THE KING OF STREET FIGHTERS   作:本城淳

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貴族チーム

ドイツ

シュトロハイム城

 

城の主、ヴォルフガング・クラウザー・シュトロハイムの前に二人の人物が膝まずいていた。

一人はエリザベート・ブラントルジュ。フランス名門の貴族令嬢。

一人はシャドルー四天王の一人、バルログ。スペイン貴族の一人である。

それぞれが名門の貴族であるが、貴族の中の貴族であり、ヨーロッパ裏社会をも統べるクラウザーに呼び出されては逆らうこともできない。

 

エリザベート(く……貴族の上下関係に関してはさしもの私も逆らえない……口惜しい……)

 

クラウザーの力は絶大だ。貴族としての権力も、闇の世界を牛耳る力も、そして何よりシュトロハイム家に伝わる格闘家としての力も………。

昨今では謎の力やシャドルーが台頭してきているものの、シュトロハイム家の一門は世界最強と言われてきた一族である。

何せ世界チャンプと名高かったマイケル・マックスやホア・ジャイを苦もなく降し、ギースですら恐れた実力者の中の実力者であるタン・フー・ルーすらも簡単に倒してしまった者なのだ。

一方で……

 

バルログ(気紛れに呼び出しに応じたが……なるほど、ヨーロッパの貴族社会を統べる御仁なだけある。少なくとも美しさはベガ以上ですね)

 

バルログはシャドルーの一員ではあるが、それは忠誠からベガの下にいるわけではない。バルログの行動理念はあくまでも美の追求。

それが得られるからこそベガの下にいるわけであるが、最近はギースと手を組んだりと次いていけない部分がちらほらと見え始めていた。

そこに来てのクラウザーからの召集。バルログは乗り気では無かったが、クラウザーという人物と会ってみて良かったと思えた。

 

バルログ(器が違う。この御仁に成り代わろうなどと…ローレンスもバカな事を考える……)

 

同じ国の出身者でクラウザーの部下であるローレンス・ブラッドに想いを馳せるバルログ。ローレンスはクラウザーに成り代わり、シュトロハイム家の力を我が物にしようと考えているようであるが、ローレンスにはその器はない。シャドルーで言うところのセスやバイソンのような分不相応な野望である。

面白い所はクラウザーもそれが分かっていながらローレンスを下に置いているところだろう。いつ裏切るかわからないローレンスを重用するなど、並みの器では考えられない所業である。中国の三國志で言えば曹操のような器である。

聞けばギースのスパイであったビリー・カーンすらもスパイであると分かっていながら部下にしていたのだ。

 

クラウザー「諸君。楽にして良い」

 

エリザベート&バルログ「はっ!」

 

クラウザー「君達の元にもコレが届いているだろう。バルログ君には愚問だったかな?君はシャドルーの幹部なのだからね」

 

クラウザーはKOSFの招待状を手に取り、二人に見せる。

 

バルログ「私の素性を知っておきながら、私をあなたのチームに入れと?面白い事を言われますね。失礼ですが、私もこのブラントルジュご令嬢も、あなたに使われる程安くはありませんよ?むしろ、我ら三人は互いが互いに敵対関係とも言える間柄。違いますか?」

 

エリザベート「その通りです。ヴォルフガング様。そちらのバルログ殿はシャドルー幹部。そして我がブラントルジュ家は人を導くことを誇りとした光の一族。このシュトロハイム家とは水と油の関係……何故我らを召集なされたのか、ヴォルフガング様のお考えを計りかねます」

 

エリザベートも政治的な理由でここに来ただけに過ぎず、本来シュトロハイム家とブラントルジュ家は敵対関係にある間柄である。

 

クラウザー「私とて同じだ。だが、そうも言ってはいられぬ事情も出てきたのだよ。かの三國志の三國とて、必要な時には手を結んで事に当たっていた」

 

バルログ「それが今だと?」

 

エリザベート「ますます真意がわかりません」

 

クラウザー「少々、とあるツテがあってな。彼からの情報だよ。入って来てくれたまえ」

 

クラウザーは一人の男を呼び寄せる。そこに現れたのは独特のヘアースタイルをし、ピチピチのスーツを着込み、何やらよくわからないオーラを発した男が入ってきた。

 

エリザベート(こ、これは……人間ではない!)

 

バルログ(シャドルー親衛隊の記録にある!この男は魔界の三大貴族の一人!)

 

???「デミトリ・マキシモフだ。シャドルーの人間であるならば、私の事は知っているな?」

 

バルログ「魔界の三大貴族、マキシモフ家の当主…」

 

デミトリ「左様。このままベガやギースを放置しておくと、この人間界は大変な事になるのでな。それでは我がマキシモフ家にも、宿敵であるアーンスランド家にも非常に困ったことになる」

 

バルログ「困ったこと?」

 

クラウザー「魔界の三大貴族の1つのドーマ家と、魔界の離れ国のアンブロジャ、それに地獄門が手を組んだ。その中にはかのオロチや遥か地より出ずる者も含まれている」

 

バルログ「なるほど、美しくない魑魅魍魎が私達の世界に溢れ、死者達が跋扈する……それは確かに美しくない」

 

美しさを第一に考えるバルログには、美しくない妖怪や魔物が世に溢れるなどおぞましさを感じる以外の何物でもなかった。

 

エリザベート「嫌よ……せっかくアッシュが見つかったのに……彼らが現れてはまた繰り返す……こんなのはイヤよ!」

 

エリザベートとしても『遥けし彼方より出ずる者たち』が再びこの世界に現れるのは勘弁願うところだ。KOF14でバースの力で奇跡的に再生したアッシュ・クリムゾン。

アッシュはエリザベートの大切な幼なじみだったが、『遥けし彼方より出ずる者たち』との戦いの果てに、タイムパラドックスによって消えてしまった。

実に個人的な理由ではあるが、そんな事には耐えられない。何より、オロチは全人類の殲滅を考えている地球意思の1つだ。民を守る使命が強いブラントルジュ家のエリザベートとしても絶対に阻止しなくてはならない。

 

クラウザー「理解して貰えたかね?」

 

エリザベート「はい。しかし、シュトロハイム家が正義の側に回るなど……」

 

クラウザー「正義?違うな。悪と言えども、矜持というものがある。矜持に反すれば、それを潰すのは当たり前の事だ。ベガも、ルガールも、そして我が兄ギースもいずれは私が表舞台に立つには邪魔な存在。潰す時が来ただけだ。そこに利害が一致する物を利用するだけに過ぎない。貴族の矜持や理念とはそういうものではないかね?」

 

デミトリ「私としても大層な理由があるわけではない。少々、宿敵と興じにきただけのこと。ドーマ家やアンブロジャ等を潰すのはそのついでに過ぎない。逢魔や魔界村との戦いでは手を組んだが、アーンスランド家とは宿敵同士だからな」

 

エリザベート「まるで草薙と八神のようですね。ですがわかりました。我がブラントルジュ家の正義の為にも、小さな悪と手を結ぶ屈辱は目を瞑りましょう。ただし、あなた方が民の為に害を成すために我々を利用したと判断したならば、その時はお覚悟を……」

 

バルログ「私も同じですね。ヴォルフガング殿、マキシモフ殿、ブラントルジュご令嬢。私はあくまでの美の下僕。あなた方に美を感じ無くなれば、背後からでも我が爪があなた方を血に染めると宣言致しましょう」

 

どうやら二人はこの呉越同舟のチームを受け入れる気にはなったようである。

 

デミトリ「良いだろう。それもまた……余興よ」

 

クラウザー「ご苦労だった。集合は追って報せる」

 

悪の帝王ヴォルフガング・クラウザー・シュトロハイム

美と鮮血の貴公子バルログ

光の導き手エリザベート・ブラントルジュ

魔界の三大貴族の吸血鬼デミトリ・マキシモフ

 

本来であれば敵同士である四人が互いに手を結んだ。

悪の貴族であるクラウザー、バルログ、デミトリ。

彼らが世界を救う戦いに身を投じるのは、退屈な日々の中に華を添える座興なのか…それとも別の野望の為の下準備なのか……。

それはまだ、誰にもわからない。




ヴォルフガング・クラウザー・シュトロハイム…総合格闘技
餓狼伝説シリーズ

エリザベート・ブラントルジュ…ブラン流格闘術+光拳術
KOF11、KOF13

バルログ…スペイン流忍術
ストリートファイターシリーズ

デミトリ・マキシモフ…???
バンパイアシリーズ

はい、今回は貴族チームです。
バルログが少し無理があったような気がしますが、彼がギースやルガールと共にシャドルー関係の中に混じるのも何か違う気がしたのでクラウザー勢力に入れました。
バルログはシャドルーに拘るタイプでも無さそうでしたので。
一方でデミトリです。彼の存在が貴族の最後のピースにはまりました。CAPCOMsideは貴族が少ないですからね。ウォーザードのレオを持ってくるのも考えましたが、しっくり来ませんでした。どちらも主人公で貴族なんですけどね。
エリザベートは最初から決めてました。アッシュでも良かったのですが、アッシュがクラウザーの呼び出しに素直に応じるとは思えませんし。
そしてクラウザー。ギースらと手を組むのはKOF96でのみでしょうし、ましてやベガやルガールと手を結ぶとも思えませんので……。アーデルハイド・バーンシュタインでも良かったのですが、どこかでクラウザーを使いたかったので。クラウザーを起点にしてこのチームを編成しました。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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