フェアリー(のように穏やかな)ライフ(を送りたかった)   作:水生蟲

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これからも本作を温かい目で見守ってくだされば幸いです。


四話

 二天龍がグールジェネレイドに追い詰められ、聖書の神がG.O.Dに潰された頃の悪魔と堕天使達はその惨憺たる光景を目にして即座に新たな戦いから逃げることを決意した。

 

 あんな化物共とやり合ったら命がいくつあっても足りない、それが残された二つの組織の総意であった。まず悪魔達が我先にと戦場から退却を始め、それに続くように呆然としていた堕天使らがG.O.Dによって挽肉と化した聖書の神の姿を見て逃げ出した。

 

 元は主であった聖書の神の力はよく知っていた為、その神が殺されるほどの力量となれば自分達が敵わないことなど堕天使たちはよく知っていたのだ。

 

 

「畜生!ちくしょうちくしょう!!なんだアイツらは!?いったい何が起きてやがる!!!ふざけやがって、あんなんが出るなんて聞いてねぇぞ!」

 

「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょうルシファー!もっと遠くへ避難を!まずは態勢を整えて……話はそれからです!!先程の大爆発でこちらの残存戦力の三割も削られた……他でも二天龍の負傷に聖書の神が殺られてる、それだけでも充分ヤバいですよ!」

 

「くっそ野郎共が………ッ!!どこのどいつか知らねぇが俺らの戦争に水差しやがって……ただじゃ済まさねぇぞぉぉぉぉぉおおおおお!!!!絶対にテメェらのリーダーの首根っこ引き抜いて、砕いて、解して、並べて、揃えて、愉快な玩具にしてやる!!」

 

 そして、逃げる悪魔の集団の中でも二人ほどの悪魔が後ろに振りむきながら、自分達が惨めにも尻尾をまいて逃げてきた元凶に向かって悪態を吐く。この二人は悪魔で言えば最上級の階級である四大魔王のうちの二人……人間界で言うならば王族であった。名をルシファーとベルゼブブ、本名は別にあるが現冥界の四大魔王の世襲制度ではそれが彼らを示す唯一の名だ。

 

「ほぅ………今、なんと抜かした?若造」

 

 なおも戦場から遠ざかる二人に、背後から声がかけられた。

 

「そんで、その後に骨を………ぁ?んだてめぇ…?見ねぇ顔の奴だな、どこの家のもんだ?」

 

「ルシファー!違うっ、そいつも化け物共の仲間ですっ!」

 

「はぁ?おいおい、何言ってんだよこのバカ。さっきのクソ爆心地からここまでどんだけ離れてると思ってやがる。おい、テメェそんな骸骨みたいな甲冑しやがって、イカしてんじゃねぇか。俺ァ好きだぜ?そういうの」

 

 ヘラヘラと笑うルシファーへ近付くのは、骸骨の面を被り騎士の格好をした人物であった。手には青白く光る銃剣。背には真紅のマントを羽織っている姿は現魔王であるルシファーからすれば痛いやつ、という認識でしかなかった。

 その場で手に魔力を集めてボールを作りながら飛行し、お手玉さえする余裕まで出ている。そこに先程までの無闇に喚き散らす子供のような態度はなかった。そして、無様に逃げ出す敗走者の姿でもなかった。

 

「ククク……こんな痴れ者が魔の王だと讃えられているとは……我が一族とは比べ物にならんな」

 

 その言葉に、ルシファーは嗤う顔を歪めて凶悪な顔つきになった。目は猛禽類のように鋭く細められ、獲物を見つけたように浮かべる嗜虐的な笑みはまさしく悪魔と呼ぶに相応しい。

 

「へぇ………お前、死にたいみてぇだなァ…」

 

「ルシファー、だからそいつはっ!」

 

「うるせぇ黙ってろベルゼブブ、こいつがアイツらの仲間だと?そんなことは見りゃ分かる。どのみち追いつかれたんだ、殺らなきゃ殺られんだろうが……いいぜ、惨めにも戦場からこの俺が逃げ出した屈辱をテメェの首で晴らしてやる」

 

「我が主人を貶した挙句、この我を殺すと申すか……やれ、随分と舐められたものだ。その代償、高くつくぞ…………貴様と、貴様の一族全ての命で償うがいい!!」

 

「やれるもんならやってみな、骸骨クソ野郎!!テメェの一族郎党皆殺しだ!!」

 

 

 互いに濃密な殺気を放つ二人、方や魔王としてこれ以上の無様は晒せず、方や主人を貶められて誇りを嗤われた。互いに殺す理由は十二分。

 

「ハァッ!」

 

 先手を打ったのはルシファーだった。彼は何も本当にこの骸骨の騎士が化け物たちの仲間だと思っていなかった訳ではない、先程まで手で遊んでいたのは凝縮された魔力の塊。それらを瞬時に全て撃ち出した。

 

「フッ……我に魔弾の撃ち合いで挑むとは愚かな……格の違いというやつを教えてやろう」

 

 迫る無数の魔弾に対して余裕を持った態度に、離れた場所でベルゼブブは何か得体の知れない恐怖に見舞われた。ルシファーに危ない、と伝える間も無く骸の皇は力を開放する。

 

「《魔弾ロマノフ・ストライク》」

 

 掲げた銃剣とその周囲から魔法陣が起動し、ルシファーが射出した魔力目掛けて幾数もの光線が発射された。そして、空中で貫かれた魔力はその実体を散らす。

 

「チッ……やっぱ、効かねぇか」

 

「愚か者め、このような稚戯が通じるとでも?」

 

「あぁそうかい……なら、コイツでも喰らいなバケモンがよォ!」

 

 ルシファーは吼える。決して弱くは無い自身の練った魔弾を瞬時に撃ち抜いた正確さと威力に怖気づきそうになった自身を鼓舞するために。

 そんな彼が次に撃ち出したのは先程の五倍の大きさはある巨大な紫炎の弾だった。数でダメなら質で討ち取る、そんな魂胆が良くわかる攻撃であった。しかし、そんなものは幾度の闘いを生き抜いた邪眼の騎士には通じない。

 

「甘い、もう一度だ《魔弾ロマノフ・ストラ────何っ?」

 

「へっよく分かってんじゃねぇか、ベルゼブブ!このまま決める!」

「あぁもうルシファー!いつもいつもいつも貴方って悪魔は、後で文句言いますよ!」

 

 意外にも、声を出したのは騎士だった。先程と同じように魔弾を発射しようと魔法陣を起動しようとしても、そもそも魔法陣が起動しない。しかも身体が動かない。感じたことの無い違和感にまさか先程のベルゼブブという輩は魔法陣(呪文)封じの術等を持っていたのかと思ったのも束の間、迫る紫炎球を間一髪で避ける。しかし熱量までは防げなかったのかジュッ……!!という音と共に顔に黒い焦げが残ってしまった。

 その事実に手をワナワナと震わせ、顔についた痕を確かめる騎士。目の前に持ってくると手に付いた煤を幾度も見返しては裏返す。

「チッ、今のを避けるかよ。にしても何だァ?今度は何してやがる」

 

「ハァ……全く、私は戦闘出来ないのに人使いが荒いですよルシファー……ってあれ?なんか熱くないですか?」

 

「そりゃこんなバケモンと対峙してんだ、体も火照るだろ」

 

「いや…そういう熱さでは……」

 

「許さぬ……………」

 

「…ァ?」

 

「………許さんぞ貴様ら………このような醜態を晒したのはいつぶりか……良かろう、貴様らには真の地獄を見せてやる……《煉獄と魔弾の印(エターナル・サイン)》発動…蘇るがいい、我が邪眼の真の後継者にして王たる素質を持つ者よ────【邪眼教皇ロマノフⅡ世】!!」

 

 

 熱気の正体は骸の皇、邪眼教皇ロマノフⅠ世から漏れ出た蒼い炎で組上がった魔法陣だった。ロマノフⅠ世の憤怒に呼応するように猛々しく燃え盛る炎は、その術式から眠れる地獄の使者を呼び起こす。

「────…ォォォオオオ!!!!」

 

「おいおい、嘘だろ……冗談キツイぜ……」

 

「そんなっ!?もう一体出てくるなんて!!」

 

 

 咆哮と共に出てきたのはロマノフⅠ世に良く似た容姿をした新たなクリーチャーだった。名をロマノフⅡ世、ロマノフの名を継いだ由緒正しき存在はその証でもある邪眼を妖しく光らせ、口を開いた。

 

 

『我がロマノフ一族に楯突いたこと、後悔するがいい……下劣な悪魔よ』

 

 

 違う声で、されど同じ言葉で込められた殺すという宣告。哀れな二匹の悪魔がその宣言通りになるまで幾分もなかった。

 

 

 

 

──────────────────

────────────

 

 

ロマノフ達が取り残した悪魔、堕天使の二陣営は背後でクリーチャーの標的となってしまった二人の魔王のことなど露知らずに我先にと逃げ続けていた。中でも四大魔王のうち残り二人、レヴィアタンとアスモデウスは一刻も早く戦場から逃げようと先頭を駆け抜けていた。

 

 

「ハァ……ハァ…!」

 

「ちょっとレヴィアタン!落ち着きなさいってば!」

 

 余りの速さに悪魔達の集団からも徐々に離れていくレヴィアタンに、辛うじて追いついたアスモデウスが肩を掴んで静止を呼び掛ける。

 

「逃げなきゃ……!逃げなきゃ……死ぬ!殺される!いや…いやよ、まだワタシは死にたくない……!」

 

「だから落ち着いて!そんな急がなくても、もうここまで来ればアイツらも来ないはずだよ……」

 

 死にたくない一心で逃げ続けた魔王の一人は、その肩を震わせて意見を述べる。

 

「………そうかしら?」

 

「えっ?」

 

「アイツらは何も無い所から突然出てきたわ……まるで、世界が新しい世界に張り替えられたみたいに……今、ここに現れないと言う保証があるの?」

 

「ッ、そ、それは」

 

「無いなら逃げるしかないじゃない!!あの化け物……いえ、召喚獣(クリーチャー)とでも呼びましょうか。アイツらはきっと私達を殺しに来たんだわ……一匹残らず、根絶やしにね!私はそんなのゴメンよ……何を犠牲にしてでも生き延びてやるわ!!」

 

「レヴィ………」

 

 悲痛な顔で生を叫ぶ悪魔。しかし、その顔は生存欲ではなく死に対する恐怖の方が勝っていた。

 

 

「悪魔如きが犠牲を良しとするか。面白い、その心意気や良し!

 

 

 

 

 

 

だが、貴様もその犠牲の一つに過ぎない」

 

 

 

 

「ぁえ………」

 

「そんなッ?!ホントに来るなんて……ッ、レヴィ!避けてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

()から聞こえた声にレヴィアタンとアスモデウスは、しかし反応ができなかった。それもそうだろう、誰が天から山が降ってきて避けることが出来るだろうか。魔王といってもその基準は血筋……この二人も大した戦闘を経験していないのに戦場へと駆り出された、言わば魔王という肩書きで味方を鼓舞する為の道具でしかなかった。

 

 

「GAAAAaaaaaァァァァァァ────!!!!」

 

 

 それが山かと見違えたのはその大きさにあった。戦場に降り立ったどのクリーチャーよりも巨大な存在は空から急降下をし、後続の堕天使諸共巻き込むほどの衝撃を与えた。

 されど被害はそれだけでは終わらない。束縛という束縛を嫌い、弱者ですらない逃亡者には死あるのみと考える暴走龍は己の信条に従って怒りを散らす。

 

 

 

 

 

「────敗走者共には過ぎた褒美か?」

 

 言葉は単純、威力は明解、結果は唯一

 

その場にいた草木は死に絶え、動物は身体が弾け飛んだ。築いた亡骸の頂に君臨した無法者は、眼下に広がる屍山血河に満足そうに頷いた。その一種の災害とも言える姿を見れた者は、そう多くは無い。

 

 




旧四大魔王の出番これだけです。悪しからず()正直彼らの設定がほとんど無くて大丈夫か不安です。あと主人公サイドがもはや擁護できないレベルで虐殺繰り広げてしまった………いや、今更か。

~主要カード紹介~

《邪眼皇ロマノフⅠ世》
言わば闇文明の顔であり、闇らしさを押し出した象徴。登場時にカードを墓地に落とし、アタック時に呪文を唱えられる強力な能力とは裏腹に一ターン待たなければダメだったがクロニクルデッキで煉獄と魔弾の印(エターナル・サイン)が封録され、そのもはやロマノフ専用コンボにファンを湧かせた。一度走り出すと中々止まらないので、相手する時は注意が必要。

《邪眼皇ロマノフⅡ世》
本作ではロマノフⅠ世が(グールジェネレイドによって死んで)墓地から復活させたが、背景ストーリーではⅡ世が煉獄と魔弾の印(エターナル・サイン)を使った事により過去に死んだⅠ世を蘇らせている。能力は山札の上から五枚を墓地に置き、その後墓地から闇の6コスト以下の呪文を唱えられるのでそのままⅠ世に繋いでコンボが狙える。

煉獄と魔弾の印(エターナル・サイン)
ロマノフ専用と言ってもいいのでは?という火闇呪文。6コストで、墓地にいるコスト7以下の進化ではない闇か火のクリーチャーをスピードアタッカーを付与して場に出せる。


暴走龍(ライオット) 5000GT》
アウトレイジ最強格の一体。コストは12と重いが見るべきはその能力、墓地にいるクリーチャーの数だけコストを下げられるので案外すぐに出てくる。さらに登場時にパワー5000以下のクリーチャーを全て(自分の含む)破壊。さらにさらに、誰もパワー5000以下のクリーチャーを出すことが出来ないのでハヤブサマルなどを封殺できる。スピードアタッカーとT・ブレイカーも持っているのでかなり使える。

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以下、疑問に思われるかもしれない点について

※ロマノフⅠ世のロマノフストライクのパワー−5000効果…どこいった?という点についてはルシファーが撃った魔弾に対して発動してます。並びに、ナイトマジックでロマノフストライク唱えようとして唱えられなかったのはベルゼブブの固有能力としています。デュエマ風に言うなら《誰も同じ呪文を二度続けて発動出来ない》という感じですね。ゴクガロイザーにぶっ刺さりますねこれ。

※5000GT…つか今回全体的に出番少なくない?という点については大丈夫です、次出します(多分)
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