俺は悪くぬぇ(何
時には昔の話をしよう。
かつて、その世界に住む一人の日本人が姿を消した。神隠しと言えば判るだろう。その日本人は時を遡って何の因果は知らずに明治の日本に転移してしまった。日本人は時を越えた理由を自分で見出だし、日本を、世界を変える選択した。
変えた因果がどうなろうか日本人ーー青年は知ったこっちゃなかった。
『過去はどうする事も出来ない。けど、変えられるのは未来だけだ』
青年が進む理念はそこにあった。そして青年は成長するにつれ英雄の道へと歩み出した。歴史を変えた代償か? それとも変えた結果がそうなったか。無論、変えた代償は彼に重くのし掛かった。
真珠湾……セイロン島……珊瑚海……ミッドウェー……ソロモン……トラック……そして最終局面のマリアナ沖。
彼は戦った。戦いに戦い、そして打ち勝ったのである。
「……誰の話をしているんですか?」
「ククク……誰だと思うかね?」
捕らわれた立香は意外にも縛られているとかではなく部屋の出入りは自由だった。
立香がいたのは地下壕だった。しかもただの地下壕ではなく、かつてアドルフ・ヒトラーが死ぬ寸前まで使用していた総統地下壕そのものだった。
立香は残留思念体で甦ったアドルフ・ヒトラーと会食をしていた。
「………」
「ククク……どうやら薄々とは気付いてはいるだろう? だが自分の口から聞きたくはないと……」
「……あの人が……セイヴァーがいつか語ってくれると思っています」
「ククク……それは否(ナイン)だな。アトミラール・ミヨシは聞かれない限りは自身から語る事は無い」
ヒトラーはニヤリも笑いながら食後のケーキを食していた。
「……何故ですか?」
「簡単な事だ」
立香の問いにヒトラーは一旦フォークを置いてナプキンで口元を拭う。
「奴は自身を英雄と思ってないからだ」
「英雄と思っていない……?」
「そう。それが奴の強さであり弱さでもある」
ヒトラーはそう言ってコーヒーを啜る。その時、部屋にSSが一人入ってきた。伝令なのだろう、その伝令はヒトラーに一枚の紙を渡した。
「今の世界を生きる君にはあまり見たことは無いだろう。電報というヤツだよ」
「はぁ、聞いた事はありますけど……」
そう言う立香を他所にヒトラーは電報を読むと笑い出した。
「ククク、こいつは傑作だ」
「……まさかセイヴァーが負けたと!?」
驚愕する立香にヒトラーは制した。
「案ずる事はあるまい、アトミラール・ミヨシは勝った。スターリンはボロボロに負けて消え去った」
ニヤリと笑うヒトラー。
「やはり……やはりアトミラール・ミヨシだな。奴は人の可能性を見出だす力があるのかもしれないな」
「……セイヴァーをどうするのですか?」
「ククク、どうもしないさ。むしろ私は引導を渡してもらいたい側だからね」
立香の言葉にヒトラーはニヤリと笑うのである。そして話題の将和はというと……。
「ケッ、ぐだ男はいなかったか……」
「先輩……」
将和の言葉に後から増援で来たマシュはぐだ男を心配する。
「てかほぼ全戦力で来てるし……」
「アハハハ……皆さん、待ってるだけだと尚に合わなかったみたいで……」
タバコに火を付け吹かす将和にマシュは申し訳なさそうに言う。そこへジャンヌ・オルタがヅカヅカと来た。
「ちょっとあんた。タバコなんて吸うんじゃないわよ」
「戦場でしか吸わんっての……」
「健康というモノがあるでしょ!!」
「死んでんのに健康とか無いっての……」
将和はボヤキながらもタバコを雪に付けて消す。そこへ来たのはネロである。
「マサカズ!! 次は何処に行くのだ?」
「えっ、ついてくんの……?」
『いやぁ多分一人で行くのは難しいよセイヴァー』
そこへ将和に通信を入れたのはロマニだった。
「止めとけってロマニ。どうせラスボスは何となく浮かんでんだからやめた方がいいって」
「ラスボスとやらを知ってるならいいのでは?」
ナイチンゲールの言葉にマシュ達は頷く……が振り返った将和の顔を見て固まった。
「お前ら……自分の頭の上に太陽を複数落とされてもか?」
『……………』
何も知らないマシュ達は将和の表情に何も言えなかった。だがその意味を理解したのはエミヤだった。
「待てセイヴァー。もし、もしだ。君は……君はまさか……」
「……惜しいが違うなエミヤ。俺はただ変えたかった……時を、歴史を……そして人を……」
『……………』
「だが人は……『日本』は俺から大切なモノを奪い俺は姿を消した。それでも信じたかった、故郷を『日本』を……それが俺が生きた証であり生きる意味であり俺が存在する理由だからだ」
将和はそう言ってロマニに通信を入れる。
「ロマニ、さっさと送れ」
『送るにしても何処にだい?』
「……A.D.1945.4月だ。場所はドイツの首都ベルリンだ。そこにぐだ男はいるだろうな」
そして将和はレイシフトを行いA.D.1945.4月のドイツ、ベルリンに向かうのである。なお、待ち受けていたのはドイツ国防軍とナチス親衛隊である。
「敵軍は広範囲で陣を突破しております。南部ではツォッセンを占領しシュタースドルフに進軍しております。北部ではフローナウとパンコーの郊外で行動しており東部ではリヒテンベルグ・マールスドルフ・カルルスホルストの線まで到達しました」
「シュタイナーの師団が来れば平穏を取り戻すだろう」
「……総統……シュタイナーは……」
「シュタイナーの師団は日本軍の第二師団と戦闘中であり来る事が出来ません。シュタイナーは攻撃を実行していません」
「……五人だけ残れ。カルデアのマスター、カイテル、ヨードル、クレープス、アンポンタン」
(そこは空耳!?)
「命令した筈だ!! 今度こそシュタイナーに攻撃しろとな!! その命令を背くとは今度こそけしからん!! その結果がこれだ!! 陸軍も嘘つきだ、皆嘘をつく。SSもだ!!」
「将軍共はドイツ人のクズだ!! 恥さらしだ!!」
(畜生めェ!!キタ━(゚∀゚)━!!)
「今回こそやるべきだった!! 将校の大粛清を!! スターリンのように!!」
そして将和が率いる日本軍は総統官邸周辺に攻撃を加える。
「既に二万人近い若い将兵が防衛線で倒れています」
「若者の使命だろう」
「今すぐフェーゲラインを連れてこい!! フェーゲライン、フェーゲライン、フェーゲライン!!」
駆けつける虎を迎え撃つは四式チト。
「弾種、徹甲!!」
「今度は撃ち抜けよなぁ……」
「難しそうよね……」
(だから何でいるんだよコイツら……)
「カルデアのマスターよ、どうやら私は此処までのようだ。だが君はまだ見届けねばならない。アトミラール・ミヨシの行く末をな……」
「総統!?」
「さようなら(アウフウィダゼン)人類の希望。人を学べ、さすれば君が求める何かは見つかる」
ぐだ男は欧州の覇者と別れをし新たに新大陸のプレジデントの元に行く羽目になる。
「何が目的だアドルフ・ヒトラー……?」
「求めるはプライド。ドイツとして、ドイツ国民として、ドイツ軍人として、ドイツの指導者としてのプライドなり!!」
「その意気、承った。全力で相手してやる」
「マインフューラー……何故、あの時にそれを目指してはくれなかったのかな?」
「黙れゲーリング!! 貴様に何が分かる!!」
「分かりたくもないねぇ……少なくともボクはまだ正気さ」
終わりを迎えるベルリンの世界。
「ボクは此処までだ。だから後は頼むよマサカズ」
「あぁ……また会えて嬉しかったぞヘルマン」
「今度は空戦の勝負をね」
「楽しみにしているよ」
「良い人生を……」
ドイツの撃墜王に別れを告げ、将和は再びレイシフトをする。
『セイヴァー、次は何処にレイシフトを?』
「……俺の記憶からだ。A.D.1945.4月、マリアナ沖に『奴』はいる」
「クハハハハハハハハハハハ!! そうだ、そうだ、マリアナ沖に来ればいい!! そこに私はいるぞアドミラル・ミヨシ!!」
「何故貴方はそこまでセイヴァーに……」
「何故!? 何故だと!! アイツが彼処に、あの場所に、あの時、あの年代にいたこそが曲解となっているからだ!! 奴を消して今度こそ我がステイツが全世界を支配する時がステイツの勝利なのだ!!」
「それがどうしたルーズベルト!! 俺は全力を尽くした結果があの戦争の結果だ!! 戦争を始めた後悔はあるが悔いは無い!! そうしなければ日本のために、愛する人のために、俺を信じてくれた皆のために俺は此処に存在する意味がある!!」
そしてカルデアのマスターを救出するがために集まったサーヴァントの頭上には1機の爆撃機が飛来する。
「あれは……まさか!?」
「クハハハハハハハハハハハ!! サーヴァントもろとも消えてしまえェェェェェェェェェ!!」
カルデアのマスターは問いかける。
「セイヴァー……いえ、三好将和。貴方は何を望む?」
「さぁて……何だと思うかな?」
最終決戦はマリアナ沖海戦。戦いの火蓋は切られたのである。
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ちなみに将和の宝具の内一つはイスカンダルの『王の軍勢』とよく似ている。