ほんの少しのボタンの掛け違い   作:さよならフレンズ

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プロローグ

 「すげー!ここが帝都か!」

 

 辺境から出稼ぎに来た少年……タツミは、広大な街の風景に、息を呑んで感動していた。

サヨやイエヤスと共に辺境の村から名を馳せに来たタツミは

自分の村とは明らかに規模が違う圧巻の帝都の広さと共に

煌びやかな宮殿や装飾を施された建築物を見て興奮せざるを得なかった。

 

「こりゃ、出世すれば村ごと買えるな!絶対成り上ってやる!」

 

 思わず鼻歌を歌いながら、タツミは帝都を闊歩する。

自分の腕っ節は自分でよく分かっているし、先ほども一級危険種である土竜を退治してきた所だ。

ここで名を馳せて貧困の故郷の村を救う、そのために俺はこの帝都にきたんだとタツミは意気込む。

 

 「まずは入隊しないとな、兵舎に行かねえと」

 

 タツミは入隊手続きをしよう、と兵舎に向かう。

俺の実力を見れば、いきなり隊長になって下さい!とか言われちゃうかもな!

とタツミは楽観視していた。それが大きな間違いだった。

 

 「出てけー!」

 

 兵舎で剣を抜いて隊長にさせてくれ、と寝言を言うタツミは数分で兵舎から放り出されてしまった。兵士になりたい人間は多く、抽選で雇用が決まる程だったからだ。

タツミは首を捻ってどうするかを考える。仕官しなければ話にならない。

騒ぎを起こして名を売るか、とも考えたけれど捕まって打ち首になったら村に悪名を広めてしまい本末転倒だ。

 

 どうしようかと考えながらタツミが歩いていると、広場の一角に何やら人だかりができていた。

民衆が上を見上げて口々に何かを言っている。タツミも歩み寄り、つられるように上を見上げた。

 

 「なっ……!?」

 

 タツミが目にしたのは、手足が欠損した、釘を打たれて十字架に張付けられている人々だった。

もがき苦しみ、死なないように嬲られ生かされている彼らの悲鳴は最早言葉になっていなかった。

何事かとタツミは、見上げているおっさんの一人を捕まえて聞いてみることにする。

 

 「ああ、アレね。帝国に逆らった重罪人だよ」

 「逆らったからっていっても、惨すぎじゃねえか!?」

 「しー、お前も処刑されるぞ。あんた田舎者か?帝都じゃ珍しくもないことさ」

 

 中年のおっさんは、無表情にタツミに警告してきた。

タツミはその言葉よりも、そうタツミに語ったおっさんの顔付きを見てぞっとした。

無気力で、この世の全てを諦めたような表情だったからだ。

……本当に今まで何度も、同じ光景を見てきたんだなと、タツミはそう悟った。

 

 先程の光景を思い浮かべながら、タツミは俯き小股で歩みを進める。

国に逆らうものは問答無用で処刑される。

皇帝の独裁政治を思わせる見せしめの光景はタツミの脳裏に焼き付いていた。

 

 本当にこの帝都の軍人になっていいのか?

命を賭けて皇帝に仕えるべきなのか、出世して後悔しないのか?

タツミはそう思ったが、自分の頬を両手でぱんぱん、と叩いて気合を入れる。

何を迷うことがあるんだ?手段を選んでなんかいられないだろうが!

 

 「俺一人の命じゃないんだ。村の皆が幸せになるためなら、俺は後悔しない!」

 

 タツミは再び兵舎へと歩みを進める。帝都の闇を知っても尚、タツミは軍属に入ることを誓った。

 

「さっきは悪かった。一平卒でも抽選でもかまわない、俺を入隊させてくれ!」

 

 再び兵舎を訪れたタツミの顔には、先ほどまでの甘い考えとは違う、重い覚悟が浮かんでいた。

その熱意に押されて思わず差し出された書類を受け取ったタツミは、出身地と経歴を書き出し始める。

 

 書き終わった書類を兵舎に提出するタツミの瞳は、タツミ自身が気付かない間に僅かに濁っていた。

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