『三好in○○シリーズ』   作:零戦

21 / 36
次で終われたらなー


三好inジパング後編2

 

 

 

 

 

昭和19年1月、正規空母8隻、軽空母8隻、護衛空母42隻を主力としたスプルーアンス大将の第五艦隊はマーシャル・ギルバート諸島に侵攻し両諸島を占領した。

 

「遂に……か」

 

 連合機動艦隊司令長官に就任した将和は新たに旗艦『大和』の長官室で滝から報告を受ける。連合機動艦隊とは第一・第二艦隊と第一、第二、第三機動艦隊を集約させた機動艦隊だった。主力となる数個艦隊を纏めるのに軍令部等は難色を示したがインド洋は昨年昭和18年のYZ作戦で破壊され尽くされ、残存東洋艦隊もマダガスカル島からスエズ方面まで撤退する有り様だったので太平洋に集約する事が出来たのだ。

 

「これが最後の作戦会議になるかもしれん。皆、思い残す事無いよう議論してくれ」

 

 将和は各将官らを前にそう告げる。各将官は以下の通りである。

 

 連合機動艦隊司令長官

 三好将和大将

 同参謀長 宇垣纏中将

 同首席参謀 滝中佐

 同参謀 草加拓海少佐

 第一艦隊司令長官

 三好将和大将兼任

 第二艦隊司令長官

 南雲忠一中将

 第一機動艦隊司令長官

 山本五十六大将

 第二機動艦隊司令長官

 大西滝治郎中将

 第三機動艦隊

 山口多聞中将

 第一航空艦隊司令長官

 小沢治三郎中将

 

 

 

 

「三好……空母の運用は全て俺が掌握するという認識で良いのか?」

「良いぞ山本。下駄は預ける」

「……済まん、ならば思いっきり暴れよう」

 

 将和の言葉に山本はニヤリと笑う。

 

「それで敵機動艦隊の総数は分かるのか?」

「草加」

「はっ、説明します」

 

 将和に促された草加は将官らに説明をする。

 

「むぅ……奴等が両諸島に無駄弾を浪費してくれるのは良いが……昨年のインド洋作戦は何だったのだ?」

 

 草加の報告に第二艦隊司令長官の南雲はそう問う。

 

「インド洋作戦はチャーチルに危機感を与え陣容が整わないうちに米艦隊を誘い出すのが作戦目的じゃなかったのか? それがこれ程の艦隊とは……」

「それは違うぞ南雲」

 

 暗に草加らを批判する南雲に制したのは将和だった。

 

「桁外れの生産力を誇る大国との戦争において長引く程、彼我の差は開く一方だ……『これ程』ではない。今だから『これだけ』の戦力で済んだのだよ」

「むぅ……成る程……」

 

 将和の主張に南雲も納得の表情を見せる。そして将和は小沢に視線を向ける。

 

「基地航空の方はどうか?」

「司令部はヤップ島に移動完了しました。ヤップ、サイパン、グアム等にも各部隊の配備は完了しています」

 

 サイパン島 航空戦力

 海軍

 零戦54型×270機

 紫電改×270機

 九九式艦爆×90機

 彗星二二型×120機

 天山×90機

 一式陸攻×270機

 銀河×90機

 彩雲×20機

 計1220機

 

 陸軍

 隼×300機

 疾風×180機

 呑龍×180機

 飛龍×120機

 計780機

 

 グアム島 航空戦力

 海軍

 零戦54型×180機

 紫電改×180機

 九九式艦爆×90機

 彗星二二型×120機

 天山×90機

 一式陸攻×120機

 銀河×90機

 彩雲×20機

 計1130機

 

 陸軍

 隼×300機

 疾風×180機

 呑龍×180機

 飛龍×120機

 計780機

 

 ヤップ島 航空戦力

 零戦54型×360機

 一式陸攻×420機

 銀河×270機

 飛龍×90機

 彩雲×50機

 計1190機

 

 

 またサイパン島には第43師団を主力に三個師団、二個独立旅団、一個戦車連隊が布陣しグアム島には二個師団、二個独立旅団、一個戦車連隊が布陣していた。更に両島は要塞化が成されており、実際に第五艦隊が両島を空襲したが損害は軽微であった。また、敵攻撃隊に対し大損害を与える程であった。

 

「分かった。恐らくはこれが最後の決戦となるだろう。全員、出し惜しみはするなよ?」

『ハッ!!』

 

 そして全員ーー将和と草加以外が退出すると将和は口を開いた。

 

「それで草加、どうだ?」

「……芳しくない……というのが点でしょう。南京での原爆開発は完全に頓挫しましたので……」

 

 淡々と草加はそう告げる。密かに南京で開発されていた原爆は梅津の死亡と引き換えに開発場所のポルトガル船が海軍航空隊の爆撃で撃沈された事で海の藻屑と化したのだ。海軍航空隊にポルトガル船撃沈依頼を出したのは米内だった。梅津は最終手段として米内を通して海軍航空隊に爆撃してもらい船を撃沈する事を企図していたのだ。

 結果として、倉田博士等は生き残ったがそれでも重傷であり開発は完全に頓挫したのを意味するのである。なお、将和は原爆開発が開発に頓挫したのを受けて資金提供を止め兵器開発に力を注ぐわけである。

 

「そうか……なら乙案といこうか」

「乙案……と言いましても……」

「まぁ真正面からの艦隊決戦だからな。そしてその艦隊決戦中に出てくるであろう『みらい』を全力で沈める。轟沈させる、尽く破壊し尽くす」

「………………」

「不満かね?」

「いえ……御家族を狙われてはそうなると思います」

 

 将和の問いに草加はそう答えた。今年の正月、将和は久しぶりに自宅で正月を迎えていた。細やかながらの正月料理に口を付けようとした瞬間、横にいた夕夏が将和を押し倒したのだ。そして響き渡る一発の銃声、夕夏の左脇腹を掠めるように一発が部屋に入り込み夕夏の左脇腹から鮮血が溢れ出る。

 

「貴方………ッ!?」

「夕夏ァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

 それを見てタチアナとシャーリーが急いで部屋のカーテンを閉める。その間にも夕夏は自力で起き上がり自身で止血をする。

 

「こんなの……欧州に比べたら屁でもないわ……」

「夕夏……」

 

 ニヤリと笑う夕夏に将和も深い息を吐くしかなかったのである。なお、狙撃位置から逃げたのは五人組の男であり一人は将和もよく知る角松二佐だったとの事である。

 

「あの糞戯けども……赦さん………!!」

 

 なお、『みらい』でも三好家襲撃の報を草加経由から菊池は角松の行動を罵倒した。

 

「洋介の大馬鹿野郎ォ!!」

 

 菊池は将和とは個人的にも数度接触しており将和自身の人柄や人となりは分かっていた。

 

「三好将和の目指す未来は相容れぬが人を救いたい気持ちは同じだ」

 

 菊池はそう判断しているからこその帝国海軍へ協力していたのだ。それがこの襲撃で全ては水の泡となってしまった。それ以降、菊池は一人で『みらい』を降りたのである。全ては角松を説得出来なかった自身の釈明と将和への謝罪を込めてである。

 それは兎も角、日米の艦隊はマリアナ沖で激突を開始したのである。

 

「草加、『みらい』に『大和』への『G』を伝えているか?」

「恐らくは伝わっています。そして彼等は収容所から脱走しているので十中八九、『大和』に来るでしょう」

「ん」

 

 草加の言葉に将和は頷くのである。6月6日、米第五艦隊はサイパン及びグアム島を空襲した。しかし、米攻撃隊を待ち受けていたのは両島500機以上は展開していた陸海の戦闘機だった。

 米攻撃隊は殆どの被害を与えられぬまま壊滅した。生存機から報告を受けたスプルーアンスは再度出すか思案する。

 

「断固出すべきです。我々の目標はマリアナ諸島の攻略となります」

「その通りです。ジャップもこの攻撃で死んだ筈です。もう一息でしょう」

 

 上陸部隊司令官のターナー中将と空母部隊司令官のミッチャー中将はそう主張する。他の参謀達もそう主張していたがただ一人、それに異議を唱える者がいた。

 

「攻撃するには構いません。ですがこの状態で出しては被害が増すばかりではないですか?」

「何だとカーネル?」

 

 ワシントンから異動してきたばかりの参謀ーーハリー・カーネル少佐はそう問う。

 

「我々はソロモン、ニューカレドニアと次々と要所を取られました。取られるのは仕方ありません、奪い返せば良いだけです。しかしそれに対し我々は彼等に出血をさせたでしょうか?」

「奴等はミッドウェーで空母二隻も失ったじゃないか」

「確かに失いました。ですが失ったのは旧式の『アカギ』と『ソーリュー』です。彼等の最新鋭の『ショーカク』型は失っていません」

 

 カーネルの言葉に参謀の一人は口をつぐんでしまう。

 

「そして疑問に残るのは彼等の急な撤退です。彼等が撤退をするならニューカレドニア等も撤退すべきですがまだ撤退していません」

「どうかな? たまたま撤退の順番がマーシャルとギルバート諸島なだけかもしれない」

「現時点では彼等からしてみたらハワイへの喉元を突き付けるには最適な諸島ですよ?」

「それは……」

「それにです。我々はソロモン以後、彼等の艦隊にダメージを与えましたか?」

「いや……」

「逆に我々は『ワスプ』や『ホーネット』等多数失い、新鋭戦艦『ノースカロライナ』等多くの艦艇が大破しました。ですが彼等は両諸島等で抵抗を示しましたか? 血を流したでしょうか? それでも彼等が敗走したと断言出来ますか?」

「同じ事だ!! ジャップは力尽きたから戦いを避けマリアナに籠ったのだ!!」

「南方地帯と日本を結ぶ輸送路は健在です。我々の潜水艦が彼等の輸送船団に襲い掛かろうとした結果……87隻も未帰還ですよ? 彼等はまだ枯渇はしていない」

「……………」

「皆さんにももっと理解出来るようボクシングに例えましょうか。経験もトレーニングも豊富な小柄なハードパンチャーを想像して下さい。彼はまだ第5Rだというのに自らのコーナーに下がり足を止めた。それだけでスタミナ切れだと思いますか?」

「い、いや……」

「ならば考える事は何ですか? ………………打ち合う覚悟で待ち構えている」

『………………』

 

 カーネル少佐の言葉に参謀達は黙り込んでしまった。

 

「我々は対した苦闘を経験せず足早に此処までやってきた。だが……此処からトーキョーまでの道は近くて……………遠いのです」

「そして我々の敵は……あのアドミラル・トーゴーの弟子とも言える……アドミラル・ミヨシなのですよ」

 

 カーネルはそう告げるのであった。だがそれでも米第五艦隊は止まる事はなく再度サイパンを攻撃するのであるが結果は前回と同じだった。

 その頃、将和の第一艦隊はグアム島沖を航行していた。

 

「南雲の二艦隊は?」

「予定通りと思います」

「ん。後は山本のから祭りの花火を上げてもらうだけだ」

 

 だが、第一艦隊は米偵察機に発見されてしまう。

 

「戦艦を主力にした艦隊だと?」

「恐らくは囮にしその間に機動部隊を側面からでは……?」

「だが奴等の艦隊にも空母は確認している。出すべきだ」

「………………出そう。サイパンへの第二次攻撃は敵艦隊に変更する。装備はそのままだ、時間が無い。奴等の主力艦隊を徹底的に叩く!!」

 

 空母から攻撃隊が発艦していくのを見守る一機の偵察機がいた。彩雲である。彩雲の機長は攻撃隊が一艦隊の方向に向かっていくのを確認しながら機銃手兼無線手に電鍵を叩かせたのである。

 

「山本長官!! 見つけました、サイパンよりの方位163度、距離89海里、経路340度です!!」

 

 参謀からの報告に山本第一機動艦隊司令長官はニヤリと笑った。

 

「全機発艦!! 始めェ!!」

 

 そしてサイパン、グアム島からも攻撃隊は離陸するのである。その様子を『みらい』のCICから角松達は見ていた。

 

「これ程の大海戦を見るのは二度目だな」

「あぁ……ミッドウェーを思い出す……」

 

 そう言う角松を横目に尾栗は何物も言えぬ不安感に襲われていた。

 

(洋介……分かっているとはいえお前がやらかした暗殺未遂事件、案外しぶといぞ)

 

 乗組員達も動いてはいるが角松達がやらかした事件ーー三好家暗殺未遂事件の報道は『みらい』側も掌握していた。無論、角松達にも言い分はある。

 

「戦争の早期終結を図るにはその指揮官である一人ーー三好将和を暗殺すればその可能性も有り得なくはない」

 

 角松の後ろには米内の影響力もあった。豊田横須賀鎮守府長官の支援を受けつつ角松らは武器を入手しあの日、撃ったのは角松本人だった。

 

「俺なりのケジメだ」

 

 後に角松はそう語るがやられた側は堪ったものではない。犯人ーー角松一行と報告を聞いた将和は大激怒した。

 

「だからと言って家族を撃つなど赦さねぇよ……あいつらは反逆者だ。容赦なくやれ」

 

 味方を表明した菊池ら一行は反逆者から排除した将和だが菊池らが角松に情報を送っているのは原作を見れば知っていた。

 

「最後の最後で米内を討て。ついでに菊池らも殺せ、確実に殺せ」

(恐ろしい人だ……)

 

 傍らにいる草加はそう思うが家族を撃たれたら誰でも思う事だった。その時点で草加も角松らと共闘する意思は諦めた。いや消失したと言っていい。

 

(所詮、未来の日本人もその程度のもの……角松二佐、貴方には失望しました……)

 

 斯くしてマリアナ沖の大決戦は続けられるのである。

 

 

 




御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。