THE KING OF STREET FIGHTERS   作:本城淳

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聖職者チーム

アテナ姫「うう……神様ぁ、もう許して天界に帰らせて下さいよぉ……」

 

麻宮アテナの先祖、ヴィクトリー王国のアテナ姫。

彼女は幻想界における事件の過去の功績を称えられ、天界の門番の役割を任されていたのだが、先の天界に人間が紛れ込む事件(SVCCHAOS)の責任を取らされ、現在は時代を問わず人間界の異変を解決する役目を神より仰せつかっているのだが、その戦果は芳しくない。

バトルコロシアム等でコツコツとポイントは稼いではいるものの、天界としてはあまり良い評価を貰えていなかった。

せっかくのチャンスであった逢魔に関わる事件も同僚であるワ○キューレに奪われてしまっている始末である。

アテナ姫は知らないことだが、最近では子孫である麻宮アテナの方が天界での評価が高く、アテナ姫を元の時代に戻して麻宮アテナを天界に招くべきでは?という声も挙がっている程だ。

 

神『アテナよ……』

 

アテナ姫「こ、この声は神様!お願いです、私を天界に戻して下さい!」

 

神『それはまだ叶わぬ。じゃが、新たなチャンスを与えてやろう』

 

アテナ姫「本当ですか!?いつの時代のどこに行けば良いのですか!?」

 

神『バトルコロシアムの時代の日本じゃ。そこにおる神々の信徒と協力し、地獄門や魔界の侵攻から人間界を守るのじゃ!』

 

アテナ姫「バ、バトルコロシアムの時代ですか…あの時代の人々には良い思い出がないのですが……でも、挫けない!」

 

基本的にアテナ姫はお転婆だ。元々天界に呼ばれる事件を解決するきっかけも退屈しのぎに幻想界の扉を開けてしまったことが原因だったのだから。

早速アテナ姫は時代を跳ぶ術を唱えて現代日本へと降り立った。

 

 

パシフィックハイスクール屋上

 

アメリカの裕福層を中心とした留学生が通う日本のアメリカンハイスクール。

アテナ姫が降り立った所はそんな場所だった。

パシフィックハイスクールが建てられている場所は少々特殊な学校が集まる地域だ。太陽学園、五輪高校、外道高校、ジャスティス学園等の校風と言うには過激な思想を持つ学校が地域に根付いている。

パシフィックハイスクールもその1つだ。そして、そのパシフィックハイスクールの中でも少々特殊な人物がいる。

ボーマン・デガルト。

信仰深く、日本に来た目的も信仰心が低い日本人に信仰の素晴らしさを伝えるべく日々邁進する宣教師高校生。

かのジャスティス学園が起こした二度にわたる事件の解決にも関わった、地域でも英雄扱いの人物の一人である。

 

ボーマン「むむっ!この神々しい力は……神の使徒が御降臨なされたのか!」

 

アテナ姫のような天界の神々しい力を纏った人物が降臨すれば、信仰心の強いボーマンが反応しない訳がない。

ボーマンはすぐさま屋上へと走り、神の使徒であるアテナ姫の姿を認める。

 

ボーマン「あ、あれはアイドルの麻宮アテナ…違う!麻宮アテナはあんな神々しい力を発していない!彼女は間違いなく神の使徒!おお、神よ!私にもかの乙女の騎士のような御方の御力になれと仰せですか!身に余る光栄!」

 

共にジャスティス学園の事件を解決した春日野さくらや島津英雄が関わった逢魔事件。ボーマンはそれに関われなかった事を深く悔やんでいた。

女神イ○ターの忠実なる神の騎士、ワル○ューレの力になれなかったからだ。

今度こそ女神の力になれると奮起したボーマンはすぐさまアテナ姫の身許まで駆け寄り、跪いて祈りのポーズを取る。

 

アテナ姫「え?え?あなたは……」

 

一方のアテナ姫が困惑するのも無理はない。熊みたいな巨体の男にいきなり跪かれれば誰もが混乱するだろう。

 

ボーマン「父なる神のお教えを世に伝える事を使命としたあわれな羊、ボーマンで御座います。女神様」

 

アテナ姫「ひ、羊?どう見ても熊……」

 

アテナ姫には人間を動物に変える力がある。このボーマンを動物にしたところで羊には決してならないだろう。

 

ボーマン「何か?」

 

アテナ姫「い、いえ。ごめんなさい。えっと……ボーマンさん……で良いのかな?」

 

ボーマン「女神様にさん付けなど勿体ない事であります。ボーマン……と呼び捨てて下さいませ。女神様」

 

アテナ姫「女神様と言われるとちょっと……私はただの天界の門番ですから、私の事はアテナと呼んで下さい」

 

ボーマン「おおっ!女神アテナ様!はっ!そのお姿に御名前…もしや麻宮アテナとは仮のお姿で、そのお姿こそ本当のお姿だったのですか!?おおっ!女神よ!たかがアイドルと見くびっていた私を御許し下さい!」

 

アテナ姫「ええっと……よくわからないけど多分別の人だと思いますよ?ここは私が天界に呼ばれた時代からは随分先の未来のようですから……麻宮アテナさんって人が子孫である可能性はありますけど……」

 

可能性ではなくまんま子孫である。アテナ姫は知らないことであるが、更に自分のいたビクトリー王国にも子孫はいて、そちらにも初代(はつしろ)アテナという麻宮アテナ以上にアテナ姫にそっくりな人間がいるのだが、ここでは関係ないので伏しておく。

 

ボーマン「なんと……麻宮アテナさんは女神の子孫……今後は是非ともCDを買わねば……」

 

 

太陽学園

 

アテナ「ぞく……何だろう……妙な悪寒が走ったんだけど……」

 

太陽学園文化祭でライブをしていた麻宮アテナは謎の悪寒に襲われていた。まさか自分の知らないところで先祖が勝手に自分のファンを作っていたなど夢にも思うまい。

 

場所はパシフィックハイスクールに戻る。

 

ボーマン「して女神アテナ様。下界にはどのような御用向きで?この信徒ボーマン、微力ながらお力添えをしたく……」

 

アテナ姫「ええっと……『キング・オブ・ストリート・ファイターズ』という大会を知っていますか?その大会で悪しき者達が闇の力を使って何かを企み、それが原因で魔界や亡者を呼び起こす地獄門を開けるきっかけになると言うことで、神より阻止せよと命を受けたのですが……」

 

ボーマン「何と!世を騒がすかの大会にはそんな裏があったとは!それを阻止するが女神アテナ様に託された主の御神託……わかりました。このボーマン、格闘技には少々覚えが御座います。是非ともアテナ様の御供をさせて頂きたい」

 

アテナ姫「ええっと……協力して頂けるのは嬉しいんですけど、あなたの力を借りては……」

 

ボーマン「しかし女神アテナ様。大会には四人一組でないと出場出来ません。女神アテナ様がいかに強くとも、御一人では神命を果たすことは無理なので御座います」

 

アテナ姫「え!そうなんですか!?どうしよう……」

 

アテナ姫は困惑する。一人ではどんなに頑張っても神命を果たすことは出来ない。かといってこの世界には知り合いが少ない。

 

ボーマン「我が友人の力を借りることも可能ですが、彼らも祖国で今後の世を支えるべく邁進する者…。かのような大会で怪我をさせる訳にはいきませんが、幸いにも私の知人に女神の御供に相応しき者がおります。異教徒ではありますが、かの者も神より託された力を持つ者。きっとアテナ様の御力になるやと……」

 

ロイとティファニーを頼る訳にもいかない。今の二人は世界の中心たるアメリカの為に政治を勉強中なのだ。

それに、女神の御供に相応しきは神の信徒である方が望ましい。

それに、ボーマンの知っている人物はある問題を抱えていた。素晴らしい力を持っているのに、過去の失敗から先に進めなくなってしまっている。

確かな実力者にも関わらず、誰に誘われてもチームを組んでいないのだ。同じ使命を持つ者にすら、別の人物を紹介して自分は身を引いてしまっている。それがボーマンには歯痒くて仕方がなかった。

そんな人物も、神であるアテナ姫に頼まれたのならばもしかしたなら…。

 

アテナ姫「え?いるのですか?そんな人が…」

 

ボーマン「はい。伝説の力を持つ人物が……」

 

その人物の名前は……

 

 

日本…神楽神社

 

そこでは神社の主である神楽ちづるが巫女服で境内を掃除していた。

KOFを開催したり等、金持ちのイメージがあるかも知れないちづるであるが、実際は歴史と伝統ある故に経済界にコネがあるだけのしがない神社の主。KOF開催も経済界の有志に出資してもらって出来ただけに過ぎない。

その有志にしたって善意からではなく、ギース時代から続くKOFの経済効果を期待した上での思惑から出資していただけの事だ。

オロチが封じられ、ネスツが滅び、彼方より出ずる者達との戦いが終わりを告げた以上、ちづるがKOFを開催する理由はもうない。

何より、三種の神器の力を敵に利用され、奪われて以来、格闘家として表舞台に立ち上がるつもりはもうなくなっていた。

そうでなければ京や庵を武神流に任せたり、すがり付く真吾を追い返したりはしていない。最近良い雰囲気である紅丸からもチームに誘われたのだが、丁重に断ったりもしていた。

裏社会の野望が渦巻く格闘家の祭典で世が騒がしくなっている昨今ではあるが、そんな世の中から目を逸らすかのようにちづるは日常を送っている。

 

???「汝、迷いがあるのではないか?」

 

そんな時だ。見るからに怪しげな存在がちづるに声を掛けてきた。ボロボロの衣装を着け、首からは子供のサイズの髑髏で出来た首飾りをしている東洋人。

こんな怪しげな風貌でよくこれまで通報されなかったものである人物だが、ちづるはその人物を知っていた。

 

ちづる「あらダルシムさん。珍しいですね?」

 

男の名前はダルシム。

インドの修行僧として一切俗世に流されず、人々を導いて来た人物であるが、格闘家としても名が知られている。

信仰の元に荒行を繰り返せばたどり着ける境地とでも言うのだろうか?手足を伸ばしたり、口から火を吹いたり、宙に浮いたり、瞬間移動をしたりなど、人体の限界を遥かに超越した神秘とまで言われている存在だ。

格闘家と聖職者を両立するものにとって、ダルシムは非常に有名な人物であった。

 

ダルシム「ちづる殿………そなたは迷われておられるのではないのでは?オロチを封ずる八咫鏡の使命を持つ者として、このままで良いのか……と」

 

ちづる「…………」

 

確かにダルシムが言うようにちづるは迷っている。ルガールが大会の主催者の一人である以上、オロチが絡んで来ないわけがない。

しかし、自分には三種の神器としての使命を二度も破ってしまった過去がある。エリザベートからは『三種の神器には何も期待できない』とまで言われる程に。ちづるは既に使命を守る自信が無くなっていた。

 

ちづる「ダルシムさん。あなたも私にKOSFに出場せよと仰るのですか?ですが、私にはもう……」

 

アッシュに奪われた力は既に戻っている。神楽の力を使おうと思えば出来るのだが、その気力は既にちづるにはない。

 

ダルシム「……ふむ。傷は相当深いようであるな。しかし、迷ってばかりでは前に進めぬ。人を迷いから救うべき立場である我々神の信徒が迷い、先に進めぬようでは人を導けぬのでは?かのままではチャクラは回せず、豊穣の祝詞も退魔を祓う祝詞も、ただの音で終わってしまうであろう。一度自らを見直すと宜しかろう。丁度、神々からの試練があるようなのでな……」

 

ちづる「神々の試練?そう言えばダルシムさんの要件とは一体……」

 

ダルシム「火神アグニからの神託が降りたのだ。神々の使徒と手を取り、人の世の災いを取り除け…と」

 

ちづる「人の世の災い?」

 

ダルシム「不思議に思わないかな?完全に滅んだはずのルガール・バーンシュタインが、何故この世に舞い戻っておるのか……」

 

ちづる「まさか………地獄門!ルガールは地獄門が蘇らせた常世の尖兵!」

 

ダルシム「左様……今、魔界と常世は手を組み、かのオロチも手を組んでいる。かの八傑衆も…若しくは」

 

ちづる「八傑衆……ゲーニッツ……」

 

忘れていた憎しみが甦る。『吹き荒ぶ風のゲーニッツ』。ちづるの姉を殺し、オロチ封印を解いたオロチ四天王の男。

 

ダルシム「ヨガ……憎しみに囚われることなかれ」

 

ちづる「ごめんなさい…。ダルシムさんの仰るとおりですわ。そして、止めなければなりませんね。オロチ、魔界、地獄門、アンブロジャ……ルガールやゲーニッツ達の野望を止めるには、草薙や八神、武神流だけでは荷が重いでしょう」

 

ちづるは祓い串を振るい、戦装束にはや着替えをする。これからボーマンに連れられ、この場にやってくるアテナ姫の子孫、麻宮アテナも真っ青のはや着替えだ。

 

ちづる「オロチ封印の守護を二度も失敗した未熟者の力がどこまで通ずるかはわかりませんが、力を貸しましょう……。鏡の守護者、護る者、三種の神器が一人、神楽ちづるが……神の使徒と共に」

 

ちづるは捨てようと思って捨てられなかった招待状を懐から取り出し、決意をする。

その後、合流したボーマンとアテナ姫と共にチーム結成をした。

なお、余談ではあるが……。アテナ姫が麻宮アテナと間違われて二重エントリーを疑われたのは、麻宮アテナにとっていいとばっちりだったことも追記しておく。




神楽ちづる…神楽流古武術
KOF96~KOF98、KOF2003

アテナ姫(初代アテナ)…サイコパワー?
アテナ、SVCCHAOS、ネオジオバトルコロシアム

ダルシム…ヨガ
ストリートファイターシリーズ

ポーマン・デガルト…ボクシング
私立!ジャスティス学園



はい、聖職者チームです。
ちづるとダルシムは誰かと組ませようと思って考えを巡らせても中々メンバーが出てきませんでしたが、やっと出すことが出来ました。
特にダルシム!
繋げてくれたのは初代アテナでした。他にもマッドマン、タムタム、チャムチャム、レラ、善の天草という手もありましが(笑)

それでは次回もよろしくお願いします。

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