人気がない真夜中の帝都を、疾駆する人影が二つ。
ナイトレイドの殺し屋、ラバックとマインだ。
二人は警戒心が高い標的相手に苦戦を強いられたものの
何とか麻薬密売人のチブルを始末することに成功していた。
撤退しながら、マインがラバックに軽口を叩く。
「それにしてもアタシとアンタのコンビ、中々様になってきたんじゃない?」
「俺は後衛の組み合わせだから、最初はどうなることかと思ったけどね」
ラバックは肩を竦めて答える。最初はコンビに違和感があったものの
二人で任務をこなしていくうちに信頼関係は築けていくものだ。
「この任務が終わったら、アンタをまた荷物持ちにしてあげてもいいわよ?」
「うおマジで!?うっしモチベ上がったから速攻で帰ろうぜ!」
「ラバはほんと単純なんだから、扱いやすくて助かるわ」
少なくともマインはラバックの実力をパートナーとして信頼するようになっていた。
普段お笑いポジションだと馬鹿にしていた分、傍で見ていて見直した部分も大きい。
ポイントアップとラバックは口に出していたが、実際にマインに対して効果はあったのだ。
恋愛関係ではない、別の形の絆がそこにはあった。
顔を綻ばせ、適度にリラックスしながらも周囲への警戒を怠らないラバックとマイン。
そんな二人の進行方向には、木の上からナイトレイドを探そうとするタツミとセリューの姿があった。
「ナイトレイドが来るという確証はないけど、可能性がない訳じゃないか」
「今まで帝都警備隊が目撃してきた情報を集め、ここに網を張るのが妥当だと判断しました!」
ギラギラとした目で周囲を見張るセリューとタツミ。
それらしい人物を見つけたら、いつでも襲撃する準備ができていた。
セリューはオーガ隊長との思い出を反芻し、胸の前でぎゅっと拳を握った。
これまでタツミと共に鍛錬を積み重ねてきた。自分達ならきっと敵を討てる。
「待っていて下さいねオーガ隊長……悪は必ず滅します。タツミと一緒に」
セリューは一瞬だけちらりとタツミの横顔を見る。タツミの笑顔を間近で見てから募る
タツミへの思慕の思い。その秘めた気持ちをセリューは賊への殺意で押し殺した。
周囲を探りながら走る二つの人影を見つけたタツミとセリューは、それをナイトレイドだと確信。
木の上から飛び降り、ラバックとマインの目の前に降り立つ。
セリューは二人が所有している帝具を確認する。ナイトレイドで間違いない!
「所持している帝具から、ナイトレイドと断定!帝都警備隊セリュ―・ユビキタス!
絶対正義の名の下に、悪をここで断罪する!」
「ラバが警戒していた帝都警備隊ね!」
いつもの歪んだ笑顔を浮かべたセリュー、タツミとセリューから大きく距離を取るマイン。
そんな二人を横目にタツミとラバックは視線を合わせる。
タツミはラバックを見つけた自分の目が信じられなかった。
「貸本屋の店主……!?」
「……タツミか。いつかこんな日がくると思っていたよ」
驚愕するタツミに対して、この事態を予測していたラバックは冷徹に振舞う。
嘘だよな、と思いつつもそのラバックの態度が、何よりもタツミに現実を知らしめる。
深く考える前に、激情とともにタツミはラバックに向けて叫んでいた。
「お前、ずっと俺を騙していたのか!」
「ああそうだよ。貸本屋は仮の姿。俺は軍属のタツミを騙して情報を得ていた」
艶本を二人で漁りながら、ラバックに対してナイトレイドをぶちのめしてやると言ったことをタツミは思い出す。
タツミにとってラバックは、客と店主の間柄にも関わらず悪友のような関係だった。
ラバックは軍属のタツミに対して特別視も物怖じもせずに話しかけてくれた。
女の好みを語り合って馬鹿騒ぎしたこともあった。
しかし互いの対場が明確になった以上、もうそんな日々に戻ることはできない。
凶賊ナイトレイドを、帝都警備隊のタツミとセリューは倒さなければならない。
そして正体を知られてしまった以上、殺し屋のラバックとマインには目撃者を生かす選択肢はない。
「俺の本業は殺し屋。ナイトレイドだ」
「ナイトレイド―――手前ェら、許さねええ!」
自分の正体を明かしたラバックに対して、タツミが怒りの咆哮をあげながら斬りかかる。
それが開戦の狼煙となった。
ラバックはクローステールを射出し、マインはパンプキンを構え、セリューはヘカトンケイルに指示を出す。
思想、思念、目的、全てを違えた彼らは衝突する。
帝具使い同士が戦うと、必ずどちらかが死ぬ。これから起こる戦いもまた、例外ではない。