鋼の鬼   作:rotton_hat

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残念な出会い

 おかしい、とクロエルは思った。

 先ほどまで万感の思いで終わりを迎えようと勝利の余韻に浸って脱力していたのだが、何時まで経ってもその終わりの時がやってこない。

 「黒の狩人」たちと戦闘を開始した時点でもう結構な時間になっていた筈なので、決着がつきこうして「永久の桜花」の下で蹲っている現在、サーバーダウンの時刻午前0時はとうに過ぎていて良いはずだ。戦闘中マインティス神や龍♂狩りがゲームではあり得ないほどに表情豊かに見えたことや、先ほどから絶えずゲームでは感じるはずのない血生臭さが鼻につくことや、閉じていた目蓋を持ち上げ辺りを見渡してみればゲームグラフィックにしてはあり得ないほど現実味を帯びた風景になっていることはとりあえず置いておいて、クロエルは時間通りにサーバーダウンを行わなかった運営の怠慢に憤った。

 

(台無しっす! 折角の気分が台無しっす! マインティス神と龍♂狩りの死体も残ったままっす! 運営仕事しろっす!)

 

 内心で運営人を叱咤し怒りを体現させるかの如く拳を握り、諸手を挙げるクロエル。線が細く全く着膨れして見えない全身鎧姿は、鎧と言うより外骨格を連想させ傍から見るとサイボーグが座って伸びをしているようにしか見えない。

 

(っつーか臭いっす! なんすかこの濃厚な血の匂い、ここへ着てまさかのアップデートっすか! やる意味がわかんないっす!)

 

 クロエルが怒りに任せて「GMコール!」と叫ぶもウンともスンとも反応がない。それどころかステータスウィンドウも表示されていないことに今更気づき動揺するも、そういえば戦闘中も途中から非表示になっていたけど問題なく動けていたなと思い直す。勢いって凄い。

 クロエルはため息をついて視線を下げ、彼女の前に転がるマインティス神の死体を眺める。地面を滑るように広がっていった血の水溜りも、今は土が吸ってしまったのかその染みを残すばかりだ。注意深く鼻で息を吸ってみれば、血の匂いの中に若干糞尿の匂いも混じっていることがわかる。こうなってしまうと台無しだな、とクロエルは残念な気分になった。先ほどまで敵ながら美しい散り様だなと感動していたものだが、今となっては美しい散り様なんて現実には存在しないのではと考えてしまう。

 

 ――現実。

 

 これは、現実なのだろうか、とクロエルは考えないようにしていた事柄に目を向けた。倒した戦士たちの表情、不快な臭いと土の感触や温かさ、風に揺れサラサラと揺蕩うどこまでもリアルな自然、間近にある死。

 あり得ない、と頭で否定しても居るよ、と彼女が訴えかけてくる。現実世界の彼女ではなく、ゲームの世界の彼女が、クロエルが、私はここに居るよと訴えかけてくる。冷たい鎧の重みで、胸の鼓動で、熱い吐息で、傷の痛みで、内に流れる血潮で、全身全霊を持って訴えかけてくる。私はここに居るよと。

 

「…はぁ、一人で考えたって始まらないっす。そこの人、出てきてほしいっす」

 

 クロエルはそう独り言ちると隠れていた相手に出てくるように促す。

 戦闘の途中から、探知スキル〈手負いし獣の六感〉で新しくPOP(出現)した存在をクロエルは感知していた。その人物はこちらに近づいてはきたものの一定の距離を置いて立ち止まってしまったので観戦目的、若しくは漁夫の利を狙っているのだろうと今まで放置していたのだ。

 少し離れた森の木の陰から姿を現した人物に、クロエルは初めて顔を向けた。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 夜の森に紛れるように、漆黒のフード付きローブを頭からすっぽりと被った人物が一人、迷いのない足取りで歩を進めていた。

 その姿に加え肩や腰のあたりが上下しない独特な足運びは遠めに見れば亡霊のようで、しかし短く規則正しく口から洩れる息遣いやローブ越しに浮き上がる柔らかな曲線美が、その人物を生きた人種の女性であると教えてくれる。年齢は二十歳前後だろうか、フードの下に覗くのは短い金髪に整った顔立ち。猫科の動物を思わせる可愛らしさを感じられるが、同時に肉食獣を思わせるどう猛さも垣間見える。

 

 女の名はクレマンティーヌと言った。

 この大陸の南に存在するスレイン法国出身。国が抱える特殊部隊の一つ「漆黒聖典」に所属する戦士だったが、現在は出奔しておりそれが理由で「漆黒聖典」とは別の特殊部隊「風花聖典」に追われる状況にあった。

 彼女は逃走するにあたり平原、関所などを潜り抜けての他国への侵入が難しいと判断し、現在スレイン法国から見て北西にある森、ダーク・エルフ国へと足を踏み入れていた。身を潜められる森の中にあり法国と敵対関係にあるエルフの国があるというのも都合がいい。勿論味方というわけではなくダークエルフ達には歓迎されないだろうから、相手の哨戒を刺激しないギリギリの距離を保つつもりだ。何も起こらなければそのまま北上を続けて亜人ひしめくアベリオン丘陵の横断を決行、その先にあるリ・エスティーゼ王国直轄区の城塞都市「エ・ランテル」に逃げ込みそこに潜伏している秘密結社「ズーラーノーン」と接触、万が一「風花聖典」に発見されてもダークエルフ側に押し付け乱戦に乗じて逃げる算段である。危険な綱渡りであることには変わらないが勝算はある、とクレマンティーヌは考えていた。

 

(んー?)

 

 はたとクレマンティーヌの足が止まり周囲を警戒するかのように、いや、実際に警戒を高めながら注意深く周囲を伺う。突如始まった金属同士が高速でぶつかり合う音、戦士が奏でる戦場音楽がそう遠くない場所から響いてくる。

 

(風花聖典とダークエルフが接触でもした? でもなー何か違うってゆーか…)

 

 それは、今までに聴いたこともないような激しい剣の旋律だった。

 クレマンティーヌは少し首を傾げながら、突然始まったこの戦場音楽に聞き惚れ、しかし違和感も覚える。その戦場音楽は開始直後の緩やかな旋律の過程を無視して、中盤からの激しい旋律をいきなり演奏したかのような唐突さがあった。しかし音を聴くだけでも分かる演奏者たちの力量にクレマンティーヌの胸は好奇心で一杯になった。

 彼女の高揚は戦士としての矜持からか、それとも快楽殺人者として死の匂いを感じ取ってのことなのか、これは滅多に見られない殺し合いだと、クレマンティーヌは意気揚々と、しかし細心の注意を払いながら音のする方向へと足を運び――

 

 ――そして息をのみ、目を奪われた。

 

 それは、神話の中でのみ語られるような激しい戦いだった。

 双剣をさながら竜巻のような奔流で操る剣士に大盾を攻守巧みに切り替え振るう特殊な戦い方をする戦士、そしてその最強の矛と盾を前に一歩も引かず渡り合う赤黒い全身鎧を纏った刀使いが一人。この世界に置いて人外、英雄の域に足を踏み込んだとされるクレマンティーヌを以ってしても、立ち入ることの許されない遥か高みの決戦であった。

 

(神人…違う、それ以上のナニカ…何なの、何であんな化け物達がこんな所で殺しあってるの?!)

 

 クレマンティーヌは混乱の極みに達した。逃げなくては、あの化け物どもが戦っているうちに、巻き込まれるなんて真っ平ごめんだ。そう思っても足が動いてくれない、化け物たちの戦いから目を離せない。彼らの力が、技が、剣の火花となっては消える命の瞬きが、彼女の眼を放してくれない。

 それは一種の憧憬だった。恵まれた素質に胡坐をかかず、研鑽を怠らず、その先にあろう戦士の力と技の極みを体現するかのような存在の戦いに、クレマンティーヌの戦士としての矜持が激しく揺り動かされていた。

 やがて一人が倒れた、大盾を使った特殊な立ち回りをしていた戦士だ。双剣の剣士と刀の剣士の一騎打ちとなり、お互いが剣と言葉を交わしながら一進一退の攻防を繰り広げる。無意識の内に握られたクレマンティーヌの両拳に力がこもる。決着が近いのを感じ、双剣の剣士が勝利を掴むとクレマンティーヌは予想した。いつ受けたのか刀の剣士は全身から血を滴らせており明らかに劣勢であったからだ。

 しかし最終的にはその予想を裏切って刀の剣士が見事に逆転して見せた。戦闘が終わるとクレマンティーヌは堰き止めていた息を一息に吐き出しそうになり慌ててゆっくりと息を吐いた。呼吸するのも忘れて見入っていたらしく今更ながらに息苦しさを感じた彼女だった。

 

(…死んじゃったのかな?)

 

 興奮は冷めやらぬが努めて冷静に現状を分析し始めるクレマンティーヌ。戦闘が終わってから、何やら淡く発光する神聖そうな大樹の下に腰を下ろしている刀の剣士の様子を森の陰に隠れて観察する。

 鎧越しに流れていた出血量から見ても致命傷だったのは間違いない。しかし今は出血も見られないし僅かにだが肩が上下しているように見えるので生きてはいるらしい。

 しかし、あの傷ではもう長くは――

 

「GMコール!」

 

 ――元気だった。すごく元気だった。

 いきなり諸手を挙げたと思ったら、快活に響く声で謎の呪文を唱えたのでクレマンティーヌは思わず後ずさる。しかし刀の剣士は次の瞬間には両腕を下ろし溜息をついていたのですぐに警戒を弱めたが。

 

 さて、とクレマンティーヌは考える。

 相手の奇行を見て完全に頭の冷えた彼女は当初の目的を思い出す。すなわちダーク・エルフ国を北上してアベリオン丘陵の横断だ。珍しいものを見させてもらったが、これ以上長居するのは危険だろう。刀の剣士と接触するにも相手のことを知らなすぎるし――そういえば声が女性のものであったことに今更ながら驚く――何より友好的かもわからない、勝算とかを考えて良いレベルの化け物ではない相手に自分が一体何ができるのかとクレマンティーヌは見切りを付ける。

 当初の予定通り移動を開始しよう、そう考えた矢先の出来事だった。

 

「…はぁ、一人で考えたって始まらないっす。そこの人、出てきてほしいっす」

 

 化け物の方から声をかけられ、クレマンティーヌはすぐに立ち去らなかったことに激しく後悔した。

 

(まずい、まずい、まずいっ!)

 

 クレマンティーヌは生きた心地がしなかった。

 逃げられる相手じゃない、そう確信した彼女が大人しく姿を現すと相手もゆったりと立ち上がりこちらに身体を向ける。

 そこには尋常じゃない殺気があった。法国の特殊部隊「漆黒聖典」として、時には邪悪な秘密結社「ズーラーノーン」として数々の修羅場を潜り抜けてきたクレマンティーヌを以ってしても到底抗うことのできない濃密な殺気。彼女は自分の歯の根が鳴り、身体は冷や汗に濡れ、脚は立っているのもままならないほどに震えていることを自覚する。

 

(糞がっ! こんな所で、このクレマンティーヌ様が、終わってたまるかっ…死んでたまるかっ!)

 

 震える身体に鞭打って、クレマンティーヌが辛うじて自分の武器であるスティレットを抜き構えると、化け物が興味深そうに彼女の姿を観察していた。

 

「死ん…でっ、たま、る…か! 死んで、たまる、かっ!」

 

 恐怖の中そう声を絞り出しながら、きっと私は今酷くみっともない格好を晒しているのだろうな、とクレマンティーヌは他人事のようにそう思った。

 震える太腿の間を、温かいものが流れ落ちていくのを感じながら。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「死ん…でっ、たま、る…か! 死んで、たまる、かっ!」

 

 これは一体どうゆう状況だとクロエルは考える。

 隠れてこちらの様子を窺っていた人物に声をかけてみれば殊更に怯えられ、へっぴり腰で武器を向けられるこの状況。友好的に接したつもりだったのに一体どこで間違ったのだとクロエルは頭を悩ますことになる。

 そしてこの世界がゲームではないという証拠がまた一つ揃ってしまった。生まれたての小鹿のように身体を震わす彼女から漏れ出たものを見て、クロエルはため息を付きたくなるのをグッと堪えた。同じ女としてこの醜態には目を瞑るべきだ。相手だって見せたくて見せたわけではないだろうし毅然とした態度で対応しようとクロエルは心に決める。

 

(十八禁に触れる表現はアウトっす。アカウント停止の強制終了もないし確定っすかね)

 

 そして、この女性は現地人だろうとクロエルは推察する。

 戦闘中にPOP(出現)したこの女性、否、POP(出現)したのは自分たちの方かとクロエルは改め、たまたま彼女の近くに自分たちが転移してしまい、こうして不幸な遭遇戦…と言っていいのかは分からないが、とにかくそんな状況に陥っていると推察できる。

 そして、このスティレットを構える女性は弱い。怯えているからとかそういう理由ではなく、レベルが圧倒的に足りていない。

 

(レベルは30ちょいって所っすかね。鑑定スキルなんて持ってなかった筈っすが…これは、キャラに人格が引っ張られてるんすかね?)

 

 この世界にきて初めて人を殺したはずなのに、動揺もなければ慣れている節すらある自身の思考回路のこともあって概ね正解だろうとクロエルは考える。現実世界でもこんな思考回路だった可能性も無きにしもあらずだが、そんなことは考えないし考えたくもない。

 現実世界のクロエルに武術の経験などはない。運動神経は良かったが、武道家のようにその立ち姿から相手の力量を推測するような観察眼はもちろん持ち合わせていない。しかし今はそれが可能であり、雰囲気から大よそのレベルを、歩行や武器の構え、体つきなどからその技量や戦闘スタイルなどを推し量ることができる。

 これは、「クロエル」というゲームのキャラクターが積み上げてきた、数多の殺し合いによって叩き上げられた経験が自分と重なった結果ではないかと彼女は考えている。

 

(一朝一夕でできるわけがない戦闘中の身体捌きといい、これは要検証っすね)

 

 ふむ、と顎に手を当てて熟考しながらクロエルは目の前の女性も気に掛ける。

 出会いこそ酷い形になってしまったがクロエルは彼女に対して好感を持っていた。勝てないと分かりながらも生を諦めないその姿勢、恐怖の中にあって尚剣を捨てないその勇気。その姿がユグドラシルのプレイ当初の自分を見ているようで懐かしさを覚える。ゲームの経験と同列で彼女の人生を見るのは失礼極まりない話だが。

 しかしこちらは友好的に接しているつもりなのに敵対されたのは何故だろうとクロエルは首を傾げて、自身から溢れ出ている殺意のオーラに漸く気付く。〈闘気〉のスキルが発動していたらしい。このスキルは自分よりも低いレベルの相手を恐怖させる他、刀剣の攻撃スキルの威力を上昇させる効果がある。隠れていた彼女が姿を現した時、レベルはともかく相当な熟練者だと感じてクロエルが意図せず発動してしまったようだ。

 しまった、と慌てて〈闘気〉を解除しようとするも、ふと思い留まって彼女の方を見やる。恐怖の中にあって尚戦おうと決意した涙に潤む瞳。〈闘気〉を解除して謝罪するのは簡単だが、それをするのは戦士である彼女に対してとても失礼なことではないだろうか。

 

 ならば、と決めてからは早かった。クロエルが目にも留まらぬ居合抜きを放ち、対する彼女は碌に反応できないままビクリと肩を震わせ、手に持っていたスティレットを落として膝をついた。

 ああ、私は死んだのか、と女が呆然自失に項垂れ、しかし自分の身体のどこにも斬られた跡がないことに気付くと見る見る瞳に生気を宿し驚愕したように顔をあげた。確かに斬られたと感じた、しかし実際のクロエルは刀を抜いておらず居合の姿勢を取ってからは動いてはいない。

 これは戦闘中にも彼女が見せたスキル〈陽炎〉だった。攻撃体勢から殺意だけを放ち攻撃と錯覚させるフェイントスキル。

 錯覚であっても勝負に一応の決着を付けることで彼女の戦意を消失させようとしたこの試みは成功したと見え、クロエルはこの結果に満足し、漸く〈闘気〉を解除する。

 

(〈闘気〉と〈陽炎〉のコンボ、これは使えるっすね! この異世界で低レベル帯と喧嘩になった時は、これで血を見ずに問題解決できそうっす!)

 

 そんなことを思って彼女は内心ほくそ笑むが、これは精神力が強靭な相手に使ったからこその結果であり、それ以外の相手に使おうものなら斬られたと錯覚した時点でショック死する可能性が高いことに、この時の彼女は気付けなかった。

 

「…あなたは、一体」

 

 膝をついたままの女の問いかけにクロエルは向き直る。そして、その問いには答えずに別の言葉を紡いだ。

 

「そのはねっ返り」

 

「腐っても屈せず、どんな理不尽にあっても噛みつき足掻き続けるその気概」

 

「好意に値するっす」

 

 それは先の実験の結果に気分を良くしたクロエルが、興に乗ってつらつらと並べ立てた適当な言葉だった。何となく自分に似ていて馬が合いそうだと軽い気持ちで語られた言葉だが、出会ったばかりでお互い何も知らないにも関わらず、自分のことを語られたら普通の人ならどう思うだろう。

 案の定、最初はぽかんと聞き入っていたものの女はやおら眉を顰めると膝をついたままクロエルをねめ上げた。

 

「…ふっざけんな。あなたなんかに…てめーなんかに私の何が分かるってんだ」

 

 うん、とクロエルは相手の反応に首を少し傾げ、やがて得心が行ったとばかりに頷いた。

 

(むむ、これは所謂「あんたなんかにあたしの痛みは分からないわ!」的な奴っすね。実際わかんないっすけど、適当に返したらフラグが折れそうっす…そうだ!)

 

 何を閃いたのかクロエルは膝をついて女に目線を合わせると、フルフェイスの兜の仮面部分を持ち上げて開いて見せた。突然の行動に女は警戒するも、クロエルの素顔を見てすぐに驚愕の面持ちで息をのむ。

 

「痛みは知ってるっす」

 

 女は全身から力が抜けていくのを感じながら、目の前の化け物をまじまじと見つめて思う。

 ああ、確かにこの刀使いは化け物だろう。しかし、これは仕立て上げられた末の姿なのだ。人々に、寄ってたかって、追い詰められ、そうあれと。なのに、彼女は人と言うものに絶望していない! こうして醜態を晒している私に歩み寄ろうとしている! なんて優しく、悲しい怪物!

 

 …素顔を見た女の見当違いな推察にクロエルは勿論気付かない。それどころか反応を見てコミュニケーションに成功したと暢気に彼女に話し続ける。

 

「自分はクロエルって言うっす。あなたの名前を知りたいっす」

「…クレマンティーヌ」

「クレマンティーヌ、可愛らしい名前っすね。じゃあクーちゃんって呼ぶっす」

 

 クロエルが右手を差し出し、それをクレマンティーヌがぎこちなく握る。

 現地人とお近づきになれたことにクロエルは内心「ミッションコンプリート!」と叫ぶくらい喜んだ。ローブ越しに覗くビキニアーマーが多少気になるが、それ以外の荷物を見ればクレマンティーヌは旅の途中なのだとすぐ分かる。ならばこの異世界の情報を豊富に持っている可能性が高い。

 

 さあ、異文化交流だとクロエルはウキウキしながらクレマンティーヌを見つめる。

 どんなことを聞こうか、どんなことを話そうか――

 

 ――そうだな、とりあえず必要なのは着替えと無限の水差しだ。と、クロエルは鼻孔をくすぐる臭いに黙って無限の背負い袋へと手を突っ込んだ。

 




 おまけ・捏造スキル

・闘気
 殺気を浴びせて格下を恐怖・恐慌状態に。刀剣スキルのダメージアップ。


 次回は主人公が受けた祝福の解説と異世界の情報集予定です。

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