しの視線を投げた。「前のポケット!」

 リタがエプロンのポケットを探ると、電話番号を書いたメモが入っていた。裏返すと、かつて自分を奮い立たせたモットーが、作者不明のキスマークで彩られていた。訳が分からなかったが、どうでもよかった。

「こんな目にまた遭うつもりなら、連絡してね」

 ブリジットが抜けた裏口ドアが閉まるのと時を同じく、天井から垂れ下がるロープを伝って、ふたりの特殊部隊員が降下してきた。

「あれ、全員やられてる?」

「ほら言っただろ。さっさと屋上をぶち抜かないからだ。しかしまあ……」

 荒れ果てた店内を一瞥して、ダニエルは呟いた。

「冒す危険は、せめて自分で選びたいもんだね」

 

 

【エピローグ】

 

 まったくひどい一日だった。あまりにひどくて、"ひどい"しか言葉が出てこないくらいひどかった。車のハンドルを握りながら、そんな嘆きしか思い浮かばない自分の頭が一番ひどい。

 法定速度を守りながら、家に着くまで今日の出来事を思い出そうとした。始めは脳が想起を拒否したものの、四回目で折れてくれた。

 二〇一二年に控えるロンドン五輪に向けて、SASは会場近辺の警備状況の視察と、その事前打ち合わせに招集された。ミュンヘン五輪の再来を防ぐのは分かるが、スポーツに興味のない身としては、日帰りといえど気乗りしない出張だった。前言撤回、ひどく気乗りしないひどい出張だった。

 ひどい日はもっとひどくなるものだ。数時間の会議と軽い視察で帰れるはずだったのに、何を思ったか兄貴のヴェスが先方のお偉いさんと親睦を深めるとかで、ホテルのスイートを貸し切っての延長戦が始まった。俺を巻き込んで!

 どういう訳か携帯は没収されるし、スイートのくせにテレビの一台もなく、居心地の悪い煌びやかなレストランで、はげた背広組のつまらない息子自慢を延々と聞かされる苦行を強いられた。何よりひどいのは、どんなにボトルを空けてもワインしか出てこない!

 こんな念仏を、車を走らせてから実は既に十回やっている。ああ、十回だ。本格的にひどいことになってるが、なんとか自宅ガレージに到着だ。偉いぞ、俺。ひどいぞ、兄ちゃん。

 ひどい足取りで玄関の鍵を開くと、奥からふんわりとガーリックトーストの匂いが漂ってきた。そう、ここからはもうひどくない。

「お帰りなさいませ、旦那様」

 車の音を聞きつけていたのだろう、ブリジットはショットグラスにウィスキーを用意して待っていた。朝と給仕服の色が違うのは、おめかしのつもりだろうか。ここのところ自惚れの強くなる自分が怖い。

 受け取ったグラスを一口やると、ナッツとキャラメルの奥深い味わいが雑見なく胃へ沈んでいった。一日分の棘を洗い流す、清めの一杯。ブラックブッシュでなければこうはいかない。

 グラスの残りを干すと、もう辛抱たまらずブリジットを抱き寄せた。

「まあ、ヒルバート様。おつらいことがあったのですね?」

 愛するメイドさんの胸の中で何度も頷き、あるべき場所に戻った実感を噛みしめる。ブリジットの髪からかすかに漂う柑橘の匂いに、何もかもが些末に思えた。

 ……そういや、うちには牛乳石鹸しかないはずなんだが。

 

 




 読了していただき、ありがとうございます。完結まで5年近くを要してしまい、申し訳ございませんでした。
 私事でまとまった時間が取れずにおりましたが、この三が日を以て当番外編の幕を下ろすべきと考えて、このような駆け足での集結とさせていただきました。後日、加筆修正などを行いましたら、改めてお報せ致します所存です。
 以降は放置していた『奴隷迎合』の加筆修正、ならびに更新再開に着手いたします。
 重ねて、奴隷蛮行にお付き合いいただきありがとうございました。奴隷邂逅と奴隷迎合の合間でブリジットに生じた変化を、わずかでもお楽しみいただけておりましたら幸いです。

紙谷米英
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