THE KING OF STREET FIGHTERS 作:本城淳
日本
パシフィックハイスクール
日本有数のアメリカンハイスクールであるパシフィックハイスクール。
未来の大統領とも言われるロイも一時期は身を寄せていた学校である。そこに二人のストリートファイターがやって来ていた。
一人は見事なモヒカン頭にサングラスをかけ、鷲の革ジャンをおしゃれに着こなしている男。ヘヴィ・D!
世界チャンピオンを狙える実力がありながらも、対戦相手を試合で死なせてしまった事からボクシング界から干されたしまい、ボクシング界から干されてしまい、ストリートファイターに身を落とした男。
もう一人は紫色の帽子を被った長身の男。ラッキー・グローバー。
NBAのトップ選手でありながら、バスケットボールに興味を失い、刺激を求めて空手の世界へ身を投じるも、そこでも満足な刺激を得られず、友人のヘヴィ・D!に誘われ更なる刺激を求め、ストリートファイトの世界へと身を投じた異質な経歴を持った男だ。
ラッキー「しかし、ワケのわからねぇ依頼だよなぁ?日本のハイスクールで指導をしろなんてよ」
ヘヴィ「お前はプロとして名を残しているから、たまにこういう仕事が舞い込んでくるのはまだ分かるが、俺なんて余計にワケがわからねぇよ」
ニューヨークを拠点に置く二人が何故日本にいるのか。
それはラッキーに時折舞い込むスポーツ指導の仕事の為である。
それぞれの世界では実力者だった二人ではあるが、ルール無用のストリートファイトの世界ではそれだけで食っていけるほど甘くない。
近年ではKOFの予選で敗れる事も少なくなかった。酷いときには招待状を奪われてしまった時もある。
なので時折入ってくるジムのインストラクターやスポーツ指導の仕事等で生計の足しにしているときもある。なのでそれ自体は珍しい事ではない。
妙なのは今回の依頼人だ。
ラッキー「まさかあのロイから依頼とはな。それも指導先は日本とかよ」
ヘヴィ「しかもわざわざ俺達みたいなストリートファイターなんてヤクザな商売をやっている奴にだぜ?」
未来の大統領とも言われるロイならば、それこそ一流の指導者を雇うことだって可能である。にも関わらず二人を雇った理由がわからなかった。
ヘヴィ「まぁよ、理由は何であれ結構な依頼料なんだし、日本の滞在費とかもクライアントもちだから旅行だと思えば儲けだけどよ」
どうにもワケのわからない事だらけではあるが、金が儲けられ、なおかつ日本旅行ができるのだから多少の不審な点があったところでマイナスにはならないだろう。
良いところの箱入り達が入る学校だ。精々怪我だけはさせないように気を使えば問題はない。それがスラム育ちの二人にとっては面倒な事ではあるが、チョロイ仕事だ…、
そうヘビィ・D!とラッキーは軽い気持ちでパシフィックハイスクールの門を潜る。
しかし、パシフィックハイスクールはただの御曹司やお嬢様が集まる学校ではなかった。それどころか最近ではスラムでも見られないようなハングリーさを持ち合わせているものまでいる。
本来ならバスケのコーチをしに来たはずのラッキーに対して空手の指導までお願いしにくる程だ。
一通りの指導をおえ、少し疲労を感じた二人に話しかけて来るものがいた。
ボクシングの指導でヘビィ・D!が才能を見込んだ男、ボーマンである。
ボーマン「流石はKOFに出場されただけはありますね」
ヘビィ「それはありがとよ。しかしこの学校はなんなんだ?何でお前のようなスラム育ちも顔負けのレベルの奴がゴロゴロいやがる?ただのお坊っちゃま学校って訳でも無さそうだな?」
ボーマン「ハハハハ。この地区は少し特殊なんですよ」
ラッキー「特殊?」
ボーマン「この地区にある学校は弱肉強食の学校でして、何かにつけて他校と競うことが多いのです。それが悪い方向に動いてしまった事件も二度ほどありましたが……ただのお坊っちゃま、お嬢様ではこのパシフィックハイスクールではやっていられないのです」
パシフィックハイスクールを始め、熱血と自由な校風の太陽学園、全国的にも有名な不良が集まる外道高校、文武両道を旨とするジャスティス学園、スポーツが五輪高校は良くも悪くも交流が盛んであるとの事。
特に最近ではジャスティス学園の忌野雹による他校を支配し、文武両道による全国制覇を企んだ事件により、この5校は自衛意識が非常に高くなったのだとか。
ラッキー「つまりはあれか?スポーツ指導というのは名前だけであって、むしろ格闘技の指導の方がメインってことか?」
ボーマン「むしろそちらがメインだと私はロイから聞いておりますが?」
ヘビィ「へッ!俺達が呼ばれるなんて、何かあると思っていたが、やっぱりそういう裏があったってわけか」
パシフィックハイスクールが望んでいたのはバスケットボール選手やスポーツボクシングやスポーツ空手のインストラクターではなく、二人の本来の顔……ストリートファイターとしての実戦向けの護身術のインストラクターだったのだ。
だが、対外的にストリートファイターを雇う訳にもいかない。なのでスポーツインストラクターの名目を隠れ蓑にできる二人をロイは目を付けたのだろう。
ストリートファイトルールを適用する大会の中では最高峰の大会であるKOF。その出場経験を持つ二人は正にうってつけだった。
少々落ち目であるとはいえ、実力は三流のプロの格闘家よりも上なのだから。
ボーマン「はい。ですのでそのストリートファイトで培った技術を我々にご指導頂ければと……。最近、世間はきな臭い動きもありますし、何より……」
ヘビィ「例の大会か?」
ボーマン「はい……」
KOSF。
あのKOFの流れを汲むと言われている大会の招待状は当然、二人の元に届いていた。
もっとも、二人は出場したくてもブライアンは本業のアメフトのシーズン中でチームを組めないし、そもそも肝心の四人目がいない。
ブライアンと同じくアメフト界で英雄と言われているマックスも今はシーズン中。ヘビィ・D!達は出場を見合わせるつもりだった。故に暇だったのだが。
ラッキー「まぁ良いぜ。丁度暇だった事だし、インストラクターでも街のお守りでもなんでもよ」
ボーマン「そう言って頂けると助かります」
契約期間は二週間。ヘビィ・D!達のインストラクターの生活が始まった。
その内に噂を聞き付けたのか、例の他校の生徒たちも加わるようになり、二人も教えながら自身の訓練にもなり、充実した日々となっていた。
途中、太陽学園の学園祭でシャドルーの襲撃があったり、ボーマンや一文字伐、風間あきらがKOSFのチームを組んで姿を消したことは気になったが、仕事そのものは順調だった。
契約期間もあと2日……別れが惜しくなるには5校の生徒達に愛着を持ち始めた頃の夜……。
日本の「イザカヤ」なるものを楽しみ、滞在先のホテルへと向かう途中で事件が起きていた。
ラッキー「あと2日……いや、1日かよ。寂しくなっちまうなぁ………」
ヘビィ「ああ……案外悪かなかったぜ……ん?あっちの方が何か騒がしくないか?」
ラッキー「んあ?何だ?ストリートファイトでもやってるのか?」
ヘビィ「サウスタウンでもあるまいし……ちょっと行ってくるか」
エッジ「ちく……しょ……う」
外道高校の山田英二ことエッジは相棒の石動岩と共に謎の集団に襲われ、倒れていた。
次期外道高校の番長コンビと言われた二人だけではない。五輪高校のロベルト三浦と軽井沢もも、聖純女学院の姫崎咲と霧島ゆりかもやられていた。
残っているのは五輪高校の沢村将馬と鮎川夏の二人だけである。
夏「くそっ!なんなんだテメーら!答えろ!」
対峙しているのは真ん中分けにしたヘアスタイルに学ラン姿をした男………草薙京だった。
京?「へッ!口ほどにもねぇ奴らだ……。東京も大したことねぇな」
将馬「この野郎………お前は確か……草薙京。KOFの常連選手が何でこんなことをしているんだよ!」
京?「KOSFに出てくる奴等を大会前に潰しておこうと思ってな。この街の高校生は腕が立つ奴ばかりがいるって聞いて来てみたけどよ」
将馬「ふざけんな……そんな事の為に……」
京?「もうおめぇらには用はねえぜ……食らえ!」
ラッキー「デスバウンド!」
京が闇払いで将馬達に止めを刺そうとしていたとき、ラッキーのヘルバウンドが間に入ってそれを止める。
京?「テメェは……」
ヘビィ「こんなところで何をしている?草薙京。闇討ちなんてお前らしくもない」
京?「誰だ?」
ラッキー「あ?俺達の事を忘れたのか?確かに最近じゃお前達と対戦することは無かったけどよ。それはねぇだろ?」
ヘビィ(違う……こいつは草薙京じゃない!)
聞いたことがある。
秘密結社に拐われた草薙京が、その遺伝子を使われクローンを大量に作られたと言うことを。
ヘビィ(だとしたらこの草薙京はそのクローンの一人)
誰が何の目的で京のクローンを使ってこんなことをしているのかはわからない。
しかし、ここにいる学生たちの負傷。この二週間、愛着がわくくらいには熱心に指導していたヘビィ・D!にとって、腸が煮えかえるには充分すぎる理由だった。
京?「へっ。まぁ誰でも良いか。興が削がれちまったからよ、今日はこのくらいで勘弁してやるぜ。怪我したくなかったら、大会には出るんじゃねぇぜ。あばよ」
そう言って背中を向けて逃げていく草薙京。
ズボンの後ろポケットに入れていた招待状を落としながら。
ヘビィ「明らかに罠だな……大会に出させようと……」
ヘビィ(確か大会の主催者はギースやシャドルー…そして死んだと言われていたルガール……奴等の仕業か)
ギースは過去にKOFで使えそうな選手をスカウトした経緯もあるし、ルガールはKOF優勝者を拉致して洗脳し、兵器として利用しようとしたこともある。そしてもっとも危険なのはシャドルーだ。
ルガールがやろうとした事を、実際に彼らのような若者を拉致して兵器にした事が既にある。もしヘビィ・D!達が現れなければ将馬達は拉致されていたかも知れない。
ヘビィ「ラッキー。大会には出ないつもりでいたが、こんな事をされたらよ、俺は黙ってられねぇな」
ラッキー「ああ。その辺のストリートファイターでもスカウトして出るか?それかアクセル・ホークとかマイケル・マックスでも誘ってよ」
丁度明日で契約は終わりだ。ニューヨークに帰ったらメンバー集めをしなければならない。
将馬「待ってくれよ……」
ラッキー「おっと、先に救急車を呼ばねぇとな?確か991だったか?」
ヘビィ「それは警察だ。しかもステイツの」
将馬「待てよ!コーチ達は出るんだろ!?KOSFに!」
夏「私達もチームに入れて下さい!」
二人はさすがに驚いた。まさかこんな子供達がKOSFに参加すると言い出すとは思わなかったからだ。
ヘビィ「おいおい。ジョークにしてもつまらねえぜ?KOFは子供のケンカとは違うんだ。子供は帰ってミルクでも飲んでな」
将馬「イヤだ………。ロベルトや桃をこんな目に遭わせやがった草薙京も出るんだろ!?仇を……取らせてくれよ!足手まといにはならねーからさ!」
夏「お願いします!桃は可愛くないし、ゲド高や聖純には迷惑をかけられた事もあったけど……でも、こんなことをされるような奴らじゃない!あたしは許せない!あたしたちだって街を守って来た!あたし達も戦える!お願いします!」
ヘビィ(やれやれ……青いねぇ。かつての自分を見ているようだ。いっぱしのファイターの目をしてやがる。テリー・ボガードやリョウ・サカザキのように……それに、やっぱり情が移っちまったようだな。俺もまだまだ青いってわけか)
ヘビィ「坊主達。確か五輪高校の生徒だったよな?名前はショーマとナツ……だったか?ベースボールとバレーボールか。スポーツチームのメンバーとしての条件は揃っているみたいだな」
ラッキー「おいおい。正気か?」
ヘビィ「わずか二週間とはいえ、日本風に言えばこいつらは俺達の弟子だ。弟子のお守りをするのが事情通ってものだろ?」
ラッキー「やれやれ。知らねぇぜ?俺はよ」
日米スポーツチームの誕生の瞬間だった。
ホテルの電話でヘビィ・D!はロイと電話で連絡を取っていた。
ヘビィ「という訳でよ。悪いが契約は1日前倒しで終わりにしたいんだが」
ロイ「仕方がないですね。それでは新しく契約を結ぼうと思いますが……」
ヘビィ「何?」
ロイ「将馬と夏は私の数少ない日本の友人ですので。KOSF期間中における彼らのガードを依頼できますか?」
ヘビィ・D!は薄く笑う。
ヘビィ「ビジネスじゃねぇ。俺はあの二人のハートで決めたんだ。言われなくてもガードをするさ。カワイイ未来のアスリートを俺なんかのようにしないためにな」
ヘヴィ・D!…ボクシング
KOF94、KOF98
ラッキー・グローバー…バスケットボール&空手
KOF94、KOF98
沢村将馬…野球
私立!ジャスティス学園
夏…バレーボール
私立!ジャスティス学園
はい、スポーツチームです。
スポーツチームと五輪高校でチームを組みたいとは前々から思っていましたが、中々ストーリーが決まらず難航していました。
無理矢理作って出来たストーリーもこのクオリティの低さに自己嫌悪をする次第です、
また、五輪高校のメンバーも将馬と流以外は個性が薄いというのも……(^_^;)
主人公も個性が薄いですしね。
それでは次回もよろしくお願いいたします。