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「う、海風…」
「ふぇ?あ、天津風…これは…その……」
海風の胸元にはしっかり抱きしめられた天津風の服があった。
「な、何をしていたの?」
「せ、洗濯を…」
「そ、そう…」
海風はそそくさと洗濯物を洗濯機に入れてスイッチを入れる。ふぅっと一息つこうとした瞬間、海風は抱きつかれた。
「あ、天津風?」
海風は抱きついてきた天津風に声をかける。
「ずるい…」
「ふぇ?」
海風の耳元で呟くように天津風は言う。
「海風は私の匂いを嗅いでたのに、海風の匂いは嗅いじゃダメなの?」
「ふぇぇぇ…」
予想外の天津風の言葉に海風は混乱する。
「そばにいて欲しいなら言ってよ。」
「天津風…」
「はい。」
そう言って天津風は海風から離れる。
「仕事に戻るわよ。」
「あの…」
「ん?」
「後で甘えてもいい…ですか?」
「…仕事が終わってからね。」
そう言って天津風は足早に去っていった。
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夏のある日、天津風と海風は寮の談話室にいた。
「今日も暑いわね…」
「今日は丑の日らしいですよ。」
「うのつくものだっけ…うーん…」
「あの…天津風、どうして海風をじっと見ているのですか?」
「う…海風…」
「ふぇ?あ、あの…海風は食べられないですよ?」
「そうね…」
「冷たいお茶置いて置きますね。」
「ありがとう…」
「天津風、大丈夫ですか?」
「少し、暑さでやられているかもね…」
「あの…海風の部屋なら涼しいのでそこで休みません…か?」
「そうなの?それなら、そうしたいわ。」
「では、行きましょうか。」
「うん。」
「部屋でなら甘えてもいいですから…」
「え?」
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「暑い…」
「天津風、大丈夫ですか?」
「海風の部屋は他よりは涼しいからいいんだけど…」
「休暇中ですからもう少し楽な格好をしませんか?」
「うん…」
「髪留め外しますね。」
大きなクッションの上で伸びてる天津風の髪留めと吹き流しを海風は外す。
「海風も手袋外したのね。」
普段は手袋に隠れている海風の白い肌が目に入った。
「部屋の中なら焼けませんから。」
天津風の髪に触れながら海風は言う。天津風の髪はサラサラで指通りが気持ちよかった。
「天津風の髪はきれいですね。」
「海風だってきれいじゃない。」
「触ってみます?」
海風は三つ編みを天津風の手元へ垂らす。
「髪もきれいだけど、編み方もきれいね、どうやってるの?」
「普通に編んでいるだけですよ。」
いつの間にか海風も天津風の隣で横になっていた。
「長いと大変じゃない?」
「慣れると簡単ですよ。」
天津風は無意識に海風の三つ編みに触れる。海風の三つ編みはきれいに編まれ、髪はツヤツヤで触っていて飽きなかった。海風も天津風の髪が気に入ってずっと触っていた。天津風が海風の髪に触れながらぼーっとしていると海風が腰に手を回してきた。
「海風?」
「その…こうすると暑いのは分かっているんですが…その…」
「…いいわよ。」
「でも…」
「海風ならいいわ、嫌じゃないし…」
海風はそっと腕に力を入れると天津風を抱きしめる。夏の不快な暑さとは違う暖かさを感じた。
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「天津風、これはどうですか?」
雑誌を見ていた海風が天津風に声をかける。
「海風?何かしら、って水着?」
「今年の水着、新調しようかと思いまして、天津風はどれがいいと思いますか?」
「海風が一番気になったのでいいんじゃない?(あっ、この水着かわいい…)」
「うーん…」
「気になるのはたくさんあるのですが…天津風が選んでくれませんか?」
「えっ、私が?」
「去年、おしゃれな水着を着てましたよね?」
「な…なんで知ってるの?」
「たまたま、見かけたので…」
「う…海風だって、かわいい水着持ってるじゃない。」
「ふぇっ?」
「私だって…去年、海風の水着見てるわよ。」
「ふぇぇぇ…、なんだか恥ずかしい…です…」
「そ、そうね…あっ、これとか海風に似合いそう…」
「あ、確かにこれはいいですね。あれ?この水着…天津風のに似てませんか?」
「えっ…あっ…た、確かに似ているわね…」
「……。」
「……。」
「あ、あの…これ…天津風に似合いそう…」
「どれ…この水着かわいい…あれ?この水着どこかで…」
「……。」
「あ……。」
「ま、また今度選びましょうか…」
「そ、そうね、そうしましょう。」
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「ただいま戻りました。」
「お帰りなさい。」
遠征から戻ってきた海風はベッドに腰掛ける。
「ふぁぁ…」
「昨日も遅かったし、今朝も早かったからね。」
「はい…後で、少しお休みしますね。」
眠たげな海風のそばに天津風は近づくと、そのまま海風をベッドに押し倒した。
「あ、天津風?」
海風を押し倒した天津風は、そのまま海風を抱きしめると胸元に顔を埋める。
「寂しかったんですか?」
「……。」
海風が天津風の頭をそっと撫でると、天津風の腕が少し緩んだ。
「このまま一緒にお休みしますか?」
「うん…」
海風は毛布を手繰り寄せて二人にかけた。
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「海風、朝よ、起きて。」
「ん…あまつかぜ…ですか…」
「海風、起きて。」
海風を起こすためにベッドに腰掛けていた天津風の腰に海風の腕が回され、天津風はベッドに引き込まれた。
「ちょっ、海風。」
突然の事に天津風は抗議の声を上げる。
「やっぱり、天津風は温かいです…」
「海風、寝ぼけてないで、起きて。」
「…。」
穏やかな寝息をたてて、海風は再び眠り込んでしまった。思いのほか海風の抱きつく力が強く、天津風は身動きができなかった。
「もう…」
あまりにも海風が穏やかに眠っているので、天津風は起こすのをためらい、起きるまで待つことにした。
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「海風、大丈夫?」
「天津風…少し休めば大丈夫だと思います。」
「そう言って、帰ってきてから寝ていたじゃない。」
「うぅ…」
「もう…少し奥によって。」
「こうですか?」
「よいしょっと。」
「天津風?」
「ほら、一緒に寝てあげるからしっかり休みなさい。」
「天津風…あったかいです…」
「もう寝ちゃったわね。おやすみ、海風。」
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「あれ?このにおい…」
「あっ、天津風、どうしました?」
「海風、何か焼いてるの?」
「はい、アップルパイを作ってみようと思いまして、もうすぐ焼き上がりますから、味見してみますか?」
「いいの?」
「少し大きめに作ったので、後で持って行こうと思っていましたから。」
「そう。楽しみにしてるわね。」
「焼き上がるまでもう少しお待ちくださいね。」
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天津風進水日記念SS(2017/10/19)
一〇月一八日の二三○○、天津風の部屋の扉を誰かがノックした。
「誰かしら?」
そろそろ寝る予定だった天津風は扉に向かうと鍵を開けた。
「あっ…。」
「海風?どうしたの?」
部屋の前には寝間着姿の海風がいた。
「あの…、天津風にお話があって…その…部屋に入ってもいいですか?」
「いいけど…何かあった?」
天津風の問いには答えず、海風は部屋に入るとベッドに腰かけた。
「どうしたの?」
「あの…明日は天津風の進水日なので…その…一番にお祝いしたくて…その…。」
頬を紅く染めながら恥ずかしそうに海風は言った。
「あっ、そ、そうなんだ…。」
海風の意外な理由に天津風も頬を紅く染めながら隣に座る。
「えっと…どうしようか…。」
「とりあえずはこのままで…」
そう言って海風は天津風の肩にそっともたれかかる。ふと、海風の髪が自分と同じ香りがすることに天津風は気づいた。
「あれ?この香り…。」
「あ、気が付きました?実は前に頂いたものを買って使っているんです。村雨姉さんにも艶が出てきたって褒められました。」
そう言って微笑む海風の髪を天津風は無意識に触っていた。
「天津風?どうかしました?海風の髪に何かついてます?」
「あ、ごめんなさい。きれいな髪だったからつい…。」
「大丈夫です。でも天津風の髪もきれいですよね。」
天津風の髪に触れながら海風が言う。
「なんだかくすぐったいわね。」
「嫌…ですか?」
「大丈夫よ。」
しばらく天津風の髪を触っていた海風は髪から手を離すと持て余した手を彷徨わせた後、そっと天津風の腰に腕を回し抱きしめた。
「海風?」
「あ…その…なんとなく…。」
そう言って頬を紅く染めながら海風は俯く。
「おいで。」
天津風はそっと海風を抱きしめる。
「やっぱり天津風は暖かいです。」
部屋の時計の鐘がなり、日付が変わったことを知らせる。
「天津風、お誕生日おめでとうございます。」
「ありがとう。」
「あの…今日はここに泊まってもいいですか?天津風と一緒にいたいんです。」
「そ、そうね、もう遅いし、早く寝ようか。」
部屋の明かりを消すと二人で一緒にベッドに入る。
「おやすみ海風。」
「おやすみなさい天津風。」
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海風進水日記念SS(2017/11/27)
一一月二七日、中規模作戦中の合間の束の間の休日。駆逐艦ツートップであり、秘書艦でもある、海風と天津風は当然、作戦に参加しており、今は休暇が与えられていた。
「今年も冷えますね。」
談話室で温かいお茶を淹れながら海風が言う。
「そうね。」
海風の淹れたお茶を飲みながら天津風が相槌を打つ。
「天津風は寒いのは苦手ですか?」
「そこまでではないけど。」
「海風は少し苦手ですね。」
「そう…。あ、そうだ。」
持っていた紙袋の中から天津風が取り出したのはアイスブルーのマフラーだった。
「今日、進水日でしょ。これ、似合うと思って…その…。」
「あ、あの…ありがとうございます。」
「カシミヤだからすごく暖かいと思う。」
天津風からマフラーを受け取ると海風は早速首に巻く。
「すごく暖かいです。」
「そう、そのマフラーよく似合っているわ。」
「ありがとうございます。でも、少し長いですね。」
「少し大きめのストール代わりにもなるやつだからね。」
「う~ん…。あっ、天津風、少しこちらに来てくれますか?」
「どうしたの?」
天津風が近寄ると海風は、マフラーを少し解くと半分を天津風の首に巻きつける。
「これで、もっと温かいです。えへへ。」
「えっと…。」
天津風が真っ赤になって戸惑っている間に海風はそのまま天津風に抱きつく。
「これで、冬も寒くないですね。」
「もう…。」
真っ赤になって照れながら、天津風は海風をそっと抱きしめる。
「お誕生日おめでとう。海風。」
「ありがとうございます。天津風。このマフラー大事にしますね。」
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クリスマスイブ2017
一二月二四日夜、駆逐艦寮のクリスマス会が終わった後、海風は天津風の部屋を訪れていた。
「楽しかったですね。」
ベッドに腰掛けた天津風の肩に海風が寄りかかる。
「そうね。去年よりも人が増えたし。」
「そういえば、今年は天津風もケーキ食べていましたね。」
「今年はって、去年も食べていたわよ。」
「去年は初風が持ってきた分、断っていましたよね?」
「あれは、その…ダイエットしてたから…。」
天津風の声はだんだん小さくなっていった。
「今年は良かったのですか?」
「萩風がみんなに気を使ってというか、あの子、健康オタクな部分があるから、今年はヘルシーにしたって。それに、今年は海風も手伝っていたんでしょ?」
「知っていましたか。」
「せっかく海風が作ってくれたのに、食べないわけにはいかないでしょ。」
言ってから、自分がおもわず言った事の意味を理解し、天津風は真っ赤になった。
「あの…美味しかった…ですか?」
天津風につられて海風も赤くなりながらたずねる。
「うん…美味しかったわ。」
「あ、ありがとうございます。」
お互いに真っ赤になっているせいで、変に固くなってしまい、それがおかしくなって二人は笑った。
「そんなに固くならなくてもいいのに。」
「先に恥ずかしがったのは天津風ですよ。」
ひとしきり笑ったあと、海風はそっと天津風の腰に手を回し抱きしめる。
「天津風。」
「なあに?」
「えへへ、こうして来年も再来年もずっと天津風と過ごしたいですね。」
「そうね。」
「えい。」
唐突に海風は天津風をベッドに押し倒す。
「海風?」
天津風の問いに海風はギュっと抱きつく。
「もう…。」
天津風はそっと海風を抱きしめる。
「天津風、今夜は泊まってもいいですか?」
「最初からそのつもりでしょ。」
「えへへ。」
「まったく…。」
「天津風。」
「なあに?」
「海風、幸せです。」
「ずるいわよ。」
そう言って天津風は海風を抱きしめた。
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大晦日の夜
大晦日の夜、駆逐艦寮では宴会が行われていた。
「みんな、ちゃんと飲んでる?ん、飲んでるわね。」
陽炎はグラスを片手に声をかけて回る。
「ねぇねぇ、さっきから天津風見ないけど、どこに行ったの?」
辺りをキョロキョロしながら時津風が言う。
「さっき、疲れたから部屋に戻るって言ってた気がするけど。」
隣の初風が答える
「そっかぁー。ゆきかぜー、お酒飲もー。」
「ふわぁ、雪風、もうお腹いっぱいです…。」
「あー、初風、悪いけど雪風を部屋まで連れていってくれる?」
雪風の様子を見た陽炎が言う
「はぁ、まったく手がかかるわね…。」
初風は立ち上がると雪風を支える。
「陽炎、うちもちょっと席はずすわ」
黒潮が酔いつぶれた親潮を肩で支えながら言う。
「了解、頼んだわ。」
宴会が始まってそれなりに時間が過ぎたせいか、徐々に酔いつぶれていく数が増えていく。
「というか、叢雲はどこよ。」
駆逐艦のまとめ役でもある叢雲の姿を陽炎は探す。
「おっと、ごめンって陽炎か。」
「あ、江風、叢雲見てない?」
「叢雲なら、あっちでつぶれてたぞ。」
「マジで…。」
「江風もちょっと山風の姉貴を部屋に送らないと行けないから席はずすわ。海風の姉貴もいないし。」
「えっ、海風もいないの?」
「もってことは…ははぁン、だいたい分かったわ。ま、こっちは頼むわ」
そう言って江風は山風を背負って部屋を出て行った
「そうなると、残るは…。」
「まつかぜー、早くお酒。」
「姉貴、少し飲み過ぎじゃないかい?」
「そんなことないわよ、いいから早くお酒。」
「はぁ…。」
「あー、松風、神風どこか知らない?」
「神風の姉貴なら…」
「呼んだ?」
陽炎の後ろから声がする。
「どこか行ってたの?」
「旗風がつぶれちゃったから、春風と運んで来たのよ。今は春風が付いているわ。」
「なるほど。」
「私も少し飲み過ぎたから、そろそろお暇しようかしら。」
「あれ、姉貴、今日はあんまり飲んでな…」
「松風、グラス空いてるわね。お姉ちゃんがお酒ついであげる。」
「あ、いや、姉貴、そんな悪いから。」
「い、い、か、ら、」
「はい…。」
神風が笑顔で松風のグラスにお酒を注ぐ。
「ところで、陽炎の用事は?」
「えっと…、実は、うげぇ…」
突如、後ろから腕で首を絞められ、陽炎は嗚咽を吐く。
「かーげーろー。」
「か、霞?、待って、それ絞まる…。」
「かーげーろー。」
「分かったから、放して…。」
陽炎の嘆願に霞は腕を少し緩める。
「で、なによ。ってか酔ってる?」
「よってなんかないやよ。」
「ちょっと、誰、霞にお酒飲ませたの。」
「お酒とウーロン茶を間違えたみたいですね。」
「って、不知火、気づいてたなら止めなさいよ。」
「不知火も今気づいたんですよ。」
「あーもー。」
「かーげーろー。」
「ごめん、ちょっと霞置いてくるから、ほら、歩くわよ。」
酔った霞を抱えて陽炎は部屋を出た
その頃、天津風の部屋を海風が訪ねていた。
「良かったのですか?」
「騒がしいのは、嫌いじゃないけど、少しゆっくりしたかったから。海風は?」
「海風もいっしょですね。それに、天津風のそばにいたかったですから。」
そっと天津風の肩に海風がもたれかかる。
「私も、海風といっしょにいたいから。」
どちらかともなく、お互いの手を握る。
「天津風、来年も、これからも、いっしょにいてくれますか?」
「当たり前でしょ。」
「天津風…」
「海風…」
二人の距離がさらに近づく。
ぼーんっと遠くで新年の訪れを告げる鐘がなる。
「天津風、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね。」
「あけましておめでとう。こちらこそ、よろしくお願いします。」