THE KING OF STREET FIGHTERS   作:本城淳

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ジョジョと同時投稿です。


エンターテイナーチーム

香港

劇場

 

香港カンフー映画の花形スター、フェイロンは困り果てていた。以前、カンフー映画で共演した猫又妖怪フェリシア。その彼女が連日のように彼の事務所を訪ねて来る。

 

フェリシア「ねぇねぇ、フェイロンさん。このお話って絶対に売れると思うんだけど、一緒にやらない?」

 

フェイロン「荒唐無稽過ぎる。なんだこの魔界とか幻想界とか冥界とか宇宙とか……そう言うのはハリウッドに持ち込め。あちらの方が専門だろう。第一だ、今回はnamc○は絡んでいない。やりたくても出来ないだろう。とにかく帰ってくれ。私はカンフーアクションが専門だ。ハリウッド映画はお断りだ」

 

そう。フェリシアは自身も体験したかの大冒険を映画化させようとフェイロンに持ちかけているだ。

その出演者として前に共演したフェイロンに目をかけているのだが、中々首を縦に振って貰えない。

専門のカンフー映画以外には出演しないし、ハリウッドからのオファーも全て断っている。

いつだったかムエタイチャンピオンのジョー・東の自伝を映画化させた『ジョー伝説』なる映画のライバル役としてオファーが来たときも、自身が敵役ということもあってか断っていた。

 

フェリシア「えーーー!フェイロンさんのケチ!」

 

フェイロン「ケチで結構だ。今は自分の映画の題材に困っていてそれどころではない」

 

フェリシア「え?ネタ切れなの?」

 

フェイロン「うむ……。それで題材探しに旅に出ようと思っていてな」

 

丁度四川省の方でいい役者がいると聞いたことがある。「川劇」のミアン。

川劇の踊りの腕前もさることながら、その可憐な容姿にファンも少なくない。

フェイロンの目的はそれだけではない。何でも四川武真流を修得し、四川地下格闘技界で噂になっていると聞く。最近ではあのKOFの主催者からオフィシャル招待を受け、出場したのだとか。

彼女をスカウトし、自身の映画に華を添える事が出来ればより自分の演技の幅が広がるであろう。

なによりも、一人の格闘家として純粋に興味があった。

 

フェリシア「ふぅん……ねぇねぇ、その旅に付いていって良いかな?」

 

フェイロン「自分の仕事はどうした?」

 

フェリシア「最近つまんないんだもん。おんなじような仕事ばっかりでさ」

 

フェイロン「少しはミュージカルスターの自覚を持ったらどうなのだ?」

 

フェリシア「そんなの知らなーい!付いていくったら付いていく!」

 

流石は猫又。気まぐれな猫らしく、興味あることがあるとそれにまっしぐらな性格だ。義務感などどこふく風で、プロとしての自覚など欠片もない。フェリシアはある日突然フラりと姿を消し、数日後には何事も無かったかのように帰ってくる。

それでも人気が落ちないのだから大したものだ。

 

フェイロン「好きにするが良い。責任は持たんからな」

 

あのケン・マスターズすらも力ずくで説得し、フェイロンとの映画共演を果たしてしまう強情な猫又だ。本人は恋愛映画に出たかったそうだが……。そんなフェリシアを説得したところで恐らくは無駄だろう。

フェイロンは諦めの境地で四川省までの飛行機のチケットを取った。

 

 

四川省

地下闘技場

 

地下闘技場。それはどこの地域にも存在するルール無用の闇の賭博場である。

KOFはこういうものから発展したものと考えて良い。

巷で噂になっているKOSFが開催されようとしている今、世の中は空前の格闘ブームとなっていた。

出場者の中にはこの地下格闘場でスパーリング代わりに最後の調整をするものも少なくなかった。

下位予選が免除される招待状が届かない無名の格闘家はそう言った格闘家から招待状を奪おうと考える者も少なくない。それ故にどこの地下格闘場は大いに賑わっている。

従来のKOFと同様、招待状は受け取った本人で無くても効力は発揮される。最終的にエントリーをされたとき、メンバーの誰か一人でも招待状を持ってさえいれば有効なのだ。

過去の例を持ち出せばキム・カッファンのチーム。

今でこそチョイやチャンも黙っていれば招待状が届く選手であるが、KOF94の頃は間違っても招待状が届く訳がない。キムが持っていたから出場できたのだ。

次の例を挙げればKOF97のニューフェイスチーム(オロチチーム)だ。そもそも格闘家でなかった七枷社は招待状など届いておらず、ラッキー・グローバーを闇討ちして招待状を強奪して出場した。

そういう事情から、本来ならば賑わっている筈の地下格闘場。だが、フェイロンがこの日訪れた四川省のこの闇格闘場は異様な雰囲気に呑まれていた。

試合が行われていないのだ。

だが、休みであるわけでもなく、格闘家がいないわけでもない。今日も招待状狙いの無名の格闘家がひしめきあっている。にも関わらず、何故試合が行われていないのか?

その答えはリングにあった。

二人のダンサーが試合そっちのけで踊っていたのである。

一人はフェイロンが目的としていた人物、ミアンが伝統芸能である川劇を踊り、面をコロコロと変えていた。踊りながら一瞬で面を変える。それが川劇なのだから。

もう一人は…………

 

フェイロン「驚いた。サウスタウンのダンサーがこんなところで何をしてるんだか………」

 

サウスタウンのダンスクラブ、クラブMの顔とも言える人気ブレイクダンサー、ダック・キングである。

ダック・キングはミアンの川劇の曲に合わせて流れるようにブレイクダンスを踊っていた。

状況がまるでわからない。フェイロンは近くにいる地下格闘場の関係者に聞く。

 

フェイロン「ここは地下格闘場だろう?それとも私は間違ってダンスホールにでも来てしまったのか?」

 

関係者「いや……それが……最初こそミアンさんとダック・キングさんは真面目に戦っていたんですが、ミアンさんの躍りにつられてダックさんが踊り始めてしまいまして……ミアンさんも本業魂に火が付いたのか、格闘の試合がいつの間にかダンス勝負に……」

 

フェイロン「下らん………」

 

フェリシア「えー?何か面白ーい!私も混ざろうっと!」

 

フェリシアまでもがミュージカルスター魂に火が付いてしまい、歌いながらダンスに混ざる。

 

実況『おおっと!ダック・キングに引き続き、意外な人物が混ざったぁ!なんと世界に輝くミュージカルスター、フェリシアさんの乱入だぁ!』

 

ダック「ヘーイ!嬉しい乱入だぜぃ!ミアンだけじゃ無くてフェリシアともセッショーン!こりゃますます盛り上がるぜぇ!レッツ、ダンシング!」

 

ミアン「む………ブレイクダンスに加えてミュージカルスターまで乱入だと?四川の伝統芸が西洋の雑技に負けてたまるものか!」

 

「いいぞー!もっと盛り上げろー!」

 

血気盛んのストリートファイター達も、豪華ダンサー達の華麗なパフォーマンスに試合などそっちのけでノリノリである。

 

フェイロン「なんて事だ……フェリシアを連れてくるべきでは無かった……」

 

呆れ、そして諦めてホテルに帰ろうとするフェイロンに背に、お気楽娘の声がかかる。

 

フェリシア「フェイロンさんも混ざろうよ!カンフーの演舞でもやれば盛り上がるよ!私達も合わせるからさー!」

 

フェイロン(冗談ではない!)

 

フェイロンのクンフーは確かに映画として芸に使ってしまっている。しかし間違ってもダンスの見せ物としてやっているわけではない。

逃げようと急ぐフェイロン。だが、お気楽格闘家のダックがそれを許さず、無理矢理フェイロンをリング(という名のもはやダンスステージ)に連れ込むと…。

 

ダック「ブレイクスパイラル!ダンスバージョン!」

 

何を考えたのか超必殺技であるブレイクスパイラルを雑技用にゆっくりとアレンジした技をフェイロンに放つ。

フェイロンも格闘家。雑技用のブレイクスパイラルなんてまともに食らう訳がなく、ダックの足の上で華麗に捌いてダメージをゼロにする。

しかし、それが奇しくもダックの足の上で踊っているように見えてしまい……。

 

「うおおおおお!流石はあのフェイロンだ!ダンスも一流だったんだな!」

 

フェイロン(ち、違う!そんなつもりじゃ!)

 

「すかしたカンフー映画だけかと思っていたけど見直したぜ!」

 

フェイロン(何だと!?今の発言は誰だ!)

 

「次の技も期待してるぜ!フェイロン!俺、あんたのファンになっちまったよ!」

 

フェイロン(ぬう!ますます逃げられなくなってしまった!こうなればヤケクソだ!)

 

結局、このランチキ騒ぎは夜を徹して行われ事になってしまった。

 

 

 

フェイロン(なんて事だ………)

 

翌日の近くの喫茶店でフェイロンは頭を抱えていた。

同じようにミアンも乗せられて踊ってしまった事を今になって後悔しており、頭を抱えている。

 

フェリシア「良かったね?フェイロンさん!ダックさん!ミアンさん!あのダンス、映像に収められれててそれぞれの事務所に送られるって!」

 

ダック「おー!ベリーグッド!いやぁ、夕べはブラボーだったぜ!楽しかったな!みんな」

 

フェイロン&ミアン「良くない!」

 

なんとしても事務所に届く前に処理しなければ…。

フェイロンはともかく、伝統芸能を大衆演劇みたいにやってしまったミアンにとっては死活問題である。

 

ミアン「なんて事だ。貴重な1日を無駄にしてしまった……大会までもう日が無いのに……」

 

フェイロン「大会?」

 

ダック「KOSFだよ。ああいった場所はな、出場者がスパーリングするだけが目的じゃなくてな、まだメンバーが決まっていない招待選手が目ぼしい無名の格闘家をメンバーにスカウトする場でもあったんだぜ?ほら、KOF2000で舞ちゃんとかが四条雛子をオーディションでスカウトしたようにさ」

 

フェイロン「なるほど……そういう使われ方もあったのか……」

 

ダック「俺もメンバーが決まってなくてよ。メンバーを探してたんだよ」

 

ミアン「私もだ。今回はオフィシャル選手じゃ無いからな。招待状は届いているんだが……」

 

そこでピョコンとフェリシアの耳が動く。

 

フェリシア「そうだ!KOSFだよフェイロンさん!」

 

フェイロン「何!?」

 

フェリシア「新しい映画のアイデア!この四人で出場してさ、それを題材にした映画を撮れば良いじゃん!そうすれば夕べの映像もそのまま使えるしさ!あたしって頭いー!」

 

ダック「オウ!イッツ ナイス アイディア!俺達は大会に出場できるし、エンターテイメント性もこのメンバーならバッチリだ!」

 

ミアン「確かに……このまま当てもなく有象無象の中から納得のゆく選手を見つけようとするよりかは現実的だな」

 

フェイロン(なるほど。言われてみればミアン殿もダックもKOFの出場経験者であるし、フェリシアもケン・マスターズに認められる程の実力がある。映画の題材としても悪くないし、何より私向きだ。それに、私の舞台を麻薬取引の現場にしていたベガに対しても借りを返さねばならないしな。アホ娘の提案にしては悪くない)

 

フェイロン「良いだろう。ただし、どうせやるなら目指すは優勝だ。良いな!」

 

エンターテイナーであり、一流の格闘家の四人がここでチームを結成した。




フェイロン…カンフー
ストリートファイターシリーズ

フェリシア…???
バンパイアシリーズ

ミアン…四川武真流
KOF14

ダック・キング…マーシャルアーツ+ダンス
餓狼伝説シリーズ

はい、エンターテイナーチームでした。
このシリーズを考えた初期から(具体的には女子高生チーム)考えていたチームなのですが、なかなかストーリーが決まらずお蔵入りしていました。

なお、KOFの招待状に関わる事柄ですが、これは今は廃刊になっている雑誌ゲーメストがSNKに直接聞いて出版された「KOF94の謎」という本に書かれていた内容で、公式設定です。
それを裏付ける内容として、1998年にPSで発売されたゲーム、「KOF京」にて招待状の内容で書かれています。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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