「開戦から連戦連勝の日本軍……良い事ではないですかな」
照和18年、日本の首都である東京。その麹町のとある料亭で将和は宮様達と久しぶりに出会い、宴会をしていた。
「まぁその間にリーガン艦隊との戦闘で空母『赤城』の喪失はありましたがそれでも高杉艦隊は正規空母7隻を維持していますな」
「うむ」
「『赤城』喪失は真に申し訳ありません」
「仕方ない。戦争とは紙一重なものだ」
謝る高杉に将和はそう言う。
「そう言えば試作した艦戦はどうなりました?」
高杉は航空機会社『烈華』の社長に転職した小沢に問うが小沢は首を横に振った。
「泰山航空に取られたよ。一番の出来だと思ったがね」
小沢が創設した航空機会社は泰山航空の台頭で倒産・縮小した三菱や中島、川西等の技術者達が集まって出来た会社である。技術者達の中には堀越や太田稔、菊原静男、土井武夫等の名前を連ねている。
「『陣風』……『電征』に負けたか。俺が試験パイロットをしたせいかな……」
テストパイロットとして参加していた将和がポリポリと頭をかく。大量生産を目的としていた『陣風』は速度680キロ、13.2ミリ機銃二丁(機首)30ミリ機銃二丁(主翼)を搭載し主翼下にはロケット弾をも搭載出来るようにしていた。
だが、それでも海軍が選んだのは『電征』であった。
「次は恐らくクリスマス島攻撃になると思います」
「おいおい、機密をあまりばらすなよ」
「ふん、構いません」
紺碧会と確執はある高杉だが優秀であるが故にまだ艦隊司令官を担えている。(というよりも高杉並の司令官枠が紺碧会側にいないというのもあった)
「無理はするなよ高杉?」
「無論です」
そして高杉はクリスマス島攻撃に向かう事になる。
「小沢、局戦の開発もしといてくれ」
「まさか……一年前の状況が起きる可能性があると?」
「アメリカというよりドイツになるかもしれんぞ?」
「ドイツ……ですがゲーリングは我が社のパイロットですし……」
記憶があるゲーリングは開戦前に日本に亡命していた。これ以上、ドイツを何とかするのは諦めて家族と共に小沢の会社にいるのである。
「兎に角、開発はしてくれ」
「分かりました」
そして舞台は高杉艦隊に移動する。
「機雷です!!」
「速度減速!! 取舵いっぱぁーい!!」
B-17から投下された機雷群を避けるため旗艦『因幡』以下の艦艇が回避運動をする。
「『利根』、触雷!!」
後方にいた航空巡洋艦『利根』は機雷の回避が間に合わず、艦尾に命中し速度を落としていた。
「右舷から敵爆撃機!?」
「新三八弾射撃開始!!」
「駄目です、俯角が最大仰角のまま照準不能!! 間に合いません!!」
「………」
「長官!!」
「取舵いっぱぁーい!! 最大戦速!!」
「取舵いっぱぁーい!! 最大戦速!!」
「三番砲塔は右舷直角へ旋回、待機!! 一、二番砲塔は左舷へ直角旋回!!」
『因幡』の41サンチ三連装砲が高杉の指示の元、旋回待機をする。
「敵機来ます!!」
接近してきたB-32はロケット弾攻撃を展開する。数機は『因幡』を通過するが高杉は見逃さなかった。
「三番、撃ェ!!」
「一、二番、撃ェ!!」
新三八弾は故障なくその威力を発揮、襲撃してきたB-32は全て叩き落とされたのである。そして後方退避していた『加賀』らも襲われていた。
「食わしゃあしねぇぞ!!」
今まさに『加賀』を攻撃しようとしていたB-32に戦闘機パイロットのまま在籍している将弘の電征が体当たりした。(なお、将弘は脱出している)
「撃ちまくれェ!!」
秋月型防空駆逐艦の対空射撃により襲撃してきたB-32は全機撃墜したのである。
(『加賀』を喪失していたら……三好隊長に殺されていたな)
報告を受けた高杉は深い安堵の息を吐くのであった。だが、戦争はまだ続くのである。
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