かつて、日本を破滅から救った三好将和。その将和もとうとう老いには勝てず、妻夕夏と共に永眠した。
「夕夏、あの世でもよろしく頼むよ」
「任されたわ貴方」
「暫くしたら私もそちらに行きますよ」
息を引き取った二人に美鈴は涙を流しながらそう呟くのであった。
「いや、辺境の星域を継いでもなぁ……」
帝国歴480年、銀河帝国の辺境でフェザーンの隣にあるアイゼンヘルツ・アイゼンフート・エックハルト星域にて一人の青年が伯爵と三つの星域を継いだ。
男の名前はミヨシ・フォン・マサカズである。年齢は25であるがそれほどの貴族ではない。ルドルフ大帝の時代から年々伯爵の階級であるからだ。
(しかし、死んだと思ったら今度は銀英伝の世界か……。しかも転生先が門閥貴族ときたもんだ)
マサカズは書斎でコーヒーを飲みながらそう思う。本当は紅茶にブランデーをタップリと入れたいが嫁に怒られるのでやめている。
(別に同盟に亡命しても良いけど……後々めんどくさくなりそうだわな)
マサカズ自身は帝国軍軍人としても参加しているので亡命しても肩身が狭いと思ったのだ。ちなみに階級は中将であるが実力でのしあがっている。
(となるとだ……門閥貴族ながらラインハルトを密かに支援すればいいわけだな。まぁヒルダみたいにすればいいかもな)
そう画策するマサカズである。しかし、ラインハルトが果たしてマサカズを味方にするかは別である。
(この家系、ルドルフの時からの家系だしなぁ……)
伯爵でルドルフ大帝時から~というので何かしたのかと思えば、一度ルドルフの暗殺未遂の危機を救ったからであった。白人思想のルドルフにしては珍しい事であったが余程気に入ったのか伯爵の爵位を授けるくらいである。
だが、その後は平凡でありマサカズの代まで伯爵であった。辺境の星域ではあるが三つの星域を所有している事もあってそこまで権力闘争を好む事はなかったのである。
また、鉱物資源を保有する惑星や小惑星もあったのでフェザーンに鉱物の売買をしたりして儲けを出していたのである程度の資産や減税をしたり民からの評価は上だった。
(辺境だからブラウンシュヴァイクやリッテンハイムは絡んで来ないし……これは本格的にラインハルトに取り入れて後は……)
「貴方」
「ん?」
そこへ書斎に一人の女性が入ってきた。
「夕食が出来たわ」
「分かった、今行くよユーカ」
そう、まさかの夕夏(ユーカ)である。二人には赤い糸の厚さが1メートル以上はあるのかもしれないぐらいの結び付きである。また、愛人としてタチアナとシャーリーもちゃっかりいるのである。
それはさておき、ミヨシ家は幸せであった。今のところはである。
帝国歴482年、アイゼンヘルツ星域に一人の逆亡命者をマサカズは引き入れた。
「ようこそヘルマン・フォン・リューネブルク准将。我がミヨシ家は貴殿を歓迎する」
「……よく逆亡命者を受け入れる気になったな?」
リューネブルクは無愛想にコーヒーを飲みながらそう答える。
「貴殿があのままオーディーンにいれば何れは食い殺されるよ。その前に……」
「恩を着せたつもりかは知らんが俺はそんな事は思わんぞ」
「それを決めるのは貴殿次第だな。まぁ素直に言えばうちの私兵軍の陸戦隊を鍛えてもらいたいのもあるがな。……うちの嫁が強すぎてな……」
「最後の言葉は聞き捨てならんな。女に負ける程俺は柔じゃない」
(だといいが……前世より強くなってるんだが……)
何をどうしたらああ強くなるのかと思うマサカズである。なお、ユーカとは僅か三合で敗北した模様。
「……あれは化け物の類いだ」
ボロボロにやられたリューネブルクのコメントである。ミヨシ家の陸戦隊はリューネブルクの加入で飛躍的に精強となるのであった。
そして帝国歴487年、遂に原作が開始されるアスターテの会戦が発生。両軍の被害は原作通りである。
(遂に始まったか……さて、何とかラインハルトの陣営に食い込まないとな……)
マサカズは個人的にはキルヒアイスとパイプが繋がっていた。全くの偶然ではあるがキルヒアイスに「貴殿の主君は何かと急ぎな性格がある。まずはゆっくりと物事を見極めていくのが良いよ」とアドバイスをしていた。
ラインハルトの性格を見抜いたマサカズにキルヒアイスも同感であり私的な文のやり取りをしている程であった。しかし、このやり取りも「ドライアイスの剣」、「正論だけを彫り込んだ永久凍土上の石版」等で有名のパウル・フォン・オーベルシュタインがラインハルトの陣営に加わると無くなっていくのである。
「閣下、このミヨシ伯爵はあまり信用なさらぬが宜しいかと」
「ほぅ、キルヒアイスは貴族にしては中々の名君であると言っているが?」
「裏では門閥貴族やフェザーンとの繋がりが見受けられます。資産はブラウンシュヴァイクやリッテンハイムに比べれば下ではありますが他の辺境の領主と比べれば量は遥かにあります」
「ふむ、キルヒアイスの目を掻い潜るとはな……。分かった、門閥貴族どもと対決の際には切り捨てよう」
「御意」
帝国歴488年、リップシュタット戦役が勃発。マサカズはラインハルトの陣営に味方を表明したがラインハルトから拒否と門閥貴族として賊軍と表するの文書が回答してきた。
「………やりやがったなあの義眼野郎ォ!!」
マサカズは怒りに満ちて書類を破り捨てた。それをユーカ達が心配そうに見守る。
「……大丈夫だ。こうなる事も予想はしていた、確率は10%程だったがな」
「今更ブラウンシュヴァイクに尻尾を振るか?」
それを見ていたリューネブルクは問うがマサカズはまさかと首を横に振った。
「アホどもには付き合ってはいられんよ……戦うしかないだろうな」
マサカズは三つの星域の有人惑星の首長達にラインハルト側に味方するように通信を送った。だが首長達は拒否した。
『我々が今こうしていられるのもミヨシ家のおかげです』
『最期まで御供します!!』
『金髪なんぞにミヨシ家は負けませんぞ!!』
三つの星域、3000万人はミヨシ家に味方を表明するのである。
「……馬鹿野郎……(歴代のミヨシ家当主のおかげだなぁ)」
マサカズはそう感謝するのである。そして貴族連合軍ともラインハルト軍とも一線を敷いて独立を表明するのである。それを聞いたラインハルトは愉快そうに笑った。
「クックック……アホ貴族どもめ。勝手に自分で首を絞めてくれる」
ラインハルトはミヨシ家討伐にケンプ中将、ミュラー中将の30000隻を派遣した。辺境警備(アムリッツァ方面)にはシュタインメッツ少将の艦隊もあったが同盟軍への警戒のため動く事はなかった。
「貴族の艦隊など他愛ないわ」
そう豪語するケンプ中将であった。両艦隊はエックハルト星域から侵攻した。しかし、待ち構えていたのは両艦隊を上回る大艦隊であった。
「敵艦隊、凡そ65000隻あまりです!!」
「何だと!?」
「そんな馬鹿な!?」
二人は驚きのあまり何度も確認させたが答えは同じであった。そうしているうちに敵艦隊――ミヨシ艦隊が砲撃を開始したのである。
「一点集中砲火!! 敵艦隊の中央を狙え!!」
ミヨシ艦隊は中央に一点集中砲火を行い、穴を空ける。
「そのまま紡錘陣形に移行!! 中央突破を図るぞ!!」
ミヨシ艦隊が紡錘陣形に移行するとケンプは焦った。
「如何!! 後退だ、後退をするんだ!!」
『ケンプ中将、自分が殿を務めます!!』
「死に急ぐなよミュラー!!」
両艦隊は後退を開始するが紡錘陣形のミヨシ艦隊は突撃、両艦隊を壊滅させるのである。
ケンプ艦隊旗艦ヨーツンハイムも被弾して沈没しようとしていた。
「閣下、退艦を……」
「俺はいい。見ろ……」
ケンプは脇腹から滲み出る血を参謀長のフーセネガー少将に言う。
「ミュラーに伝えてくれ、生き延びてくれと……」
ケンプはそう言って息を引き取ったのである。その後、ヨーツンハイムは沈没しミュラーも重傷を負ってしまうのであった。
「何とかなったな……(見掛けは張りぼて艦隊だしな)」
マサカズは旗艦ミカサにて安堵の息を吐いた。マサカズが言う張りぼて艦隊とはそのままの意味である。
つまり有人艦艇は約7000隻程で残りは全て無人艦艇だったのだ。マサカズが家督を継いだ時からバレないように少量ずつ建造させ小惑星帯等に隠匿していたのである。ちなみに総数は105000隻程である。また、帝国軍が捕獲した同盟軍艦艇もコッソリとリヒテンラーデ侯から購入(リヒテンラーデもウハウハだった)して数は揃えている。
(問題はいつまで隠し通せるかだな)
無人艦艇が大半なのでバレた時の対処も考えないといけない。
(メルカッツ提督やファーレンハイト提督も此方に来るか打診してみるか。こんな事になるならもうちょい提督を確保しておけば良かったな……)
なお、ミヨシ艦隊には長谷川清(ハセガワ・キヨシ)やシュムーデ提督等がいたりする。
(なるようにしかないか……)
そう思うマサカズであった。なお、ケンプ中将が戦死した事でラインハルトは更にルーレンことルッツとワーレンを送り込むがマサカズの指揮によってルッツが戦死、ワーレンが片腕切断の重傷を負う羽目になり予想以上の戦闘。更にサビーネ・フォン・リッテンハイムの亡命等が起こったりしてマサカズが予想していた以上の戦乱になるのであった。
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