THE KING OF STREET FIGHTERS   作:本城淳

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改造人間チーム

ブラジルの閑静な住宅街。

K´は地図を頼りにそこを歩いていた。

K´「何でわざわざ俺達がこんなことをしなくちゃならねぇんだ……ガキ」

クーラ「だって鎮のおじいちゃんと約束しちゃったんだもん。アイスの贈り物のお礼に」

だるそうに歩くK´の隣をクーラ・ダイヤモンドは美味しそうにキャンディーをペロペロ舐めながらスキップ気味で歩く。

K´「だからいつも言ってるだろ。あのジジイとは手を切れって」

言っても無駄だとわかっていても、言わなければ気がすまない。いつも鎮元斎には良いように利用されてしまうのだ。

クーラ「でもK´の好物のビーフジャーキーもたくさん貰ってるよ?マキシマおじさんの甘いものも」

K´「それ以上に俺はKOFが嫌いなんだよ。なのに何で毎度毎度大会に引っ張り込まれなきゃならねぇんだ…うざってぇ……」

K´はKOFが嫌いだ。

その理由は人と馴れ合うのが嫌いであるという事。協調性のないK´らしいといえる理由である。何で戦うときにまで人と馴れ合わなければならないのかというのが本人の言であるが、自分の運命をネスツによって色々変えられたのもKOFがきっかけだからかも知れない。

クーラ「それでK´。クーラ達はどこにむかってるの?」

K´「知らないで受けたのかよ……毎度毎度考えなしに引き受けやがって……。あのクソジジイ。今度こそぶっ殺す……」

K´はぶつぶつ言いながら、鎮に言われた住宅のチャイムを鳴らす。住宅は屋敷とまではいかないまでもそれなりの裕福な家庭のようだ。こんな家にすむ人間が自分達に何の用なのだろうか?

女性「はーい♪あら、見ない人ね?あなたが鎮元斎さんが言っていた新しいお友達?」

K´「………」

中から出てきたのは人がよさそうな中年の女性だ。本当に自分とは縁の無さそうな感じで、場所もあってか鎮に縁があるようには思えない。更に自分は一方的に利用されるだけであり、間違っても鎮とは友達とは言えない。もっと言えばK´には友達と呼べるような存在はいなかったりする。

共に生活するマキシマやセーラ(ウィップ)達にしたって成り行きで一緒にいるだけであり、間違っても友達とかそういうのではない。

K´は女性の質問に答えず沈黙する。ここには誰がいて、誰とチームを組んで良いのか鎮からは何も説明を受けていない。

女性「あ、あの………」

クーラ「うん♪鎮のおじいちゃんとは友達だよ♪ここにはクーラの新しい友達が困ってるって言うから来たんだ♪」

実際は全く違うのだが、適当に話を合わせておくという点ではクーラの返答は合格点だろう。もっとも、精神年齢が幼いクーラにそんな気はまったく無いのだが、結果としては上々だった。

女性「やっぱり!今呼んでくるから待ってて頂戴?」

女性はパタパタと小走りで家の奧へと入っていく。

待つことしばし。現れたのはK´もビックリする存在が現れた。

???「待ってた。俺、ジミー。よろしくな」

K´「テメェ……ネスツの改造人間か?」

???「違う。俺、改造人間違う」

女性「あら、ジミーちゃんはネスツ……とかというのとは関係無いわ。歴とした私の息子よ?前まではブランカって名乗ってたわね」

ブランカ「俺、アマゾンのジャングルで育った。生きていく為に頑張ってたら体がこうなっていた」

ブランカの母「ジミーちゃんは小さいときに乗っていた旅客機が墜落してずっとアマゾンで生きていたの。今のジミーちゃんはジャングルの王者よ?」

人間に限らず、生き物は生きていく環境に応じて体を適応させる能力が有るというが、ここまで完全に獣そのものという例は聞いたことがない。ネスツの改造人間と言われた方がまだ信頼性がある。

もっとも……

K´(草薙京とかそういう存在もいるんだからこのジミーという野郎みたいな存在がいても不思議じゃないか)

自身に注入された力の元となった草薙京の事を思い出しながら、これ以上野暮な事を考えるのをK´は止める。

それに、セーラに至っては自分の姉のクローンだ。

ブランカ「お前達が元斎が言っていた助っ人か?」

K´「助っ人になったつもりはないが、あのジジイに嵌められてここに来たのはそうだ。K´という」

クーラ「クーラだよ?ジミー、面白いね?」

ブランカ「K´、クーラ。俺、覚えた。俺、お前達に頼みある。家、入れ」

ジミーの母「あら、あの子の所に行くのね?うん、K´ちゃんにクーラちゃん。あの子達のお願いを聞いてくれると助かるわ」

あと一人、誰かいるらしい。鎮が自分達を寄越すくらいだから確実に厄介事だとは思うが……

通された部屋にいたのは……。

K´「今度こそ改造人間……だよな?」

マキシマ以上にどこからどうみても改造人間とわかる存在がそこにいた。一人は男、一人は女の改造人間だ。

ネクロ「よう、おめえがネスツの改造人間という奴か?俺はイリア。ネクロというコードネームもあるが、イリアが本名だ。こっちは俺の彼女のエフィーだ」

K´「テメェもネスツの?」

だが、こんなタイプの改造人間がいるとは聞いたことがない。

アンヘルやK9999、ネームレスとも違う。何よりネスツは改造人間と言ってもここまであからさまな一目でわかる改造はしない。

ネクロ「俺達はネスツで作られた改造人間じゃねぇ。ある秘密結社で作られた改造人間だ…ま、逃げ出したんだがよ。で、その結社は今はもう無くなったんだけどよ、シャドルーがしつこくてよぉ……」

K´「シャドルーか……奴等は確かにしつこいな」

K´とネクロは境遇が似ているかも知れない。自分達を作った組織を抜け、反抗して組織を潰して自由を得たと思っていても、自らを作ったテクノロジーを手に入れようとシャドルーやWARZのような組織がいくらでも現れる。

ネクロ「俺、もう少しでつかまっちまうって時にジミーが助けてくれてよぉ、こうして匿ってくれてるんだけど、このままじゃジミーに迷惑をかけちまうだろ?」

ジミー「だから鎮にお願いした。何とかならないかって」

K´「そこで俺か……確かにイリアの境遇は俺と同じかも知れねぇな……ところでジミー。テメェはどうしてイリアを助ける?関係ねぇだろ?」

ブランカ「俺、もうイリアと友達。友達助けるのは当たり前。ダンからそう教わった。だから俺、イリアを見捨てない」

K´「野獣特有の仲間意識か……」

育った環境が人間の汚ならしい世界とは無縁だったジミーは本気でイリアを助けようとしているのだろう。

クーラ「ねえK´。ジミーやイリア、エフィーを助けてあげようよ。出来るでしょ?K´なら」

だが、悲しいかな。個人で出来ることは少ない。

しかし、クーラが言うようにK´には幸いにもこうした経験は何度もある。

ネスツにしても、WARZにしても、K´はいつだってこうしてきた。

K´「あのジジイにしては珍しく俺にもメリットがある利用の仕方じゃねぇかよ」

ジミー達と手を組むメリットはK´にもある。シャドルーやギースはイリアと同様に自分達にも手を出して来ているのだ。

K´「こういう手合いは逃げ続けたってどこまでも追ってくる。俺がそうだったようにな。やることは1つだ」

K´は懐から鎮に渡されたKOSFの招待状を取り出す。ちなみに宛先は椎拳祟と書かれていた。

K´「乗り込んで潰す。やることはいつもの通りだ」

いつだってこうしてきた。かつてはネスツやWARZ。今度はシャドルーとハワードコネクション。

K´「テメェらは付いてくるだけで良い。俺一人で充分だ」

若干一名違うが、改造人間チームがこうして結成された。

しかし、このチームを見たとき、誰もがこう思うだろう。

 

 

 

『ブランカが一番改造人間っぽくね?』




K´…暴力
KOFシリーズ

クーラ・ダイヤモンド…アンチK´アーツ
KOFシリーズ

ブランカ…野生への適応進化が生んだ格闘術
ストリートファイターシリーズ

ネクロ…人体改造によるゴムのような体と放電能力
ストリートファイター3シリーズ

はい、改造人間チームです。ブランカもある意味では自然に改造された改造人間ですね。ついでに言うと、完全にifの話ではありますが、アメリカで作られた映画、ストリートファイタームービー(日本ゲーム版ではリアルオンフィルム)ではブランカはK´同様にシャドルーに改造された科学者という設定が存在します。
しかし、ネクロとK´、クーラは境遇が似てますよね。恐ろしいくらいに。
これでKOF主人公(アルバとシュンエイは省くとして)は全員出揃いました。
次は何チームを作りますか…。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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