ほんの少しのボタンの掛け違い   作:さよならフレンズ

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完全に三人称にしたほうが執筆しやすいと気づいたので、これからそうします
心内描写を重視して展開をゆっくり進めることに決めました


運命を斬る

 ナイトレイドのアジトに帰還したラバックとマイン。

任務完了はしたものの大幅に作戦時間をオーバーし、どこか沈んだ様子の二人に対して

心配そうな表情の仲間達が駆け寄ってくる。

ナジェンダは葉巻を吸いながら、ラバックに対して静かに問いかけた。

 

「ラバック、率直に何が起こったか報告を頼む」

「チブルの暗殺には無事成功しました。帰還中に帝具使いの帝都警備隊と交戦した次第です」

 

 帝具使いとの交戦と聞いてスッとナジェンダの視線が厳しくなる。

絶大な能力を持つ帝具集めがナイトレイドのサブミッションである以上、詳しい報告を聞く必要があった。

 

「……とりあえず二人とも無事でよかった。詳細を説明してくれ」

 

 まずは部下を労わりながら、ラバックに話の続きを促す。

ラバックは帝具の詳細が記された書物の文献に載っていた

ヘカトンケイルの適合者に加えてタツミと交戦した次第をナジェンダに語った。

セリューが死亡し、タツミが新たに適合したと聞いたナジェンダの顔色は芳しくない。

帝具使いを一人倒すことができたが帝具そのものは破壊も強奪もできず、帝国にラバックとマインの顔が知られてしまったからだ。

これでナイトレイド内で顔を知られていないのはレオーネだけになってしまった、この事実は自由に動けないナイトレイドにとってはあまりにも痛い。

 

話終わったラバックに対して、ナジェンダは二人にタツミについて問いかける。

 

「それで新たにヘカトンケイルに適合した帝都警備隊、タツミについてはどうだ」

 

 タツミ。友人だった少年の名前を聞き、ラバックが僅かに身を震わせる。

ナジェンダはそんなラバックの身を案じながら葉巻から口を離し、深く煙を吐き出した。紫煙がラバックとナジェンダの間を漂う。

 

「どう、とは?」

「単純に戦力として、どの程度の脅威と見る?」

 

 この問いに関しては、実際に交戦したラバックしか分からない。ラバックは返答を重々しく口にした。

 

「帝具と適合した今、俺達一人一人と同等の実力を有しています。しかし俺が恐れているのは、タツミの潜在能力の高さです。早めに叩かないとタツミは……」

 

 ラバックが続けて口にした事実に、ナイトレイドの面々が顔を引き締める。

ブラートと幾度も模擬戦闘をし、その実力の高さを肌で体験しているラバックだからこそ彼の言葉には説得力があった。

 

「……最悪この場の誰よりも強くなるかもしれません」

 

 その場に漂うのは、重い沈黙。ナイトレイド最強クラスのブラートやアカメでさえ適わないかもしれないタツミの潜在能力の高さ。

ナイトレイドの暗殺者達に、タツミという少年の存在が脅威として強く刻まれた瞬間だった。

そんな友達だった人間に対して身を震わせるラバックの様子を、マインが心配そうに見つめていた。

 

 

会議が終わった後にラバックに話しかける人間が居た。任務を共にしていたマインだ。

 

「ラバ……友達だったタツミを殺せるの?」

 

 ラバックの前で手を下に向けぎゅっと拳を握り、俯くマイン。

いつも強気なマインらしくもないしおらしい態度にラバックはらしくもないな、と苦笑する。

 

「マインちゃんさっきの戦い見てたっしょ?だいじょうぶだって」

 

 あくまでも明るく振舞うラバック。しかしマインの懸念は収まらなかった。

ラバックがいつか咎を受けるかもしれない、と自身に口走った事実をマインは忘れていない。

時間がたったからこそ、改めて友に矛先を向ける覚悟を決める必要がある。

いつも明るく振舞っているラバックだが、気に病んでいるのは間違いないだろう。

マインのラバックに対する声色は、いつになく労わるように優しかった。

 

「分かったわ。でも何かあったら言いなさいよ。私達はパートナーなんだから!」

「マインちゃん最初は俺に死んだふりするんじゃない?とか言ってたのになー」

 

 らしくないマインに対して壁に凭れて手を頭の後ろに回し、顔をにやつかせたラバックがマインをからかう。

 

「そ、そんな話を蒸し返すんじゃないわよ!」

 

 赤面して食って掛かるマインに対してホントだろー、とニヤニヤしながら猶もからかうラバック。

ラバックはマインをからかいながら、自分を労わってくれたマインに心中で感謝した。

一方マインは、ラバックと話しながらとある覚悟を決める。

 

(タツミとか言ったわね……ラバはこう言ってるけど、気にしていないはずはないわ)

 

 マインはラバックとタツミがどんな関係だったのかは詳しく知らない。

凡そのことを想像することしかできないが、だからこそそんなマインにはできることがある。

 

(アタシがアンタの仲間を殺したのは確か。でもお前はこれからアタシとラバに襲い掛かる。だから―――)

 

 タツミの仲間を殺したラバックとマインを、タツミは決して許さないだろうし執拗に狙い続けることは間違いない。

だからラバックとタツミが殺しあう事態になる前に、マインはそれを防ぐことを決意した。

 

(――――タツミ、アンタはアタシが必ず打ち抜く!)

 

 とある世界で恋人だったタツミとマイン。しかし彼らが結ばれる可能性はとうの昔に潰えている。

タツミというナイトレイドの脅威に対して、マインは心の中で標準をあわせる。

 

本来お互いを愛するはずだった二人に対して、運命はどこまでも残酷だった。

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