かつて、日本を破滅から救った三好将和。その将和もとうとう老いには勝てず、妻夕夏と共に永眠した。
「夕夏、あの世でもよろしく頼むよ」
「任されたわ貴方」
「大丈夫です、暫くしたら私もそちらに行きますよ」
息を引き取った二人に美鈴は涙を流しながらそう呟くのであった。
『日出づる国を亡国から救いし者よ』
「よして下さい。俺はそんな大層な者じゃない」
何も無い真っ白な空間、そこに将和は浮かんでいた。
「此処は地獄で? まさか天国ですかな?」
『いや、その狭間である』
「ほぅ狭間ね……国を動かし人を殺してきた者にしては相応しいか、それとも地獄行きを待つところですかな」
『……そなたにはもう一度現世に行ってもらう』
「……………」
何者かは分からない言葉に将和は眉を潜める。
「フム、八百万の神々はしがない自分に何をさせようと?」
『ただの戯れ也』
(やっぱ神様かー)
何となくはそう思っていた。何せ言う言葉からそう怪しかったし……。
「その戯れで何をしようと?」
『……人と妖の共存共栄』
「………」
その言葉に将和は無言で通す。
『無理と思われるか?』
「人と異形……過去にもそのような御伽話はあったでしょう。狐、狸、鬼……どれもが人に退治されてきた。そして異形がいなくなれば人は同じ人を病で貶す。無理とではなく難しいの一言でしょう」
『だがそれでも我はすがりたい』
「……………」
その言葉に将和は考える。
(さてさてどうしたものか……)
『そなたさえ協力してくれたら我はそなたの味方になろう』
「(それでも諦めたくはない……か)聞きます。貴方は何者で? 神ですか?」
『否。龍である』
何かの気配はする。だが出てこない。それでも将和は聞く。
「問います。貴方は何をしたい?」
『先程答えた』
「成る程。嘘偽り無く」
『如何にも』
「……承りました。しがない大層な者ではありませんが龍の願い、引き受けましょう」
『……忝ない』
気配が頭を下げたように思えた。
『そなたは今、死んではいるがそなたが行った働きによって現人神となっている』
「……それはまた……」
将和は溜め息を吐いた。信仰とまでは思ってなかったが国民からの人気はかつてあったのは自身も知ってはいるがまさか現人神とは……。
「神社でも祀られました?」
『めちゃくちゃ祀られている』
その言葉に将和は頭を抱えた。やめろと言っていたのにやりやがったのかよ……。
「まぁ……過ぎた事は仕方ないです。それで自分はどのようにしろと?」
『人と妖怪の調整役を兼ねてもらいたい』
「調整役ね……」
『一先ずそなたを送る。場所は但馬国二方郡諸寄村也』
「そこ作者の田舎ェ……」
『ぶっちゃけいいのが思いつかなかった』
「ア,ハイ」
取り敢えず考えないようにした将和である。
『では送るが……そなたにも色々な協力者は送る。安心せよ』
(協力者がヤバかったら安心出来ねぇです)
将和はそう思いながらも急速な眠気に襲われ瞼を閉じるのであった。
「ん……」
波の音が聞こえ目を覚ますとそこは海岸だった。
「海……か……」
「んぅ……」
不意に隣で声がした。視線を向けてみたら夕夏が寝ていた。そう、将和が愛しても愛してもやまない三好夕夏だった。
寝ている夕夏の髪を撫でる。それに反応して夕夏の目がパッチリと開いたのである。
「……あの世かしらね……」
「あの世とはこれまた失礼だな」
「だってまた若い頃の貴方を見れてるのよ? あの世と思うわよ」
「残念ながらまた現世だよ。実はな……」
将和はそう言って夕夏に説明をする。説明を受けた夕夏はニンマリと笑う。
「じゃあ暫くは二人で新婚生活が出来るわね♪」
「おいおい……」
「あら、人生は楽しまないと損するわよ」
ウインクをする夕夏に将和は溜め息を吐いたがその表情は何処と無く嬉しそうだった。
「……そうするか。さて、まずは村人を探さないとなぁ……」
「そうねぇ。後は寝床ね、今夜は寝かさないわよ?」
「……それ、本来は俺が言う台詞なんだけどなぁ……」
二人はそう言いながら海岸を歩くのであった。
それから数年の時が流れた但馬国二方郡諸寄村、諸寄村は入り江がある漁村であり海岸を中心にした村の形成であったがその浜坂村方面の山の中腹程に将和と夕夏が住む神社があった。その神社は二人が来る前は廃社になっていたが将和が手直しを施し改装した事で神社となっていた。今では諸寄村を守る諸寄神社と呼ばれたりしている。
当初、海岸からやってきた二人を怪しんだ村人達だったが気さくな将和や美人の夕夏の夫婦だった事もあり直ぐに村人達の輪に入って宴会をする程だった。
また、村に妖怪が来た時は現人神になっていた将和が退治した事で将和の株が上昇し今の神社に住む要因にもなっていた。その噂は近隣の村々も聞き付け将和に妖怪退治を依頼する程であった。
(というより妖怪っていたんだなぁ……)
畑を耕しながら将和はそう思う。なお、農耕機具に関しては初っぱなから備中鍬や千歯扱き等を生産して投入させている程であり諸寄村を中心に使用されていた。また、神社と村に結界を敷いているのでおいそれと妖怪も近寄る事は出来なかった。
「貴方ぁ。お昼にしましょう」
そこへ夕夏が両腕に竹で編んだ籠に昼食を入れて持ってきた。
「よっしゃ、なら昼にするか」
時は正暦元年(990年)、京では藤原道隆が摂政・関白を歴任している頃だったが但馬国二方郡諸寄村は今日も村人達は楽しく農作業に勤しむのであった。
この後、夕夏は村の子ども達を鬼から守るために獅子奮迅をして死にその遺体は向日葵畑に埋葬。
翌年の夏に向日葵畑から夕夏の記憶を持つ風見幽香が誕生し将和とまた暮らし始めるとかそういう展開があったりなかったりする。
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