父を見送る母親と子供
「おとうさん、いっちゃうの?」
「ああ、相手さんはお父さんを指名してるしな。まぁなんとかなるだろう」
「本当に大丈夫なの?あなた」
「大丈夫だ...と言いたいところだが今回は分からん」
父からは不安の顔が浮かぶ。いつ死んでもおかしくない仕事だ。そんな顔になるのは当たり前だ。
「ナトゥーアさん、そろそろ時間です」
後ろに控えていたサイドキックの人から声がかかる。
「ああ...それじゃ、行ってくるか」
「いかないで!おとうさん!」
「はははっ、全く菜木は心配性だな」
父の服を必死に掴む子供。それを母親が剥がそうとする。
「菜木、お父さんはどうしてもいかないと行けないの。大丈夫よ、お父さんはヒーローなんだから、必ず帰ってくるわ」
「ああ、お母さんの言う通りだ。必ず帰ってくる」
両親から大丈夫だと言われ、やっと手を離す子供。そうすると父親はいってくると言い、玄関を出た。
それが、子供...菜木が父親を見る最後の姿だった。
「9997...9998...9999」
その部屋からはゆっくりと数を数える声が聞こえる。部屋の中には沢山のトレーニング器具で埋め尽くされており、壁には懸垂ができるよう出っ張りがある。
そこに彼はいた。
「10000...ふぅ、ここもそろそろ限界か?やっぱり鉄骨とかで作らないとな」
片手で懸垂をしていた彼は手を離し、軽く汗をタオルで拭いていく。
そうしていると、部屋には彼の母親が入ってきた。
「菜木、朝食出来たわよ。汗流したら食べなさいよ。あと、玄関に響香ちゃん来てるわよ」
「あいつまた来てるのか。めんどくせえな」
「そんなこと言うと響香ちゃんにチクっちゃうわよー」
おっと、それはヤバそうだと思い、直ぐにシャワーを浴びて朝食を摂り玄関に向かう。
「よっ」
「おはよ、今日も遅刻するつもりだったの?」
「バカヤロー、遅刻した方がロックなんだぜ」
「アンタのロック精神はイかれてるよ。早くロックに謝って」
「ロックさんごめんなさい」
と言った馬鹿な会話をしながら学校に向かう。
また、音楽の趣味でも気が合いこうして仲良くなった。
「そういえば、菜木は学校どうするの?もう決めた?」
「ああ、雄英だ」
現在中学3年の俺たちは進路を決めなきゃいけない。まぁ今のご時世、殆どヒーロー科希望だと思う。
その中でも雄英高校のヒーロー科は倍率がかなり高い。
「アタシも雄英希望だけどアンタしっかり勉強してる?筋トレしかしてないイメージだけど...」
「模試は常にA判定、今更勉強したって大して変わらん。それよりも実技試験を合格するための身体作りは常に行ったほうが良い。響香も俺の家で筋トレするか?」
「良く筋トレ飽きないね...」
ん?筋トレを飽きる?良く分からん言葉だな。筋トレに飽きなど無い。ただひたすら鍛えるのみ。
「...そうか、お前も筋肉に目覚めれば良い。音楽プレーヤーに俺が筋肉と言い続ける音声を入れといてやる」
「考えることが怖い。アタシの半径5メートル以内に入らないで」
何故だ。どうして筋肉が嫌われる
このように鬼道菜木は幼き頃に父親を亡くしてからというもの筋トレにハマってしまった。
そんな菜木にもしっかりと受け継いだ個性がある。
今日も学校を終え、家に帰り、部屋に戻る。
部屋には沢山の植物が栽培されており、中には日本では手に入らないものもある。
「そろそろこれは良いか。少しいじるぞ」
菜木が植物の花に触ると花は光り始めやがてタネになる。
菜木の個性は『植物改造』自ら植物に触れることによって、様々な改造を施す個性。
「ふむ、良い種だ。さらにこれを育てるか」
受験までは後10ヶ月、菜木の準備は始まったばかりだ。