フェアリー(のように穏やかな)ライフ(を送りたかった)   作:水生蟲

10 / 11
遅くなってしまいましたがクロニクルデッキ発売を記念して書いたものです。本編とはほとんど関わり無いですが、良ければどうぞ。
時系列的には主人公が家出()する前になっております。

そして作者が怠惰を貪っている間に次々と出る新カード……どれも使いたくて財布売って金にしようかなとまで考える始末です。


閑話──究極VS至高──

 

 とある宴の席にて、とあるクリーチャーが呟いた一言にその場が凍った。すなわち

 

「ドラゴンとゼニス、どちらが強いのか?」

 

 その日は新たなクリーチャーが生まれた事を祝う、もはやエルを頂点とする超獣世界では毎度のように行われる行事であった。エル本人は上座でクリーチャー達に囲まれて億劫になりながらも料理人(ラトリエ・ロブション)達が目の前で作る宴会料理に舌づつみを打っており、周りの雰囲気が不穏になりつつある事に気付いていない。

 

 一方下座は今の不用意な発言によって絶対零度もさながらの空気に晒されていた。大勢のクリーチャーが食事の手を止める最中、ドラゴンとゼニスの集団は一度お互いを睨むようにして口を開いた。

 

「無論それは我らドラゴン也」

「勿論、私達ゼニスです」

 

『……ァ?』

 

 嵐の前の静けさとでも言うのか、先程の凍土さながらの凍てつくような気配から一変して噴火直前の溶岩のごとき胎動を感じさせる雰囲気。それに当てられてか喧嘩っ早いドラゴンの一部は食事を既に放棄し、戦闘態勢に入ってしまった。

 

「笑止、一体何を抜かすかと思えば……ゼニスの、生まれ落ちて早々頭でもやられたか」

 

 開口一番にそう言ったのは、今回の宴の主役の一体である【無双龍幻バルガ・ド・ライバー】だった。宴の野外会場に生えている木々よりも大きく、龍と機械が一体化したような見るもの全てに畏怖を刻む込む姿で同じく今回の主役のゼニス達に煽りをかけた。

 

「羽の生えたトカゲ如きの妄言など聞くに耐えませんね」

「【賛同】私達ゼニスはただ主の為に力を振るう、その確固たる意志を持ちこの世に生まれ落ちた」

 

「ほう……では」

 

「ですが」

「けれど」

 

 そこで、二体のゼニスがバルガ・ド・ライバーの言葉を遮った。

 

「地を這いつくばるのがお似合いの生意気トカゲに、灸を据えてやるのも一興」

「【憤怒】舐められたままというのも気に入らない」

 

 二体の新たなゼニス、【「終焉」の頂 オーエン・ザ・ロード】と【「創世」の頂 セーブ・ザ・デイト】はバルガの歴史の中でも最強と謳われし龍王を前に、堂々と啖呵をきった。

 ゼニスはクリーチャー達の思念が数千年の時を経て実体化した種族であり、その種族柄「エルに絶対服従」な事は当然だった。しかし、彼らにも仕える身としての矜恃がある。

 

『いざ──────』

 

 それ以上の問答は不要だった。バルガ・ド・ライバーは横に置いていた自身の得物である双刀を掴み、上空へと高く飛翔した。そして地面でこちらを見上げる二体のゼニス目掛けて、肩の収容ポットに仕舞われた小刀を射出した。

 

「ゲホッゲホッ!なんだなんだ、喧嘩か!?」

 

「あぁ!?おい、今の衝撃でクルト達が吹き飛ばされたぞ!誰か助けに行ってやれ!」

 

「おいおいおい……バルガの野郎、早々に決着(ケリ)つけやがった……」

 

 その威力は小刀が深々と地面に突き刺さるほど強烈で、周囲一体に土埃と衝撃波を与えた。不運にもその近くにいたクリーチャーは被害をもろに受けてしまい、ましてやその中心にいたゼニスはもう助からないだろうと誰もが思った。

 

「………………」

 しかし、その被害を起こしたバルガは下方で巻き起こる埃の中をじっと見つめ続けていた。そして徐に双刀を握り直すと突如後ろに向きなおり腕をクロスさせて迫り来る衝撃をガードした。

 

「くっ……!《ヘブンズ・ゲート》か」

 

「【驚愕】まさか通じないとは」

 

 いつの間にか背後を取られていたバルガは、セーブ・ザ・デイトの突進を受け止めて弾くと、その瞬間移動の種を言い当てた。

 

「【驚嘆】素直に驚いた、これはお礼」

 

 死角からの一撃を躱された上に距離を離されたセーブは脳内に直接語りかけてくるような声を上げ、その自身の体に付いているアハトアハトよりも巨大な砲から極大のレーザー光を放った。

 

「遅い!!────()った!!」

 

 されど流石はバルガの名を継ぐ者、こともなげにレーザー光の周囲を回りながらセーブへと機械の推進力と龍の飛翔能力を駆使し近づき、一閃。セーブの真鍮線を狙ったその一撃は間違いなく受けた者を死に至らしめる必殺の攻撃だった。

 

 

 

「【嘲笑】今のはお礼だと言ったはず」

 

「何?」

 

しかし、止めとなる一撃は通らなかった。

 

 

「残念でしたね、バルガ────!!!!」

 

 再び死角からの攻撃、何もヘブンズ・ホールで移動したのはセーブだけではない。同じようにホールをくぐって移動したオーエンはバルガとセーブが一騎打ちを繰り広げている間上空で待機し、獲物(バルガ)獲物(セーブ)を狩る、その一瞬の隙を狙ったのだ。今度はバルガが狙われる番であった。オーエンは上部から生える手の全てに持つ剣をバルガに叩きつけた。

 

「小癪な……!」

 

 

 

 しかし、肉と機械を断つ歪な音ではなく連続した鋼と鋼がぶつかり合うようにして連続に鳴った音に驚いたのはオーエンかセーブか……どちらにしても、その光景を見ていた下のクリーチャー達はバルガが織り成した絶技に声を失っていた。

 

 

「おい、見たか今の……」

「あぁ………かろうじてな。バルガの奴、双刀を後ろ手に変えて無理やりオーエンの剣戟を捌き切りやがった!!」

 

 

 空中で浮かびながら今起きたことが信じられない、といった様子でバルガを見つめるオーエンとセーブ。まさかここまで出来るとは──!!背後からの奇襲に対し、後ろ手で剣を振るう事で防御するとは考えられなかった為驚きで固まってしまったゼニスの二体。

 

「どうした、もう終わりか?」

 

 そして、立ち竦む二体の胴へと添えられた青竜刀の反りと日本刀の長さを足したような巨大な刀。もしも数ミリでも動いたらバルガはその腕を引いて二体のゼニスを真っ二つにすることは想像に固くない。

 

「ほぉ……若造の癖にやるじゃねぇか」

 

「冗談はよせ、お主ならあの一瞬でどちらもその刀で切り捨てられるだろうに」

 

「しっ、もうすぐ決着みたいですよ……」

 

 下に残されたクリーチャー達はその光景を見てこの戦いはもう終わったと思い、静かにその最後を見届けようとした。

 

 

「…………セーブ、やりなさい」

「【了解】《天運ゼニスクラッチ》発動──」

 

 しかし互いに動けない中、オーエンがセーブに出した命令(オーダー)にバルガは激怒した。それはこの闘いを汚す物でしかなかった。現に、彼は今までその能力の一部を使わずに戦っていた。

 

「なっ、ゼニスッ!!貴様らァァァァアアアアアアッ!!」

 

 セーブ・ザ・デイトが唱えた呪文《天運ゼニスクラッチ》、それは言わば運任せでしかない一発逆転の呪文だがこと真剣勝負においては使ってはならない一つの禁じ手でもあった。

 

 怒りに任せ、刀を振り上げてセーブに切りかかるバルガ。しかし、その途中で剣の軌道があらぬ方向へとズレていく。引き寄せられるようにして剣先が向かった方向にいたのはゼニスクラッチによって呼び出された新たなクリーチャー(闖入者)

 

「よりにもよって、貴様が出てきたか……()()()()()()()()()()!!」

 

「;:-+[?;=)]}/”[?」

 

 機械音のような声を発し、バルガの剣戟を受け止めたのは【「破滅」の頂ユートピア・エヴァー】だった。そのクリーチャーの体は超獣世界でも一、二位を争う硬さで有名だ。鋼鉄をも切断する剣を当然のごとく受け止めている。

 

「ふん、下らん……貴様等ゼニスには誇りが無いようだな!」

 

 尚も剣を抑え込む力を発揮するユートピアに対して、バルガは答えた。彼はその抑えていた力を使い、同士(ドラゴン)を戦場へと奮い立たせた。

 

 

 

 

「ならば!これは最早ただの争いでは無く戦争(たたかい)となった!我に続け、一騎当千の強者達よ!その爪は、その牙は!今この時の為にあった!」

『オォォォォォォォォォォォォオオ────ッ!!!!!!!!!!』

 

 

 

 天に剣を突き立て、それに続くようにして雄叫びを上げてユートピア達に向かって飛び立つ無数のドラゴン達。そしてその無敵の軍勢に応えるように今度はゼニス達が戦いの場に次々と参戦する。

 

「バルガの名において、これ以上のドラゴンへの侮辱は許さん!」

 

「そらそらそらそらァ!ッシャァ!ゼニス共、歯ァ食いしばりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「────────ッ!!!!」

 

【竜星バルガライザー】が、さらに多くのドラゴンを呼び寄せ【熱血龍バトクロス・ バトル】が果敢にゼニスへ殴り掛かり【界王類絶対目ワルド・ブラッキオ】が声なき声に力を込めゼニスの能力を封じる。

 

「ふん、俺達に勝とうなどと思い上がった下等な蛇共が……」

「その蛮勇を祝福しましょう。ですが、慈悲は無い」

 

「正に能無しの極。智無き者に明日は来ない」

 

 四方から向かってくるドラゴンの群れを向かい打つように円状に並ぶゼニス達。【「俺」の頂ライオネル】が敵を見下しながら力を振るい、【「祝」の頂ウェディング】が形だけの賛辞を送りながら踏み潰し、【「智」の頂レディオ・ローゼス】が彼我の力量差も測れない哀れなドラゴンをその知恵と技量を持ってして圧倒する。

 数と、連携を駆使して攻撃を仕掛けるドラゴンと個にして群であり強力な能力を放つゼニス。

 

 光が、火が、夜の宴を彩る派手な花火と化した。離れた場所にいるクリーチャーはどちらが勝つか賭けを始めたり、それに乗じて儲けようと企む者まで出てくる始末。

 

「ワッハッハっ!!いいぞ、もっとド派手にぶちかませぇー!!」

 

「やれやれ……これ、どうやって収集つけるんですか……」

 

「あーあ、せっかく静かな良い宴だったのに。ドラゴンとゼニス共め……まぁいいや、エル様の所行ってこよーっと」

 

「こうしちゃおられん、団長!早くワシらも行くでぇ!」

 

 戦いを遠巻きから眺めて楽しむ者や後処理を嘆く者、そして目の前の戦いの匂い焚き付けられて参戦する者、様々な反応があった。ただでさえ我が強いクリーチャー達が、狂ったように騒ぎ始める。元々交戦欲を持ち合わせている彼らが一度こうなってしまえば、それこそ全てを巻き込む戦いでも始まらない限り止まらないだろう。

 

 そして、さらに酒の肴としては些か度が過ぎる催し物は過激さを増す。

 一体のクリーチャーが慌てた様子で走ってきて、辺りの者に大声で叫んだ。

 

 

「おい、大変だ!温泉から……『殿堂』から、()()()が出てきたぞ!!」

 

「なにっ!?あそこは普段開かねぇ筈だろーが!」

 

「馬鹿野郎!自分で無理やり壁ぶち壊して出てきたんだよ!ほら、彼処見ろよ!……って、おいおい……ベートーヴェンまで出てきたのか、お互いにやる気満々じゃねぇかよ!!」

 

 そしてとうとう、極上な戦いの気に当てられたせいか最強のドラゴンと最凶のゼニスが姿を現した。

 

 

「ここに!今!オレが、勝利を宣言する!」

 

「……()くぞ」

 

 【勝利宣言(ビクトリーラッシュ)鬼丸「(ヘッド)」】がドラゴンの勝ちを疑わなかった。

 【「修羅」の頂VAN・ベートーヴェン】はゼニスに敗北は有り得ないと決意を抱いた。

 

 

 

『くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 

 戦いは熾烈を極め、戦局を次々に広げて行く。呪文により消し飛ぶ大地に、ドラゴンが放つ火のブレスや兵器の数々が空を埋め尽くしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツら、一体何をしているんだ……?」

 

 そんな中、エルは被害を受けないように上座の周りに張り巡らされた防御網から見える外の景色に頭が痛くなっていた。こんな近くで世紀末戦争が起きていては安心できず、食える飯も食えないというもの。

 

 実際はエルを中心に【無敵城シルヴァー・グローリー】を設立され【Dの牢閣メメント・モリ神宮】を張り巡らしてさらに【無限の精霊リーサ】や【不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー】らが防御しているので核弾頭並の攻撃が飛んできても平気どころかその核弾頭がこの世から消え去る事にエルは幸か不幸か気付いていない。

 

「マスターは気にしなくていいわ。馬鹿が、馬鹿やってるだけよ」

 

「そんなことよりもご主人様。こちらのサラダもどうぞ!今朝フィオナの森で採れた新鮮な野菜を使っているんですよ?はい、あ~~──」

 

「────ん、モグモグ……ごくん。はっはっはっ!わらわを差し置いて「はい、あーん」などはさせんぞオチャッピィ!エルの世話をするのはわらわじゃ!」

 

「あー!プリンちゃんのバカーーー!!それには私が一から作った媚や……ドレッシングを掛けておいたのにー!!」

 

 

 クリーチャーたちに囲まれ爆発音や地鳴りが絶えず起こる中、エルは決心した。

 

 

(そろそろ俺、本気で家出しよう……)

 

 




大勢対大勢の戦闘描写とか……一体一でもままならないのに何してんだ私……
え、結局ドラゴンとゼニスどっちが強いかですって?……実際にデッキ買ってデュエルすれば分かりますよ(ニッコリ)
────────────────────
~メインカード紹介~

【無双龍幻バルガ・ド・ライガー】
毎年おなじみ、子供には勿論大人にも大好評のクロニクル・レガシー・デッキ2018年度『究極のバルガ幻龍郷』で追加された目玉クリーチャー。
 バルガと名のつくとおり、「連ドラ」デッキに現れた革命児。赤緑10コスト、スピードアタッカーでマッハファイター持ち。能力は攻撃時に山札のトップをめくりドラゴンならバトルゾーンへ、そしてドラゴンでなくてもマナゾーンへ置くことが可能。
 マッハファイターがあるので邪魔なクリーチャーを片付けつつドラゴンを出せる、正に至れり尽くせりなカード。

【「終焉」の頂 オーエン・ザ・ロード】
クロニクルデッキ2018年『至高のゼニス超神殿』で追加された新カードの一枚。
ゼニスでは珍しい有色の光クリーチャー。しかし11コストと巨大なマナコストは実にゼニスらしい。能力は召喚時に墓地のカードを山札に入れてシャッフルし、上から3枚をシールドゾーンに加える。
そのせいかこのクリーチャーがバトルゾーンを離れる時にエターナル・Ωではなくシールドを2枚手札に加える(S・トリガーは使えない)事でとどまることが出来る。パワーも11500とかなり高め。

【「創世」の頂 セーブ・ザ・デイト】
同じく『至高のゼニス超神殿』で追加された一枚。
オーエン・ザ・ロードと同じく光のゼニスでコストは1下がって10コスト、パワー10500となっている。
能力は召喚によって出た際に手札からブロッカーを持つクリーチャーを()()()()()。さらにブロッカーが出たらカードを一枚引く、と一人でヘブンズとロードリエスの株を奪いに来てるクリーチャー。


※他にもクロニクルデッキには様々な強力なクリーチャーや呪文が入っております。興味のある方は是非とも公式ホームページをチェック!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。