THE KING OF STREET FIGHTERS 作:本城淳
中国香港
大衆料理屋の「昇龍軒」
街を守るユンとヤンの幼なじみ、ホイメイとシャオメイが父親の手伝いで働いている店である。
ユンとヤンの兄弟は特にやることが無いときはこの店を手伝い、その報酬でただ飯を食べさせてもらっている。
普段のユンは憎まれ口を店主に叩いているが、それは幼少期に両親を亡くしている彼にとっては父親のように甘えている態度の裏返しなのかも知れない。
店主も娘であるホイメイとシャオメイがそれぞれユンとヤンに対して想いを抱いていることを知っているので、ユンの態度に目くじらを立ててはいても、将来的には娘達と結婚して本当の息子になってくれれば良いな…とは思っている。
店主「ヤン、あそこの坊主どもにコレをサービスしてやりな」
ヤン「気前が良いですね」
店主「あの坊主も双子だろう。昔のお前達を見ているようでな。ついついサービスしてやりたくなっちゃうんだよ」
ヤン「わかりました」
ヤン(ん?あの双子……何故か見覚えが……)
ヤンにはこの双子に既視感を覚える。大分昔に無くなった九龍城…そこにいた誰かに関係があった……。そんな気がするのだが……。
ヤン「これをどうぞ」
双子兄「頼んでいない」
双子の兄であろう髪の毛を逆立てた子供が生意気な口で返してくる。
双子弟「兄さん!失礼だよ!兄がすいません……」
おかっぱ頭の弟の方がヤンに頭を下げてくる。
ヤン「これはうちの店主からのサービスだ。俺も双子でな、小さい頃から俺達を息子のように可愛がってくれていた店主が昔の俺達をお前達に重ねたようで、ついサービスしてやりたくなったそうだ」
祟宗「そうなんですか。あ、僕は秦祟宗、双子の兄が秦祟雷です。サービス、ありがとうございましたと店主にお伝えください」
祟宗は丁寧に頭を下げ、ヤンに礼を言う。
ヤン「所でお前達、どこかで見覚えがある気がするが、気のせいか?」
祟宗「ええっと………」
ヤンがそう尋ねると、祟宗は困ったような表情を見せる。
祟雷「俺達はよく覚えていないが、昔九龍城砦に拐われていたことがあるらしい」
ヤン(やはり九龍城……。あそこに拐われてよく無事だったものだな……)
香港の九龍城砦。そこは一般の者が入り込めば、たちまち拐われてしまうと言われた香港の黒歴史が詰まった黒街である。
今は取り壊されてしまったが、迷路のように入りくんだ地形は一度入ったら出られないと言われる程であり、その地形により黒社会の者達が根城にしていた場所である。
行政の目が行き届かず、買収、薬物売買、武器の違法取引、賭博等が横行されていた場所。それが九龍城砦である。
そこに拐われていたと言うならば、言い淀んでしまうのも無理は無いだろう。
ヤン「それは済まない事を聞いた。それでお前達は今、どうしている?」
祟宗「今は兄さんはタン老師の元で、僕はキム・カッファン先生の元で住み込みの弟子にして頂いております」
ヤン「タン老師とキム・カッファン…だって?!」
キム・カッファンはかのKOFで毎度上位トーナメントに常連出場をしている格闘家なら誰もが聞いたことのある人物。
そして、タン・フー・ルー…。鎮元斎と並ぶ拳法をやる者で彼を知らないものは潜りと呼ばれている拳法の仙人だ。
基本的に街を守るということ以外は格闘界に興味のないヤンですら名前を知っている二人の師匠達。
ヤン「では、キム・カッファンとタン・フー・ルーは今、香港にいるのか?」
祟宗「いえ、何でもご用があるようで、僕たちを知人に預けるつもりだったそうです。ホン・フーさんという方らしいのですが……」
ヤン「あの警察官か……頼りになるとは思えないけどな」
香港警察の問題児、ホン・フーの事はヤンも良く知っている。無能ではないが、型破りの捜査でいつも揉め事を起こしている事で有名だ。
ホン・フーがもっと頼りになれば、自分達がこの街で自警団みたいな真似事をすることもない。
ヤン(ん?ホン・フーに秦兄弟?もしかしてこの子供達は!)
そんな時だ。店が急に騒がしくなったのは。
山崎「見つけたぜ?秦兄弟」
祟雷「き、貴様は山崎竜二!」
ヤン「山崎だって!?」
思い出した。元々九龍城を根城にしていた一匹狼のチンピラが起こした1つの騒動の事を。確か秦の秘伝書を巡ったサウスタウンの事件に秦兄弟が……。
祟雷「くそ!キム兄弟が席を外している時に!逃げるぞ祟宗!」
祟宗「う、うん!もう秦の秘伝書の騒動なんて真っ平だよ!」
秦兄弟が裏口から逃げようとするが……
ヤン「待て!裏も危ない!」
???「そういう事だ。捕まえたよ、クソガキ共」
シャドルーのテコンドー使い、ジュリが秦兄弟を気絶させ、捕まえる。
ヤン「お前は……ハン・ジュリ!」
山崎「首尾通りだなぁ?ジュリ。やっぱり先祖の魂に乗っ取られていねぇと、コイツらは大した事がないか…」
ヤン「山崎竜二とハン・ジュリ……山崎、今回はシャドルーと手を組んだのか!」
山崎はヤンを確認すると、小バカにしたような笑いを浮かべる。
山崎「久しぶりだな。まぁ、今回の雇い主はシャドルーを含めた色んな所って事さ。俺も忙しいんでな、ここらでずらからせて貰うぜ?シャドルーに目を付けられちまったんじゃ、香港も終わりだな。まぁ、いずれこの俺がぶちのめしてやるよ。オメェの兄貴も含めてなぁ!」
ジュリ「とっととずらかるぜ?山崎。こっちも暇じゃねぇんだ」
ジュリが去ろうとすると、その行き先を止めようとする者が現れた。
???「そこまでです!テコンドー使いの面汚し!」
???「お前、山崎と組んで何を企んでるんだ?」
ジュリ「ちっ!もう来やがったか。キム兄弟」
キム・カッファンの二人の息子、ドンファンとジェイフンだ。
ジュリ「おい、木偶の坊。足止めすら満足に出来ねぇのかよ?」
バイソン「それはこっちに言えよ!」
牙刀「ふん……」
ユン「く……コイツら……強い!」
見れば買い物に出ていた兄のユンが複数の人間に襲われている。
ビリー「へっへっへっ」
バーディー「………」
ユーリ「………」
ユーニ「………」
草薙京1「………」
草薙京2「………」
とんでもない人数に周りを囲まれている。何故か二人もいる草薙京。ベガ親衛隊。他にもシャドルーやギースの腹心のビリー。まともに相手をしていたら負けるのはこっちだろう。
山崎「全員まとめてぶっ殺してやっても良いけどよ、生憎とこっちも忙しいんでな。大人しくしておけば、危害は加えねぇよ。退くぜてめぇら。おい、シャドルーの兵隊さんよ。足止めは頼んだぜ?アバヨ!」
そう言って山崎を含めた中核の人間達は、秦兄弟を拐って逃げ出した。残るは量産型草薙京のクローンの雑魚達だけである。
ユン「くそっ!このままじゃすまさねぇそ!シャドルー!ギース!ルガール!」
量産型草薙京を倒しながら、ユンが絶叫した。
ジェイフン「完全にやられましたね……父さん達に何て言えば良いんだ……」
ドンファン「ちょっとした用事だったはずなのにマジかよ……親父にどやされるだろ。下手したら鳳凰脚の餌食にされるぜ?」
キム兄弟の弟、ジェイフンは父親同様に悪を絶対に許さない正義感溢れるイケメンで、対する兄のドンファンはどちらかと言えば不真面目なタイプの人間だ。
その不真面目さはジョー・東の影響があるようなのだが。とはいえ、まったく正義感が無いかと言えば答えはノーだ。態度とは裏腹に結構正義感は強い方なのである。
ホンフー「かー!キムが絡むといつもそうばい!山崎だけやのうてシャドルーやギース、更にはルガールまで絡んでくるとか、どぎゃんすればよかと!?」
香港警察のホン・フーは頭を抱えて嘆いていた。ホン・フーはジェイフン達の父、カッファンの修行仲間で、何気にカッファン夫婦の仲を取り持った友人関係である。
秦兄弟とは知らない仲ではない事から、カッファンは旧知の仲であるホン・フーを頼り、秦兄弟を任せたのであるが、まさか秦兄弟が狙われているなどとは夢にも思っておらず、おめおめと秦兄弟を拐われてしまった。
ユン「なぁ、キム兄弟。このまま諦めるのか?」
ジェイフン「諦めきれませんよ!祟宗は僕の弟弟子なんです!可愛い弟弟子が悪人に拐われて黙ってるなんて出来るわけが無いじゃないですか!」
ドンファン「親父が怖いしな」
ジェイフン「兄さん!これだから兄さんは!」
ユン「俺達よ、結構似てるよな?」
ジェイフン「はい?なんですか?こんな時に」
ユン「俺もさ。素直な性格じゃねぇからわかるんだよ。キム・ドンファン、お前、結構悔しいんだろ?カワイイ弟分を拐われちまってよ」
ドンファン「!?」
ヤン「兄貴。冗談は止めてくれ。俺はキム・ジェイフンほど行儀良くない」
ユン「おいおい、今はそんなことはどうでも良いだろ?で、どうなんだ?キム・ドンファン」
ユンがドンファンを真っ直ぐ見据える。
ドンファン「ああ!悔しいしどうにか取り戻してぇよ!祟宗は数少ない年下の弟弟子なんだからよぉ!でもどうするって言うんだよ!わからねぇよ!」
ホンフー「そげんでよかと。わらの親父、キム・カッファンだったらわで何とかせんとするが、そげんことば本来は警察の仕事たい。わら子供の出る幕ばないっちゃ」
ホンフーは動くなと言ったつもりであったのだが、それが逆に地雷を踏んだことに気が付いていなかった。
キム兄弟はタイプこそ違えど、結局はキム・カッファンの息子なのだ。
ジェイフンはそのまま父親通りに、ドンファンはちゃらんぽらんながらもドンファンなりに父親の事を尊敬していた。
ドンファン「そうだぜ……親父ならこのまま泣き寝入りなんかしねぇよな……」
ジェイフン「そうだね兄さん。父さんなら地の果てでも山崎を……ベガやギースを追い詰めて秦兄弟を取り戻すはずだよ。僕達もやるんだ。キム・カッファンの息子として」
ホンフー「ま、待つっちゃ!そげなつもりで言うたんじゃなかと!」
シャオメイ「ねぇ、ヤン。ヤン達も彼らに協力出来ないの?あの秦兄弟……他人事とは思えないの」
ホイメイ「ユン。お父さんも気に止んでるわ?それに許せないの。この香港でこんな事件が起こるなんて……いつものあんた達なら、黙ってないでしょ?」
ユンとヤンの幼なじみである姉妹が兄弟を焚き付ける。
ユンもヤンも姉妹に言われるまでもなく動くつもりでいた。
ユン「言われるまでもねぇぜ?ホイメイ。奴等はこれで何か企んでるみてぇだしな。チュンリー姉さんも参加するようだけどよ。頼りきりになるのは俺達の流儀じゃねえ」
KOSFの招待状をユンは取り出す。
世界的には無名な二人であるが、伊達に香港に潜伏中の山崎を始めとしたならず者達からこの街を守っていない。
元々双子はハワードコネクションやシャドルーから目をつけられていたのである。
ヤン「チン・シンザンのおっさんやフェイロンのおっさんからチーム勧誘をされていたのだが、断っていた。俺達にはこの街を守る義務があるからな……だが、気が変わった。秦兄弟の事を放っておいたら香港の沽券に関わる。それに、俺達の気が収まらない」
ユン「乗るか?キム兄弟。俺達でチームを組んで、殴り込みをかけようぜ?」
ユンとヤンは招待状をテーブルに置き、手を重ねる。
ドンファン「良いねぇ良いねぇ。殴り込みにKOFを利用するのは親父やテリーさん達の常套手段だ。やるぜ?俺はよ」
ドンファンがユン、ヤン兄弟の手の上に自分の手を重ねる。
ジェイフン「父のようにやると言っても正直手詰まりでした。僕も乗ります。テコンドーと、父の名にかけて!」
最後にジェイフンも手を重ねる。
ユン「派手なケンカになりそうだ。ホイメイ、シャオメイ!世界に羽ばたく俺達の姿を、ちゃんと見ておけって親父さんに伝えておいてくれよ!」
ホイメイ「しっかりやんなさいよ?ユン」
ヤン「兄貴は俺が見ておく。心配はするな」
シャオメイ「頑張ってね!ヤン!応援してるから!」
ジェイフン「やるよ、兄貴!」
ドンファン「かる~くチャンプにでもなってやるさ。ケン・マスターズだろうとチュンリー刑事だろうと草薙京だろうとテリー・ボガードだろうとリョウ・サカザキだろうと……それにベガやギース、ルガールだろうと全部俺が倒してやるぜ!」
燃える四人。
その影ではホンフーが嘆いていた。
ホンフー「もう知らんっちゃ!キムに抗議するバイ!」
キム・ドンファン…テコンドー
餓狼MOW
キム・ジェイフン…テコンドー
餓狼MOW
ユン…中国拳法
ストリートファイター3シリーズ
ヤン…中国拳法
ストリートファイター3シリーズ
父親のキム・カッファンよりも先に息子達のストーリーが先に出来てしまった(^_^;)
当初は秦兄弟をメンバー入りさせようとしたのですが、秦兄弟の場合は祖先に体を乗っ取られなければ帝王拳を使う事は不可能なので、代わりにキム兄弟を加入させました。
秦兄弟もこの流れですとどこかのアウトロー関連チームに参加しそうですね。祖先の海龍と空龍がギース達の指示に素直に応じるかどうかは別として…。
それでは次回もよろしくお願いいたします。