フェアリー(のように穏やかな)ライフ(を送りたかった) 作:水生蟲
冷たいアイスを食べる片手間にでも本作を読んでいただけたら幸いです。
「エル……それが貴方の名前なのね?」
目の前で空腹宣言をしてぶっ倒れた人物を部室へと運び入れて数十分後、ソファの上で目を覚ました青年はリアス達と目が合うとお礼を言って簡単な自己紹介をした。
「モグモグ……そうだ」
とは言っても、俺のエルと言う名前もかつてクリーチャーから言われただけで本当にそんな名前なのか実感がわかないが……
前に置いてあるテーブルにはイッセーが途中でコンビニへパシられて買ってきたパンが所狭しと並べられており、エルはムシャムシャとそのうちの一つを頬張っていた。なおその後ろではイッセーが空になった財布をひっくり返し「俺の今月の小遣いがぁぁぁぁ!」と叫んでいた。
リアスはまるで小動物のように次々と
(ただの人間を一切の傷を負わせる事無く、手厚く保護をしろだなんて……最初は何を言っているのか分からなかったけど実際に見てますます分からなくなってきたわ……)
何故見てくれが少し違うだけの一般人をそうまでしてもてなすのか理由が分からなかった。しかし、私達が悪魔だということを教えても大して驚く様子は無かったので少なくとも世界の裏には通じているのだと確信するリアス。そしておもむろに手を挙げ、背後へと朱乃達を並ばせる。傷をつけるなとは言われているが、もしもの際の非常措置故だ。
「さて、そろそろ本題に入らせて貰ってもいいかしら?」
「あぁ……構わない」
その言葉に、エルは頷くと同時に口の中に残った内容物を飲み込んだ。ゴクンッ────ンッ!!?
「ゲホッゲホッ!ゴホッ……!」
むせた。
『………………』
その様子に黙り込むオカルト研究部。その顔はコイツ本当に大丈夫か?との困惑がありありと出ており実際リアスもこの人物が本当に捜索依頼対象なのか不安になってきた。
「ケホッ………続けてくれ」
咳き込んでもほとんど変わらない能面のように固まった顔で何事も無かったかのように言う。
「え、えぇ…分かったわ、コホン。それじゃ、単刀直入に聞かせてもらうわ。あなたは一体何者なの?」
その言葉に一瞬ピクッと体が反応するエル。
「…まぁ、そうなるか」
俺が何者か、エルは目を瞑りどう説明するべきか慎重に言葉を紡ごうとする。かつての大戦、その後外界に進出し裏から世界を牛耳るクリーチャー達の主君。肩書きはそうだが自分自身はそんなことは思っていない、俺は彼らの上に立てる存在なのか?本当に?何も知らずただ日がな彼らに甘やかされのうのうとしていた俺が?
「なぁ、悪魔さん達。クリーチャーの存在を信じるか?」
時々聞くブラックモナークを含めたこの世界に滞在しているクリーチャー達によると、まだ俺らの存在は公にはされていないらしい。勿論かつての大戦で幸運にも生き残っていた数少ない人外達はいなくはないが、その誰もがことクリーチャーの話題だけは鮮明に話すことを躊躇った。
俺が主君?否────
俺が
少なくとも、今はまだ彼らの主を名乗るのには俺は相応しくない。初めて目を覚ました時からそうだった、心のどこかで声がしていたんだ。
今の
「俺は……クリーチャーにとっての、切り札だ」
─────────────────
──────────────────────
「姫様っ!ダメです!お父様とお母様が帰るまでちゃんとお待ちください!!」
「ええい、
二つの声が壁に跳ね返り、長い廊下中に響き渡る。片方は少し低い男性のような声。片方はまだ成人してないように感じる高い子供のような声だった。
「姫っ!どうか今一度お考え直しを!それに、バレたらエル様になんて言えばいいのか分からねぇ!」
「ッ………なんと言えばいいのか、じゃと……?」
「おぉっ!?っとっと!」
その言葉に急に立ち止まり、顔を俯かせた姫と呼ばれるクリーチャー。背後に付いていた巨大な龍は急なストップに大きくよろめいてしまう。
「……のぉ、リュウセイよ。今更、誰に、何を言うつもりなのじゃ……?申してみい、リュウセイ…」
震える声で、必死に絞り出すようにした声にリュウセイと呼ばれたクリーチャーはしどろもどろになって言葉を返した。
「それは、エル様になんて言えばいいのか……」
「この戯けがっ!そのエルがっ!!居なくなったんじゃぞ!?何も言わずにわらわ達の前から!!もう一度聞くぞ、誰に、何を言うというのじゃ!リュウセイ!!……ひぐっ…ぐすっ……!」
「っ、姫………」
静かに咽び泣く。エイリアンの姫君、いつだって高飛車でヤンチャだがその持ち前の明るさに多くのクリーチャー達から慕われ続けるプリンが、まるで親とはぐれた童女のように大粒の涙を零す。
エルが超獣世界から消えてから数時間後、どのクリーチャーもがエルの存在を感知できなくなり異常事態を発動してから数日間。各文明が超獣世界を探し回るも姿は無し、余りの出来事にパニックになるクリーチャー達だった。
全員がもうお終いだ……と思っていく最中、ついにシャーロックが誰かが外界へと出た痕跡を発見した。言わずもがなエルである。
「アーもうウッサイわねー……どーしてこうワタシの妹分といい脳内ピンクの堕妖精といい、エイリアンの姫といいヒステリックに叫ぶのかしら」
「だって姉様!!マス、マスターが!イヤ、イヤよ!マスター、何処に行ったのよ……お願い、帰ってきて頂戴よォ……!」
すると、その場に新たに現れた二体のクリーチャーがその哀愁漂う雰囲気を切り裂いた。その登場にハッとして慌てて涙を拭くプリン。姫の涙は、そう易々と見せるものでは無い。
「っ!その声は、ジェニーか……?」
「ハロ~姫様、久しぶりィ~解体人形ジェニーちゃんよ」
何が面白いでもなくケタケタケタと笑う
そんなジェニーの腰に縋り付くのは同じジェニーの名を持つ特攻人形ジェニーだった。彼女は今泣きながら解体人形に引き摺られるようにして連れてこられている。
「えぐっ、うぅ……ジェニーよ、何故お主はそうも冷静でいられるのじゃ…まさか……エルが心配では無いのか!?」
「それこそまさかよ、心配に決まってるでしょう。けどね姫様?マスターが外界にいるのが分かって、もう既に大量のクリーチャー達が探しに行ってる。呪文の痕跡から位置も大体掴めた、これでもまだ安心できないって言うの?」
「じゃが、もしもエルが怪我でもしてたらわらわは……」
「……その時は勿論原因をバラせばいい、もしもマスターにかすり傷一つでも付いてたら幾千でもソイツをバラしてあげる……マスターが一秒でも悲しんでいたら幾万でもソレに悲鳴をあげさせてあげる。バラしてバラしてバラバラにしたあとは、私達がマスターに一人にしてゴメンなさいと謝って死ねば済む話よ」
顔を少し俯かせ、影ができた顔から覗く赤い瞳は見もしぬ外敵に向けられていた。
「うぅ、流石に死ぬのはわらわは嫌じゃ……エルと
「なーにドサクサに紛れて叶いもしない願望口に出してんのかしらこの高飛車姫は、バラすわよ」
そこまで言って解体人形とエイリアンの姫は笑い合う。どうやら軽口(本人達は本気だが)を叩き合う程度には気分が晴れたようだ、傍に控えていたリュウセイ・カイザーはほっと胸を撫で下ろす。
「ありがとよ、助かったぜ
感謝の礼を言うと、解体人形はまたもケタケタケタと笑った。
「フフ……別にいいわよ。けど、ゴメンなさいね……フフっ、貴方のこれからの苦労を思うと笑わずには言われないわ」
「何を言って……ホワッツ?」
リュウセイは気づいた、いつの間にかプリンの姿が消えていることに。
「ふっふっふっ…ジェニーのおかげで憂いは消えたが、だがやはり報せを待つのは性に合わん!当初の予定通りわらわ自らエルを迎えに行ってやろうかのぉ!」
プリンは恐るべきスピードで遥か前方へと続く廊下を走っていた。その道の先にあるのは────‘超越の間’。今やクリーチャー達が唯一自由に外界との出入りが出来るたった一つのゲートだ。
「しまったぁぁ!?シット!姫ぇぇぇぇ!!お待ちください!!」
どんどん姿が見えなくなるプリンに、永遠のリュウセイ・カイザーは慌てて追いかけて行った。
「こんな時だって言うのに相変わらず面白いわね、あの二人は」
ケタケタケタ、その二体が遠ざかっていく様子を解体人形は笑って見送った。
「ほら、アナタもしっかりしなさい」
「うぅ~~……マスタ~~~……」
特攻人形の方のジェニーは未だに泣き崩れており、それを見た解体人形はとあることを口にする。
「手のかかる妹ね、一体マスターに抱きつかれて数時間も目を回していた時の喜び具合はどこに行ったのかしら」
「なっ、姉様!!?それはっ!!」
ヨシヨシと髪を撫でられたまま事実を口に出され、羞恥で顔を赤らめる
「フフ……けど、いいわよね……ねぇ、ジェニーちゃん?やっぱりワタシの腕とその抱き着かれてマスターが触れたっていう腕、交換してみない?こう……スパッと」
解体人形は、特攻人形と同じように球体関節をしておりサイズは少し違うものの妹分がマスターに触れられたという腕を羨ましく思っていた。真っ赤な目はギラギラと光っており、彼女の持つ「カットちゃん」と呼ばれる武器についているドクロの目も妖しく光っていた。
「いくら姉様でもそれだけは絶対にイヤよ!?」
「アラ、残念……」
イヤイヤと首だけを横に振るう特攻人形。いくら姉様と慕っていようともそれとこれとは流石に話が違うようだ。
「さて……じゃあワタシ達もそろそろ行きましょうか。ねぇ、
「ハイ、
今までずっと待機していたのか。柱の影から出てきたガブリエルは、光のない瞳で返事をした。
─────────────────
──────────────────────
「聞けぇ!エイリアンの姫、プリンが命ずる!この町にはわらわの未来の伴侶、エルがいるはずじゃ。草の根を分けても必ずや探し出して参れ!一番初めに見つけた者にはわらわ自ら褒美をやろう!」
『ハッ!』
「あぁ……結局こうなっちまったか……」
見渡す限りのクリーチャー達がプリンの命令に一斉に飛び立った。彼らはプリンによって強制的に召喚されたエイリアン達だ。
一方、プリンを止めることが出来ずこの駒王という名の町に
「ふっふっふっ、待っておれよエル!今に見つけ出してやるからの……わらわを寂しくさせた罪、ちゃんと償ってもらうのじゃ!」
握り拳を作り、天高く登る月に向かってそれを突き上げるプリンの姿はまるで己の勝利を確信する強者の姿だった。
ゾワッ────!!!!
なんか……得体の知れない恐怖が…………!!あれ、体が、無意識に……!?
「おい、急にどうしたすげぇ震えてるぞ!?」
「あら……まるで携帯のマナーモードですわね」
「言ってる場合じゃないでしょう!ちょっと子猫!?毛布を貸して!」
「はい部長、どうぞ」
「裕斗!貴方は……やっぱりいいわ!」
「……はい」
んー……展開ゆっくりな気がしてならない、もっと早くした方がいいですかね?とりあえずライザーまではサックリ行きたい(今更感)
────────────────────────
~カード紹介~
【永遠のプリンプリン】
名前を聞けば誰もが頷くであろうクリーチャー。自然文明4コストパワー4000。永遠のプリンプリンは幾度となく同系列クリーチャーが出されている中でも最初期のクリーチャーである。あと可愛い。
能力は山札と手札を除く種族《エイリアン》にハンターを、《ハンター》にエイリアンを付け加える。さらにバトルでの破壊耐性。そして可愛い。
実現出来るかは本人の技量と運しだいだがこのクリーチャーの父と母であるエイリアンファザーとマザーエイリアンを並べるとかなり
【永遠のリュウセイ・カイザー】
一昔前なら出やがったなイカレ(性能)野郎……!と叫ばずにはいられないドラゴン使い御用達のリーサル・ウェポン。火文明8コストパワー8000のマッドネス、スピードアタッカーかつ相手をタップインという驚異の性能持ち。学校男の裁定が変わる前に二ターン目でこの子を引いてしまったハンデス使いは泣いていい。
【解体人形ジェニー】
特攻人形ジェニーに並ぶハンデス界の女王。四コストパワー1000の闇クリーチャーで、特攻人形のランダムとは違いこちらのジェニーは相手の手札を全て覗けて好きなものを捨てられる。相手の動きをほぼ確実に遅らせることが出来るため相手の困った顔が見たいなら是非ともオススメである。