かつて、日本を破滅から救った三好将和。その将和もとうとう老いには勝てず、妻夕夏と共に永眠した。
「夕夏、あの世でもよろしく頼むよ」
「任されたわ貴方」
「暫くしたら私もそちらに行きますよ」
息を引き取った二人に美鈴は涙を流しながらそう呟くのであった。
「今度はパワプロの世界かぁ……」
将和は頑張川の土手をランニングしながらそう呟く。パワプロの世界に転生して既に15年の時が流れており将和は軍事の世界に行くのではなく途中で諦めた野球の世界を完全燃焼する形であった。
(前世というか元の世界では小学生で終わったからなぁ……強豪高校に行くとかはどうでも良いし取り敢えず完全燃焼だよなぁ)
そんな思いの将和である。プロ野球とかではなく、ただやり残した野球への想いを完全燃焼したいという気持ちであったのだ。
「お〜い、待ってくれよ三好ぃ」
「早いって……」
「遅いって田中山、山本」
後から追いかけてきたのはバス停前中学校野球部の田中山と山本である。将和はバス停前中学校の野球部に所属していた。
「そういや三好って卒業したらどの高校に行くんだ?」
「ん〜? 恋恋かな。家から近いし」
「やっぱ恋恋か。来年度から共学になるしな」
「俺達も恋恋受けるか? バス停前高校だと先輩達がいるしノビノビとやれないしな」
「ん? バス停前高校には行かないのか?」
「行ってもいいけどさ……」
「三好のホームランは見たいからな!!」
「……ッハハ。それを言われたら俺は何も言えないな」
バス停前中学校の野球部で将和はホームランバッターとしても活躍していた。それでも30本のホームラン数だが将和は特殊能力の選球眼等を駆使していたからだ。
「なら恋恋に行くならもう少し勉強はしてもらわんとな」
「グェッ」
「まぁ俺は普通だが田中山だなぁ……」
そんな事を言いながらランニングをする三人であった。そして3月に三人はバス停前中学校を卒業し恋恋高校に入学するのである。
「矢部、今日から俺の舎弟な」
「そんなでヤンス!?」
「ホームランバッターにホームラン勝負挑んだらそうなるわな」
「んだんだ」
ショックでムンクの叫びをする矢部に田中山と山本は頷く。そして将和は野球同好会で発足させようとしていた一人の女の子と出会う。
「君も野球をするのかい?」
「何? 女の子が野球をしたら駄目なの?」
「いや? 野球を好きな人に男も女も関係ない。俺は喜んで一緒にやらせてもらうよ」
「……ありがとうね。ボクは早川あおいだよ」
「三好将和だ。しがない野手と投手兼任だ」
原作と異なり10人(田中山と山本がいる為)となり野球部として再度発足となる。が、その前に将和は理事長や加藤理香教諭等と協力しあおいちゃんの出場の署名を野球の練習と同時平行で行う事になる。(無論、あおいちゃんには内緒で)
「署名お願いしますでヤンスー」
「腹から声を出せ矢部。ぶっ飛ばすぞ」
「ヤンス!?」
その努力があったのか高野連から連絡が入り「地方大会は許可。甲子園に出場した場合はまだ未定」となるのである。
「やったわね三好君」
「そうですね……(でも、あっという間に署名が集まったのも加藤先生のおかげだし……ゲームでもあったけどマジで何者なん?)」
冷や汗をかきながらそう思う将和であった。兎も角、恋恋野球部は始動したのである。地方大会は7月からでありそれまでは練習練習練習のみである。
「取り敢えずはスタメンも発表しとくか」
成り行きでキャプテンになった将和は練習後に全員を集めてスタメンを発表するのである。
「スタメン発表すんぞー」
「いいよ」
「はいでヤンス」
そして将和は紙を貼り付けたのである。
一番 センター矢部
二番 セカンド水口
三番 サード中村
四番 ファースト三好
五番 キャッチャー山本
六番 ライト磯部
七番 ショート今岡
八番 レフト浜中
九番 ピッチャー田中山
「ッ」
「あおいちゃんの言いたい事は分かる。けど、あおいちゃんはスタミナがまだ足りないから中継ぎ、そんで俺が最後に抑えの三人リレーでやる」
「だな。それが妥当だな」
将和の言葉に田中山も頷く。
「まぁあおいちゃんにもサブポジとして一塁とかやってもらうかな。三人いるし万が一に備えてね」
「成る程……分かった。ボクもサブポジをやってみるよ」
斯くして方針は決まり将和達は地方大会に挑むのであった。ちなみに1回戦の相手はバス停前高校であり8-0での勝利であったりする。
「取り敢えずは恋恋野球部初の勝利だね!!」
「まぁ課題は多いけどな」
「でも将和君も4打数4安打1ホーマーは凄いよ!!」
「オイラも2盗したでヤンス!!」
「ボテボテの内野安打だったけどな」
「よーし、この調子を維持して二回戦も勝つぞ!!」
『オオォォォォォォォォォ!!』
その後、恋恋高校はあれよあれよと勝利を重ねていき遂には準決勝まで進んだのである。
「まさか準決勝まで進めるとはな……」
「夢のようでヤンス」
「けど、相手も相手だからね」
「……あかつき大附属校か……」
あかつき大附属校は失点無しで抑えておりその投手は将和らと同じく一年生であったのだ。
「フン、恋恋高校か……出来たばかりの野球部にしては此処までやれたものだな。だが、勝つのはボク達だッ」
相手ベンチで猪狩守はそう言いながら肩を作るのである。そして試合が始まると猪狩の言葉は事実のように一回表、恋恋を三者三振で抑えるのである。対してあかつき大附属もその裏で二者ヒットを出すも6-4-3のゲッツーとキャッチャーフライでチェンジとなり二回表、打席には将和が立つ。
「フン、高校で神主打法とは……ある意味で恐れ入るよ」
打席で神主打法で構える将和を見つつ猪狩はそう呟きながらあっという間に将和を2ストライクまで追い込む。
「他愛ない……なッ」
その日、猪狩は最速149キロを出した。それは将和から見れば内角高めのストライクゾーンだったが将和のスイングが早かった。
「ッ!?」
打った瞬間、将和はバットを投げる。感触は完全にスタンドだった。それは予想通りであり将和が打った打球は大きく弧を描きライトスタンドに入ったのである。
「やったでやんすやったでやんす!! 将和君がホームランを打ったでやんす!!」
「凄いよ将和君!!」
恋恋のベンチは大はしゃぎである。ゆっくりとホームインした将和は皆からの祝福という名のパンチを浴びつつマウンドにいる猪狩に視線を向けると猪狩は打たれてショックな表情をしていたが将和に厳しい視線を向けるのである。
(取り敢えずは警戒されるな。さて、どうするかな……)
ヘルメットを棚に置きつつ将和はそう思う。試合はまだ始まったばかりである。
ただ、完全燃焼出来なかった野球をやりたい。それが将和を動かす理由。
ちなみに打順は近鉄や阪神を入れたりしている。
将和が猪狩から打ったのはガッツがペロペロ増井から打ったサヨナラホームランをモチーフ。