「くっ・・・強い・・・・」
アリーナの内部をオレンジ色のISと花びらのようなスラスターウイングを広げるISが飛び交う。ほぼ、意地とプライドで起こったこのシャルロットの専用機を決める試合だが、さすがというべきか最新鋭機「コスモス」は伊達ではなく、試合開始早々シャルロットは劣勢に立たされる。
ただ単純に機体の相性が悪いというのもあるが、相手の操縦者の腕前も中々だ。機体性能も技術も上回っているというのに一気に勝負を決めようとせず、確実で堅実に勝ちを狙いに来ている。まるでじわじわと獲物を絞め殺す蛇のように。
「シャルロット!!」
皆が苦戦するシャルロットを注目しているのに対し、瑠奈と亜紗日は相手の操縦者に目を向けていた。対戦相手の名前はショコラデ・ショコラーダ、デュノア社のテストパイロットらしいが、かなりの戦闘慣れしている様子だ。ヘルメットバイザーをしているせいで表情は分からない、だがなぜだろう、なぜか見覚えのあるような気がする。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
だが、所詮疑問は疑問に過ぎない。なんの証拠もなければ問題もないこの試合を勝手な疑いで中止などできるはずもなく、今できることはただこの試合を見守ることのみ。
「っ! これなら!!」
このままでは埒が明かないことを感じ取ったシャルロットは
「やった!」
確かなダメージを感じ取り、喜びの表情を浮かべるシャルロットだが、その顔は次の瞬間凍り付くことになる。今のショットガンによって頭部のヘルメットバイザーが砕け、対戦相手であるショコラデ・ショコラ―タの素顔が晒される。
「なっ!あなたはっ!?」
「ちっ、やってくれるじゃねぇかクソガキが!」
対戦相手の顔には見覚えがあった。その顔は、もはやおなじみとなった
「な、なんで、あなたが・・・・」
「この最新鋭機をいただこうってハラさ。察しの悪いガキだな!」
そう叫ぶと同時にアリーナの天井のハッチが少しずつ開き始める。
「デュノア社長!これはいったいどういうことですか!?」
千冬が詰め寄るが、このことはアルベールも知らなかったらしく、狼狽の表情を浮かべているだけであった。
「デュノア社長!すぐにシールドハッチのロックを!」
「やっている!やっているが、さっきからハッキングを受けているのだ!」
「全て用意されている罠か!簪、カウンターハッキングを仕掛けろ!」
「はい」
千冬の指示で打鉄弐式を部分展開し、情報ウインドを開いてコンソールに指を走らせていく。
「エスト、手伝って!!」
そういうが、返答はない。その沈黙で今、大事なパートナーが留守であることを思い出す。少し前に「旅に出ます。探さないでください」と謎のメッセージを残してエストはいなくなった。日常生活でエストがいなくても大丈夫だが、このような人手が必要な時の欠如は致命的だ。
その証拠に簪一人だけでは対抗しきれず、アリーナは少しずつ解放されていく。
「織斑先生!ハッキング元が特定できました!場所はこのアリーナの上空一千メートルです!」
「くっ!」
到底、今からでは迎えない場所であることに苦悶の声を出したとき、ガコンとアリーナのバンカーが動き始まる。
「おい、何だ!?」
監視モニターを見ると、そこにはいつの間にか射出用のカタパルトに足を乗せる青と白のカラーリングをした機体ーーーヴァリアントがいた。
「シャルロットの援護に向かうつもりか?」
射出の警報とアラームが鳴り響くと同時に射出され、アリーナ内にヴァリアントが乱入する。そのままシャルロットの加勢に向かうかと思われたが、その後、意外な行動に出る。
「うわっ!?」
「うおっ!?」
アリーナの中央で戦うシャルロットとオータムを吹き飛ばし、そのまま天井のシールドハッチをぶち抜き、一気に上空へ向かう。
「あいつ・・・・」
シャルロットの援護よりも上空のハッキング相手の対処。その勝手な行動に憤りを感じるが、この状況では説教することもできない。そんな千冬を知る由もないヴァリアントはすさまじい速度で上昇していき、ついに敵を捕らえる。
「あれか・・・・」
上空で浮いているゴスロリの服装をした少女、クロエを視認する。それを捉えると、手元のヴァリアントライフルの標準を少女の頭部に定める。
「俺は前に言ったよな?次に会う時は殺すと。それでもこうして俺の前に姿を現すということは死にたいんだな?いいだろう」
仏の顔も三度までという言葉があるが、生憎瑠奈ーーーいや
「う?」
相手の周りに何らかのフィールドが張られているのか、射撃が効かない。
「無駄です、
「あの女も中々面白いおもちゃを作るな。次は何を見せてくれるんだ、お嬢ちゃん?」
「その口がいつまで続きますかね・・・・?」
自分の主を小馬鹿にするような発言にわずかに目つきをとがらせると同時に、手元の杖を振るう。すると、ヴァリアントの周辺を真っ白な空間が包み込む。
「
なんとも物騒な単語を最後にクロエの姿が消え、この何もない真っ白な空間に閉じ込められる。だが、この状況に見覚えがある。過去に学園で体験した
「っ!?」
見てみると、前で人らしきものがうつ伏せで倒れている。真っ白な長い髪が背中を覆いかぶさるような状態であり、何も着ていないのか、腕や太ももが露出している。腕や足がか細いところを見ると、女性なのだろうか。うつ伏せで倒れているせいで顔は見れない。だが、自分は彼女を知っていた。
「あ・・・・あぁぁ・・・・・」
うめき声のようなものを発しながら静かに立ち上がる。そのまま、まるでゾンビのようなゆっくりとした足取りで歩み寄ってくる。相手は丸腰、おまけに動きも速くない。対処するのが容易であるはずなのになぜか体が動かない。まるで筋肉が凍り付いているかのようだ。
「わ・・・・た・・・・・しを・・・・」
「お前は・・・・」
目前にまで接近してきたところでようやく気が付いた。目の前の人物の両目まるでくり抜かれたかのようにないことを。両目がないのにも関わらず、両手を
「よくもぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
女とは思えないほどの腕力で首を絞めつける。想像外の腕力とまるで化け物のような声に蹴落とされ、思いっきり後方に押し倒される。
「私を殺し、よくも雄星の肉体を!!私の雄星を!!この化け物がぁぁぁぁぁ!!!」
「ぐっ!ううう・・・ぐぐぐぐ・・・・」
もはや彼女の話す言葉に文脈などなく、まるで自身の恨みや憎しみを吐露するかのような禍々しく、憎々しいものだ。
「返せ!返せ!私に雄星を!私のたった一つの希望を、お前はぁぁぁ!!」
「まだ・・・・死ねないのか・・・・」
哀れなものだ、殺され、希望を奪われて、それでもその亡骸さえも利用され、今度はその執念すらもこうして利用されて。何回も掘り起こされ、何回も墓荒らしをされ、人として穏やかな眠りをつかせてもらえない。そんな彼女にできることはただ一つ。
「がっ!!」
「そんなにこの世に未練があるというならば、何度でも寝かしつけてやる。絵本を読んで、子守歌を歌って、それでもまだ起きてこうしてくるというのならば強制的に寝かせてやるよ!!」
腹部を蹴りつけ、わずかに力を弱らせると反撃と言わんばかりに両手で首を絞める。細く、白いその首を一切手加減することなく、力いっぱい締め付ける。
「がっ・・・・がっ・・・・」
「次はよく眠られるといいな、小倉瑠奈」
「あっ・・・ぁ・・・・・・」
最後の抵抗なのか、腕わずかに爪を食い込ませると全身が脱力し、動かなくなる。すると、この空間を形成するコアの停止を確認したのか、この空間が少しずつ綻びていき、現実世界へ戻っていく。
「・・・・・・」
周りにクロエの姿はない。それだけ確認するとあの空間で遭遇した不思議な体験の余韻に耽るかのように空を見上げる。
「あんたを殺すのは何回目かな・・・・・」
同じ人物を何回も殺す。その残酷すぎる行いを決定付けているのはいったいなんなのだろうか。
「おやおや・・・・」
アリーナに戻ると何があったのか、最新鋭機「コスモス」を身にまとうシャルロットに、そのシャルロットに銃を突き付けられ、地面に這いつくばるオータムの姿があった。シャルロットの援護をせず、逃げられるように天井のエネルギーフィールドハッチも破壊した。それなのに彼女はそのチャンスを生かせず、こうして再び捕らえられてしまった。
「いつも間接的にチャンスを与えているのに、どうしてお前は生かせないだろうな?」
「うっせ・・・・・」
その悪態をつくような声にオータムは強く返すことなく、項垂れるだけであった。
ーーーー
「っ! なんのつもりだ?」
帰還早々、心底ご立腹な表情をした千冬に胸倉を掴まれる。
「なんのつもり?何がだ?」
「とぼけるな!お前はシャルロットの援護よりも上空の敵の迎撃に向かったな?もし、シャルロットが負けてオータムに逃げられていたらどうするつもりだ!?」
「どうするっていわれてもな・・・そうなった場合はそこの社長さんの首が飛んで終わりだろ?」
「危うく
「そもそもオータムを招き入れ、ISに乗せたのは社長である会社だ。その責任をかばうだなんて、随分と優しいんだな。生徒にもその優しさを向けられるといいな」
反省の色などなく、ただ淡々と物事を語る瑠奈に千冬は苛立ちを募らせる。
「あれだ、自分たちの不注意と怠慢がこの事態を招いたんだ。その後始末ぐらい自分たちで付けたらどうなんだ。俗にいう自分たちの尻拭いは自分たちでしろっていうやつだ」
それだけいうと瑠奈は部屋の隅で安堵の表情を浮かべるアルベールへ近づいていく。てっきり、この事故を円満に解決することができたことに対しての祝いの言葉が出るかと思ったのだが、彼の口から出たのは真逆の言葉であった。
「どんな気分だ?お前たちが散々冷遇し、否定してきた愛人の娘と心底見下していたクソガキに命を救われるというのは」
彼は怒っている。不祥事を起こしたことではなく、その不祥事を起こして自分の手を煩わせたことに対して。その怒りから生まれる感情は到底少年が持つようなものとは思えないほど濁ったものであった。
「悪いが用事は済んだのならばさっさと行こう。ここにいると次にこの社長がなにをやらかすのかわかったもんじゃない」
凍り付いているアルベールに気をかけることなく、彼は歩き出す。人は見かけによらない、この言葉はよく聞くが、その内面が彼は違いすぎただけの話なのだ。
ーーーー
「悪いけどここで降ろしてくれる?」
イギリス領へ入り、森林地帯を通過中に亜紗日がそんな声を出す。
「どうしたんだ笹原さん、もしかしてトイレか?」
「まあ、そんなところ。降ろして」
生返事に近い返答をすると、雑木林のような高い木に囲まれた場所に着陸する。
「瑠奈、あれある?」
「ああ」
短いやり取りを交わし、瑠奈から黒い大きなバッグのようなものを受け取ると同時に開く。中には何やら大きな機材が入っており、いじり始める。その行動から明らかにトイレが目的ではないことは一目瞭然だ。
「さ、笹原さん・・・・?いったいなにをしているんだ?」
「黙ってて気が散る」
「ご、ごめん・・・」
大きなトランスポンドのアンテナを設置し、周波ダイヤルをヘッドホン片手に調整していく。そんな時間が数分ほど続いたころだろうか、亜紗日が静かに口を開く。
「申し訳ないけど、私を置いて先に行ってくれる?」
「え・・・・なんて言った!?」
「私を置いて先に行って」
淡々とした口調だが、確かにそう口にする。ここで素直に首を縦に振ってくれると嬉しかったのだが、そう簡単に許してくれるはずがなかった。
「そんな・・・笹原さんを置いていけるわけないだろ!!ここはイギリスの町から遠く離れた森林地帯だ、もしかすると熊とかの狂暴な動物がいるかもしれない!!危険だ!」
「大丈夫だから、先に行って。自分の身は自分で守れるから」
「それならせめて俺を残らせてくれ。それなら大抵なことがあっても対処できる」
「気持ちだけ受け取っておくわ。早くいって」
「笹原さんっ!」
心配症なのか、一夏が大きな声を出して亜紗日の肩を掴む。その表情は死んでも離さないっといった様子だ。そんなまるで少年漫画の主人公のような表情をしている一夏の首元に冷たい感触が伝わる。
「彼女を離せ」
その冷たい声と同時に、一夏の首元にナイフの刃を当てているのはいつの間にか背後に回っていた瑠奈であった。あとほんの僅か力を加えればナイフの刃が肌に食い込むであろうというギリギリの距離まで接近させる。
「彼女はやりたいことがあるが、それを成し遂げるためには僕たちは邪魔らしい」
「笹原さんはただの女の子なんだぞ!それをここで置いて行けというのかよ!?」
「ああそうだ、彼女はそれを望んでいる」
あまりにも非常識で危険な行動に異議を唱える一夏と亜紗日の願いをかなえたい瑠奈。その両者が激突する。
「やめろ二人とも!」
その争いを止めたのは千冬であった。できるならば、互いがケガをしない範囲で納得できるまで話し合わせたかったのだが、これ以上の足止めはスケジュールに響く。
「亜紗日を置いて、我々は先に進む。亜紗日は後で合流しろ」
「そ、そんな、千冬姉、ここで笹原さんを置いていくのかよ!危険すぎる」
「お前の意見は分かる。だが、そうやっていつまでも言い争っていても時間の無駄だ。我々は我々で進んでいく」
「待ってくれ、それじゃあーーー「くどい!!」」
必死な声もむなしく千冬の声に一蹴され、黙り込んでしまう。自分は彼女の身を心配しているだけなのに、案じているだけなのに、なぜかこうして怒られている。
「ありがとう、一夏くん」
そんな落ち込んでいる一夏に亜紗日は優しく声をかける。
「私を心配してくれてありがとう。だけど、今は私を置いて先に進んで。あとで必ず追い付くから」
「本当・・・・だよな?」
「ええ、約束する」
それだけ言うと彼女は再び機材を弄って作業に戻る。心配だが、ここでいつまでも嘆いていても何も始まらない。それを感じ取ると、再び機体を展開させて飛び立つ。そして全員の姿が見えなくなるのを確認すると、手元のマイクに話しかける。
「エスト、聞こえるか?」
『は・・・・い・・・・・電波、状況が・・・・わる・・・い・・・ですが・・・・・』
「お前と『ヨルハ』の降下準備は整っているな?僕がいる場所の北五十メートル先に降下させろ」
『りょ・・・・かい・・・・射出しま・・・す』
それだけ聞くと通信がぶつりと切れる。メッセージは伝えた、あとは待つだけなのだが、案の定、すぐに空から彗星らしきものが見えた。
「・・・・ん?」
だがおかしい、なぜかその彗星が二つ見える。一つはさっき自分が注文した荷物、だとすると、もう一つはーーーー
「おい、エスト、荷物が二つあるぞ。もう片方はなんだ?」
『に・・・・・・・げ・・・・・』
「おい、なんだ?聞こえないぞ」
『に・・・・げ・・・・・・て』
「逃げて?」
その言葉の真意を確かめるよりも早く、上空から突風が吹きあられ、周囲の木々を揺らす。その風力はすさまじく、亜紗日もわずかに膝をつくほどだ。
「なんだよ・・・・っ!」
数秒後、風が収まり目を開けた瞬間、全身が凍り付く。目を開くとそこには忌々しい『黒』がいた。まるで蝶のような文様をした羽が背中から生え、黒の装甲、そして手元には槍のような形状に鈍い輝きを放っている武器。
「まじかよ・・・・」
紛れもなく目の前にいるのはかつて敵対し、そして共闘した
「・・・・・エスト、機体降下を急げ。・・・っ!」
それと同時に亜紗日は後方へ一気に走り出す。地面を蹴り、全身の筋肉をフル活動させてまるで陸上選手のように走る亜紗日の後方から黒騎士は腕部のサブマシンガンを乱射しながら追いかけていく。相手はISであるのに対し、こっちは生身。まともに戦っても瞬殺されるのは明白だ。だから逃げる、ある場所へ、逃げ続ける。
「くそっ!せっかくの再会なのにこれかよ!!」
苦言を言いながら亜紗日は走り続ける。幸いなことにここは森林地帯だ。相手は上空から追うことはできず、地上を滑走していくしかない。その証拠に後ろから追ってくる黒騎士はご自慢の飛行機能は使わずに、森の木々を切り倒しながら追ってきている。
「ちょこまかと!」
素早く逃げ続ける亜紗日に向かって腕部内臓のサブマシンガンを乱射するが、視界が悪いのに加えて驚異的な身体能力のせいでなかなか命中しない。
「動くな!抵抗しなければ貴様の両足を潰すだけで済む!!」
「勧告になっていないな!もう少しいい条件を提示してくれよ!!」
たった数十秒のはずなのに、その何倍の長さに感じる死の鬼ごっこをしながらようやく目的地にたどり着く。大きく開けた渓流。その中心に巨大な降下ポットがある。
「あれか・・・っ! ちぃ!」
開けた場所に出たせいか、追跡者である黒騎士が後方から飛び出してくる。
「エスト!機体を稼働させて操縦者のフィードバックを開始!各機能をアンロック、武装にエネルギー供給を開始しろ!!」
ほぼ叫ぶような声で指示すると同時に、ポッドの一部が開く。上空から次々と放たれる攻撃の雨をギリギリで避けながらわずかに身を屈ませる。
「っ!」
そしてまるでスパイ映画のワンシーンようにポットの内部へ飛び込んだ。
「・・・・やらせるか!」
笹原 亜紗日を殺せないのならば、機体ごと破壊すればいいだけの話だ。腕部のガトリングに加え、ランサービットの攻撃をポットに集中させる。激しい轟音と爆発とともに次々と対象は傷ついていく。まるでボールのように弾みながら外部装甲は吹き飛び、焦げ、また傷ついていく。
そんな攻撃が一分ほど続いただろうか。黒騎士による容赦のない攻撃のせいでポットの外部はへこみ、えぐれ、見るも無残な姿へと変貌する。
「・・・・・・・」
反撃がないことを確認すると、少しづつ近づいていく。そして警戒しながら触れようとしたとき、ポットの内部からドンッと奇妙な音が聞こえてくる。
「っ!?」
反射的に後方へ飛び退くが、その音は少しづつ大きくなっていく。そして一定の大きさになった瞬間、ポットの外部装甲が内側から蹴り飛ばさ、内部から亜紗日が姿を現す。
「待たせたな、さあ、戦おう」
「貴様・・・・」
操縦者バイタル グリーン 機体エネルギー残量100% 各部駆動系 問題なし エクセリア
次々と表示される情報を確認しながら、全身に装甲を纏っていく。かつて愛しきものにして、宿命の人物が使用した機体。それを皮肉なことにその亡骸を纏ったものが使用する。そしてそれはこの戦場に二人目の
「エクセリア・ヨルハ。輝く希望が黒く染まり、地に堕ちるとき、そこから新たな希望が生まれる」
かつての輝きは失われ、黒く染まったその機体。しかし、その絶望が今は新たな希望となり、新たなる危機の前にその伝説は再び蘇る。二刀流ブレード『バンカー・ヒル』を装備し、大きく構える。
「お姉ちゃん、今は君の機体を使わせてもらうよ」
わずかな謝罪、それだけを口にすると目の前の倒すべき敵に対してその刃を振るう。こうして少年と少女は戻っていく、今度こそ全てを終わらせるためにこのかつての戦場へ。