「ではこれよりISの飛行操縦をしてもらう。織斑、間薙、オルコット。試しに飛んで見せろ」
四月も下旬に入り、そろそろISの授業が本格的に始まり始めた。
「早くしろ、熟練の操縦者は展開まで一秒も掛からんぞ」
ISは一度フィッティングをすると、アクセサリーの形状になり待機している。セシリアは左耳のイヤーカフス。一夏は右腕にガントレット。ガントレットはアクセサリーではなく防具ではないかと思うが一夏の隣にいるシンに至っては全身刺青で、もはや防具でもなんでもないから、みんな気にするのはやめた。
一夏は右手を突き出し、左手でガントレットを掴むこうして一夏はISを展開する。一方シンは棒立ちになり目を瞑りながらISを展開している。セシリアも二人が展開するよりも早く展開していた。
千冬は三人がISを展開したのを確認すると言った。
「よし、飛べ」
言われてからセシリアの行動は早かった。それにシンも続いて飛んで行く。そして最後に一夏が飛ぶが二人に比べ、上昇速度はかなり遅かった。
「何をやっている。スペック上ではの出力はケイオスインペリアルと同等だぞ」
確かに一夏は授業はしっかりと受けていた。しかし、聞いたイメージと動かす感覚は違うものだったので悪戦苦闘をしていた。
「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分にやりやすい方法を摸索する方が建設的でしてよ」
セシリアはクラス代表が決まった後、一夏と親しくなっていた。もちろん一夏とシンに謝罪をした。
「そうなんだけど、どうしても空を飛ぶって感覚があやふやなんだよ。何で空を飛んでるのか分からないしさ」
「そうですか…ところでシンさんはどのようなイメージで飛んでいらっしゃるのですか?」
そう聞かれシンは少し考えていった。
「六十階あるビルから飛び降りる感覚」
「え?」
「いや、何でもない…ただ、何と無く…だな」
「そうですか…一夏さん、今度またお二人で……」
「それでは次に急降下と完全停止をやってみろ。目標は地面から十センチだ」
「了解しました。それでは、一夏さん先に行かせて貰いますね」
セシリアが先に行き、一夏とシンはその様子を見ていたが見事に成功していた。
「それじゃあシン、俺先に行くな」
一夏はシンの先に行くと、速度が速すぎたためか地面に激突しグラウンドに大穴を開けてしまった。
「大馬鹿ものが、誰がグラウンドに穴を開けろといった」
「大丈夫か一夏」
何時の間にかシンも急降下を済ませ、一夏に手を貸してやっている。
一夏とシンの後ろで何やら箒とセシリアが言い争いをしていたが、千冬の一声で止み、授業は進んで行く。
「間薙…は別にいい。織斑、武装を展開しろ。そのくらい自在にできるようになっただろう」
「はあ」
「返事は『はい』だ」
「は、はい」
「よし、でははじめろ」
そして一夏はまた右手を前に突き出し、左手で掴んで雪片弐式を出した。
「遅い、0,5秒で出せるようになれ。次、オルコット、武装を展開しろ」
「はい」
セシリアは左手を型の高さまで上げ、一瞬光が走ったと思った時にはその手には《ブルーティアーズMkⅢ》が握られていた。
「さすがだな代表候補生。だが、そのポーズはやめろ、横に向かって銃身を展開して誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」
「しかし、これがわたくしのイメージをまとめるために必要な…」
「直せ、いいな」
「……はい」
一切の反論の余地も無くセシリアは黙らせられる。するとタイミングよくチャイムが鳴った。
「ではこれで授業を終わる。織斑、グラウンドを片付けておけよ」
一夏はチラッと箒を見ると顔をそらされ、手伝う気が無いのが分かった。セシリアはすでにいなくなっていた。シンを見るとまでいたので、頼むことにした。
「なあシン、グラウンドを片付けるの手伝ってくれないか」
「…一夏、二つ聞きたい事がある。これについて答えてくれたら手伝おう」
「おう、いいぜ」
「まず一つ目は、あの穴を掘ったのは俺か?」
「うっ!」
「二つ目に、俺の名前は織斑一夏か?」
「…違います…」
「そういうことだ。だから手伝おう」
「えっ!何でだ」
「俺はさっき言ったぞ。『答えてくれたら手伝おう』と、内容はどうあれ答えた。だから手伝うだけだ」
「ありがとなシン!」
その後何とか二人は授業が終わる前に穴を埋める事が出来た。
放課後になり、女子達から夕食後、『織斑一夏クラス代表就任パーティー』があるからきてくれと言われ、特に用事もなかったシンは行くと言った。しかし、シンはこれといってやる事が無かったので夕食まで学園の中をぶらつく事にした。
歩いていると何時の間にかアリーナの整備室まで来ていた。そして一番から順に見ていくと、第二整備室を見るとと誰かが一人でISを整備しているように見えた。
「…誰?」
立ち去ろうと思っていたら向こうから話し掛けてきたので、シンは興味を持った。
「ここで何をしているんだ?」
「あなたには関係ない」
そう言いつつもISを弄っていた。シンはその相手の容姿を見ていたがどこかで見たことのある容姿だったので聞いたみた。
「すまない、名前は何ていうんだ?」
「…更職…簪」
その名前を聞いた瞬間、シンは逃げようかと思ったが、簪を見ていれば、この前会った人とも性格が違いそうなので、一応は大丈夫だと判断した。
「どうして一人で整備しているんだ?」
「…あなたには関係ない」
「……」
「……」
シンはこれ以上いても仕方ないと思い何も言わずに整備室から出て行った。
「というわけでっ!織斑くんクラス代表おめでとう!」
「おめでと~!」
クラッカーが一斉に鳴らされ紙テープが一夏や隣にいたセシリアやシンにまで降りかかってきた。
「いやー、クラス対抗戦も盛り上がるねえ」
「ほんとほんと」
シンが知っている限りでは相槌を打っている女子は一組にはいなかったと思う。
一夏は憂鬱そうな顔で箒と話しながらお茶を飲んでいた。
「はいはーい、新聞部でーす。織斑一夏君と間薙シン君に特別インタビューをしに来ました~!」
すると女子一同が一気に盛り上がる。
「あ、私は二年の黛薫子。よろしくね。新聞部部長をやってまーす。はいこれ名刺」
そういって一夏とシンとセシリアに名刺を渡す。
「ではではずばり織斑君!クラス代表になった感想を、どうぞ!」
そして一夏とシンとセシリアは薫子に散々質問され、最終的にすべて捏造することで収まった。
「それじゃあ写真撮るから三人ならんでね。えーと、織斑くんが真ん中でセシリアちゃんがその右、間薙がその左でね」
そして三人が並ぶと、薫子はカメラを構えて言った。
「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は~?」
「えっと…2?」
「ブッブー!答えは74・375でした」
言うと同時にカメラのシャッターを切った。シャッターを切る寸前にクラスの女子たちが一斉に写真に入るようにして集まった。
「何でみなさんが写真に入っておりますの!」
「まーまー、いいじゃん」
「クラスの思い出になると思ってさ」
クラスメイトにそう言われ、セシリアは我慢することしかできなかった。
時間は十時を回り、まだまだパーティーを続けようとしていたが、見回りに来た千冬に全員殴られお開きとなった。
次の日、教室は何やらざわついていた。するといきなり女子が話しかけてきた。
「おはよー、織斑くん、間薙くん。ねえ、転校生の噂聞いた?」
「シン、お前何か知ってる?」
「いや、全然」
この女子――名前は忘れた――から聞いた話だと二組に転校生が転入してきた事らしい。IS学園では転入するときには厳しい試験と国からの推薦が必要になる。
「ということは、どっかの国の代表候補生なのか?」
「そう、中国の代表候補生らしいよ」
「あら、わたくしの存在を知ってあわてて来たのかしら」
「それに今度クラス対抗戦があるからな、のんびりしている暇は無いぞ一夏」
話を聞いていたのかセシリアと箒が近づいてきた。
「それに、専用機を持っているクラスは一組と四組だけですし。一夏さんの優勝は間違いありませんわね」
「その情報古いよ」
すると教室の扉が勢いよく開き、誰かが入ってきた。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
シンが見たところ、活発さを絵で書いたような少女が扉に足をかけ立っていた。
「……鈴、お前鈴か?」
「知り合いか?」
「あぁ、セカンド幼なじみなんだ」
「そうよ。中国代表候補生、鳳鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ…って一夏、そいつ誰?」
鈴は自己紹介のようなものしてすぐにシンに指を指してきた。
「お前知らないのか?二人目のIS操縦者だよ」
「うん、知らない。だって別の国になんか興味ないし」
あっさりと知らないと言い、シンは少しさびしそうな顔をしていた。
「おい」
「なによ!?」
聞き返した鈴に千冬の強烈な出席簿打撃が決まり、鈴は涙目になっていた。
「ち、千冬さん…」
「もう、SHRの時間だ。さっさと自分のクラスにもどれ鳳。それと織斑先生呼べ、いいな」
「す、すみません…」
そうして鈴は腰が引けながら自分の教室へと帰っていった。
授業中箒とセシリアが千冬に叩かれていたが、その理由は本人たちしか知らない…
授業が終わり、シンは昼をどうしようかと考えていたら一夏がやってきた。
「なあシン、一緒に飯食わないか?」
「…別に構わないが…何でだ?」
「いや、箒たちと一緒に飯食うんだけど、せめて精神的な安らぎが欲しいから…」
シンは財布をの中身を確認した。しかし中身はもうほとんど無く一夏にまた金を借りるのはどうかと思い少し躊躇していた。そこでシンはある事を思い出しポケットに手をいれあるものを取り出した。
「一夏、すまないがコイツを買い取ってくれないか…」
シンが取り出したものは…ボルテクス界で集めていた宝石…それも大粒のルビーだった。
「え!?シン、そんな大きなルビー俺なんかには買えないよ!」
「いや、前と同じ五万でいいんだ。だから、頼む」
「いやそれでも…」
「一夏さん、何をしていますの?」
一夏が騒いでいるので、気になって見に来たセシリアはシンの持っている宝石を一目見ただけでその価値がわかった。
「あ…あの、シンさん…?そ、そのルビーはどうしたのですか?」
「一夏に買い取ってもらいたかったんだが無理みたいだ…」
「でしたらシンさん!わたくしがそのルビーを買い取って差し上げますわ」
「本当か?」
「えぇ、本当ですわ。それで幾ら払えばいいのかしら?」
するとシンは指五本を出した。
「わかりましたわ。今持ってきますわね」
するとセシリアはどこかに行き、数分で帰ってきた。
「では、これがお金ですわ」
セシリアが持ってきたものは茶色い封筒に入った分厚い札束だった。
「いや、五万でいいんだが…」
「それはいけませんわ!!」
セシリアが言うには、シンの持っている宝石は完璧といっていいほどの美しいブリリアンカット、さらにはその大きさ、色合いの深さ、傷の少なさ。本来なら五百万以上出しても惜しくは無い代物だと言う。流石は悪魔が集めていただけはある。
しかしシンもそういうわけにはいかなかった、さすがにそんな大金をポンと渡されてはこちらも困るからだった。そこで二人は話し合い、百万での取引となった。それでもかなりの額になったが。
シンがセシリアとの取引を終えると、セシリアは一夏の腕を掴み連れ去ってしまいシンは一夏が自分に助けを求めている姿を見送った。
その後、授業は無事に終わり。何かに誘われる事もやる事も無かったので部屋で寝ることにした。
部屋に戻り着替えもせずにそのままベッドの上に寝転がるとすぐ睡魔が襲ってきた。東京受胎前ならこんな事は普通の事だった、そう考えながら眠りに落ちた。
夢を見た。夢の中ではボルテクス界であった様々な事が映し出されていた。それはもしかしたらあったかもしれない世界。千晶の支えと共にヨスガの世界を造り、勇の言葉と共にムスビの世界を築き、氷川の願いと共にシジマの世界を創造する。そして一番自らが願った世界は裕子の祈りで元の世界、自分が住んでいた世界に戻すことだった……そこにあってはならない世界が見えてくる。カグツチは死に世界は産れず暗い暗黒の世界が広がるだけだ。
慟哭の声が聞こえる
目が覚めるとのほほんさんが傍にいた。
「大丈夫?まなぎん」
のほほんさんによると、シンが寝ていたので起こさない様に静かにしていたら突然シンが叫びだしたから起こそうとしたとの事だった。どうやら聞こえていた声は自分のものだったらしい。
「すまないな…」
「ううん、ぜんぜんへいきだよ。だけどちょっとうるさいかな」
何やら突然隣の部屋が騒がしくなってきた。しかしそれはあまりもうるさいのでシンは壁に思いっきり蹴りを入れると少し静かになり、一瞬騒がしくなった後、扉を勢いよく閉める音が聞こえ完全に静かになった。
クラス対抗戦までの日は近い。
はい、できる限り早く投稿しようと思ったので省くところは色々省いています。
あと箒がほとんどしゃべってないなと思います(ファース党の皆様すいません)
次回はもうこのままクラス対抗戦に入りますのでお願いします。
いつもこんな駄文を見てくださりありがとうございます。
感想、誤字脱字等がありましたらお気軽に言ってください。