THE KING OF STREET FIGHTERS 作:本城淳
イギリス某所
人里離れた孤島……。そこに一隻の潜水艦が停泊していた。近頃ヨーロッパを賑わせている海賊団、リーリンナイツの潜水艇である。
そのボス、Bジェニー……本名ジェニー・バーンは望遠鏡を使い、孤島の端にある邸宅をブリッジから見ていた。
手下「艦長。こんなところにかの御仁がいるんですかい?こんなご時世にこんな孤島のはしっこで世捨て人をしているなんて思えないんですが」
ジェニー「いるわ。バーン家の情報網を甘く見ちゃだめよん?」
手下「そりゃあ、バーン家の情報網が凄いことは知っていますが……」
ジェニー「まぁ、今回はこの人の情報もあっての事なのよねん」
ジェニーは同じくブリッジで優雅にお茶をしている人物に目を向ける。
どこかミステリアスな女性、イングリッド。出身、経歴、年齢までもが全てが謎に包まれている人物だ。伝説の仙人、オロと同じかそれ以上に……。
何故彼女がジェニーに接触してきたのかすらわからない。
ジェニー(まぁ、楽しめれば何だって良いけどね?)
Bジェニーの行動理念は楽しむことが何よりも最優先される。海賊稼業もそうだ。家が裕福なBジェニーは食うことに困ったり、稼ぐ為に海賊をやっているわけではない。
より刺激的に……よりスリリングな生活を求めての行動に過ぎない。
そういった性格はかの魔界の貴族に通ずるものがあるかも知れない。
ジェニー(でも……それだけじゃ無いのよねー……彼らの場合は危うくて見てられないわ………彼に似ているもの……)
ジェニーはセカンドサウスの彼の事を思い出す。カイン・ラインハイン。
ギースの妻、メアリーの弟であり、ロックの叔父であるマフィアのボス……。
ジェニーは彼の事を忘れる事が出来なかった。彼にどこか似ている二人の男は……ジェニーは見捨てる事ができない。
ジェニー(彼らも……あのカインみたいなようにしてはいけない……。依頼をしてきた彼女の為にも……)
イングリッド「気負うでないぞ?バーン家の娘。世はなるようにしかならんでな」
見た目に反して古風なしゃべり方をするイングリッド。
彼女もジェニーにとっては興味が尽きない存在だった。そして確実に戦力になる。
イングリッドはこれから向かう彼の妹が紹介してきた。
彼女と彼女の兄………。かの元凶の傀儡にされた彼女は、その呪縛から解き放れた現在、どうしても兄に謝りたい。そして、彼女の兄ならば、再び表舞台に現れた彼女の父の事を知れば、必ず動くだろう。その為に数少ない友人の自分と旧知の仲であるイングリッドを頼ったのだ。
ジェニー「ま、考えたって仕方がないわよねん♪オッケー♪何よりも楽しまなくっちゃ♪じゃあ、あの邸宅に通じる唯一の接岸に向けて、レッツゴー!」
バーンシュタインの隠れ別荘
KOF12以降、妹のローズに実権を奪われ、半ば幽閉されるような形でこの別荘に押し込められたアーデルハイド・バーンシュタイン。
そこには1人の客分を匿い、穏やかな生活を送っていた。
アーデルハイド「今日もそこで、故郷への想いに耽っているのかな?」
「……………」
アーデルハイドは海の見えるテラスで自慢の紅茶を客人
に出し、語りかける。
彼は……脱け殻だった。まるで少し前の自分を見ているような気分になる。
白い学ランにインテリな眼鏡……。
彼の名は鏡恭介。二度目のジャスティス学園の騒動で父の霊に体を支配され、炎の中に消えていった兄、雹。
雹が消息不明になって以来、恭介の姿も太陽学園から消えていた。
恭介は行方不明になった兄を探す旅に出ていたのだが、依然として消息は掴めていない。
あてもなくさ迷っていた恭介はアーデルハイドに保護され、この別荘に客人として招かれている。
それ以来、毎日恭介はこのテラスで一日中故郷を想ってボーッとしていた。
それは未だに消息が掴めない兄を想ってなのか……それともわずかな間とはいえ、楽しい日々を送ってきた友人、バツやひなたを想ってなのか……。それは恭介以外に知ることは出来ない。
恭介「すみません。アーデルハイドさんにはお世話になりっぱなしで……」
アーデルハイド「構わない。こうすることで私も気が紛れているのだ。私と妹は何を間違えてこうなってはしまったのかと………1人でいるときはそればかりを考えてしまっていてね」
恭介「僕もですよ。兄さんと僕……どうしてこうなってしまったんだろうって……アーデルハイドさんは不思議な方ですね。まるで兄さんといるようで……落ち着きます」
アーデルハイド「私もですよ。君と一緒にいると、まるで小さな頃に妹と仲良くしていた時の事を思い出す。君と一緒にいることで、私の寂しさは癒されているのかも知れない」
恭介「アーデルハイドさんは……妹さんとは和解されないのですか?」
アーデルハイドは首を振る。
アーデルハイド「妹は私に対して何度も謝罪の使者を寄越し、戻ってきて欲しいと言っている。でも、私は戻るつもりはない」
恭介「それは何故ですか?妹さんを許せない……という訳では無いですよね?」
アーデルハイドは言っていた。寂しい……と。
アーデルハイド「私も妹の事を……ローズの事を愛している。だが、私が側にいてはダメなのだ」
こうして暇を持て余し、落ち着いて振り返った末での結論だった。
アーデルハイド「私は商才に関しては暗愚でね。ルガールの……父の遺した財産を食い潰し、とうとう宝物であった飛空挺、スカイノアまで売り払う始末だ。それに対してローズが開催したKOF……あれは大成功を収め、私が食い潰してしまった資産をあっという間に取り戻してしまった。妹には私よりも遥かに優れた商才がある。私が近くにいては、彼女の足を引っ張る結果になるだろう。野望を持つ我が家の部下は、私を祭り上げ、妹を苦しめる事にも繋がるかも知れない。ここで幽閉されているという形にしているのが一番なのだろうな」
互いを想いながらもすれ違う兄と妹。それはまるで自分と雹を見ているようだと恭介は思った。
アーデルハイド「それに……私は未だにこの血を恐れている。ルガール・バーンシュタインの血を…いつかは父のように野望に溺れ、力を求め……」
恭介「僕の兄も…忌野の血に振り回され、野望に身を染め、最後には父の霊に取りつかれて……」
アーデルハイド「君の兄と私は……形は違えどもやはり似ているのだな……だから君と私は惹かれ合うのだろう」
それが傷の舐めあいだとはわかっている。アーデルハイドはいつかは妹と向き合う必要があるし、恭介は恭介で無事に兄を見つけたとしても、アーデルハイドと同じように互いを見つめ直す必要がある。
アーデルハイド「ボガード兄妹やユン、ヤン君兄弟のようにいつまでも仲良く出来るのが理想なのだろうが…」
そんな時、扉からノックの音が聞こえた。
アーデルハイド「入れ」
アーデルハイドが入室を許可すると、執事が静かに入室
をし、恭しく腰を折る。
執事「アーデルハイド様。お客様でございます」
アーデルハイド「今日は来客の予定など無かったはずだが?」
今日に限らず、幽閉された(正確には自ら幽閉されている)身となった自分に来客など普通はない。あるとすれば自分を祭り上げようとしている者か、もしくは……
アーデルハイド「ローズの手の者なら丁重に引き取って貰え。私は表舞台に戻る気はない………と」
アーデルハイドが命令するが、執事はハンカチを取り出して額の汗を拭う。
執事「それが……ローズ様のお使いの方ではなく……バーン家のご令嬢でして……」
アーデルハイド「バーン家の?ジェニー・バーン嬢殿が?」
アーデルハイドとジェニーは古くからの仲だ。そしてジェニーはアーデルハイドが開催し、失脚する原因となったKOFの出場選手でもある。
尋常ではない雰囲気の男、牙刀とその真逆とも言える正義のプロレスラー、グリフォンマスクと共に出場したアンバランスなチームのリーダーとして。
アーデルハイド「済まないがお引き取りを願ってくれ。私は……」
執事「そ、それが……更にイングリッド様もご一緒で」
アーデルハイド「何っ!?あのイングリッド殿も!?」
アーデルハイドは戦慄する。バーン家の令嬢であるジェニーだけなのならば…ローズの友人であるジェニーだけならば、後でバーン家に対しての謝罪は必要であるものの、追い返すだけで良い。
しかし………
アーデルハイド(イングリッド殿までご一緒とは……一体何が!?)
神出鬼没で経歴不詳の謎の女性、イングリッド。
彼女まで一緒となると、ただのローズの使いだけと言うことは考えにくい。
ジェニー「考えても仕方ないわよん?アーデルハイド」
執事「ジェ、ジェニー様!困ります!」
イングリッド「相変わらずめんどくさい性格じゃのう?アーデルハイド」
執事の制止など気にする性格のジェニーな訳がなく、ズカズカと入り込むジェニーとイングリッド。
そういえばこんな性格だったな……と苦笑いを浮かべ、ため息と共に諦めたアーデルハイドは笑顔でそれを取り繕う。
アーデルハイド「ようこそ、イングリッド殿、ジェニー・バーン嬢。本日はどのような御用向きではるばるこんな離島まで?」
ジェニー「これを届けによん♪あと、恭介にもね♪」
恭介「僕にも?」
ジェニーは四枚の封筒を取り出し、それを二枚ずつアーデルハイドと恭介に渡す。
アーデルハイド(これはバーンシュタイン家の封印…やはりローズの……)
片方は予想通り、二人宛のローズからの手紙。それだけだったのならばアーデルハイドは受け取らずに二人を追い返していただろう。
しかし、もう一枚がそれを踏みとどまらさせた。
アーデルハイド「これは……KOFの招待状?いや、ただのKOFではない!」
アーデルハイドと恭介は招待状の封を開ける。
アーデルハイド「なっ!『R』だと!バカなっ!父は…ルガールは確かに死んだとハイデルン殿から聞いている!これは一体…」
一方では………。
恭介「なっ!太陽学園がシャドルーに襲われた!?バツが行方不明だと!?招待状の『V』はベガ……一度に情報が来すぎて理解が追い付かない……」
アーデルハイド「見せてくれ……恭介君」
恭介に宛てられたローズの手紙を読むアーデルハイド。そこには………
恭介が探している忌野雹が大会にエントリーをしているとの内容が記されていた。更に……
アーデルハイド「覇王丸……かのナコルルの同士として知られている剣豪に、四神の楓……マッドギアのソドムらと組んで……」
更には当のナコルル、ヨーロッパ闇の貴族のクラウザー、アッシュ、三種の神器、武神流、元ネスツ…。
アーデルハイド(これはいつものローズの手紙とは違う!)
アーデルハイドは自分宛の手紙の封をペーパーナイフで切り、内容を確かめる。
『親愛なるお兄様へ』から始まる手紙の文面は、最初こそ回りくどくもアーデルハイドが予想した通り、ローズの謝罪文から始まった彼女の手紙。しかし、途中からその内容に変化が現れた。
ローズ『今更この不肖のわたくしめがお兄様を頼るのはむしが良すぎることは重々承知しております。しかしながら、亡くなったはずのお父様が現れ、魔界や伝説の一族達が動き始めた今、わたくしに頼れるのはお兄様のほかありません。身勝手なお願いだとは承知しておりますが、どうぞこの不肖な妹めにお力をお貸しいただけないでしょうか』
と続いていた。
ルガール、ギース、ベガ……地獄門、魔界……。
なるほど。イングリッド程の者が動くはずである。
それに、これは恭介の問題にも深く関わりそうだ。自分の問題、恭介の問題、イングリッドの問題…もしかしたらジェニーにも何か関わりがあるかも知れない。
クラウザー程の大物まで現れたのだから。
アーデルハイド「ローズ……私は不出来な兄であろう。お前にとっては私はただの負担でしかないのかも知れない。だが、不肖な私でも何かお前の役に立てることがあるということか……」
アーデルハイドはローズの手紙を丁寧に畳んで封へと戻し、執事に渡す。
アーデルハイド「恭介君。君の問題も含めて私は立ち上がろうと思う。付き合ってくれないか?」
恭介「ありがとうございます。アーデルハイドさん。僕もこのままではいけないと思っていました。是非ともこの大会に出場し、兄と腹を割って話したいと思います」
アーデルハイド「ありがとう……」
イングリッド「決まりじゃな。此度の戦いは楽ではないぞ?」
ジェニー「目指すは優勝!そしてギースやルガール、ベガの野望を阻止してお宝をゲットするわよん♪」
ジェニー(そして私も……前に進まなきゃ……)
アーデルハイド・バーンシュタイン!復活!
Bジェニー…LKアーツ
餓狼MOW
アーデルハイド・バーンシュタイン…総合格闘術
KOF2003、KOF11
鏡恭介…忌野流?
私立!ジャスティス学園シリーズ
イングリッド…不明
CAPCOM fighting jam