ほんの少しのボタンの掛け違い   作:さよならフレンズ

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パートナーを斬る

「重ぇ……」

「文句を言わないでキリキリ歩きなさい!」

 

 正午。大きな包装紙の山を持ち上げたラバックは、その荷物の重量に足をふらつかせながら

帝都のショッピング街を歩いている。

ラバックに激を飛ばしながら、プレゼントを運ぶラバックを先導しているのはマインだ。

大量の荷物を運びながらも、ラバックの表情は明るい。その理由は女好きの彼には明白だ。

 

「これデートじゃね?いやデート!文句なんてあるわけねぇ!男冥利に尽きるってもんだぜ!!」

「単なる荷物持ちよ。まあラバが女の子とデートしてました、ってボスに言いつけてもいいけど」

 

 思い人を出されると弱い。ラバックは静かに荷物を置き、真剣な表情でマインに土下座する。

 

「スミマセンでしたマイン様」

「分かればいいのよ分かれば」

 

 高笑いをするマインがラバックには悪魔に見えた。

ぼやきながら素直にショッピングに付き合うラバックは、道行く人々の顔付きが若干明るいことに気がついた。

首斬りザンクが、帝都警備隊によってついに倒されたからだ。

ラバック達ナイトレイドにとってもザンクは標的だった。帝都警備隊に先を越されたことになる。

殺人鬼が帝都から居なくなった、それ自体は喜ばしいことだ。

しかしラバックが注目したのはそこではない。

 

帝都警備隊に、帝具持ちを倒せる程の人材が居る。

 

 帝具に選ばれた者達は、大抵それ相応の実力を持っている。

特に首斬りザンクは普通の帝都警備隊では手も足も出ない程の実力者だ。

其れを倒した存在も、同じく並外れた実力を持つと考えるのが普通。

もしザンクを倒した存在がナイトレイドに立ち向かってきたとしたら、無事に済む保証はない。

 

 そこまで考えたラバックに対して、不満そうな顔をしたマインちゃんが指を突きつける。

 

「何辛気臭い顔してるのよラバ。アタシの荷物持ちやってんだからもっと嬉しそうにしなさい」

「いやさっきまでデートだって喜んでたんですけどね!?」

「単なる荷物持ちが口答えしない!」

 

 言い訳をしつつも、ラバックに対して頬を膨らませるマインを見たラバックは反省する。

確かに羽を伸ばすオフのときに考えることではない、一緒に居るマインにも失礼だろう。

とりあえず今は、女の子とのショッピングを楽しもう。荷物持ちでもこんな機会中々ないぜ!

そう思いうきうきと鼻歌を歌いだすラバックに対してマインちゃんが切り替え早ッ!と驚く。

 

 それでもマインと共に昼の帝都を歩きながら何故かラバックの脳裏を過ぎったのは、無垢な笑顔を浮かべたタツミの顔だった。

 

 

 

 夕暮れ時。タツミは枯れ木に向かって剣を振るう。タツミが切りつけた枯れ木は叫び声を上げて倒れ臥した。

ザンクとの戦闘の負傷が癒えたタツミは、フェイクマウンテンで危険種狩りを再開していた。

ここでは大木から小石まで、全てに注意して気を払わなければ生き残れない。

だからこそ注意力を鍛える鍛錬になる。

 

背後から危険種が飛び掛ってくるのをはっきり感じたタツミは、しかし前方にのみ気を配った。

 

「コロ!捕食!」

 

セリューが指示し、コロがタツミに襲い掛かった石の危険種を一瞬で飲み込む。

セリューがタツミに付いてきた理由は、タツミと同じく鍛錬のためだ。

それと同時に実戦経験を二人で積むことで、連携の強化、互いの動きを測る意図もあった。

タツミは擬態した危険種に斬りかかりながらセリューに問いかける。

 

「日も暮れるし、今日はこれぐらいにしておいたほうがいいんじゃないか?」

「まだ行けます!これも強くなって悪を倒すためですから!」

「そうか、じゃあやりきろうぜ!」

 

 既に山の奥深くまで来ている。撤退を提案したタツミは、相方の鬼気迫る表情を見て探索を続行することにする。

タツミ達は四方八方から襲ってくる危険種を相手し、日が完全に落ちるまで鍛錬に明け暮れた。

 

「セリュー、大丈夫か?」

「……平気です。オーガ隊長の仇のナイトレイドを討つまでは、私は死ねませんから」

 

 満身創痍で帝都に何とか戻ってきたタツミは、同じく疲れ果ててどこか虚ろな表情のセリューを心配する。

足を引き摺りうわ言の様に悪を討つ、と呟くセリュ―を心配しつつ、タツミはナイトレイドについて考えた。

 

 オーガ隊長は、セリューの恩師でもあったらしい。

悪を憎むセリューがここまで入れ込んでいるのだ、きっとかなりの善人だったのだろう。

タツミはセリューに呼応するように胸の奥からふつふつと、セリューの恩人のオーガを殴殺した

ナイトレイドへの怒りが沸いてくるのを感じる。

軍に染まったタツミには民を恐怖に陥れる殺し屋相手に、慈悲をかけるつもりはもうなかった。

 

「ああ、俺とセリューで殺し屋……凶賊ナイトレイドを必ず倒そう」

 

 セリューと共に夜の帝都を歩きながら、タツミはナイトレイドと戦う意思をより強固なものにしていった。

 

 

 

「今回の標的は麻薬密売人チブルと、その部下達だ」

「色町の女を薬漬けにしている悪党だ、豪邸でのチブルの暗殺はマインとラバック。

 色町でのチブルの配下の暗殺はシェ―レとレオーネが担当しろ」

 

 ラバックとマインはナジェンダの命令に頷く。

イヲカルの暗殺以来、ラバックとマインは任務を複数回こなしており連携には問題ない。

 

タツミとセリューは軍から独自に網を張ることが許され、ナイトレイドを待ち伏せる。

 

 タツミとラバック。帝都警備隊とナイトレイド。

国を守る者と、革命を望む者。

 

―――激突の刻は近い。

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