THE KING OF STREET FIGHTERS   作:本城淳

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もうこの当たりが限界です!
多分、これが最後のチームになるでしょう。
それではどうぞ!


ほたる&七瀬チーム

日本…某高校

 

学校の教室で、双葉ほたるは格闘技の雑誌を開いて一人、黄昏れていた。

 

ほたる(これ……お兄ちゃん……だよね?)

 

今やKOSFは誰もが知る一大イベント。

一般の雑誌やテレビ番組などでも取り上げられており、誰がエントリーしたなどの特集が組まれている。

当然、格闘技を取り扱う雑誌もKOSFが目玉特集となっており、専門雑誌の意地なのか、普通の雑誌よりもエントリーチームの事は細かく載せられている。

ほたるも拳法家の端くれ。元々争い事等を嫌うほたるは出場するつもりは無かったのだが、情報だけは集めていた。

ほたるの兄がもしかしたら出場するかも知れない…と。

ほたるの半ば願望ともいえる予想は的中し、出場選手の中に兄と思われる男を見つけた。

 

牙刀……。

闇の世界で活動する中国拳法家であり、その筋の者達の間では有名らしい。

 

ほたる(昔はあんなに優しかったお兄ちゃんだったのに…どうして?)

 

ほたるは知りたかった。母が死に、父と兄が揃って失踪したその真相を……。兄が暗殺者とならなければならなかった理由を……。

 

ほたる(きっといつかは話してくれる……そう思ってお父さんとお兄ちゃんを待っていたけど……待っているだけじゃダメなんだよね?)

 

セカンドサウスと呼ばれた街で開催された大会、マキシマム・キング・オブ・ファイターズでは兄に会えたものの、ついにその真相を語られる事はなかった。

 

ほたる(私はもう一度、お兄ちゃんに会いたい……また一緒に暮らしたい……。それが許されない事なの?お兄ちゃん……そんなの……絶対にイヤ!)

 

あの時のように、自分から動かなければダメだ。

兄は変わってしまった。今のまま待っているだけでは自分の望む未来は訪れないだろう。

そして今回の大会。兄と思われる男、牙刀は大会オフィシャルチームの1つにエントリーされていた。

どう見ても普通とは言えない人達と組んでいる。

そもそも、大会そのものだって運営自体が裏では良くない噂が囁かれている程だ。

そんな大会のオフィシャルチーム……放っておける訳がない。

 

ほたる(だったら……)

 

ほたるはKOSFに参加するつもりは無かった。

しかし、このチャンスを逃したら、いつ次の機会が訪れるかわからない。

ほたるは動き出すことを決意する。

決意はするものの………

 

ほたる(どうしよう……チームを組んでくれる人がいないよ……)

 

セカンドサウスで本選に進んだ功績が認められたのか、幸いにもほたるの元に招待状は届いてはいた。

届いてはいたのだが、KOSFはチーム戦だ。

チームが組めなければそもそも出場する事だって叶わない。

しかし、ほたるの実績はただ二回だけ。マキシマムKOFとバトルコロシアムの二つだけだ。

 

ほたる(あの二回の大会で出場した選手はみんなチームを組んじゃってる……どうしよう……。あっ!)

 

ここでほたるは気が付いた。

その2回にも顔を合わせ、好感を持った少年、ロック・ハワードの事を。そしてロック・ハワードの育ての親とも言える存在、テリー・ボガードの事を。

 

ほたる(確かテリーさんには……)

 

いてもたってもいられなくなったほたるは、学校を無断早退し、富士へと向かった……。

 

 

河口湖湖畔……不知火道場

 

ほたる(確か………ここだよね?)

 

北斗丸「あれ?確か……ほたる姉ちゃん?」

 

ほたる「北斗丸君?」

 

北斗丸「やっぱりほたる姉ちゃんだ!久し振り!」

 

ほたる「嬉しい。覚えてくれてたんだね?」

 

北斗丸。

セカンドサウスのKOFで出会った大会最小年の選手だ。

偶然大会で出会ったほたると北斗丸。ほたるは北斗丸になつかれ、一緒に大会を回った縁がある。

 

ほたる「北斗丸君、久し振りだね?」

 

北斗丸「うん!久し振りだね!ほたる姉ちゃん!」

 

北斗丸はその身軽な身のこなしで駆け寄り、ほたるに抱きついてくる。子供ならではの特権である。

 

ほたる「北斗丸君はどうしてここに?」

 

北斗丸「それはおいらのセリフだよ。ここはおいらの師さんがやっている道場で、おいらはここに住んでるんだもん。ちぇっ!てっきりおいらに会いに来てくれたのかと思っていたのに……だったらほたる姉ちゃんこそ、何でここに?」

 

ほたる「え?じゃあ北斗丸君のお師匠様って……」

 

北斗丸「お師さん?アンディ・ボガードだよ?」

 

ほたる(言われてみれば空破弾って技にどこか聞き覚えがあったけど……まさか北斗丸君のお師匠様がアンディ・ボガードさんだったなんて……)

 

そう、ほたるはテリーとの縁を頼りにアンディに会いに来ていたのである。

ほたるはテリーがKOFに出場する際、そのほとんどをジョー東と弟のアンディ・ボガードと組んで出場していることを覚えていた。そしてKOSFにはまだ、アンディがエントリーしていないことも……。

 

北斗丸「ほたる姉ちゃん、もしかしてお師さんに会いに来たの?丁度今なら道場の指導も終わって後片付けをしているけど……もしかしてKOSFに?」

 

ほたる「うん……テリーさん達の縁を頼って来てみたんだけど、もしかしてもう組んじゃってるの?」

 

北斗丸「うーん……どうだろう。まだチームは組んでいないんだけど………とにかくおいらが紹介するから会ってみたら?」

 

どうにも北斗丸の反応は良くない。

果たしてアンディは組んでくれるのだろうか……。

北斗丸が話を通してくれ、アンディ・ボガードはすぐにほたるに会ってくれることになった。

 

アンディ「兄さんや北斗丸、ロックから話は聞いているよ。双葉ほたるさん……だったね?ようこそ、不知火道場へ」

 

ほたる「は、初めまして!アンディ・ボガードさん」

 

世界に知られる骨法の達人を前に緊張するほたる。そんなほたるに対して柔和な微笑みを絶やさず応対するアンディ。同じ兄弟でもテリーとは大分違う印象だ。

 

アンディ「それで……KOSFの事だったね?」

 

ほたる「は、はい……。出来れば一緒に出場出来ればと思いまして……」

 

アンディ「……残念だけど、僕は今回は出場を見合わせようと思っているんだ。北斗丸の面倒もあるし、道場の事もあるからね。本来ならば舞も出場しない方針だったけど……」

 

ほたる(そうだよね……出るつもりがあったなら、不知火舞さんと組んでるのが普通だよね……)

 

アンディ程の選手なら、引く手あまただったはずだ。なのに舞を始めとして、未だにチームを組んでいないのは出る意志がないから。

 

ほたる(本当にどうしよう……)

 

手詰まりになり、一瞬だけ困った表情を浮かべるほたる。アンディはそんなほたるの表情を見逃さなかった。

 

アンディ「北斗丸……。しばらく外で遊んでいなさい」

 

北斗丸「え?何で?せっかくほたる姉ちゃんと会えたのに……」

 

アンディ「良いから」

 

北斗丸「ちぇっ!つまんないの!」

 

アンディは北斗丸を下がらせる。

 

アンディ「何か事情があるようだね。良ければ話してみてくれないかい?」

 

ほたる「はい……実は……」

 

アンディはほたるはアンディに事情を話す。

 

アンディ「そうか……ギースの所に君のお兄さんが…それは放ってはおけないな」

 

渋面を作るアンディ。そして今度は自分達ボガード兄弟とギースの因縁についてほたるに聞かせる。

 

ほたる「そんな事が……」

 

アンディ「そう。だから君の事情は僕達兄弟にも関係があるんだ」

 

そう言ってアンディは立ち上がり、奥から習字道具を持って戻ってきた。

 

アンディ「残念ながら、僕自身は出場出来ないけど、僕の知り合いならば協力してくれるかも知れない。人間性は自信を持って紹介できる人では無いけれど、強さだけは保証するよ。丁度よかったしね。彼女も同行させてくれないか?入って来てくれ」

 

アンディが呼ぶと、奥からほたると大して変わらない年代の少女が入ってきた。

 

アンディ「紹介しよう。彼女は水神七瀬。彼女はとある古武術の家の出身でね。事情は君と似ているかも知れない。彼女も僕を頼って訪ねてきてくれたんだ」

 

七瀬「えっと……水神七瀬です。私もあなたと同じ理由があって……」

 

七瀬が身の上を語る。

水神流は草薙流とは違い、暗殺を家業とした闇の古武術を操る一族だ。

七瀬には兄と姉がいるのだが、一族に背いた兄のカイリを暗殺するべく、一族は姉のほくとの血の封印を解き、暗殺させようとしているのだとか。

このままではどちらかが死ぬしかない。七瀬はそれを止めるために行動しているのだとか。

 

ほたる「え?水神ほくとさんって言えば……」

 

ほたるは例の雑誌を取り出す。

 

日本武術チーム

エドモンド本田、大門五郎、藤堂香澄、水神ほくと

 

七瀬「そう!この人が私の姉さんだよ!兄さんと出会ってしまう前に姉さんだけでも止めないと!だから大門五郎さんや藤堂香澄さんと面識があるアンディさんを頼ったんだ!」

 

確かにほたると七瀬は似ている……いや、事情は七瀬の方がよほど深刻だった。

兄妹同士で殺し合うなんて……。そんな事は止めなければならない。

 

アンディ「そして……何かしらの事情を抱えた人が僕の紹介する人の所で修行を受けている。これはある意味で運命かも知れないな……」

 

ほたる「えっと……その人の名前は……」

 

アンディから出てきた名は……

 

 

とある日本邸宅

 

ほたる「こんな形でこの人に会うなんて……」

 

家の表札にはこう書かれていた。

「山田」……と。

佐藤や鈴木、渡辺など、日本全国のどこにでも必ず一人はいる名字……山田。

大仰な姓が多い格闘家の中ではあまり強そうな名字ではない山田という姓。

しかし、往年の格闘ファンならば知っている。

「鬼の山田」の異名をとる男の事を。

 

??「甘いぞい!」

 

ドダーン!

今も邸宅にある道場の中で、稽古中なのかかけ声とともに激しい音が響いている。

 

ほたる「大丈夫なのかな………」

 

七瀬「鬼の山田……ストリートファイトの意味合いが強かった初期のKOFに出場した柔道の達人…だよね?」

 

二人はドアホンを押そうかどうか迷っている。

初期のKOFであのテリー達と戦ったこともある鬼の山田。彼は不知火流とは昔馴染みらしく、アンディとも旧知の仲だという。

そんな存在と会うにあたり、二人は中から聞こえる激しい音もあって、すっかり萎縮してしまっていた。

 

「ん?ちょっと休憩じゃ。どうやら客のようじゃの?」

 

ほたる(鬼の山田が来る……怖い人だったらどうしよう)

 

ぎぃぃぃぃ!

重そうな門が開かれ、中から柔道着の上から赤いちゃんちゃんこを着込み、オールバックにした総白髪の長髪のおじいさんが出てきた。

その鋭い眼光に射抜かれるほたると七瀬。彼が鬼の山田の異名を持つ柔道の達人、山田十兵衛に間違いないだろう。

ただ、「鬼」と呼ばれているにしては背は低く、高下駄を履いていてもなお、ほたるや七瀬よりも背が低かった。

 

十兵衛「誰じゃ!ワシの道場を覗き見する輩は!覗きで許されるのはワシが女風呂を覗くときくらいじゃわい!」

 

ほたる&七瀬「は?」

 

聞いてはいけない言葉を聞いた気がして二人は固まる。

一方で十兵衛は二人を見つけると、鋭かった眼光、厳しく引き締まった口許が一気にだらしなく垂れ下がり、鼻の下も伸びきっている。

 

十兵衛「おーおー!メンコイ女の子が二人もおるわい。ちいとばかり幼いし、発展途上ではあるが、やっぱり女の子はええのぉ?ささ、上がりなさい!」

 

そう言えばアンディが言っていた。少し人格に問題があると。

 

ほたる(そう言えば鬼の山田にはもうひとつ、不名誉な異名があったとか……もしかしてこのスケベ根性?)

 

実はこの山田十兵衛。実力も充分。指導者としての力量も充分。人間としても充分なのだが1つだけ、大きな欠点があった。

とても女好きでスケベなのである。

大門五郎と二階堂紅丸を足して2で割れば十兵衛になるかもしれない。

 

ほたる(は、早まったかも……)

 

十兵衛も老人なので、身の危険はないと思いたいほたるであるが……。

十兵衛に連れられて通された道場。

そこにはとても道場とは思えないほどの広さと中庭があり、中庭は見事な日本庭園として拝観料を取っても良いくらいである。

そこには独特の民族衣装を纏った小年のような少女が荒い息をしながら寝そべっていた。

 

十兵衛「して、用向きは何じゃ?」

 

ほたる「えっと……アンディさんからの紹介で参ったのですが……あ、これは紹介状です」

 

ほたるはアンディの毛筆で書かれた前時代的な手紙(もはや書状と言える)を十兵衛に手渡す。

 

十兵衛「このアイティー社会の時代に毛筆の書状とはのう。あやつは生まれる時代と国を間違えたとしか言えんわい。どれどれ……」

 

十兵衛はアンディの招待状に目を通す。

 

十兵衛「ほうほう。この現役を退いたじじいに重大でデリケートな問題を抱えた客人を寄越すとはのう。先日のアリスちゃんといい、そこにおるタオといい……今回の大会はいつも以上に何かが渦巻いておるようじゃのう」

 

十兵衛は口髭を撫でながら、難しい表情で言う。

 

十兵衛「そこにへばっているタオという娘もそうじゃ。信じられん事に異世界の武術家なのじゃとか。故郷の村を焼き払った『影』とやらを追う旅の最中に迷い込んで来たそうじゃ。たまたまワシが保護しての、ついでに武芸の世話もしておった訳じゃ。柔よく剛を制する。というのには疎いようじゃったからのぅ」

 

ほたる(異世界かぁ……最近はそういうの、多いなぁ)

 

バトルコロシアムでもほたるはナコルルとか色とかといった者達と会っているので驚かない。感覚が麻痺しているのだろう。

 

十兵衛「それにしてもKOSFか……こんな若いおなごに誘われるなど、そうそう無いから手を貸してやりたいところじゃが……生憎とこの娘の世話も………」

 

タオ「あーーーーーー!この人!この肖像画の人ぉ!」

 

タオが言う肖像画とは雑誌の写真の事である。タオの世界ではカメラなどがまだ発明されていないのかも知れない。

そのタオが指している雑誌のチームは……。

 

ほたる「一条あかりさん?更に如月影二さん……」

 

ほたるは一条あかりとは面識がある。バトルコロシアムの時だ。影二とは面識こそ無いものの、KOFでは有名な選手なので知っている。セカンドサウスで出会ったマルコをはじめとした極限流を憎む忍者としても有名だ。

 

タオ「違うよ!その隣の人!こいつ、タバサだ!僕の世界の人だよ!」

 

十兵衛「なんと……知り合いがおったのか。じゃとすればこれは運命かも知れんのう……偶然出会った者達のそれぞれがKOSFに知り合いが参加している……よし、そうであるならば今一度現役に戻るのも良いかも知れん。一度、大門五郎とは手合わせしたかったところじゃしな」

 

ほたる「ホントですか?山田十兵衛さん!」

 

偶然出会った者達が、それぞれに知人や家族がいるという、まるで絡み合った運命に導かれた。得てして、山田十兵衛と少女達のチームが結成されたのである。

 

ほたる(お兄ちゃん……今度こそ……)




双葉ほたる…中国拳法
餓狼MOW

山田十兵衛…柔道
餓狼伝説2

水神七瀬…水神流古武術
ストリートファイターEX2

タオ…???
ウォーザード

ティーンエイジャー少女三人に山田十兵衛ハーレムチーム。
でも唯一のストライクゾーンはほたるのみという複雑な環境です。

あとひとつくらいはチームを考えたいところですが、何かネタは無いでしょうか?

ドラゴンチーム
拳嵩、チン・シンザン、ストライダー飛竜、??(カプコン)

ボクシングチーム
ダッドリー、??(カプコン)、フランコ・バッシュ、ヴァネッサ

等々……

もう無理かも?

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