新大陸仕様の鬼人化先に書いた人いたら知りたい
※地の文が途中で一人称に変わります
ゴォォォウ!!
「それは……見慣れている!」
テロス密林にて、深緑の竜と白銀の剣士がしのぎを削っていた。今日はジオルドが村の依頼で、密林にリオレイアを狩りに来ていたのだ。商人の道の妨げとなる竜を狩って欲しいとのことだった。
ジオルドは女王のサマーソルトを側面に向かって動いて躱し、着地に向けて『封龍剣【超絶一門】』を構えた。
「そこだ!」
地に脚をつけた瞬間を見切って、ジオルドは鬼人突進連斬をリオレイアの頭部に叩き込む。これは彼が新大陸にて身に付けた技だ。左向きに回転しながら突進し、そしてその回転を利用した斬撃だ。勢いが強く、硬い部位に当たっても弾かれて仰け反ることなく突き進むが故に、歳を取ってもジオルドはこの技を重宝していた。また、弾かれることなく突き進むほどの勢いを持つということは、リオレイアの甲殻の薄い頭部には大きなダメージの元となるということでもある。
ゴォォォォウォォ!?
それを裏付けるように、彼女の鱗は弾け飛び甲殻は割れ、血が吹き出て表皮に滲んでいた。
「ハッ!!セヤァッ!!」
逆手に構えた超絶一門の右を逆袈裟に切り上げ、逆手から順手に構え直して回転斬りを当てる。これがジオルドの戦法。『新大陸式』の鬼人化と、『ギルド式』の鬼人化を切り替えながら戦うのだ。
新大陸において習得する鬼人化は主に逆手で構える。これは地形を利用した戦い方をしやすくするためだ。対してギルドや訓練所にて習う鬼人化は、持ち方を変えずそのまま戦う。この場合一撃一撃、より構えて振るうが、その分斬撃を強目に連続させやすい。ジオルドはそれぞれの長所を取り込み、その卓越した技術で二種のそれを両立させた。彼の相棒たる編纂者に言わせれば『双・鬼人解放』、新大陸では彼の鬼人化はそう呼ばれている。
ゴォォォォアァァァァァ!!!!
「クッ……」
怯みから立ち直った雌火竜は、怒りを露わにして吠え叫ぶ。女王の怒りを感じ取ったのか、浜辺のコンガ達は一目散に洞窟なり他の地帯なりに逃げていった。
「……二人きり、か。それもいいが場所は変えさせてもらう!」
密林の中でエリア3と呼ばれるこの区域は、海が近く開けた浜辺と草木が高く生い茂る林部で構成されている。さっきまで彼がリオレイア相手に立ち回っていたのは林部。今は開けた浜辺に向かって走り出した。そしてその手にはシビレ罠。後ろ目にリオレイアを見ながら、どこに罠を張るかを探っている。
グォォ!!
「走って来たか。いいタイミングだ」
リオレイアが走り出した。突進だ。数多の狩人を轢き倒した、あるいは大いに焦らせたその行動、しかし熟練のジオルドにとっては隙を探しやすい行動でしかない。
一回ずつ、確実に横に動きながら突進の軌道から逸れる。そして三度目の突進。リオレイアは三回目で大きく強く突っ込み、そして脚で急ブレーキを掛ける。ここ数年で脚力の強い個体が増えているらしく、ジオルドが未成年の頃とは大いに変わってきているらしい。しかし隙には変わりないと言わんばかりに、リオレイアの背後にシビレ罠を仕掛ける。新大陸拠点アステラで改良されたそれは、どのような悪路であれ、確実にかつ迅速に設置可能な代物となっている。もはや置くだけ、と言っても過言ではない。
グルルォ!!
「さあ来い、ここで終わらせてやる」
改めて『双・鬼人解放』を行う。通常の鬼人化よりもより一層深い紅を纏いながら、女王の接近を待つ。
グォォォァァァ!!
「いい子だ」
グルルォ!?
愚策にも陸の女王は、先程同様に轢き倒そうとする選択を取り──それが命取りになるとも知らずに──、雷光虫の電流によって動きを絡め取られた。
「いくぞ──でァァァァァァッッ!!!!
逆手持ちのまま切っ先を振り下ろし、殴りつけるような動きで何度も斬り付け、そして飛びかかるような動きで回転斬りを叩き込む。
「ハァァッッ!!」
しかしまだ止まらない。そのまま逆手から順手に持ち替えながら一回転し、左の袈裟と右の袈裟から両の剣で右へと薙ぎ払い、右の逆袈裟から左の逆袈裟を二連で振るい、そして同時に双剣を振り下ろす。『新大陸式』と『ギルド式』。二種の乱舞を繋げ振るうこの技、アステラにて付いた名は『乱舞
グルルォォ…………
「こうして俺の道の糧が増える……ありがとう、君の死は無駄にはしない」
リオレイアが絶命したのを確認し、納刀しつつ、常日頃しているモンスター達への感謝を述べて剥ぎ取りを開始する。後は村に戻り、達成の報告をしてからクエストクリアだ。
「……今回も、生き残れたな」
剥ぎ取りながら呟いた言葉は、どこへ届くこともなく虚空へと消え去った。
△▼△
翌日の朝方。ジオルドはジャンボ村に着いた。いくら近いと言っても竜車の足。大した速度は出ない上に道を選ぶため、昼に終えても着くのは翌日の朝となることが多い。
「ふふ、早かったわね。流石『ドラゴンスレイヤー』」
受付嬢に報告をするためにカウンターに向かっていると、例の姐さんに呼び止められた。
「それはありがとうございます。……それで、今日でしたっけ?」
「いいえ、クエスト帰りで貴方も疲れてるでしょ?だから明日の早朝。ドンドルマ行きの便があるし、それに乗って行きなさい」
「わかりました。そうします」
話を終えたジオルドは、受付嬢の元へ向かう。因みに彼女はジオルドが村に来た頃から数えて二代目の受付嬢だ。彼がよく知る受付嬢は、年齢もあって代替わりをした。彼女曰く『やっぱり若いのがいいでしょ?』とのこと。正直そんなことはない。
「お疲れ様です、ジオルドさん」
「はい、証拠としての雌火竜の上鱗」
「どれどれ……はい、確認しました。これが報酬金と報酬素材です。ご確認ください」
「ありがとう」
渡された袋の中身を確認する。クエスト内容にて提示されていた報酬金と倍になって帰ってきた契約金、そして狩猟したリオレイアの素材が、確かにそこにあった。
「うん、確かに受け取った。それじゃあ俺は戻ります」
「明日は遅刻しないようにね?」
「分かってますよ」
その後、彼は武具工房に武具を預けて自宅に戻った。
「……人と、龍の住まうこの世界をどう見てるか、か」
ジャンボ村に着いてからざっと一ヶ月ほど。彼が
ジャンボ村で落ち着いてからは、彼は毎日、少女の言葉を反芻している。忘れないために、刻み込むために、迷わないために。聞き飽きるほど呟いている。
「……俺は、あくまでも生きるために狩りをしている。だが過ぎた狩りをすればハンターズギルドに罰せられる……そんな今の世界が正しいか否か、俺には分からない……でも……俺はモンスターも人も、滅ぶ世界は嫌だな」
戻ってきてから出てくる結論は、
「……何が見えるだろうな」
彼が姐さんから知らされた場所は『大老殿』と『シュレイド城跡地』の二ヶ所だ。そこ以外にも遺跡跡地などの場所を教えてくれるとのこと。そこにある物から、ジオルドは何を学ぶのか。どこからか白き少女が笑って見てる気がするとは、ジオルドの言だ。
「……取り敢えず、荷物の整理をするか」
答えが変わらないことを悟ったジオルドは、明日に向けて身辺整理を始めた。それが済んだ頃は夕暮れ時となっていた。
△▼△
「ムォッホン! よく参ったな、『ドラゴンスレイヤー』ジオルドよ」
ここはハンター達の集う街『ドンドルマ』、その中心にして最高地に建設された『大老殿』。そこに座するは年老いた巨大な竜人。かつては
「お久しぶりです、大長老様。調査団入りの勧誘の時以来、でしたか」
「ウム。古龍渡りの謎も解明された今、戻って来るとは思っていたが……まさか、よもや『竜大戦』について尋ねて来るとは思わなんだ」
「その前に……大長老様、異様な雰囲気を放つ白い少女の事を知りませんか?」
「……詳しく話してくれ」
地脈の収束地にて出会った少女。発光する長い白髪、人のものとは思えない紅色の瞳、『黒き伝説』すら撃ち払ったジオルドすら屈しかけるほどの威圧感、それらを持った存在のことだ。
「……その少女自体に心当たりはない。だが……いや、その答え自体は、恐らくワシが言うよりは当人に聴くのが適しておろう。それ以上に知るべき事を、オヌシは背負っているはずじゃ」
「……その通りですね。……聞かせていただけますか。『竜大戦』とやらを」
「……オヌシら、話終えるまで下がっておれ」
その言葉はジオルドに向けたものではなく、護衛の騎士やクエスト受付担当に向けてだった。こうなることを察していたのか、受付担当は書類を纏めて即座に立ち去り、騎士達は彼女達が去ったのを確認してから大長老に一礼して大老殿を去った。
「さて、どこから話したものか……ああ、楽にせい。疲れる話じゃからのう……まずは概要から話すかの……竜大戦。それは、人の繰り返された過ちの果てに起きた悲劇、とでも言うべきかの」
「過ち?」
「その過ちとは……端的に言えば、人が竜を殺し過ぎたのだ」
「……何故?」
尋ね返すと、大長老が本棚を一つ指差した。
「その三段目、左から四つ目だ」
「……『
手に取った本の題名は、
「……ッ!」
「それ一体を製造するのに、竜を30も屠る必要があった……そしてそれを量産しようとすれば……どうなるか分かるはずじゃ」
「彼らが感情的に行動するかどうかはともかくとして……人間を危険な害敵と見なし、報復に乗り出すことぐらいは、想像に難くないですね……」
「そうじゃ。それが竜大戦の発端。そしていつしかそれは、古龍達の怒りまでも買う戦いへと成り果て、最早辿り着く場所すらも闇雲へと消えた泥沼の戦争。決して後世に伝えられぬ世界の
大長老は再び本棚を指差した。さっきの本棚とは別の本棚を指していた。
「その五段目、右端じゃ」
「これって……『黒龍伝説』……まさか」
「答えの一つは、シュレイド城にもあるという事じゃ」
そう告げると同時、古龍観測隊の気球船が大老殿の
「……ありがとうございます。では失礼します」
「ジオルド様、こちらです」
「分かりました」
大長老に一礼してから、彼は大老殿を去った。気球船が大老殿から離れたのを確認してから、大長老は呟いた。
「願わくば、
そんな呟きを最後まで聞き終えたのは、奇しくも悪しき未来を与えんとする者と同じ、
▼△▼
ギィ■■エ■■ァァァ!■■?
靄がかった視界に写る黒いナニカ。ブツ切れの咆哮。ゴロゴロとなる暗雲の空。辺り一面には選り取りみどりの防具を着ている倒れた狩人達。手には二本の剣。見えてないけどとても握り慣れた感覚がする。そういえば視界が半分しかない気がする。顔が濡れてる気がする。目に血でも入ったか。
グゴォォアァァァァァァァァァァッッッッ!!!!
『──ヌ──!──ゾ──モ!!』
目の前の黒いナニカがまた吠え立てる。今度はクリアに聴こえた。なんだか凄く怒ったように聴こえる。というか裏に人のような声が聴こえた気がする。少し、耳を傾けてみよう。
『キ─マラハ───ッテ──チヲ──カエソウトイウ─!?ナゼダ!?──トハ────!!』
ブツ切りだけど咆哮が遮らなくてそこそこクリアに聴こえた。聴く限り相当ご立腹だ。……あ、クリアに見えた。四本の角、黒い鱗、黄色い瞳、巨大な翼、細長い四肢と胴体、体長の半分を占めた長い尻尾──あ、違う。折れて二本のように見える角、血に濡れて所々赤い鱗、片方潰れた眼球、穴が空いて飛べるか分からない翼、へし折れた右腕と引きずられた左足、矢とか槍が刺さった長い尾。こっちの方が正しかった。
──ん?また喋ってる……あぁ、ようやく何を言ってるか分かった。さっきの言葉もようやく形になった。確か──
『貴様らはそうやって過ちを繰り返そうというのか。何故だ。人は再び滅ぼし合いたいのか。忘れたとでも言うのか。
いいだろう。かつて過ちを犯した愚かなる存在達よ。いずれ
言い終える前に黒き龍は事切れた。奴が口から吹き出した血が俺に降り注ぐ。当たった瞬間凄く鈍重な感覚に襲われる。そこで俺も消えた。
▼△▼
「……11年ぶりにこの夢か」
大老殿を出た気球船の一室。向かう先のシュレイド城で何が起こるかも分からないため、念の為にジオルドは眠りに就いていた──が、悪夢を見た。それは11年前、ジオルドと七人の選抜ハンターでシュレイド城に赴いた時のことだ。そこには炎の死が、爆裂の戦争が、漆黒の運命が待ち構えていた。そしてその果てに──
「ジオルド様、間もなくシュレイド城でございます。武具の準備を」
「分かった。ありがとう」
古龍観測隊の隊員が知らせに来た。そこで彼は思考を打ち切り、準備に取り掛かった。
「……なるほど、道理であの夢を見たわけだ」
シュレイド地方。11年前から彼は近づく度に悪夢を見ていた。
△▼△
「変わらないな、ここは」
シュレイド城の大広間。雷鳴と暗雲が動く音のみが響く空を眺めながら、ジオルドは資料室の解錠を待っていた。
竜大戦、及び竜機兵の資料は、シュレイド城内部の資料室──便宜上そう命名されてるに過ぎないが──に保管されているという。というのも、資料の棚があまりにも古すぎて運ぶと崩れかねない状態な上、かつて資料だけを運ぼうとした際に幻聴や幻覚を見た隊員があまりにも多く出たため、運び出すことは諦められている状態なのだ。そして厳重に管理されているため、その全ての鍵を開けるのにも時間がかかる。そういう訳で、彼は警戒も兼ねて外で待っている。
「……今思えば、なぜ勝てたんだろうな」
11年前。彼と他の精鋭ハンター七人はシュレイド城に現れた古龍──最早他の存在と同列に扱って良いかは分からないが便宜上そう呼ぶ事とする──を討伐、あるいは撃退せんがために戦った。
巨大龍が絶命せし時、数多の飛竜が駆逐されし時、数多の血肉を裂き、骨を砕き血を啜りし時、現れたる
土を焼き
その者の名は
火山地帯近くの街『マンテ』に接近した
「……お前のことも、資料に書いてるかな」
思い出していると気になってしまい、ジオルドはついつい超絶一門を抜刀する。姿は変わりない。しかしここに来て一層力が弱まったような感覚を、ジオルドは剣から受け取った。シュレイド城は、やはり黒龍の呪いが非常に濃いことを指し示していた。
「ジオルド様、扉が全て開きました。こちらへ」
「分かった。すぐ行く」
見慣れた隊員が彼に知らせに来た。双剣を納めて空を一瞥してから、彼はキャンプ内に向かった。
『──答え、見つかるといいわね』
「ッ!!」
いつかの声が聴こえた。だが振り向いた先には何も無い。
「どうかなさいましたか?」
「……何でもない」
否定しながらも、かつて拾った髪の毛が熱を帯びより強く光出していたのを、ジオルドは感じていた。
△▼△
「……思ったよりもたくさんあるな」
「ですが目星は付いています。資料自体は保存状態が良かったのですが、念の為に別の紙に書き写したモノをここに置いています」
「それは助かります」
棚を物色し始めた。いずれも背表紙に題名が書かれているため、そこをなぞりながら一つ一つ確実に探していく。
「
「……『造竜技術』?」
「竜機兵を製造するための技術の名です」
「なるほど……ありがとう」
目的のワードを冠する代物を見つけた。そこそこページに厚みのあるハードカバーの本だった。主な内容はこうであった。
──これは古代人類が何かしらの目的で
そして竜機兵の存在が人と竜、そして龍までも交えた戦争の引き金となったこと。
「……これが、なのか」
「それは元々載っていたものではありません。王立書士隊が遺跡の中で見つけた物のスケッチです。この資料の記述と一致している点が多く見受けられたため、向こうから許可を貰って掲載しています」
「……生体部品を使っているというのに、残っていたのか……やはりこれはモンスターの素材が……」
読み進める中で挿絵を見つけた。それは鉄と肉で出来た龍のようなナニカだった。しかし満身創痍であった。鉄の甲冑が割れて肉が覗き見え、腹部は裂けて肋骨や内蔵のようなものが飛び出しており、全身がワイヤーのようなもので吊るされているためにそれらが垂れ下がっている。
なるほど、これは生命の冒涜だ、と彼は読みながら感じていた。生命を奪っておいて生命を奪う為の物を作り上げているのだか──とまで考えて、彼の思考は一旦止まった。
そう、彼は気付いた。何故なら、
同時に過ぎる。気球船で見た夢が彼の脳裏に再びこびり付き始める。
「ジオルド様、こちらはシュレイド城の関係者が残した日誌の写しでございます」
「日誌……よく残っていたな……」
狼狽えながらも、受け取った次の本を開いた。思考するのは後にするべき、と無理矢理頭の中を抑え込みながら日誌に目を通す。
▼△▼
○/△△
今日、新しい兵器の製造を伝達された。なんでも、機械と竜を用いた巨大な対龍兵器を作るんだとか。正直、気乗りはしない。小さい頃に村がドラゴンに襲われた事がある。俺には恨み以上に恐怖が焼き付いてる。アレは触れちゃいけねえモンだ。だが、シュレイド国王直々の勅命だ。背けばどうなるかわからん。やるしかあるまい
……
△/××
俺が担当する竜機兵の素材となる竜を狩る業者と出会った。そいつは気さくな奴だった。仕事故に仕方なくやっている俺を気遣い、初対面なのに思わず愚痴を零してしまうほど良く接してくれる。こいつのお陰で、何とか割り切ってやっていけそうだ。
……
×/△○
今日はアイツの武器の整備をした。普段担当している職人が、
……
◇/×○
戦争が始まった。どうやら相手は龍らしい。……やはりこうなった。奴らは触れて良い存在では無かった。その事もあってか、アイツも怪我をすることが増えた気がする。無事でいてくれるといいが。
……
○/△◇
開戦から五年。十機目の竜機兵の製造が完了した。報告するなりすぐさま軍人はどっかにそいつを持っていった。……せめて、何か機体名ぐらい付けてやりたかったな。
アイツは今日も帰ってきた。アイツは変わらない。変わったところがあるとすれば、戦いの中で龍共に左眼を潰された事と、言葉を喋れなくなったことだろう。奴の双剣の持つエネルギー同様、傷から知性体の身体を蝕む瘴気だか毒だかの影響らしい。……永らく外に出てないから、俺には関係無かったが。
……
×/××
アイツが消息を絶った。なんでも、北東のとある地に狩りに行ってから、現地の奴らとも連絡が無いらしい。
……とうとう、俺の周りも龍に呪われ出したか。俺にもいずれ、こういうのが来るかもな
……
××/××
いよいよこの城に龍が侵入した。しかも新種らしく、誰も手を付けられないらしい。国王や軍部は残るらしいが、ほとんどの者には避難勧告がなされた。
奴らの狙いは人だ。恐らくここにはほとんど人は残らない。となれば、ここまでの記録は持ち出すよりも置いてく方が残りやすいだろう。とはいえ、読まれる頃にはこいつがボロくなってる可能性もある。厳重な保管庫に入れておくとしよう。……願わくば、誰も滅ぶことのない結末を祈る。
▼△▼
「……」
最後の項を読み終え、日誌を閉じた。どうやら、シュレイド城の工廠で働く技術者の物だったようだ。
「……殺戮を良しとする者ばかりではないのは、どの時代も変わらないんですね」
「しかしそういった者達の声は余りにも小さいものであり、そして声を上げようとした頃には既に手遅れなことが多いのも、事実です」
「……時代とは、残酷なんですね」
感傷に浸るように、彼は本を置いて外に足を向けた。
「外の空気を吸ってくる」
「……外も大概だとは、思いますけどね」
隊員のボヤキを流して、彼は足を進める。最初に解錠を待っていたように、彼は空を眺めてぼんやりし始めた。
「……何が、正しいんだろうな」
その場に座り、今度は抜いた双剣を眺めて俯く。
「……ん?」
その時、剣の向こうに見える白光が、彼の目に入った。それも、どこか見覚えのあるものが。
「……まさか」
立ち上がり、急いでそれの元へと向かう。光源に辿り着くと、それは彼の予想通り白い髪の毛だった。
「……まさか、俺がもう答えを見つけたとでも?」
拾い上げると同時、雷鳴が轟いた。暗雲渦巻くこの空において雷鳴自体は珍しいものではない。だが余りにも音が大きく近かった。
「誰が──」
──キュウルルルルゥゥイ!!
剣を構えようとすると、彼の目の前に白い幻獣が佇んでいた。たてがみは稲妻を纏い、その尾は振るわれる度に雷鳴を響かせている。
「キ、リン……?」
──キュルルゥ……キュルルルゥゥ!!
突如二本足で立ち上がったかと思えば、ジオルドに背を向けてその角を体ごと振り下ろす。すると、振り下ろした方向へと落雷が発生した。
何も知らぬ者が見れば、幻獣が気でも触れたかと錯覚するだろう。しかしジオルドにはその方向に見覚えがあった。
「北東……まさか……」
──キュルルルルゥゥ!!
ジオルドが言い終える前に、キリンは落雷の方向へ立ち去って行った。
「ジオルド様!今の雷鳴は!?」
「……ドンドルマまでお願いします。どうやら、やるべき事が見えてきたみたいです」
超絶一門を天に掲げる。刃は光を反射していた。まるでその先の道を照らすように。
「待っていろ、
応えるように、シュレイド城に雷鳴が轟いた。
次回で終わり。
もう少しお付き合い下さい