THE KING OF STREET FIGHTERS   作:本城淳

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長いこと放置していて申し訳ありませんでした。
今回はセレブで構成してみました。


セレブチーム

タイ

ガルシア財団タイ支部

 

極限流の最強の虎ことロバート・ガルシア。

KOFを始めとして格闘技界で名を轟かせた彼も、今では家業であるガルシア財団の事業を継ぐべく格闘技の表舞台から離れて久しい。

現在では本格的な実績を積むために本社を離れ、海外の支社での陣頭指揮を取るように命を受けている。

ガルシア財団も発展が注目されているアジア進出に力を入れていた。ロバートはその足場作りを任されているのである。

何故タイなのか。紛争の火種が燻っている地域ではあるものの、それ故に復興と発展が期待されている事もあるが、実際はロバートの個人的な都合も兼ねている事はあまり知られていない。

若きガルシア財団の後継者として現在は家業に集中しているものの、ロバートはやはり格闘家だ。格闘に対する情熱は徐々に失われつつあるのものの、習慣付いた稽古を怠った事は無いし、日常的に強い相手とのスパーリングパートナーを欲している。

その中でも実力が近い最適な相手がタイに在住している故にロバートはタイに拠点を置いたのである。その相手がムエタイチャンピオン、ジョー・東である。

 

ロバート「いつも悪いな、ジョー。ほんまにええ組手が出来て助かっとるわ」

 

ジョー「構わねぇよ。俺もスパークリングパートナーとしてお前ほど最適な相手はいねぇからな」

 

ジョーはKOFでは常連として人気の高い「餓狼チーム」の選手だ。ロバートが籍を置く極限流チームのライバルチームとして、何度も対戦している実力者である。

ロバートとジョーは蹴り技主体のスタイルとして実力を認め合っており、親友とまではいかなくとも良い友人関係を築いていた。

 

ジョー「けどよ、お前も良くやるな。実業家の傍らでこうしてトレーニングは欠かしていねえんだからよ」

 

ロバート「わいかて空手家の端くれや。習慣付いた稽古をやらんと気持ち悪うてな。体もなまってしもうていかん」

 

実際として徐々にではあるが、キレが失われつつある。体も技も。仕事にも慣れ、面白くなってきた来たことに比例し、時間を取られるようになってきた。それに反比例するように修行に費やす時間が減り、情熱も無くしつつある。日々の稽古も半ば惰性でやっている感覚が出てきてしまった。

このままではライバルであるリョウとの差が開いてしまうだろう。いや、下手をしたら強くなり続けているユリにもいずれは抜かれてしまうかも知れない。

 

ジョー「畑違いではあるけどよ、俺もタイトル防衛戦がちけぇから助かってるぜ。けどロバート。二足のわらじでの無理が出てんじゃねぇか?段々前ほどの技の冴えもねぇし、何よりハートが感じねぇ」

 

ロバート「…………」

 

ジョーの指摘は尤もだった。ロバート自身もそれはよくわかっている。

そろそろ表舞台から身を引くのも考えた方が良いのかも知れない。

 

カーマン「ロバート。トレーニングの時間は終わりだ。神月のご令嬢との時間が迫っている。そろそろ準備に入った方が良いのではないか?」

 

ロバート「わかってる。サンキュー、ジョー」

 

ジョー「ああ。こっちも助かったぜ?また頼むな」

 

神月財閥とは現在共同で事業を行っている。

神月の総帥はロバートの事を気に入っているのか、こうして仕事とは別にプライベートの食事に誘われる事も多くなった。

ロバートは服を正装に着替えてバンコクにあるレストランに足を運ぶ。急がねばならない。

格は相手の方が上。かりんが到着する前に余裕を持って会場に入らなければ礼を失してしまう。

プライベートとは言え、その辺りのPTOを弁えねば大変な事になる。

 

カーマン「ロバート。神月様とご令嬢のかりん嬢が到着なされた」

 

ロバート「おおきに。出迎えるわ」

 

ロバートはもう一度髪型をチェックして神月夫妻と、その孫であるかりんを迎える。

 

ロバート「お待ちしておりました。神月様」

 

到着した神月かりんに丁寧に挨拶をするロバート。その後ろにはとても見慣れた男と、顔は知っているが直接は会ったことがない一人の男の姿もあった。

 

ロバート(紅丸と……確かトルコの油王、ハカン……と言ったか?妙な組み合わせやな)

 

かりん「ロバートさん。そう固くなさらずとも結構ですわ。この度はプライベートでこちらにお邪魔したのですから」

 

ロバート「そういうわけには……」

 

神月総帥はロバートをかりんの婿候補としているような節があり、かりんとはそれなりに顔を合わせている。尤も、数ある候補の一人……ではあるし、ロバートにもかりんにもその気は全くないのであるが。

地位も金も、更には容姿端麗であるロバート・ガルシア。望めば大抵の女性に困らないのであるのだが、彼は本気でリョウの妹、ユリ・サカザキにぞっこんだった。

なので、周りから他の女性を紹介されても困るのである。

かりんは魅力的な女性ではあるのだが、ユリとは明らかにタイプがちがうのである。

ちなみにではあるが、二階堂財閥の御曹司でもある紅丸もその一人であるらしい。

 

紅丸「かりんちゃんの言うとおりだぜ?ロバート。いつも通りの砕けた口調で頼む。お前が敬語とか、ギャグにしか聞こえないぜ?」

 

ロバート「やかましいで自分。なして紅丸がここにおるんや?二階堂財閥の御曹司としての自分を見るのは初めてや。あと、かりんちゃんて砕けすぎやないか?」

 

紅丸「そりゃ、その立場で俺様が動くことはないからな。言っただろ?プライベートだって。それに俺様は家業を継ぐ気はさらさらない」

 

髪をストレートに下ろした二階堂紅丸が今にも吹き出しそうな顔でロバートに言う。紅丸と言えば先ほどまで組手をしていたジョーや、某奇妙な冒険の第3部に登場したフランス人のように逆立てた髪型が有名であるが、それは格闘の試合の時のスイッチを入れる為の言わば戦化粧のような物で、普段の紅丸は長い金髪を女性のように背中まで下ろしている。

紅丸との付き合いも長い。ジョーと同じく格闘のライバルとして、KOFで切磋琢磨してきた仲だ。

互いに御曹司という立場で、長い付き合いでありながら、こうした家の付き合いで顔を合わせるのは初めてであるので妙な気分になってしまう。

 

ハカン「おお、そちらが有名な『最強の虎』、ロバート・ガルシアはんでっか?初めましてやな。ワイはハカンや」

 

ロバート「初めましてハカンさん。私は……」

 

ハカン「ガルシアはん。神月はんも紅丸はんも言うてはりましたが、敬語は必要ないでっせ?ああ、ワイはこの口調が素であるさかい、気にせんで下さい」

 

ロバート「は、はぁ……そうでっか?ほな、ワイも素で話させて頂きますわ。でですわ、今回のこないな集まりはなんでっしゃろ?神月はん?」

 

かりん「かりん……で、結構ですわよ?そして、今回の件はこちらの件ですわ」

 

かりんが一封の封筒を取り出す。それにはロバートにも見覚えがあった。

KOSF。

ロバートが何度も出場している曰く付きの格闘大会。表でも裏でも開催されれば何かとトラブルに見舞われる大会、KOFのルールを適用した大会である。

その招待状は世界中の格闘家に届いており、当然、ロバートの元にも届けられていた。

 

ロバート「その招待状なら、ワイの所にも届いとるで。せやけど、ワイは今回は見送るつもりや」

 

紅丸「正気か?俺様はてっきりお前も出場するものと思っていたぜ?」

 

以前なら、いの一番でリョウやタクマとコンタクトを取り、大会にも参加していただろう。だが、今のロバートは格闘家である以前に実業家である。

それに、今はアジア基盤の確保が重要である。

 

ロバート「今のワイはガルシア財団のロバート・ガルシアや。いつまでもヤンチャはしてられへんのや」

 

ロバート(親父との約束やからな。フレアとの件以降は、家業に専念するて。ヤンチャな事が許される時期は終わったんや)

 

ロバートはそう父親のアルバート・ガルシアに告げている。

 

かりん「シャドルーやハワードコネクション、更にはR&Bが我々の事業にも影響を及ぼしているのも事実。この大会は彼らが手を組み、何かを企んでいるという事もガルシア財団は掴んでいるはずですわ。ロバートさん。あなたはこれを見過ごすおつもりですの?」

 

ロバート「かりんちゃん。それはワイらでなくてもリョウやテリー、京らがやってくれるはずや。違うか?」

 

わざわざ自分達が出向く物でもない。ロバートはそう考えていた。

 

かりん「そうですか。時間を取らせて申し訳ありませんでしたわ。用件はこれで終わりです。紅丸さん。あなたが期待された極限流の最強の虎は既にお亡くなりになられたようですわね」

 

ロバート「なんやて?」

 

聞き捨てならなかった。

確かに今は実業家としての自分を優先している。しかし、最強の虎の名を捨てたつもりは全くなかった。

 

かりん「あら?違いますの?今のあなたを見て、無敵の龍はあなたをライバルと認めると思いですの?最強の虎も今は伝説の中での存在。今のあなたは虎にあらず。牙が折れ、爪の剥がれた猫ですわ」

 

ロバート「いくらかりんちゃんでも、その言葉はゆるせへんで?ワイは今でも最強の虎や」

 

ハカン「せやかて、昔テレビで見たロバートはんの人物像とは違いなはりますなぁ。ロバート・ガルシアいう人の目はもっとギラギラしておぅたさかい」

 

紅丸「先輩も丸くなって、牙を失ってしまったのかも知れないな。龍虎の拳も、今は伝説……と言うわけか」

 

好き放題言われるロバート。

こうまで言われて大人しくしていられるほど、ロバート・ガルシアという人物は大人になりきれてはいなかった。忘れていた熱い何かが、甦ってくる。

何より自分はともかく、リョウの事を言われれば……

 

ロバート「ええで……訂正したるわ……ワイは実業家である前に極限流の最強の虎や。極限流はサカザキだけや無いてことを、見せたるで。それに、ギースやルガールにはまだ借りを返してへんしなぁ」

 

カーマン「ロバート……ヤンチャはもう……」

 

ロバート「カーマン。ワイにはまだ、カラテマンの血が残っておったらしいで。それに、シャドルーやギースらを放置しとったら、またいつかネスツの時みたいになるやも知れん。これはガルシア財団の為や。違うか?」

 

カーマン「……もう知らん。自分の責任は、自分で拭け。私はもうお守りはせんぞ」

 

ロバート「助かるわ。カーマン」

 

ロバートはかりん達に向き直る。

 

ロバート「安い挑発やけど、乗ったるで。かりんちゃん、紅丸、ハカンはん。やるからには、目指すは優勝や。リョウにも、京にも、テリーにも、ケンはんにも負けるつもりはないで?」

 

神月「常勝神月家に敗北は許されませんわ。足を引っ張らないで下さいな?ロバートさん」

 

格闘家に戻ったロバート・ガルシア。その瞳にかりんは頼もしさを感じていた。

そして、一通りの食事を終え、四人は一時解散する。

 

ロバート(なまった体を戻さなあかんな)

 

最強の虎、復活!

神月の令嬢、参戦!

世界の電撃シューター、紅丸、参戦!

ヤール・ギュネシュの王者、油王・ハカン、参戦!

 

ロバートと別れた後の車内。

 

かりん「人を焚き付けるのは、お上手ですのね?紅丸さん」

 

紅丸「なあに。長年京や真吾のお守りをやってれば、このくらいは軽いもんさ。京に比べれば、単純だったくらいさ。それよりもかりんちゃん。どう?この俺様と一晩のアバンチュールでも……」

 

かりん「ええ。神楽さんにご報告してもよろしいのであれば」

 

紅丸「やれやれ」

 

そう言って紅丸はセーラムを取り出そうとして……止めた。

 

かりん「禁煙ですわよ?紅丸さん」

 

紅丸「吸わないさ。KOF期間中はいつも禁煙なのさ」




ロバート・ガルシア…極限流空手
龍虎の拳シリーズ

二階堂紅丸…シューティング
KOFシリーズ

神月かりん…観月流格闘術
ストリートファイターシリーズ

ハカン…ヤール・ギュネシュ
ストリートファイター4



皆さんお久しぶりです。
今回はセレブ達で構成してみました。

上のロバート、紅丸、かりんの3人は書き始め当初から考え付いていたのですが、最後の1人をプリム、イングリッド、ハカンの内誰にするかで迷っていました。
プリムはシャドルー関連の企業ですし、イングリッドは本当にセレブなのか迷うところがあり、最終的には間違いなく世界有数の油企業のハカンに決定する事にしましたがいかがでしたでしょうか?1人くらいは色物がいても良いのではないかというのも選択の理由です。

所で紅丸ってKOF94の頃から御曹司設定はありましたけれど、それが活かされてる場面って全く無いですよね?アドベンチャーゲームのKOF京でもその設定が出てきませんでしたし、紅丸が御曹司という設定があることを知らない方もいらっしゃるのでは無いでしょうか?

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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