リメイクは共同歩調を取ろうかなと。
かつて、日本を破滅から救った三好将和。その将和もとうとう老いには勝てず、妻夕夏と共に永眠した。
「夕夏、あの世でもよろしく頼むよ」
「任されたわ貴方」
「暫くしたら私もそちらに行きますよ」
息を引き取った二人に美鈴は涙を流しながらそう呟くのであった。
「死んだはずだったのになぁ……」
「それは俺もだ将和」
1905年(明冶38年)5月28日、対馬沖。日本海軍聨合艦隊はロシア帝国海軍第二太平洋艦隊のバルチック艦隊との戦闘に劇的なの勝利を収めてその帰還途中だった。その『三笠』の艦橋で特務参謀である三好将和少尉と長谷川清少尉はそう話していた。
「今回は俺とお前と東郷長官しか生き残っていないな……」
「あぁ……しかもさっき書類を見たんだが……元号は明治じゃなくてどうやら冶の方だ」
「……あっ(察し)」
「どうした?」
「……山本五十六が『日進』にいたな?」
「確かにいたな。それがどうした?」
「怪我の具合を調べてくれ」
「あ、あぁ……」
そして内地に戻る最中までにその結果が来た。
「山本……今は高野だな。負傷は胸だけだな、どうやら史実の指が吹き飛んでいないぞ」
「……これかぁ……」
長谷川の報告に将和は盛大に溜め息を吐いた。その様子に清は首を傾げる。
「どうした?」
「いや……(こらぁ、ヘルマンを急いで回収せんとなぁ……今度は死なせたくないしな……)」
そう思う将和であった。その後、東郷は元より宮様や伊藤博文等前回にてお世話になった者達も記憶は早めにあった事が判明、少しだけ前回と内容が違っていたりするがそれは些細な事である。
「ふむ……兵器の技術進歩が格段に向上する世界……か」
神楽坂にある小さな料亭で将和らは密かに集まり、宮様は将和から日本酒を注いでもらい一飲みする。宮様達は将和からこの世界——『紺碧の艦隊』シリーズにおける説明を受けていた。
「……となると我々の計画も早まるな」
「と言いますと?」
「我々も君達と合流する前の会合で決めていてな。前回より短機関銃や航空機は早期に入手したり工作機械の購入、設備投資をする予定だったのだが……これではな。陛下にも相談してみよう」
なお、宮様達は日清戦争から改変を行っており日清戦争は日本の勝利であるが下関条約も史実とは異なっていたのだ。
『下関条約』
・朝鮮国については宗主国が清国であるという事の確認及び諸外国への通達の実施
・清国は遼東半島、台湾、澎湖諸島など付属諸島嶼の主権ならびに該地方にある城塁、兵器製造所及び官有物を永遠に日本に割与する。
・清国は賠償金6億テールを日本に支払う。
・割与された土地の住人は自由に所有不動産を売却して居住地を選択することができ、条約批准2年後も割与地に住んでいる住人は日本の都合で日本国民と見なすことができる。
・日本は3か月以内に清国領土内の日本軍を引き揚げる。
・清国は日本軍による山東省威海衛の一時占領を認める。賠償金の支払いに不備があれば日本軍は引き揚げはない。
・清国にいる日本人俘虜を返還し、虐待もしくは処刑してはいけない。日本軍に協力した清国人にいかなる処刑もしてはいけないし、させてはいけない。
・条約批准の日から戦闘を停止する。
・条約は大日本国皇帝および大清国皇帝が批准し、批准は山東省芝罘で明治28年5月8日、すなわち光緒21年4月14日に交換される。
この賠償金6億テールを元に日本は八幡製鉄所への投資に八幡製鉄所の規模を史実より3倍に拡大させた。また、独・仏・露による三国干渉により下関条約で保有した遼東半島を清に4500万テールで売却(遼東還付条約)し艦艇や兵器の整備、民生に力を入れたのである。
これにより以下の事に成功していた。
・陸軍、野砲は仏M1897 75ミリ野砲をライセンス生産で採用し三三式野砲へ
・日露開戦時までには陸軍は15個師団を編成し講和条約時には22個師団、2個騎兵旅団、7個歩兵旅団まで編成。
・防護巡洋艦の増加→史実『利根』型防護巡洋艦をモチーフとしての
『音羽』型→6隻
『音羽』『天龍』『龍田』『黒部』『四万十』『長良』
・装甲巡洋艦の増加→『出雲』型2隻→4隻
『出雲』『磐手』『青葉』『衣笠』
・国産『薩摩』型戦艦の就役
・八八艦隊の整備に移行(後に『春日』型装甲巡洋艦も購入される)
戦艦八隻
『富士』『八島』『敷島』『朝日』『初瀬』『三笠』『薩摩』『安芸』
巡洋艦十隻
『浅間』『常磐』『八雲』『吾妻』『出雲』『磐手』『青葉』『衣笠』『春日』『日進』
・海軍、パーソンズ式タービンを早期に導入。八八艦隊(史実六六艦隊)の装甲巡洋艦『八雲』『出雲』『磐手』『浅間』の4隻が改装によりパーソンズ式タービンを搭載し24ノットの速度に向上する。
これらの整備を行っていた事で日本は日露戦争を何とか乗り切り(黒溝台で敗走したりした)ポーツマス条約で賠償金は無いものの、関東州の租借や樺太の譲渡等が盛り込まれていた。特に樺太は史実と異なり樺太全土を保有する事になった事で後に生産が開始されるオハ油田等はそのまま日本が所有する事になる。
「陛下も君等の事は気に掛けていたから会ったら話はしておくようにな」
「無論です」
なお、陛下も宮様の具申により直ぐに了承し皇室財産を削減したりして第一次世界大戦までに航空機や工作機械の充実を図ったりするのである。
「それと撃墜王は予定だから」
「ア,ハイ。最初から全力を出します」
撃墜数が伸びるなと思う将和であった。そして第一次世界大戦が勃発し将和は前回と同じく派遣され再び夕夏と再会する。
「あ・な・た♪」
(逃げられない運命ですね、分かります)
将和は初っ端から夕夏に抱き着かれながらそう思う。第一次世界大戦は大体前回と同じ通りだが将和の撃墜数は前回より伸びた。ちなみにゲーリングも前回の記憶持ちだった事が判明、ギリギリまで祖国で活動を続けて無理であるなら日本に亡命するとの事であった。
1920年(太正9年)、将和は神楽坂の小さな料亭に集まっていた。
「とりあえずは前回と同様だな」
「えぇ。ですが前回よりドイツから技術者を大量に招致をしなければ……(あの後世における技術力はパネぇしな……一人でも多く日本側に引き込みたいしな)」
「うむ。工業力を上げんとな……。ところで皇女殿下はどうしたかね?」
「記憶が在りました。その為、押し掛け女房になって夕夏と一緒に自宅にいますがね」
宮様の言葉に将和はそう報告をするのであった。大戦中にタチアナも記憶がある事が判明しタチアナはあれこれ言って日本に留学という形で他の姉妹と共に来日していたりする。なお、そのまま将和の家に押し掛け女房になっているのは言うまでもない。
「しかし、対潜水艦への脅威の為とは言え……『安芸』と『扶桑』を喪失したのは痛いですな。ユトランド沖海戦でも『比叡』『山城』を喪失してますし……」
戦艦『安芸』『扶桑』は大西洋でUボートの魚雷攻撃で戦没していた。特に『扶桑』は『安芸』沈没時に救助しようとしたところを左舷に5本が命中し排水が追いつかなくなりそのまま大傾斜、総員退艦となったのである。
ユトランド沖海戦でも旗艦『山城』が艦橋直撃で栃内中将らが戦死し『霧島』艦長の将和が臨時に指揮を取りつつヒッパー中将の偵察部隊を壊滅させシェア中将の大洋艦隊を半壊させたが撤退時に『比叡』が捨て奸をしてジェリコー大将が戦死し壊滅したイギリスの大艦隊の残存艦艇を逃がして戦没するくらいだった。
その為、起工前だった『伊勢』『日向』の一時中止し後々によっての41サンチ搭載艦としての設計、建造が開始されるのである。
「『金剛』級の代艦は前回と同じく必要になるでしょう」
「だな、そのように手配はしておく。ワシントンでどうせ解体は必要になる艦もあるし解体した材料は保管しておこう」
「はい。どうしようも古い艦艇はそれしかありません」
「ドイツ技術者の招致や工作機械の輸入はどうなっている?」
「大使館を通じて粘り強く交渉中です。現在までに296人が日本に来日、工作機械も3000万円分を購入しています」
「まだまだ必要だな……だが震災もあるから無茶しない程度でな」
「分かりました」
「それと……高野らはどうする?」
「……共同ですな。問題は介入する時期ですな(まぁある程度は考えているけど……)」
内心はそう思う将和である。その後のワシントン軍縮条約にて日本は粘り強く交渉した結果、日英同盟は解消は回避し『陸奥』も保有を認められるのであり戦艦6隻(『金剛』『霧島』『伊勢』『日向』『長門』『陸奥』)、空母5隻(『鳳翔』『赤城』『加賀』『土佐』『妙義』(元『マッケンゼン』))で新たに再スタートとなる日本海軍である。その中でも日本海軍は潜水艦と海上護衛にも力を入れる事になる。
その後、太正から照和へと移り変わり照和6年に満州事変は発生しなかった。そもそも満州は帝政ロシアが崩壊した後に日本の工作で満州にロシア軍が亡命するようになり日本軍も関東州周辺(遼寧省周辺)を保有地域を拡大していた。無論、これは帝政ロシア崩壊後での満州の治安維持を目的としており中華民国も渋々ながら保有を認めている。
それにより満州の鉱物資源は日本が独占したようなものであり亡命ロシア政府等も長らくは気付いていなかったのである。
なお、ロンドン軍縮条約も締結しており日本海軍は軍縮をしていたが実験等は大いにしており対空電探の開発や対空機銃等の開発に余念が無かった。また、この頃から将和らも高野らが作った『紺碧会』が大きくなっているのを確認している。
(前世を知る人間が高野の周りに集まる……か……此方は高杉くらいしかいないからまぁ何ともだな)
報告書を見ながら将和はそう思う。まぁその『紺碧会』もこれまでは異なる日本の世に戸惑いつつも高野らも歴史を動かしている者達がいると判断している。
(……海軍の戦力が異なっている……大体の目星は付いているが……此方に引き込む事は可能かどうか……)
神楽坂の小さな料亭で高野は一人そう思いながら酒を飲む。高野はある会との接触を悩んでいた。同じ海軍部内なのに向こうは皇族もいるのだ。接触は慎重にと思っていた。
しかし、事態は動く。襖が開かれ廊下に女将がいた。
「失礼します。お連れ様がお見えです」
「連れ……?」
女将の言葉に高野は首を傾げる。今日は一人で来た筈だし、運転手も先に帰らせたのだ。だからこそ女将の言葉に不審を思えたのだ。だが高野はあえて通した。自身を狙う刺客ならそのまま捕らえれば良いと判断したのだ。そして通された人物を見て高野は目を見開いたのである。
「こういった場で会うのは……初めてだな高野中将」
「……そうですな三好中将」
入ってきたのは私服の将和だった。襖が閉じられ、女将が下がっていくのを確認すると将和は高野の対面に座る。
「高野中将……いや山本五十六と言った方がいいかな? お前はこの世でどう戦うかな?」
「ッ!?」
将和の言葉に高野——山本五十六は再度目を見開き、将和は悪戯が成功したとばかりに熱燗を飲むのであった。
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