そんなわけでオレ達は、春蘭や
オレと華琳が担当する町の中央部は、真ん中を走る大通りと、そこに並ぶ市場が中心になるんだが.......。
「なぁ、華琳...」
「ん?何、一刀?」
「大通りは見回りの対象じゃないのか?」
華琳が最初に向かったのは大通りではなく、小さな店や住宅が密集している裏通り。
「もちろん対象よ。ただ大通りは後でいいのよ。大きな所の意見は、黙ってても自然と集まるのだから」
「なるほど、そういうことか.....」
「それより一刀。......この辺りを見て、あなたはどう思う?」
「どうって......」
市とかいろんな店があって.....
「かなり、賑わってると思うが」
大通りほどではないにしろ、小さな所にしては賑わってるように見える。感覚的には、地域密着型の商店街が一番似ている感じだ。
「そのくらい、見れば分かるわ。他に気付くことはないのかしら?」
「気付くことぉ~.......」
八百屋に肉屋....あれは乾物屋か。その辺の食材を使った料理屋.......なんか...
「.....食材屋ばっかりだな~。この辺は」
「えぇ、他には?」
ん?思い付いたこと言ったつもりが、反応的に悪くないな。もっとダメだコイツみたいな顔されると思ったのに。
「料理屋が多いな....」
「でしょうね。食材がすぐに手にはいるしね。他に気付くことはない?何でもいいわ」
料理の屋台を見れば、肉の塊をバカでかい包丁を使って、器用に切り分けているおじさんが見えた。
「.....包丁」
「包丁?」
「包丁を研いでくれる店や、調理器具を売る店がこの辺にあったら、儲かりそうだな」
「それって.....鍛冶屋のこと?」
「そう、それ」
「鍛冶屋は三つ向こうの通りに行かないと無いわね」
「えっ、でも、その辺のお客はみんな城の鍛冶屋さんと同じ格好を....」
隣の屋台には、職人さんらしい、ゴツい体格のおじさん達が、遅めの昼食をとっていた。机の上にお酒も並んでるし、かなり余裕がありそうだけど....。
「向こうの通りには料理屋がないの」
「........何で華琳は、そこまで詳しいんだ」
「そのくらい、町の地図を見れば分かるもの」
「じゃあ、わざわざ視察しなくても.....」
「人の流れは地図や報告書の情報だけじゃ実感できないわ。客層の雰囲気なんかもね。たまにこうやって視察して自分の目で確かめておかないと、住人達の意にそぐわない指示を出してしまいかねないわ」
「........そんなもんか 」
「そんなものよ。それに....」
華琳が視線を止めたのは、露天の前の人だかり。
「.....ああいう光景は、紙の地図だけではなかなか確かめられないもの」
「はい、寄ってらっしゃい見てらっしゃ~い!」
そこにいたのは、露店商らしき女の子。ネコの額ほどの僅かなスペースに、竹でできた籠がずらりと並べられていて、そして.......。
「........なんだこれ?」
「カゴ屋のよう.....だけれど?」
「いや、籠じゃなくて......こっちの」
店主らしい女の子の脇に鎮座している、なんとも説明しづらい木製の何か。箱状のフレームの中に、木や金属で作られた歯車がそこかしこに突っ込んであって.....。
「........ん?」
この時代に歯車なんかあったっけか?
「あら、一刀は歯車が珍しいの?見るのは初めてかしら?」
「歯車くらい流石に見たことあるけど.........あ~、木製のはないな」
どうやら、普通にあるらしい。華琳が特に珍しがってる訳じゃないあたり、この世界じゃそれなりにメジャーな技術なんだろう。
「まぁ、そうじゃなくても、あれなんの装置だ?」
「........さぁ?」
「おぉ、そこなお二方、なんともお目が高い!!こいつはウチが発明した、その名も!!全自動籠編み装置や!!!」
「全自動......」
「籠編み装置......?」
っていうか全自動だとっ.....!?
「せや!この絡繰の底にこう、竹を細ぅ切った材料をぐるぅ~っと一周突っ込んでやな......そこの兄さん、こっちの取っ手を持って!」
「お、おう......?」
言われるままに、謎の装置のハンドルを手に取る。
「んでな。こうやって、ぐるぐるぅ~っと」
「ぐるぐる.............?」
女の子の言うとおりにハンドルをグルグル回していくと、セットされた竹が装置にだんだんと吸い込まれていって.....しばらく続けると、装置の上から編み上げられた竹の籠がゆっくりと出てきた。
「ほら、こうやって、竹籠のまわりが簡単に編めるんよ!!」
「おぉ~、スゲェ!!」
思いっきり手動だけとなっ!!
「底と枠の部分はどうするのかしら?」
「あ、そこは手動です」
「.......そう。まぁ、便利と言えば便利ね」
「全然全自動じゃないしな....」
「うっ。兄さん、ツッコミ厳しいなぁ...。そこは雰囲気重視でながしといてぇ~な」
「あ、うん......」
まぁ、ハンドル回すだけで竹籠が編めるってだけでも、十分画期的だよな....おそらく。
「あ、ちょ!兄さん、危ないっ!」
「えっ.....?」
女の子が叫んだときにはもう遅かった。
ズガァ~~ン!!!!
「どわあっ!?」
ハンドルを回した装置は粉々に砕け、内部にあった歯車や外枠が砕けた拍子で鋭く尖り一刀を襲う。
....うわっ、やべぇ死んだ....目の前に鋭利な破片が飛んでくるなか一刀は周りの風景がスローモーションの様な感覚になり死を悟ってしまう.......が...
.......ヒュン..ガッ...ガツンッ!!
突如飛来してきた弓矢が一刀に当たりそうになっていた破片を隣の建物の壁に縫い付ける。
「一刀!?えっ!.....大丈夫..?」
「......はっ!あ、あぁ大丈夫みたいだ...」
オレは手に握られたままのハンドルと壁に縫い付けられた破片と弓矢を見ながら、かろうじて華琳にそう返す。
「すんまへん!兄さん無事やったか!!この装置試作品で取っ手回しすぎると竹のしなりに装置が耐えられんくて....爆発してまうんけど.....あんな被害いつも無くって油断してたわ」
「怪我は無かったから良かったものの、何でそんなもん置いといたんだよ」
「.....置いとったらこう、目立つかなぁ......って思てな。ここにある籠も村の皆の手作りやから」
「......はぁ、とりあえず一刀に怪我も無さそうだし、大丈夫だけど.....問題は...それよ」
華琳が指差した方向には今なお壁に突き刺さっている弓矢。
「そやった!!いや~ホント助かったわ!!たぶんウチと一緒に村から来た仲間が射ぬいてくれたんよ!!」
「.....あの一瞬で....その仲間は今どこにいるの?」
「えっと.....あそこです...たぶん」
店主の女の子が指差したのは遥か遠くの城壁。
「マジか。あんなとこから矢が届くなんて....てかあの一瞬じゃ無理だろ!?」
「まぁ、たまたまコッチ見てるときやったってのも、あると思うけど....たぶん、勘とかの類いやろうなぁ~」
「勘て....そんな、バカな...」
一方その頃の城壁では......
「スゲェな嬢ちゃん!あんな遠くの鳥を射ぬく何てな!!あっははは!次はあっちの鳥なんかもいけるか?」
のんびり城壁からの狩りを楽しんでいた。
..............グッ!